【事件激情】ウルトラ : 19機目【911アメリカ同時多発テロ】






「超法規的措置で出国する釈放犯が、
ダッカへと向かう日航機に搭乗しています」

「つぎは、大道寺あや子です」

「連続企業爆破の東アジア反日武装戦線、大道寺あや子が、」

「いま警備と報道関係者の列の間を通って機内へ──」












「姓は大道寺のままでよかったんだっけ」


「あや子さん、お久しぶり」

「……驚いた」

「あなた、あのときとぜんぜん変わってない」

「あや子さん、あなた、あのときと……」

「………逃亡生活って早く老けるんだね」
「ಠ益ಠ 」

「わたしを逮捕するの?」
「んー2年ほど前からここ中華人民共和国だから」

「まあせっかくだから旧交でも温めようとか思ってさ」

「旧交って、2回しか会ったことない、それも公安デカと?
しかも会話らしいのはあなたがわたしのアパートに聞き込みのふりして来た1回だけで、それもほんの2、3言だけ。2回目は空港で一瞬すれ違っただけ。なのに?」

「と言いつつ、あや子さんも回数言えるくらいには覚えてるようだし。いいじゃん」

「あなたがJRAジャパニーズレッドアーミーを追う任務についてるのは知ってた」

「ペルー、ネパール、ボリビア、ベイルート──
あなたの差し金で同志たちが何人も捕らえられた。
我々に勝ったと思ったから会いに来たんでしょう?」

「なんであんな伝言託したんだろ、公安デカなんかに。わたし、どうかしてた」

「あなたも一体何なの。あんな話を真に受けてこんなとこまで来たの?」

「………勝ち負けとかどうなんだろ。よくわかんないな、仕事だから」

「ただわたしは、追う追われる抜きにして、
あなたと会って話してみたかったよ」

「でもさあ、いざこうなってみると、
あんま話すことないよね、わたしたち。今さら気づいてなんだけど」

「共通の話題といや赤軍か東アジア反日武装戦線くらいしかないけど、ほら、あなたは公安デカとそんな話したくないだろうし、わたしもどこまで情報を持ってるか教えるようなもんだからうかつに話せないし。
と思えば場所もさあ、せっかくだからもうちょっと絵になるとこにすりゃよかったかな。ビルの屋上とか崖とかもちろん断崖絶壁で下は海ね」

「ま、そういうことだから、顔もひさびさに見たし、帰るね。
お邪魔でした。次に会うときは、成田行きの便でご一緒しましょう」

「あなた、あのことを訊かないで行くの?」

「なぜあのとき、わたしがあなたを見て笑ったのか」

「なぜ訊かないの?」

「ずっと気になってたくせに。知りたくてたまらないくせに」

「だからわざわざここまで会いに来たくせに」

「そうだね。
たしかにあの日からずっと──、じつはほんの3分前までそのつもりだった、
けど、うん、」

「もう───いいや。それじゃ」

「さよなら」
──バタン
大道寺あや子、1999年の一時期、香港に滞在。
このとき、最高指導者 重信房子と接触した形跡がある。

あや子の国際指名手配書には、長らく最初の逮捕当時の写真が使われていたが、
2010年に、1994年撮影のものへと差し替えられた。


大道寺あや子、2014年現在も国外逃亡中。
南米に潜伏、とされる。

「それでマイケルホイとユンピョウがですね……
あ、バレました?
はい、会ってきました、つい今さっき」

「どうだったって、んー、なんていうんでしょうね」

「歳月というものの残酷さと、劣化せぬ奇跡の我が美貌を実感しました。
へ? いえいえわたしが超絶美女なのは事実ですからしかたないですよ。
でも、

なーんか変なんですよね。
これですっきりさっぱりするかと思ってたのに、
ちっともしやしない。
なんだろ、この感じ。

「一生懸命解いていった夏休みの宿題が、
ちがう学校の宿題やってましたアホですかみたいな」

登場する事件テロ紛争戦争、その捜査は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子はじめこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりは、根拠は創造にしてソースは妄想である。




「アフリカの大使館同時爆破テロのリーダーだったモハマド・オデイは、2年前からインド洋沿岸の町モンバサで魚の卸しをして暮らしてました。そのあいだ──」

NSC Secretariat : Eisenhower Executive Office Building
アイゼンハワー行政府ビル NSC事務局 *手前はホワイトハウス
2階建ての小さなホワイトハウスに2000人ともいわれる直属スタッフ大統領行政府がぜんぶ入るのは無理なんで、副大統領オフィスやNSC@国家安全保障会議事務局、行政管理予算局は道を挟んで西隣のアイゼンハワー行政府ビルにある。
で、ホワイトハウスとアイゼ以下略ビルの2つセットで大統領官邸である。

「ジハード主義や反米活動家のようなそぶりはチラッとも見せてなかったそうです」
Richard A. Clarke
リチャード・クラーク
@NSC 対テロ調整官

「彼はつまりスリーパーだった」
「はい、アルカイダの構造はこのスリーパーとセルを組み合わせたものでしょう」
John P. O’Neill
ジョン・オニール
FBIニューヨーク支局 主任特別捜査官(SAC)
@国家安全保障担当

「ちっ、面倒くさそうなのばかりわいてきやがる」
Dale Watson
デール・ワトソン
@FBI副長官補
@対テロ・防諜本部長

「セル…“細胞”か。昔のレジスタンスや左翼都市ゲリラが使ったようなやつだな」
「はい、アルカイダのはもっと手が込んでますけど。
ここから先は少ない情報を元にしたわたしの推論混じりですけど、たぶん当たらずとも遠からずだと思ってます」

アルカイダは上意下達のピラミッド式ではなく、コア@ビンラディンら最高幹部たちを中心に複数のセルがゆるく結びつくネットワークです。各セルはそれぞれ独立した数人から10数人の小グループだったりします。

そういうセルが世界規模で重層的につながってるのがアルカイダの構造だと思います。




実行役(オペレーション)セルはサポート役(インフラ)セルの用意した輸送手段や資金や武器を使い、テロを行います。大使館テロのアリー・モハメドのような偵察や情報収集に特化したセルがいる場合もあるようです。
サポート役のほとんどは現地で暮らし、ふだん眠っている「スリーパーセル」でしょう。中にはテロの片棒を担いでるのも知らず、頼まれるまま実行役にアジトや交通手段を提供するだけの無自覚なスリーパーもいると思います。

実行役とサポート役は連携しますが、互いに深いリンクはありません。
サポート役は相手が何者でなんのためにサポートするのか知らない。
ビンラディン側近の幹部クラスですら自分の担当外のセルの具体的な動きは知らない。

セル内部も同じで、各メンバーには活動に必要な情報しか知らされず、
セルのリーダーだけがコアや他のセルと連絡をとれる。
例外もありますが、同じセルのメンバーは血族や同郷、同氏族で結ばれています。

「アルカイダ内部に協力者を確保しにくい原因のひとつがこれですね」
当局のスパイになるのは、組織を裏切るだけでなく、同じセルの親兄弟や同郷の仲間まで裏切ることになりますから。

だからあるセルを特定してもそのセルひとつを潰すことしかできません。

セルの構成員を洗い出し、一人ひとりを辛抱強く監視し、

誰がセル外とのリンクなのか、接触してるのは同じセルの仲間なのか他セルのリンクなのかコアとじかにつながるハブセルなのか、利用される無自覚の第三者なのか。結節点をたどってひもといていかなければなりません。

それにはうんざりするほどの時間と人員が必要になります。
悠長にやってるうちにテロを実行されたら元も子もない、厄介なシステムです。
逆に攻めどころは、こういう構造のせいで、結節点や方面リーダー級のセルをつぶすと回復まで時間がかかる、というあたりでしょうか。
テロ実行の直前に要となるセルやリンクをひそかに機能不全に陥れる、
これがテロを阻止する最後の手段です。
ただそれを見越して交替要員が用意されているか、同じ役割を果たすミラーが同時進行してる可能性もあるので確実とは言い切れませんけど。

「もうひとつのウィークポイントが、彼らが習慣的にムスリムコミュニティのモスクやNPOを、セル同士またはセル内の接点に利用しているところです」

「おっしゃ、なら全米の怪しいモスクをガサ入れして、
そのスリーパーやらセルやら日干しにしちまおうぜ」

「そう簡単にはいかんぞオニール、FBIのロゴ付きジャンパーで大挙モスクに押しかけてみろ、まちがいなく人権問題になる」

「なんだワトソン、テロで死ぬ犠牲者の人権より大事だっていうのか!」
「極論を言うな。ニューヨークのようにテロ捜査に慣れた支局ばかりじゃないんだぞ。連邦地裁や検察にしても捜査令状を出してくれるか危ういくらいだ。
君も知らないわけじゃないだろう」

「ぶー」

「原理主義のモスクが全米で増えているらしいが、各支局の認識はその程度なのか」
「テロリズム部門は長い長い冬の末、ようやくFBI本部内で市民権を取り戻しつつあるところでね。支局によってはまだ露骨に継子扱いだ。イスラムジハード主義対応のリサーチに取りかかってるが、現状では望み薄だろう」
「しかし危険なテロリストの温床が野放しの状態を放置するわけにもいかん」
「FBIの体質的な問題でね。支局は半独立国のようなもので、本部の命令一下、一斉に回れ右してくれればいいが現実はそうではない」

「そこでひとつアイデアがある。私とクラーク、ミスシラトリで各支局支部を回って現状を調べ、それから各責任者にカンフル剤として恐怖感を植えつけてもらえないだろうか、いつぞやのミスシラトリの恐怖模擬演習のような演出付きで」
「 ↂ‿‿ↂ は?」

「それはいい。ユリコ、私からもお願いしたい」
「ↂ‿‿ↂ; えっ」

「えーっ、わたしFBIじゃないですし。そもそもアメリカ人ですらないですよ? それにわたし顔に貫禄ないっていうかバカにされて本気で聞いてもらえないんじゃ」
「ミスシラトリはバカにされて黙ってるタマではなかろう。
おや、それともやはりできないと?」

「でき………」

「……わたしを黙らせたの、あなたが初めてです、ワトソンくん」
「私も初めて見たよ」

「それは光栄だ、ミスホームズ。協力感謝する」

「ったくしかたねえな、おれも忙しいが時間捻出してやるぜ!」
「オニールは来なくていいよ」

「なんでだワトソン! 部外者のシラトリには頼むのに!」
「君はニューヨーク支局のSAC(支部長級)じゃないか。話もややこしくなるし」

「ユリコ、君の信仰について聞いてもいいかな、差し支えなければ」
「構いませんけど、なぜそれを?」

「君は日本人だからかな、宗教を非常に冷徹に観察しているようだ。イスラムに限らず、ときにキリスト教に対しても。ときに無神論者と思えるほど」

「そうですね。んー、じつはこの秋、わたしの恩ある人が病気で亡くなったのですが」
「それは知らなかった、その人の冥福を祈る」
「ありがとうございます。それでわたしは仏教式で行われたその人の葬儀に参列しました。最後の火葬の段階しか間に合いませんでしたけど。
の一方で、つぎのクリスマスイブにはメリークリスマスとか言って酔っ払うでしょうし、その次の週の大みそかには──こちらのニューイヤーズイブですけど、寺院から聞こえる除夜の鐘を聞きながら、初詣で神社に行ってお参りするでしょうね」

「ジョヤ? ハッモーデ?」
「するとわたしは仏教徒でクリスチャンで神道の氏子──あり得ない掛け持ち信仰してることになりますね。それって当たってるし間違ってもいるんです。

外国の人たちからは日本人は無宗教に見えるようですし、
日本人でさえそう思ってる人は多いですけど。
そうじゃなくて、聖なるものへの立ち位置が少しばかり違うだけだと思うんです。
わたしの宗教の見方が変に見えるのはそのへんじゃないですかね」

「ま、今日はシラトリがみごと論破される痛快な場面を見られたからよしとするか」
「その言葉そっくりそのまま、ぶーとかくわっとか言わされてた人にお返ししますよ」

「あれ?」

「ジェニぱん、こんにちわ。どうしたの、こんなとこで?」

「ジェニ言うな嫌いやめて。ってかなんで『ぱん』付いて進化してるのよ!」
「いやいや女子アナ(リスト)だから、“ぱん”はついてないとさ」
「日本人わけわかんないわよ!」

「ともかく! あなたを待ってたの」

「へ、わたしを?」
「カン違いしないで! わたしが会いたくて積極的に待ってたんじゃなくて、ショワー主……前主任のメッセージを伝えるよう言われて事務的にしかたなくだから。
じゃあ言うわよ、瞬時に帰るからわずか1回しか言わずただちに帰るから」

「“認めたくはないが、我々がインテリジェンスだと信じていたものは時代から置き去りにされつつある。ミスシラトリのやりかたは、この国のどのアナリストともちがう独自のものだ。次世代のインテリジェンスのヒントになるかもしれない。
そこで、図々しいお願いとは承知のうえだが、

ミスシラトリの情報解析法を、教えてやってくれないか……………
………(12秒の沈黙)……ジェニファー・マシューズに”」


「あっあっ、今のわたしの意見じゃないからね! あくまで伝言だから!」

「わたしはあんたなんかに媚び売る気も真似するつもりもさらさら無いし!
ショワーの顔を立てていちおう伝えただけだからね!」

「あんたは断らないはずだ、ってショワーは言ってたけど、んなわけないよね。あんただって自分の手口を人にバラすなんてイヤでしょそうでしょ?」

「だから、さ、今すぐ断っていいから、というかスパッと断って!
ね、その方がお互いのた──」

「ミスターショワーに伝えてください。
大切な愛弟子を預けてくれて光栄です、頑張らせてもらいます、と」

「め?」

「ほんとお役に立てればいいけどね。まあジェニぱんならコツさえつかめば、何回かおさらいしてあとは経験重ねてなんとかなるんじゃないかな」
「ちょっ」
「ただこういう教えるっての、わたしぜんぜん得意じゃないからさ」
「まっ」
「そのへんはジェニぱんの賢さで理解してね」

「ちょっと! イヤよわたしは!
なに快く引き受けてんのよ! 断りなさいよ!」
「えー、だったらジェニぱんがショワちゃんに断ればいいじゃん」

「それができたら来てないわよ!」

「ふふふ、しかしショワちゃんめ、憎いとこ突いてくるなあ。なんだかんだいって同類相哀れむか、あれ? なんか使いかた違ったっけ?」
「ちょっと! わたし本人の頭越しになに勝手に2人で分かり合ってんのよ!」
「じゃ、よろしくマイパダワン」

「わたしはイヤ! 絶対イ・ヤ・だ・か・ら!」
「じゃあせっかくだからランチ一緒に食べてから、とすると」

「とりあえず来週のスケジュールなら融通きくけどジェニぱんはどう?」
「なにサクサク進めてんのよ! てかジェニぱんって言うな!」
「しかたないなあ、じゃパダワン」
「なんで選択肢その2つしかないのよ!」

アフガン北部同盟との共闘はポシャったものの、
CIAはビンラディン退治をまだあきらめておらず、

こんどはパキスタンのISI@三軍統合諜報局と連携。
事実上タリバーンの生みの親であるISIを半ばなだめすかして半ば脅して、共同ビンラディン退治作戦をなんとか立ち上げる。
パキスタンはなーんだか裏表ありすぎて完全な味方としては信じ切れないものの、
タリバーンの生みの親かつビンラディンとも縁の深いISIが協力するからして、じつはこれまでの対ビンラディンでいちばん成功しそうなプランだった。
ところが、まあこれまた運命の歯車っつうか、
Tuesday 12. October, 1999
1999年10月12日 火曜日
ヒジュラ暦 1420年 ラジャブ月 15日目

【パキスタン無血クーデター@1999】
もはや建国以来何回目だよのクーデター。
独立して初の政党政治あえなく終了。

軍事政権トップにおさまったのはムシャラフ陸軍参謀総長兼参謀本部議長。
おーそろそろ911がらみのニュースでなじみの面々がそろってきた。
この人、もともと宗教色の薄い近代化志向の穏健派で、きほん親米なんだけども、

この政府転覆劇、CIA的には最悪のタイミングで、
なにしろISI長官のブット中将@前首相派もクーデターでクビになっちまったもんだから、とうぜんISIとCIAの共同作戦もペンディングに。
さらにアメリカは「自由主義の旗手」っつう立場上、クーデターを歓迎するわけにもいかず、
>米パの関係は急速冷凍され、共同作戦なんて無理ってことに。
911前のアメリカがオサマ・ビンラディンを仕留める最後のチャンスだった。

なんて言ってるうちに1999年終盤──

怒濤の展開でテロの不安感がふくれあがっていく。
というのも、まずふつうに1999年>2000年の年末年始であるうえ、
さらに、20世紀>21世紀の新世紀、
さらにさらにミレニアム@新千年紀、
さらにさらにさらにカトリックの特別年でもあり、

ってことで、世界中のキリスト圏(と、なぜか日本)で、ひときわ賑々しくニューイヤーイベントが開催される予定である。

さらにさらにさらにさらに、Y2Kこと、2000年問題まで。
Y2Kとは、コンピュータプログラムで西暦が下2ケタで入力されてきたことから、
1999年「99」から2000年「00」になる瞬間、

>バカなシステムが「00」を西暦1000年と誤認、>バグ発生>

>電脳内時計オールリセット>同時多発致命的エラー、>

>全世界的なエネルギー水食糧金融交通軍事その他インフラありとあらゆるところで連鎖的システム障害になるんじゃないか、>全人類的大パニックになるんじゃないか、>
>文明崩壊>北斗の拳の世界ヒャッハー!! 水だ水だー!! !
だいたい西暦が次のケタに繰り上がるのなんて最初からわかってんだから、そもそもそんな風につくりつづけんなよ、なにやってんだよ、であるが、

なにより怖いのは、それがじっさい起きるかどうか専門家でもよく分からんし、もし起きたらどのくらいの規模のシステム崩壊と大被害になるか予測もつかねえ、
という大自然の脅威といわんばかりの人災なのに無責任な予測不能さで。
例年より大々的なミレニアムイベント、Y2K発システム障害、新世紀なるキリスト教の象徴的な瞬間をねらうミレニアムテロもしくはそのぜんぶ乗せという最悪予測が、
今そこにある(っぽい)危機になってきたんである。
12月に入ってさらに「(っぽい)」が抜けるヤバげなかんじに──

Sunday 12. December
12月12日 日曜日
ヒジュラ暦 1420年 ラマダーン月 4日目
عمان، المملكة الأردنية الهاشمية
Amman, Hashemite Kingdom of Jordan
ヨルダン 首都アンマン

ヨルダン当局、パレスチナ過激派ふくむアルカイダメン15人一気逮捕。

新年早々にアンマンの米資本ラディソンホテルや観光名所を同時爆破する計画、
「ミレニアムアタック」が発覚。
中東においてアメリカ当局といいかんじにウィンウィンのパートナーなのは、
イスラエルのモサドやら、サウジアラビアの総合情報庁やら内務省やら、同盟国のくせに隠しごとも背信も多すぎでまーたく信用ならん連中ではなく、

دائرة المخابرات العامة المملكة الأردنيّة الهاشميّة
General Intelligence Department : Hashemite Kingdom of Jordan
GID@ヨルダン総合情報部
、である。FBIやCIAと積極的に連携、
しかも治安機関的にも国王直属で権限大きく勤勉でかなり優秀。
今回もフロリダで捕まったアルカイダの物資調達係から、FBIが司法取引で小ネタ情報を入手、それを知らされたGIDが粘り強くたどって、

アルカイダ幹部とアンマンにいる実行役リーダーの通信を傍受、逮捕にこぎ着けた。
白鳥のいうセル複合体を地道にたどって突き崩した形である。
さらに──
Tuesday 14. December, 1999
12月14日 火曜日

The border between United States and Canada
アメリカ─カナダ国境
カナダ ブリティッシュコロンビア州ビクトリア発
▼
アメリカ ワシントン州(まぎらわしいが首都ワシントンからはぜんぜん遠い)
ポートアンゼルス着のフェリーの税関、

「止まれ!」
アルジェリア系カナダ人「ミレニアムボンバー」ことアーメド・レッサム逮捕。

クライスラー300Mセダンのスペアタイヤ収納スペースに爆薬60キロを隠してフェリーでアメリカに運び込もうとしていた。
さらにレッサムの持ってたメモから、仲間がニューヨークに潜伏してる疑いが。

FBIニューヨーク支局の国家安全保障担当主任特別捜査官ジョン・オニールと特捜班、
ブルックリンにあるアパート監視の結果、>

>レッサム一味のアルジェリア人を逮捕。
あわせてカナダ当局もモントリオールで一味を逮捕。

レッサム一味の目的はミレニアムにあわせたロサンゼルス国際空港の爆破だった。
今回のミレニアムボンバーは、アフガンの軍事訓練キャンプ経験者だったけども、原理主義者どころか宗教色は薄め。アルカイダかというと微妙。
レッサム本人は窃盗常習のインチキ難民で、一味もレッサムが周りにいるボンクラ連中をそそのかして集めたなんちゃってセルだったし、アフガニスタンに電話してビンラディンのお墨付きをおねだりしたけどもあっさりスルーされたらしく。

こんなかんじに世界各地で「アルカイダ」を名乗る小グループがタケノコのようにつぎからつぎに現れる。アルカイダの子会社的なグループもいたが、ただアルカイダ言いたいだけやろって勝手連っぽい連中もいて。
メディアはこういうやつらも「アルカイダ系」と表現するようになる。
──というように1999年末、こういう物騒な連中がこぞってアメリカを目指し、水際ではね返す冷や冷やのテロ阻止劇が世界各地でくり広げられてたんである。
さらにさらに──

クリスマス週間直前、CIAが大慌てで警報を発する。
じつはヨルダンで12日に捕まったアルカイダ一味のひとりが、
ボストンのタクシー運転手だったことがわかったんである。
つまり──
George J. Tenet
ジョージ・テネット
@CIA長官

「やつらの狙いはミレニアム前後のアメリカ国内でのテロだ。
すでに工作員が入国待機している可能性もある」




連邦政府の法執行機関、郡保安官、市警、州警、ハイウェイパトロール、
税関ポリス、沿岸警備隊コーストガード──
全米で18000もある法執行機関総動員で全米に展開。


「もちろん国立公園局パークレンジャーも」「スミソニアン国立動物園警察もだ」
さらに最悪展開に備えて緊急事態管理局も、
防災用品や医療救急班をいつでも空輸できるように待機。

──という狂騒状態のなか、こんなニュース↓も。

国連安保理@安全保障理事会、アフガニスタンを実効支配(政権として国際社会から認められてないんで)中のタリバーンに対し、
オサマ・ビンラディン一味の引き渡しを要求する安保理決議を採決。
なんでもゴネるロシアが珍しくアメリカと利害の一致、決議が通ったんである。
これにあわせて、対テロ調整官クラークがマスコミ取材に答えて宣言、

「今後アルカイダの対米テロはタリバーンの責任とみなして、タリバーンに報復する」
しかしすでにこのころアルカイダはタリバーンの貴重な財源かつ、ビンラディンとタリバーン首領ムッラーオマルの息子と娘が結婚、2人は姻戚になっていたから、もはやタリバーンが圧力に屈してアルカイダを切り捨てるなんて可能性ほとんどゼロ。
とうぜんながらタリバーンは安保理決議を激しく拒否、>例によって経済制裁、
──っつうニュースはあまりにも形式的かつ現場的に意味なさすぎて、
捜査網最前線ではたいして意識もされなかったが。
またこんなニュース↓も。

11月、サダム・フセイン大統領@イラクが石油取引決済通貨を、
ドルからユーロへと切り換え。

ハードカレンシーの雄ドル$・円¥(時々ポンド£)とタメを張るべくつくられた欧州通貨ユーロ€はこの年、電子決済限定で通貨デビューしたばかり。
が、これって石油取引決済はドルで、
という国際ルール(まあアメリカが決めたんだが)から外れた動きで。

国際基軸通貨ドル的にはあんまというかすごく面白くないのはたしかである。
それが“悪の枢軸”筆頭フセインによって行われ、しかもこの3年後、アメリカがそのフセインイラクを攻め滅ぼした、そのあとまたドル決済に戻されたってことをもって、

まあもっともらしい陰謀論の大風呂敷ひろげられるわけなんだけども、
それはまたべつの話。
さらにもっとローカルなニュース↓も──

ペルー大統領アルベルト・フジモリ、来春の大統領選で3度目出馬を表明。

在ペルー日本大使公邸人質事件 *【ウルトラ : 10機目】のあの人です。
まーこれだけ聞くとふーんって感じだけども、
問題はペルー憲法で大統領3選が禁止されてるってことで。
いろいろペルーん中で違憲だ合憲だモメてますわえ。
──っつうペルー周辺以外ではどうだっていいようなニュースもあった。
ただし、このフジモリ大統領の3選騒ぎとその顛末が──

「はい、いま空港です。あ、そうです、除夜の鐘と初詣です。
覚えてくれてたんですね、なんかうれしいな」
──まもなく白鳥百合子の身に思わぬ災いとなって降りかかる、なんてことは、

「ミスタークラークも、これからニューイヤーまで忙しいでしょうから、
まとめて挨拶しておきますね」

「メリークリスマス、ミスタークラーク。ハッピーニューイヤー、ディック」
──にやけてる白鳥本人はもちろん、まだこの世界の誰も知らない。


Christmas Eve, 1999
1999年12月24日 金曜日
「これまでの特別警戒により、さらに2件のテロが未然に防がれた」

「だがミレニアムねらいのテロがまだどこかで人知れず準備されている可能性は高い。このクリスマス週間はとくに危ないと考えるべきだ」

NSC@国家安全保障会議 対テロ調整官リチャード・クラークと、その上司にあたる国家安全保障問題大統領補佐官サミュエル・バーガー、
クリスマスイブ前から新年までの「クリスマス週間」の数日間、朝から晩までCIAかFBIの対テロセンターか、アイゼンハワー行政府ビル内NSCのY2K調整センターをあっち行ったりこっち来たりしつつ、国内外の対テロ態勢を見守ることに。

FBIも対テロ・防諜本部長デール・ワトソン副長官補の主導で、
全米支局で捜査官を動員して厳戒態勢を敷く。

CIAも長官テネット自らが同盟国友好国の治安機関トップに電話しまくり、
持ち前のグイグイで協力を取りつけ。

CIA Headquarters : Counterterrorism Center
CIA本部 テロ対策センター

ここもセンター長コファー・ブラック以下、

ジェニぱんはじめアレック支局の女子アナ(リスト)も連日徹夜。
海外のCIA工作員やら協力者やら総動員で、全世界津々浦々でテロリスト狩りを展開。

そのおかげでにロサンゼルス国際空港近くに住むアルカイダシンパを発見、
パキスタンに潜伏していたアルカイダメンも発見。

さらに、ボストンに入港したLNGタンカーの乗組員のなかにアルカイダメンが紛れ込んでいたが、けっきょく何もなく終わった。

そして──

New Year's Eve, 1999-2000
1999年12月31日 金曜日 ニューイヤーズイブ
ついに、ミレニアムのカウントダウン本番当日がやってくる。
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ジェニパン
最近、ジェニパンが気になって仕方ないです。若くて青くてカワイイなぁ
| こま | 2014/11/16 21:54 | URL | ≫ EDIT