【事件激情】ウルトラNW 第42便【9.11 THE MIDNIGHT】








【事件激情】ウルトラNW 第42便【9.11 THE MIDNIGHT】

アメリカ生まれ
おれはアメリカで生まれた
アメリカ生まれだ
おれは長く生きすぎた男さ
こんな国アメリカで
──ブルース・スプリングスティーン「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」

“ワールドトレードセンター1も完全に崩れ去りました!
残っていたもうひとつのタワーも崩壊しました”

登場する事件テロ紛争戦争、その捜査活動は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子はじめこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりも、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。




─


「はあはあひいひいふうふうはあはあ」

「ちょっとシルバー、遅いよ!」

「も、もう限界れす、ミスシラトリ」

「しゃーないなー。毛穴まで砂埃詰まりそうだし、タクシーつかまえよっか」
「さすがに今はタクシー走ってないんじゃないですかね」
「あっ、いるじゃん」


「ヘイ! タクシー!」
キキーッ



ズザザザーーーーーッ
「わっ、ミスシラトリ、タクシーじゃないですよ、あれ」


バムッ

「あ、あれ? 間違えたっぽい?」
「……すごく怒った顔でこっち来ますけど」


Over Louisiana
ルイジアナ州上空

ゴオオオオオオオオオオオオオ

ようやく護衛のF-16がエアフォースワンに合流する。

「うわー、せんとうきだー」
ブッシュは一刻も早くホワイトハウスに直帰したがってさんざんごねたんだが、
国防長官経験者でもあるチェイニー副大統領はブッシュをネブラスカ州オファット空軍基地に放り込むつもりだった。そこなら核戦争に備えた地下戦略コマンドセンターがあるんで、安心安全かつ情報通信事情も心配なくなるからで。

だがハイジャック疑惑の航空便がまだ何機か空にいるのに、護衛機もなしにネブラスカ州まで飛ぶのは危険すぎる!という側近たちの判断で、エアフォースワンはまず近場のルイジアナ州バークスデール空軍基地へ向かってそこで燃料補給、その間に通り道の護衛態勢を立て直すことになった。
am10:32
午前10時32分──
Rome, New York
NEADS : the Northeast Air Defense Sector
ニューヨーク州ローマ
NEADS@北東空域防衛セクター


「防空管区指揮官(チェイニー副大統領)は、ターゲットが
指示に従わない場合には、撃墜を許可すると宣言した」
ようやくいちばん知るべき相手に撃墜許可が伝わった。

「副大統領からの命令を伝えたか? 副大統領が迎撃を許可」

「もし応答がない場合には撃墜を許可すると、
CONR CC(米本土防空司令部)に指示した」
遅っせーよ。
何もかも。
am10:53
午前10時53分──

U.S. Department of Defense
国防総省
National Military Command Center
NMCC@国家軍事コマンドセンター


“ダブルテイクよりラウンドハウスへ移行”

“ダブルテイクよりラウンドハウスへ移行”

ようやく「ケガ人を介抱する一般人」をやめて本業に戻ったラムズフェルド国防長官、
これまたようやく思い出してもらえたマイヤーズ統合参謀本部副議長の提案を受け、

“ラウンドハウスへ移行した”
全軍に「デフコン3」発令。

Defconデフコン──Defense Readiness Condition
直訳で「防衛準備状態」
5段階のレベルに応じて米軍各部隊がどやどやと戦争準備にかかる。
5(フェイドアウト) 安心安定の平常運転
4(ダブルテイク) 警戒せよ
3(ラウンドハウス) 厳戒
2(ファストフェイス)防衛準備かかれ
1(コックピストル) 総攻撃の命令待ち
見りゃ分かるとおり数字が減るほど全面熱核戦争に近づく。



「2」は1962年キューバ危機と1991年湾岸戦争@中東限定の2回だけ。
“コックピストル
“撃鉄をおこす”こと「デフコン1」が発令されたことは過去まだ一度もない。
デフコン3ですら、四半世紀ぶりの最高モード。
1973年ヨヨムキプールウォー
1973年第三次中東戦争の最中、ソ連の核弾頭がエジプトへ運ばれる途中で発見、在欧米軍が臨戦態勢に入ったとき、そして1976年朝鮮半島38度線で米兵が北朝鮮兵に殺害された【ポプラ事件】で朝鮮半島限定発令以来、史上3度目のデフコン3である。

この日おきたのはあくまでテロで敵国の武力攻撃じゃないんだが、陸海空軍を総動員して本土防衛する場合、手っ取り早いからって理由のデフコンレベル上げである。
だが、彼らはすっかり忘れていた。
そもそもデフコンがなんのためにあるのかを──

「国務省、国務省、“ラウンドハウス”だ。国防総省がデフコン3を発令した」
Richard A. Clarke
National Coordinator for Security, Counterterrorism
リチャード・クラーク
対テロ調整官


「デフコン3が発令された。これがなにを意味するか分かるな?」
“んんん?”
Richard Lee Armitage
US Deputy Secretary of States
リチャード・アーミテージ
国務副長官


“おおっ、そうだ! ロシア人か! やつらがはっちゃける前に教えといた方がいいってことだな。いっちょNRRC*にひとっ走りしてモスクワに知らせてくる”
*NRRC : 核危機削減センター Nuclear Risk Reduction Center
国務省内のNRRCにはモスクワのロシア国防省に直でつながるホットラインがある。万一行き違いがあったときのセイフティーネット、米ソ冷戦時代の名残である。
Jane Garvey
Administrator of the US Federal Aviation Administration
ジェーン・ガービー
FAA@連邦航空局管理官


“まだ空にいる航空便は390機に減りました。しかしアラスカ方面で問題発生”

“アラスカ管制セクターによるコリアンエアライン
“アラスカ管制セクターによると、大韓航空85便の交信内容からハイジャックの疑いがある。NORAD@北アメリカ航空宇宙防衛司令部がスクランブルをかけます”
Anchorage, Alaska
Elmendorf Air Force Base
アラスカ州アンカレッジ
エルメンドルフ空軍基地


“F-152機スクランブル、大韓航空85便迎撃に向かう”

「85便は地上と交信できているんだな。では戦闘機の指示命令に従わなかった場合、無警告で撃墜すると管制官から伝えるんだ。絶対にプルドー湾上空に近づけるな。カナダ政府に領空での撃墜の許可を求めろ」
プルドー湾にはアメリカ有数の大規模石油輸出港がある。
Prudhoe Bay, Alaska
アラスカ州プルドー湾



“コーストガード
“沿岸警備隊の命令で、石油タンカーは緊急出港、湾外に出ます”
“アラスカ州知事が州都アンカレッジの主要ビルに退避命令を出しました”

“ふう、モスクワに一報入れてきた。いやーマジやばかったぜ”

“あちらさんは戦略核全力発射のカウントダウン始めてたわ”




ワールドトレードセンターツインタワーとWTC3@ホテルマリオット崩壊のあおりでワールドトレードセンター村の残るWTC4、5、6も次々と炎上。

しかもタワー倒壊にともなう強烈な縦揺れ地震で地下消防用水道管が破断。ノーウォーター状態で消防隊はお手上げ、もはやブロック全体大火災に。

さらにビージーストリートを挟んだ120m北側に建つワールドトレードセンター7@47階建てのもらい火もとんでもないことに。こちらも縦揺れ激震でスプリンクラーが破断したせいで、早期鎮火に失敗し、

火の手は上層階へと這い上り、WTC7ビル内部を灼き続けた。

“マンハッタンのすべての橋とトンネルは封鎖されています”
“マンハッタンに渡ることはできません”

道路は警察、消防、救急しか走らず、北方面へ逃れようとする市民の群れが黙々と歩く。自動車通行止めの大橋にも無数の人々があふれた。

Murray Hill, New York
ニューヨーク マレーヒル

キキッ


「ありがとうっミスターポリスマンッ、ご恩は一生忘れませんっ」

「おおユリコ、無事でよかった」

「おおユリコ、無事でよかった」
「えっ? 大事なことだから2回言ったの?」
「2回じゃなくて、おれたちは2人で1回ずつ言ったのだ」
「もうホッコリだらけでさー。ここシャワールームってある?」



「おや? コールマンが一緒と言ってなかったか?」
「え?(゚∀゚;) あっ、あー、ダンはちょっと遅くなるって」

「そりゃねえ、1人分しか席空いてないって言われたら
ミスシラトリが乗るのは当然だけどさあ、でもさあ」

「そうだ、オニールは? 避難して無事と聞いたが」

「………あとで話す」

「ユリコ、無事でよかった」
「バリー、あなたも」

「例の回線の件、どうなりましたか」
「フェデラルプラザのケーブルは当分ダメだ。ベライゾンの交換センターがあの崩壊でやられたらしい。幸いこの施設のケーブルは生きてるが、同期させるのにあと半日はかかる。通信技官たちが総掛かりで取り組んでる」


「しかしこの回線は何に使う? 今度は何が始まるというんだね」
「始まる? いえ、まだ終わってませんよ、継続中です。オサマ・ビンラディンの計画はこれからです。急がないと大変なことになります」

「まさか航空機テロの第二波があるというのか?」
「いいえ、アルカイダにそこまでの余力はないですから、ビンラディンのターンはこれで終わりました。次はアメリカ側のターンです」

「でもまさにそれこそがビンラディンの本当の計画なんです」
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