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【事件激情】その男、K。#03【秋葉原通り魔事件】

#02 「最涯ての10秒ルール」 


  『謝罪の言葉をきっかけに、母を許すことができました』
            ────加藤智大の弟による手記

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 ■ スーパー女子高生マイキー


マイキー@15歳

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やる気満々な優秀少年少女がひしめく東京都立日比谷高校の中でも、マイキーの存在はずば抜けていた。


一方、青森の進学校に入学した(ただし4年前に)はマイキーとはまるで対極的な道をたどった。
まるで黒白反転。偶然なのに。




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マイキーが入学した2002年東京都立日比谷高校大改革の真っ最中だった。

一時低迷していた日比谷高校は、マイキー入学のちょい前からの大改革で再生進学校として復活して、この頃からマイキーはじめ意欲的な秀才さんたちがどんどん入学しはじめた頃なんであるが、

その復活物語はまた長いので、
別ページに分けた。>「日比谷ルネサンス」

この高校の復活劇もまたけっこう面白いんだけども、

まあひとまずマイキーの行ってたのは優秀学校で人間的にも育てようとする良い学校、とだけ知ってれば、まあスルーしても無問題。


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やる気満々な優秀少年少女がひしめく学校の中でも、マイキーの存在はずば抜けていた。

まず在学3年間を通じて、ずっと学年トップクラスの成績をキープ。

といってガリ勉子ちゃんでもなく、

伝統50年以上で部員100人で演奏レベルの高さで有名(以上形容詞)なオーケストラ部で、バイオリンパートのリーダーで活躍。

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1年生から合唱祭の指揮者、文化祭の演劇企画でも中心になってクラスを引っ張り、

友だちとコピーバンドも結成、ボーカルやキーボードを担当。
得意なのはシャカラビッツの曲。

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さらに人間的にも無欠点だったらしく。

明るいムードメーカー。さばさばして男女ともに友だち多し、賢くて友情に厚くて裏表がなくて誰からも好かれるキャラ。へんくつな子もマイキーにだけは心を開いた。
マイキーは人を惹きつけ、力づける不思議な人間力に満ちていた。そういう子ってまれにいるでしょ?

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以上は10人くらいの人間について書いてるんではなくマイキー1人のことだ。
世の中には超人的行動力のある人間というのがいる。彼女もそんな人種。無限のバイタリティーがあった。

マイキーは先生たちもほっくほくの理想的なスーパーJKだった。


  「酒鬼薔薇聖斗と同い年なんだよ」

さて一方、時は高速逆回しで4年前青森

青高に入ったK@4年前は元気してるだろうか。

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K母の人生予定表によれば、青森高校に入学して、輝かしいエリートの母人生が始まるはずだった。

ところが、

  

進学校となれば当然県下の頭いい子たちが集まって玉石混じりようもなくて玉しかないぜ、なわけで、
K@高1は、速攻で埋没する。
最初のテストでは学年でビリから2番目。

高1の夏、K母は早くも、
「成績がいまいちで」と親戚に愚痴っている。

どころかK@高1は平均以下からブービー賞あたりをうろうろしていた。

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中学で秀才、高校で急に負け組へ転落。これ決して珍しいパターンではない。
中学までは詰め込み式でなんとかなっても、高校では勉強の質が変わる。ここであっれーと墜落する子が多いのだ。
この掲示板辺りにいくと、そんな元秀才たちの恨み節が満ち満ちてて怖いぞー。


いかんせん、高卒→労金勤め→専業主婦のK母には中学の勉強までが限度。しかも進学校の勉強なんて無理。

そうなると母親の検閲力のみで優秀だったはピンチ。
がんばって中の下くらいまで成績を上げたが、そこまでで。
そもそもは工業高校に行って現場寄りの工具を持つような仕事をしたかった。K母に速攻で却下されて青高に行かされたが。もともと入りたかった高校じゃない。だからますます萎える。
くさってゲームばかりするようになった。仲のいい幼なじみら4人くらいの友だちの家に入り浸った。カートに夢中になって友だちから借金して通いつめた。

さて、このもがく長男を前にK母はどうしたかというと、








見捨てた。


そして上のは失敗だったけど、今度こそ」
と、K弟の方に鞍替え。

以後、不良品は存在しないことになった。


どころかただの厄介者になった。

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「あの子とご飯を食べるのもすごく嫌だ
K母はPTA仲間のママ友に漏らした。

酒鬼薔薇聖斗と同い年なんだよ。怖ぐで」
「さ、さがきばらって、あの、神戸の?」

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さすがにママ友もK母が実の息子を殺人鬼と同列扱いするのにびっくりした。

「怖い? トモヒロぐんが? なへよ?」
怖ぐで


K@高校生は実に高校に入るまで「ドラえもん」「まんが日本昔ばなし」以外の番組を観たことがなかった。
さらに友だちンちと行き来しないのは世間の常識と思っていたのに、それは家だけの常識だと知って驚愕した。

そしてK母どんな母親で自分に何をしてきたかやっと悟った。

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もう黙って10秒ルールに従う小さな子どもじゃなかった。
モノに当たり散らし、荒れた。壁に穴をあけた。

学校でも普段大人しいが、

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気に入らないとキレた。素手で窓ガラスを割った。

K弟とは一つ屋根の下に暮らしながらまったく会話なし。
事件後、K弟は週刊現代に高く買ってもらった手記で、兄のことを「アレ」とか「犯人」とか書いた。

K母の半分以上自業自得というしかないけれども、家族状況は空中分解の一歩手前だった。

じゃあK父はそんとき何やってたんだよ、というと、
仙台の支店を任されて宮城と青森を行ったり来たりの生活で不在がちだった。
ついでに夫婦仲まで冷えていた。


この頃、先生から見たの印象。
「大人しくて、とくに問題も起こさないし…記憶にない
ないのかよ。

クラスメイトも…、
地味だった」「大人しい」「変だってとこはなかった」「暗くはないっていうか…普通」「よくキレてた


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は一応、中学と同じくソフトテニス部だった。すぐやる気をなくしてやめてしまったが。
高3の夏、
部の仲間が、個人戦で東北大会まで進出して福島まで遠征に行っていた。
その宿にから急に電話。
家出してきた。おれも福島にいる」

慌てて部員顧問に相談。
慌てて顧問を呼んで説得。
慌ててK父が引き取りにやってきた。


そのあと父子が阿武隈川の川原ででも殴り合って、

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両者泣きながら
「おやじ~」「息子~」

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ひしっ、

ならよかったんだが、


この父子にそんな奇跡は一瞬たりとも起きなかった。



  「音楽の仕事がしたいんです」

さて、時空を超えてふたたび4年後マイキー@女子高生に戻る。

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彼女はただばく然と優等生してたのではなくて、
すでにしっかりと将来の目標を見据えていた。

なにって、もちろん、

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音楽学部? 第1志望が?」
「はい、将来、音楽関係の仕事に進みたいんです」
東京藝大か…」

先生たちは、マイキー東大受験を目指した指導計画を立てたいと考えていた。彼女ならきっと東大に現役合格できるだろう。だが藝大となると…?

たしかに藝大に合格する生徒が出れば、それはそれで日比谷の改革の成果になる、なるんだが…。しかし…、
「うーん、でも普通科から音楽学部を受けるのはかなり厳しいぞ」

まともな音大の実技試験は、高校のオケや吹奏楽で活躍してる程度じゃ通用しないんである。
音大を目指す子は音大受験用の専門校とかプロの講師について早くからレッスンする。
まして東京藝大ダテに芸の字が旧字体じゃない、芸術エリート中のエリート中のエリートの集う場だ。ある意味、東大よりも難関。

全国から音楽のスーパーサイヤ人みたいなのがぞろぞろ集まるのだ。いくらマイキーが万能少女でもさすがに…。

でもマイキーはニコニコして、
「いいえ、わたしには普通科の方がいいんです


さて、世に「加藤智大挫折した」「マイキー挫折知らずのお嬢さん」という見かたがあるけれど、その点でも加藤マイキーの足もとにもおよばない、と推理するんである。

マイキーはごくごく早い時点で、

(わたしは音楽家にはなれないだろう)

と冷静に見切ってたっぽい。進路の選び方からしても。そのへんはただの夢見る夢子ではないところだ。


ここから下↓は、想像というか妄想入ってるが──。


もちろん彼女の音楽スキルは、その後も音大生とユニット組んだり、電子オルガンの大会に出たり、作曲もこなしてるから、常人よりはるかに上なんだが…。

(でも、第一線のプロになれるほどじゃない)

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がエレクトーンで何度か全国大会までいってるのに妹のマイキー都大会止まり。その姉からして絶対の才能があるわけではない。

何歳の頃か、聡明な彼女は早々と理解してしまう。
努力だけではどうにもならない、あゝ無情な壁を。

音楽をとても愛してる、この思いは誰にも負けない、
なのに、わたしにはその才能が足りないんだ。

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そんなの、ふつうの女の子だったら悲しくて悔しくて大いに絶望して泣きわめいて転げ回ってひねてしまうところだが、

このときにはすでに自分の取るべき道をしっかり見い出していた。
このへんの意志の強さとポジティブシンキング力は本当に同じ人間かよとさえ思う。

以上、↑妄想終了。


というわけで、マイキー加藤智大なんかより、よっぽどつらい挫折を味わってたんでないだろうか。ただそれを脳内にとどめて、よい方向へと昇華させたってわけで。


で、そのマイキーは、

音楽環境創造科を受けようと思っています」

先生も意表を突かれた。

音楽環境創造科。2002年東京藝大が創設したばかりの“若い”学科だ。

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5.1chサラウンド時代の音響や録音の最先端技術と演奏環境デザイン、文化環境の整備──えーとまあなんだかよく分からないが、「21世紀の学問」という通り。
さすが東京藝大なにしろ芸が旧字だ。この新学科にかなり力を入れているらしい。
藝大でも異色の存在で、日比谷の先生もその主旨を理解はしていなかっただろう。

でもマイキーは確信していた。音楽をじかに演奏したり作曲するんじゃなくても、それを支える立場、プロデュースする立場になれば、音楽を一緒に創り出すことができる。

「この科の受験は実技がありません

音環科だけは選考がセンター試験小論文、面接だった。
というと推薦入学にも見えるが、そんな甘くない。

実技重視の学部だったらセンター試験60%程度でいいだろう。
しかし音環はセンター80%が足切りライン、できれば90%が必要。小論文も面接の質疑応答も厳しい。
この生まれ立ての科が“良質な頭脳”を求めているのは確かだった。

でも、なるほど、他ならぬマイキーなら。大いに可能性がある。というかまるでマイキーのためにつくられたような学科じゃないか。


先生もワクワクしてきた。これは面白い。学校挙げて応援する必要があるぞ。

「よし、しっかりと支援していくから」
「はいっ、ありがとうございますっ」

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きらきらッ。



  書を捨てよ、町へ出よう

さて、また時空を遡って、青森のK@18歳なんだが。

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高校3年となると進学の年。がどうなったかというと、


岐阜県の中日本自動車短大に進学。

えーと、客観的な数値として、

中日本自動車短大 偏差値 36

おおむね短大の偏差値は4大に比べて低いが、正直いうとその中でもとくに低い。

この短大がどうのこうのではなく、いくら成績が下から数えた方が早くても、青高から行く学校ではない、ということである。

高望みしなければでもそこそこの4大には行けたはずだ。なんなら推薦って手もある。学校も進学率を下げたくないから喜んで内申書に手心をくわえてくれただろう。
だから青高からこの短大は、よほど“努力”しないと行けない進学コースなのだ。

どうしてこんなことになったのか?

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2年のとき、すでに、
自動車関係の仕事がしたいから」「短大に行く」
と先生に伝えていた。先生も驚いた。もちろん止めようとしたがは頑固に聞かない。

はといえば、K母の反応を待っていた。

期待に反して息子が大格落ちの進路を選んだことに、きっとがっくりきた顔をするだろう。泣いて詫びるかもしれない。頼むから考え直してとすがるかもしれない、と。

母親への「アピール」だった。

この独特の思考法「アピール」は、以後の人生の節々で顔を出す。そしてそのたびに悪い結果になるんだが。懲りないは何度も繰り返すんである。

アピールの理由はこうだ。は北大よりランクが下の大学に進路を変えたいとK母に告げた。すると、「じゃあ車は買ってあげない」
は青高を受験して大学へ行く代わりに、運転できる歳になったら車を買ってもらう約束をK母としていた。
は「望みどおり青高に入ってやったじゃないか」と、約束を勝手に反古にされたと恨んだ。

それで自分の不満を「アピール」するために、「大学受験そのものをやめて短大に行く」と言い出したんである。まあアピールというより「あてつけ」。すごく分かりにくいが。
そうすれば、母親に「息子が約束を破られて怒ってる」と伝わると思った。それはダメだ、回りくどすぎて伝わらないぞ

それが自分の損になるとは少しも思いつかなかった。


K母の反応はというと、



無反応。

不快な顔はしたかもしれない。眉をひそめたかも。

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でもの期待した顔ではなかった。


K母はすでにスペアのK弟@3歳下の方に全期待を傾けていたから、不良品が何しようとただただ不快なだけなのだ。

「お子さん、卒業したらどこの学校へ」と気軽に話題を振った近所の主婦に、K母「悪いけど進学か就職かも聞かないで」と嫌そうに言った。

は自分の未来をぶん投げた捨て身(とはこの頃まだ気づいていない)の反抗が空振ったと悟った。

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卒業直前になって、
「やっぱり、学校の先生になりたいです」
と先生にすがるが、もちろん手遅れ。


卒業のとき、生徒会誌にK@18歳は書いた。

「ワタシはアナタの人形じゃない。赤い瞳の少女(三人目)」


アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の人気キャラ、綾波レイの3人目クローンの人気セリフだった。

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うわしまった、劣化クローンだ。

でも肝心のK母はそんな決めゼリフなんてもはや見ちゃいない。
K弟@3歳下が、これまた進学校の弘前高校にみごと合格。そちらにしか目が向いてなかった。

けっきょく、
K@18歳、故郷を離れて、岐阜県へ──。


進学校に入って、似たスタートを切ったマイキー
しかし人としての中身がまったく違った。

だからまったく黒白逆転の高校3年間を過ごし、まったく黒白逆転の思いで進学にのぞんだ。当然まったく黒白逆転の結果となった。


7年後、事件の2か月前の4月3日、
ケータイの掲示板に、K@25歳は書いた。

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 もし一人だけ殺していいなら母親
 もう一人追加していいなら父親



【つづく】  #04 「毒のある花」


 【事件激情】
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