【事件激情】ウルトラCC 第46便【9.11 THE DAY AFTER】








【事件激情】ウルトラCC 第46便【9.11 THE DAY AFTER】
それはまさにひとつの人工人間そのものである。
人間よりも大きくて強く、人間を守護する。
無制限の完全権力は、望ましくない結果を招くと危惧する人々もいるだろう。
だがそれが無く、万人が万人と戦争状態にある世界に比べれば、
どれほど幸福なことだろうか。
──ホッブズ著「リヴァイアサン」


あれ?

線路──

えーっと?

で、陸橋、とくれば──



まーたここに来たのかよ!
「にーい」

「さーん、」

「しーい」
八っちゃん?

「ごーお」






「ミーチュー、ミューチュー、ミーチューっとくらあ」

ザッ

あ、



ニイタカ・ヤヨイ-カトリーヌ?


そうか、いま、夜会が終わって、八っちゃんに五つ数えさせた直後なんだ。

物凄い鬱オーラ。号泣き状態じゃん。
まあ、あの直後なら無理もないけど。




「えっ?」
「えっ?って、えっ? 」



「あのーもしかして、
わたしのこと、見えてます?」


「……見えてます」

登場する事件テロ紛争戦争、その捜査活動は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子とニイタカ・ヤヨイ-カトリーヌなどこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりも、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。






「……(この構図、シュールすぎるぜ)」────「…………」


「そのスカート、ずり落ちないの?」


「は?」
「それ、極端に短いけれど下着ではなくて一応スカートでしょう?」


「え? あ、あーこれ? だ、大丈夫。重力とか関係ないみたい。パンツもろ出しの刑にはならないから。髪も垂れ下がってないでしょ?」

────────────────「そう、安心したわ」
「あ、はあ、お気遣いどうも」
────────────────「……………」
「……………」


「なんてこと。鏡を見るようだわ」


「同感。そりゃみんな間違えてもしゃーないわ」


「初めまして、になるのかな?」

「はい、わたしは怪しいもんじゃな……いってのはなんの説得力もなくて思いっきし怪しさ全開だけど、幽霊とかあなたのドッペルゲンガーじゃなくて人間の、えーと現役で人間で、名前は百合子、白鳥百合子」

「白鳥……」
「ミスニイタカの知ってる白鳥は、わたしの養父と同一人物だと思う」
「わたしを知ってるの?」
「あなたのことはよく知ってます」


「で、いちおう確認だけど、今は昭和24年8月24日で、ここは五反野だよね?」
「正確にはもう夜半を過ぎたから25日だね」

「なーんか死にそうになったらここでリスポーンする規則でもあんのかな」

「あ、じつは先ほどの夜会の間、わたしもずっとここで見てたんだよ。あなたから姿は見えなかったと思うけど。で、一度は2001年に戻ったんだけど、またここに」

「あ、でも幽霊じゃなくてね、わたしの本体は2001年のニューヨークにあるからいわばあなたから見たら未来人なんだけど、どういうわけか、生き霊っていうか、なんだろ? そのときも幽体離脱みたいな感じで。意識だけタイムスリップての?」



「イキリョー?」
「あーうー、なんつーか本体はまだ生きてるゴーストみたいな感じ」
「ワイスのようなものかな? なるほどイキリョー、勉強になったわ」
「………」


「……あのー、悲鳴あげて気絶しろとまでは言わないけどさ、」


「ふつうもうちょっと驚愕の反応しない? この状況明らかに異常でしょ。いきなり自分そっくりの女が空中に逆さで現れて、未来人とか生き霊とかわけわかんないことほざいてるのに、少しはショックじゃないの?」

「まず最初の反応がスカートずり落ちないかの心配で、そのあとわたしが衝撃的なこといっぱい言ったのにすべてスルーで、次の反応がイキリョーって何、って? 気にするとこってそこ? なんでそんなリアクション淡泊なの?」


「あなたの出現も可能性はごく低いけれど、決してゼロではないから」


「……は、はあ」
「外からは分かりにくいかもしれないけれど、
これでもわたしなりに驚いてはいるのよ一応」



「八っちゃ──ディテクティブハチベエはいいの?」
「なるほど、わたしのことをよく知っているというのは嘘ではなさそうね」


「わたしのこのあとを考えれば、あの人のことは諦めるしかないわね」


「さて、今度はあなたは何者か、わたしに説明してくれるかな?」

「わたしは札幌市警の白鳥一雄警部の養女。実の父も母も知らない」





「まだ幼い頃、養父は殺され*【サティアンズ 第十六解】てしまったけど、その遺品にわたしそっくりの女性の写真と、楊枝と糸で補修した古い丸メガネがあった」



「戦前、上海租界を拠点に英国の諜報団を率いていたあなたは、通州事件*【第15便】の際に、当時ハルビンの特高警察にいたわたしの養父と知り合い、以後交流があった。おそらく養父はあなたの協力者サポーターの一人になったんじゃないかな」



「わたしは高校卒業後、東京に出て警視庁に入庁、あなたに瓜二つだったのが縁で元サクラ担当官の目にとまって公安部に配属された。*【第18便-続】
今夜から30年後、八っちゃ──ディテクティブハチベエと出会った。またもやわたしがあなたに瓜二つだったのがきっかけで親しくなった*【第7便】」


「そしてあの丸メガネを直したのが八っちゃんで、あのわたしに激似の写真の人がニイタカという人物だと知らされた。たまたまあなたと関わりのあった白鳥警部に、顔が瓜二つの女に成長するわたしが引き取られたけど偶然です、なんてはずはない」

「その後、あなたに関わったいろいろな人たちに逢った。ユージン・ハットリ中尉、ジョージ・ケナン教授、かつてアドミラルティボードであなたとの連絡官だったパーシー卿にも。アメリカの機密解除公文書も漁りました。あなたのことをもっと知りたくて」

「わたしの知り得るかぎり、ミスニイタカはこの後も日本に留まって、日本の治安秩序維持機構を再構築、公には秘して主導する事実上の長官になる、はずだった」


「なのに突然すべてを白紙にして、この夜会を最後に関係者全員の前から姿を消した。“けじめをつける”とだけ言い残して。
“このあと”っていうのは、つまり“けじめをつける”ことだよね?」

「そうかもね」


「ミスニイタカの“けじめ”とは何か、わたしが当てようか」

「あなたが何よりも大切に考えていた日本を護る仕事を投げ出してまで、しなければならない“けじめ”、それはひとつしかない」

「あなたは日本を去り、海を越えて西へと向かう。寒い国へと。そして1945年4月12日のワシントン*【第8便-続】と同じことをあなたはもう一度やろうとしている。
あなたが、“けじめ”をつける相手とは、」

「ソビエト連邦共産党中央委員会書記長兼人民委員会議議長、
ヨシフ・スターリン」
≫ 続きを読む *2018.12.28 update
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