PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

【事件激情】その男、K。─秋葉原通り魔事件 #02

#01
  
  ◆2010年7月27日公判の加藤智大の被告人質問を反映した
   【#02改】
こちら


  「私はこの事件を一般化して理解してほしくありません」
        ──公判の証言台に立った被害女性の言葉
  
#02_kandakousa

「時間です」

勝ち組どもへの最終宣告のつもりでカキコした、
というのに、
加藤智大ことK@25歳はいまだ2tトラックで秋葉原の周りを行ったり来たりしていた。
 
神田明神通りを東へと走ってソフマップ本館のある交差点に差しかかる。
ここでそのまま右折してホコ天のど真ん中に突っ込んで、幸せそうな顔してるカップルをはねてはねてはねまくるつもりだった。

でも──うわ、人が多すぎる。
その人波に怖じ気づいて、つい信号が変わるのを待って交差点を横切った。

なに交通規則守ってるんだおれは。

もう一度だ。

山手線の高架前を右折して駅前のロータリーをぐるりと回って元来た道を戻る。それから今度は西向きに交差点に向かう。

よしっ。

#02_akb_kousa


でもまたハンドルを切れない。交差点をそのまま通り過ぎてしまった。

ああっ、またかよ。

また戻って来るのに昌平橋通りや神田淡路町までぐるぐる回る羽目になった。
くそう、なんてビビリなんだ、おれ。カッコわるすぎる。やるって決めたのに。宣言したのに。なんでやれない。

(なんした、やれないのトモヒロ!) 

ああ、嫌な声を思い出させるな。
うっせえすっ込んでろ、ババア。

行く手に交差点が見えた。

soukou.jpg

よし今度こそ。
アクセルに乗せた足を踏みしめて──
  


のつもりが、ああっ、また。

まただ、また通り過ぎてしまった。またやれなかった。
でも──ほっとしている自分もいた。

(やっぱりできないの、トモヒロ?)

だまれだまれ!

(トモヒロ、まいねだ、全然ダメ!ダメな子だ! さあ、10秒数えるよ、じゅう、きゅう……)

かぞえるな!かぞえるな!

(はち、なな……)
  

──秋葉原昼12時24分。2008年6月8日。

  

 最涯ての「10秒ルール」

1994年──、
mapaomori_conv.jpg
──青森青森市。
  
「…ろく、ごぉ、よん…」

母親が数えてる険しい声。険しい目。
K@11歳は口をぱくぱくさせる。焦れば焦るほど答えが浮かばない。

「にぃ、いち…、ぜろっ」

binta_02.jpg

母親ビンタ炸裂。
痛さに泣きそうになるけど泣いてもどうせ許してもらえない。

それがこの家の「10秒ルール」
  

母親は教育ママ。

それもとかがつく教育ママ。

K母は津軽半島の海沿いで育った。
才媛の誉れ高き少女時代。青森市一の進学校、青高こと青森高校に進学。
この寒々とした海
tugarhanto_01.jpg
がいやだったのかK母、北陸の国立大を狙った。
しかし運が悪かったか実力か、不合格。才媛、はじめての挫折。
  
K母はしぶしぶ地元の労働金庫に就職。
  
そこで出会ったのが3つ年下の同僚が、のちのK父
以下略で2人は結婚。やがてと3つ下のK弟が生まれる。

K父も高卒で、大卒に負けじとがむしゃらに働き、支店を束ねる管理職にまで出世した。

そんな高卒夫婦。大卒コンプレックスがはち切れんばかり。
とくにK母執念めらめら。

kamenoya_02#

「子どもたちは必ず大学へやるのよ!」

一家の激烈な「英才教育」が始まる。

学習塾、そろばん、スイミングと予定びっちり。
友だちの家に遊びに行くのも、もちろん家に呼ぶのも一切禁止。
男女交際禁止。
見ていいテレビは、「ドラえもん」と、
dora.jpg
  
「まんが日本昔ばなし」
etsuko.jpg
だけ。
  
K@5歳のとき、弟@3歳と2人でべそかきながら、数キロ離れたおじいちゃんおばあちゃんの家に逃げたことがあった。
じじばばが車で家まで送ると、K父が幼い兄弟を睨みつけ、憎々しげに、

「おばあちゃんの所に逃げても許されると思うなよ

以来、兄弟はじいさんばあさんの所にも来なくなった。
「息子の教育に口は出さないで」
K母は自分の親も突っぱねた。
  
jfranzen.jpg

作文や絵は提出する前に必ずK母検閲が入った。
K母が気に入らなければ何度でも書き直し。
基準は「先生ウケ」(とK母が思うもの)。
作文は消しゴム使用も許さない。1字でも間違えたらぜんぶ書き直し。何回でも何十回でも書き直し。
  
さらに、話題の「10秒ルール」

作文をねっとり添削するK母がとつぜん問う。
「この言葉を使った意図はなに?」
まあ答えられない。すると、10秒のカウントダウンが始まる。

10秒以内に「先生ウケする答え」を言えないと、
闘魂注入!
toukon.jpg

じゃない母親のビンタ
答えるまで10秒→ビンタ→10秒→ビンタ→以下無限
  
が真冬(しかも青森の)の雪の玄関先に薄着で何時間も立たされてることもあった。見かねたご近所さんが「もう許してやりな」と取りなしてもK母は頑として譲らず。
叱るときはK父母が2人してガミガミ怒りまくった。逃げ場なし怒られっぱなし。
 
その甲斐あって(?)は一応小学校の成績と「先生ウケ」はよかった。足が速くて元気で人気者。将棋クラブに陸上部。陸上では県大会まで行った。
kato_boy.jpg

たぶんピリピリした家なんかより学校の方がぜんぜん自由で楽しかったんだろう。

まあデキ杉くんな感じだから、
年賀状に「好きです」とか書いてくるませた女子もいた。
それを見たK母はすかさず激怒、

「恋愛は許しませんからね!」
  

年がら年中これじゃうっぷんも溜まる。人気者の反面、怒ったらイスを投げつけようとしたり、先生と言い争いまでしたりしたから、まあパーフェクデキ杉くんってわけでもなかった。
  
小学校の卒業文集。
kato_moji.jpg
K@12歳は書いた。

「もっといろんなことをしとけばよかった」
「こうかい先にたたず」

  

 アレは床でご飯を食べた

K@中学生の成績は鬼特訓のおかげでやはりトップ。クラスでは学級委員

部活はソフトテニスで頑張った。短距離走でも頑張った。
tnnis_02.jpgkakkeko.jpg

合唱コンクールで指揮者も頑張った。行事も頑張った。
gassho_02.jpg

そんな頃の先生の印象。
明るくて何事にも一生懸命な頑張り屋だった」

が、この頃の同級生たちからは、
「印象がなかった」「存在がなかった」「大人しい普通の」「目立たない

おい、いきなり空気化してるではないか。人気者はどこへ?

まさにの「頑張り屋」な行動は、K母の指示の下、先生ウケ狙い、内申書対策というわけだった。

  
で、この頃の一家はどうだったかというと、
kmenoya_01.jpg

家族の食卓で、K母がなにか怒った。
床に新聞を敷いて、K@中学生の皿のものをぶちまけた。

「そこで食べなさいっ」

K父K弟もそれを横目に素知らぬふりで黙々と食べる。
泣きながらK@中学生は床上の夕飯だったなにものかを食べた。
  
はそんな家で育った。


それから4年遅れて──、はるか遠く離れた場所で、
ある少女中学生として青春を送っていた。
  
  
 東京育ちのオー!マイキー!
  
1999年──、
maptokyo_kita_conv_conv.jpg
──東京都。

彼女のあだ名はいつの頃からかマイキー

マイキーというと、浮かぶのはこれなんだが。
ohmiky_2.jpg

しかしまあ彼女の人となりはまさにこのイメージまんまなんである。顔も実はけっこう似てる。いやまあこれは男の子のマネキンだけれども。
  
ついでに言うと、彼女の家族もまさにこんなイメージ。
ohmiky_1.jpg

そして奇しくも、マイキーもまたと同じソフトテニス部だった。
tnnis_01.jpg
ただしこちらは都大会準優勝の実力。

成績ずっと学年トップ級生徒会役員も経験。
  
というと、もそうだし、あのゴスロリ桃寿だってそうだったじゃん、であるが、マイキーの方は裏表なく健全印である。
  
さらに中2で各中学から1名ずつ選ばれる短期留学生として渡米。サンフランシスコでホームステイ
kinmonkyo.jpg

音楽好き一家で姉妹で子ども時代からエレクトーンコンクールの常連
organ_02#
  
両親は、賢くて素直な娘を愛し、伸び伸び興味と才能を生かす子育てをした。
おかげで伸び伸びすくすく大きくなったマイキーは、やがて「音楽」という道に目覚めるわけだが──。



 トップ進学校に合格した2人

さて、
ここまで4年違いながら、2人の人生はわりと似た経路をたどってきた。


1998年。
K@15歳は、K母の鬼指導の賜物で、県立青森高校に入学。
aomorikou.jpg
そう、K母の母校でもある県下一の伝統名門校である。
  
2002年。
マイキー@15歳は、東京都立日比谷高校に入学。
hibiyakou.jpg
そう、都立随一の伝統名門校である。
  

都内と地方とはちがえど、うわべはなんとなく似たエリートコース。

でも母親120%監修と、
今どき珍しいほどの理想的子育てをされたマイキーとは、そもそもプロセスと内訳がまったく違う
  
だから2人の少年少女の人生街道は、高校入学を境に、まったくちがう方角へと分かれていくんである。
  

目論見通りに息子を自分の母校に合格させたK母は鼻高々。
大学進学の夢を息子がはたすんだから。今に見ていて!
  
だがK母はまだ気づいてなかった。
優等生の息子は自分が操ってしつらえたもので、

ayatsuri_01.jpg  
本当の息子じゃないことに。
  

【つづく】 #03 「酒鬼薔薇聖斗と同い年なんだよ」
  

 【事件激情】
 *ネバダたん─“史上最も可愛い殺人者”佐世保小6同級生殺人事件 
 *狭山事件と「となりのトトロ」事件編 /うわさ検証編 
 *東電OL殺人事件 
 *借りてきた「絶望」。─殺戮ゴスロリカップルと毒殺女子高生タリウム 

  
関連記事
スポンサーサイト

| 事件激情 | 18:15 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

お~、操り人形っ子だったんですね。
自分の足であっても足でない自分の手であっても手でない、
そういうのって想像しただけでもストレス充満するのが理解できるよ。

今でこそ学歴は関係ない時代に入ったけど、少し前までは学歴信奉者はいたんだね。
それにしても父母はスパルタ過ぎ!
人間が壊れるだろうと思わない親は、勉強はできても頭が良いとは言い切れないな。

| かあたん | 2010/06/20 00:02 | URL |

Re: タイトルなし

> かあたんどの

> そういうのって想像しただけでもストレス充満するのが理解できるよ。

小学生はバカだからそんな変わらないだろうけど、自尊心が芽生える中学時代まで全否定され続けるとかなり心が縮小するでしょうねえ。
彼はそれをずーーーーーっと引きずって反抗期未満で最後までいきました。

ポイントは両親が(不本意に)高卒、という点でしょう。だからこそよけいに学歴信仰が強かったと思われ。まあ親が自分の出来なかったことを子どもに託すとたいていロクな結果にならんのですが。子どもはべつに親のやりたかったことなんてやりたいと思う理由ないわけだし。

> それにしても父母はスパルタ過ぎ!

たぶん父母の父母たちも似たよーな子育てしてたんじゃないでしょうか。そうでなけりゃ10秒ルールなんてサディステッィク行為は思いつきません。子どもはいい迷惑ですが。

|  noriaky231(仮名  | 2010/06/20 15:54 | URL |

ほーほー。フクロウの声。

どこまで創作なのか事実なのか分からんが、まあ背景にある教育熱心な母親の影響というのが実はあの事件の背景にあった、なんてことなら、単純に事を格差社会に還元して語る人々は浅はか、というわけだの。

実際、事件をテレビなどで伝える場合、その切り取り方には色々あるはずなのに、時々の分かりやすい構図を交えたバイアスがかかってしまうのが常。昔なら教育ママと挫折したその子供の行く末、っつぅストーリーで語られたかもしれないってことかのぅ。

物事を一面で判断する事の怖さを汁。ずずず。

| あ@も | 2010/06/20 18:04 | URL |

Re: タイトルなし

> あ@もどの

> どこまで創作なのか事実なのか分からんが、まあ背景にある教育熱心な母親の影響というのが実はあの事件の背景にあった、なんてことなら、単純に事を格差社会に還元して語る人々は浅はか、というわけだの。

会話だのは多少変わってるけれども、基本的に母親とのやりとりも含めて出来事や行動は、別口の情報ソースが2つ3つ以上ある事実のみ採用ですな。そのへんの見分けがややこやしい。もーほんとデマいっぱい。

親子関係の話はまーウケが悪いんで、マスコミとして「煽りやすくておいしい」方の格差社会の話にかき消されてしまったようで。
(まあオタクのゲームとアニメとネットのせい、で終わるよりはよかったけれども)

>
> 時々の分かりやすい構図を交えたバイアスがかかってしまうのが常。昔なら教育ママと挫折したその子供の行く末、っつぅストーリーで語られたかもしれないってことかのぅ。
>
> 物事を一面で判断する事の怖さを汁。ずずず。

親子関係のみが原因ではなく、かといって格差社会やトヨタや経団連だけが原因でもなく、本人の性格だけでもなく、いろんな面がなければ事件なんて起きなかったと思うんだけれど、
なぜかそれぞれの媒体では、そこの推奨する一面でしか語られない。

まあくれぐれも複眼で行こうというわけで。

|  noriaky231(仮名  | 2010/06/20 20:07 | URL |

お母さんは息子を愛していたのでしょうか。
問われれば愛すればこそ、息子のためを思えばこそと答えるのでしょうね。。。。

こういう人、知ってます。。。

もののけちゃんに似ている。。。。。

| 志龍 | 2010/06/28 20:18 | URL |

Re: タイトルなし

> 志龍どの

> 問われれば愛すればこそ、息子のためを思えばこそと答えるのでしょうね。。。。

おかあさんは自分ラブだったでしょう。そこを巧みに息子愛にすり替えて、と。
もう少し後の話になりますが、弟の方でも失敗してしまうのです、このおかあさんは。

> もののけちゃんに似ている。。。。。

そうですか…、えっ( ̄□ ̄;)

|  noriaky231(仮名  | 2010/06/28 21:50 | URL |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://nornie.blog70.fc2.com/tb.php/61-7adc9002

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT