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【事件激情】ウルトラ : 14機目【帝銀事件】

*13機目
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あなたに義侠心というものがあるなら
ぼくを医者へ案内して下さい

なるほどきみの言わんとする意味が
だいたい見当がつきました


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満州毒薬ばい菌をつかって大量殺人を研究する秘密部隊があった」



u14という 
「──という噂が大陸の一部で流れていた。だが単なる流言じゃなかった」

u14はるび 
ハルビン郊外に平房ピンファンという地がある。昭和13年ころ、関東軍がその一帯を特別軍事区と指定、満州人の村を立ち退かせ、6キロ四方を立入禁止にした。

そしてそこに何かが建てられた」

u14あんたは 
「あんたはそこで軍属として働いていた。
平房ピンファンで行われていたことについて教えてほしい」

「……情報の出所は秘密にすると保証してくれるなら」
「それはもちろんだ」

u14あそこにあ 
「あそこにあったのは関東軍防疫給水本部満州第七三一部隊とか東郷部隊とか石井部隊とも呼ばれていた。ぼくは部隊長石井軍医中将の下で働いていた」

u14もともと 
「もともとの任務は清潔な飲料水の供給と、衛生環境の向上、将兵感染症予防。大陸では病原菌の入ってない飲み水の確保が死活問題だったからね。
部隊の開発した濾過器はけっこう伝染病の押さえ込みに貢献したよ。

だからとうぜん予防のために、伝染病を研究もする。

だがそれとあわせて平房ピンファンでは、」

u14それとあ 
伝染病そのものもつくろうとしていた。細菌戦の研究だ」

u14けいじさ

刑事さん、あんたが平房ピンファンについて聞きに来たのは、
帝銀の件と関係があると思っているからだろう?

u14ぴんふ 
平房ピンファンには思想犯捕虜匪賊阿片中毒者スパイが回されてきた。
特移扱といって裁判手続きなしで移送されてきた連中だ。

u14しなじ 
支那人がほとんどだったが、ロシア人蒙古人、まれにアメリカ人もいたと思う。

生きた人間だ。あそこでは、」

u14u13どう

病原菌をつかってやっていた、生体実験を」



u14title556*

帝銀事件をめぐる背景と経過、警視庁による満州第七三一部隊および第九陸軍技術研究所への捜査は公開された情報にもとづく。
平塚八兵衛成智英雄伴繁雄黒字紫字赤字の人物はすべて実在するが、
一部の会話や行動はちっとばかし変えている。
彼らの属する国家、官公庁、組織団体もすべて実在する。
ただしニイタカ・ヤヨイ-カトリーヌは、架空の人物であり、
実在する人物や出来事との関わりはすべて創造全開、ソースは妄想である。



1948年@昭和23年 2月初旬
帝銀事件発生から1週間後──

u14なるちけ

成智警部補、その話、課長係長に報告したのか?」
「いえ、最初に部長のお耳にと」

「野心家だな、本来なら感心せんが、今回ばかりはその判断でよろしい」

藤田次郎@警視庁刑事部長
@「帝國銀行椎名町支店銀行員強盗殺人事件捜査本部長
u14そのぶ02 
「その部隊のことが本当ならば大事だ。
いま進んでいる戦犯訴追の方にも影響があるだろう」

u14pride02.jpgu14bkumito02.jpg

このころ、東京裁判こと極東国際軍事裁判も終盤に突入、さらに米軍捕虜8人生体解剖した九州帝大医学部教授医師14人、軍人11人戦犯として裁判中だったり、
なにかと敏感きわまる今日このごろであり。

u14ななさ 
七三一部隊捜査はひときわ慎重に進める必要がある。
成智警部補、きみを刑事部長直属の特命捜査主任に任命する。

きみの調べ室だけで取り組み、ほかの捜査員に気どられないようやってくれ。
報告は直接わたしにだけするように」

u14はっで02 成智英雄警部補@警視庁捜査2課主任
「はっ」
「では手始めに、この男に当たってこい」

u14おやれ


「おや、例の名刺の主ですか。たしかアリバイがあってシロとされたのでは」

「とも言い切れん。じつは報道で松井博士の名が出てから、
匿名の投書がほぼ毎日のように届いている」

u14そこにはせ 
松井蔚こそ帝銀事件犯人である』

松井博士がかつて占領下ジャワで原住民に致死薬を注射して大量死させた」「博士の学生時代の素行の悪さ」「ジャワの現地婦女子への凌辱があった」──

差出人『ジャワ松井蔚の部下だった者』

博士に怨恨ある者による中傷では?」
「うむ、おそらくその類だろうが、じつは根も葉もない誹謗中傷とは違ってな」

u14しかる 
しかる筋に照会したところ、たしかに松井博士ジャワ防疫責任者だった時期、
原住民200名以上が大量死する不可解な疫禍が本当にあったと分かった。

u14まついはか

松井博士はまだ東京にいる。行って問い詰めてこい。

u14まついさ 
松井さん、あなたは第25軍軍政監部衛生課長としてシンガポールジャワに配属されていた。そのときにあった事件について、正直に話してもらえませんかね」

u14なんのこ 
「なんのことか分からない。私の経歴など帝銀と関係ないだろう」

松井さん、あなたはとぼけてられる立場ではありませんぞ」

u14まついさん 
原住民虐殺の罪で戦犯として裁かれるか、
警察に協力して自由の身で仙台に帰るか、どちらかだ。
ジャワ原住民たちに何をやったのですか?」

「そんなこと帝銀事件とは関係ないじゃないか」
「それはあなたの返答しだいだ」
「…………」
答えなさい

u14あれはふ 
「……あれは、事故だ、不幸な。わざとじゃない。

発疹チフスのワクチンを注射するはずが、誤って破傷風菌を注射してしまった。
しかしなぜそんなことを警察が──」

u14ななさん02 
七三一部隊ともあんたは関わっていた」
「え、あそことぼくは関係ない」

「あんたは防疫給水部にいただろう」
「場所が違う。僕は満州には関わっていない」
「では、七三一部隊の関係者に名刺を渡した覚えは?」

u14ないぼ 
ない、僕は関係ない!

u14じゃわ 
「あれは事故なんだ、ジャワのことは公表しないでくれ。戦犯にされてしまう」

松井蔚──厚生技官名刺犯罪に利用された不運な男、

──という偶然だけで片付けるには、
松井博士帝銀事件との接点が多すぎる。


1947年@昭和22年12月下旬から翌年1月初めのいつか──

帝銀事件の約1か月前宮城県仙台市青葉。

u14とうほ02

東北大学病院附属薬局に、見知らぬ男が訪れて。

u14じた 
自宅の池の魚を殺すので青酸を買いたい。

u14おとこ 
男は「医学博士マツイシゲル」と名乗る。

ちなみに松井博士東北大の前身、東北帝國大学細菌学教室の出身。

応対した薬剤師も、本物の松井蔚博士を知っていて、ぜんぜん別人だったので、

怪しい

u14しょほ 
処方箋がないと青酸はお分けできません。

マツイシゲル」はなにも買わず立ち去った。

帝銀事件後、報道の人相書きをみて薬剤師が通報。

青酸を買いに来た男の顔と似ている」

何者かが、松井博士の名をかたって青酸を買いに行き(失敗したが)、
何者かが、松井博士名刺未遂事件で使い、
何者かによる未遂事件は、害のない液体を使った帝銀事件予行演習にも見えて、

u14そしてそ 
そして捜査本部の描く犯人像に、じつは松井博士もいちいち合致してたりするのだ。

犯人博士に罪を着せようとしたとすると、

「あんたに恨みを持つ人間に心当たりはあるか。たとえばジャワで」

u14まついはかせか 
松井博士の挙げた当時の同僚部下を捜し出して聴取。

でもどれもアリバイがあるか、人相風体もまるで似ていない──

u14でもど 
こっちの線は違うのか?

帝銀毒殺犯と、東北大病院に来た「マツイシゲル」は同一人物か?
匿名告発文はどうだ、犯人とは関係ないのか?
名刺をもらっただけの人間が、博士黒歴史まで知ることができるのか?


u00緑丸


u13ふじたけ

藤田刑事部長 2月7日捜査要綱

「次のものから更に似より人相者を物色すること。医師、歯科医師、薬剤師、各種医学・化学・薬学研究所員、帰還将兵中の医療の心得のあるもの」


u14まんし 
斎藤警視総監自ら折衝、石井四郎軍医中将に提出させた七三一隊員名簿。

u13まもなく 
終戦までに七三一部隊に属したのは、軍医技術将校嘱託あわせて約2500名。

u14しゅうせ 
終戦時、逃げ遅れた一部の隊員ソ連軍の捕虜にされ、ハバフロスク軍事法廷にかけられたりもしたが、ほとんどの隊員はとっとと内地に復員した。

復員名簿とつき合わせて彼らの本籍地を突き止め、
そこから現住所をたぐる、地味かつ疲れる作業。

u13これはか 
さすがにトップだった石井四郎は医学の世界には戻れず、
連れ込み宿のオヤジとして隠遁するしかなかったが、

ほかの隊員たちは、復員後、医療関係でそれなりの地位についていた。
製薬会社研究所病院大学開業医──

u14せんせ 
「先生、あなたは大陸軍医大佐として、
七三一部隊の支隊、中支派遣軍一六四四部隊の指揮官で──」

u14ふくい 
「復員されてからは、毒物の権威としてご活躍、と聞きましたが」

u14なる 
「──なるほど。分かりました、知っている限りは話そう」

u14あそ 
「日ごろ剛胆な隊員でも、あそこではじめて実験に立ち会うときは、がたがた震えて立っていることすらできなくなったものだ。

並の人間にとって我が手で人を殺めるというのはそれほど心に衝撃を与える一大事なのだ。ましてや医者にはそもそも人の生命を救う精神が根底にあるわけだからね」

u14だがこ 
「だが、この犯人は、すべてに慣れている印象がある。
手際よく適量の毒液を注ぎ、16人もの被害者に自らの指図でを飲ませ、
目の前で苦しんで死ぬのを平然と眺める、

もし、七三一部隊あるいは一六四四部隊だった者が犯人だとすると、

u14おそら02 
おそらく、幾度も人の生死に関わった者だろう」


u00緑丸


「このところ目白で、“市民捜査本部”と称する自警団が動いておりまして」

u14しき 
「仕切っているのは地回りで、子分が人相書きに似ている通行人を追い回したり、捜査費と称して地元住民にカンパを強制しており──」
署長が言うには、スト破り不逞朝鮮人押さえ込みで世話になっておるから無下にもできんそうで──」


「次、椎名支店長宛に届いた手紙」

差出人は「山口二郎

u13しもお 
例の三菱銀行未遂で使われた名刺の名前。

u14むら

村田正子さんは生かしておくことにしました。
あとで役に立つと思いますので。

そのうちにもう一度彼女を訪ねようと思います──”


u14かのじ 
u14かのじょ

「彼女は美人だからな。新聞に載った退院の写真でも見て、
頭のおかしなのが湧いたんじゃないか」

u14たちの 
u14たちのわ02

「タチの悪いイタズラかと思いますが、差出人を探すとともに、村田正子はもちろん生存者の自宅近辺などを重点的に警邏しています。ただ──例の“市民捜査本部”も警護と称してうろついているので紛らわしく……」


u00緑丸


u03じーえいち 
3月11日 木曜日 GHQ/SCAP 公安課メモ

捜査当局は、後の七三一部隊である千葉県津田沼軍機密化学研究所事件との関係について、同研究所に勤務、または雇われていた全員について捜査を行っているが、ここでは戦時中青酸を含む毒物の使用法の実験が行われていた」

研究所で開発された毒物の使用法は兵士教練用の冊子に記載されているが、犯人が用いた方法は、この冊子の要領と同じ。さらに犯人が使った薬品の容器も同研究所で使われたものと同じで、同研究所捜査がのびており……」


──3月12日 金曜日

大木さん、わざわざご足労すまんね」

u14あいえ 大木@讀賣新聞社会部次長
「あ、いえ、とんでもありません」

u14こうあu14こうあん 
公安課イートン中佐ハットリ中尉とは、初対面ではなかったと思うが?」
「はい、幾度かお会いしております」
「はっきり言おう。いま讀賣の行っている取材のことだ」

u14じつはい 藤田次郎@警視庁刑事部長
「じつは、石井部隊対ソ戦にそなえて保護し、温存中でね。
これを報道で暴かれては米軍が非常に困るわけだ」

u14いしいぶ 
石井部隊の調査からは手を引いてもらいたい」

GHQが横にいて睨みをきかせてる場で「やだ」とも言えず。


さらに、現場の遠藤美佐雄@讀賣記者に対しても──

藤田だ。夜分遅くすまんね”

u14えんど 
遠藤くん、君のやろうとしている事件から手を引いてくれ、権威筋の命令でね。
君一流のスッパ抜きで石井部隊をやられるといろいろな関係が困るんだ”

帝銀事件の取材をやめよ、と?」

u14いやい 
「いやいや、なにも帝銀事件から手を引けというんじゃない。とにかく石井部隊を洗うのをやめてくれ。その代わり、本部に入った情報はぜんぶ讀賣に提供しよう」


これと前後する時期、捜査本部甲斐警部のメモいわく、
讀賣新聞旧軍関係者の周囲をうろつき、捜査に支障をきたしている」

u03じーえいち 
公開されたGHQ機密文書3月12日公安課メモにも、
新聞記者執拗な尾行に手を焼いており、記事を差し止めた」と記録されている。

GHQ様が生殺与奪をにぎる日本新聞ごときに「手を焼く」はずもないんで、手を焼いたのは警視庁にちがいなく。

讀賣への取材自粛要請は、警視庁側がGHQ様に頼んで睨みをきかせてもらったというのがじっさいのところ。あわせてGHQ新聞出版課から報道各社に捜査員参考人の張り込みや尾行を止めるよう指示が出た。

じっさいこれを境に旧軍系、特務機関系を煽る記事はぴたっと止む。

u14けいさ 
このときイートン中佐が、七三一部隊への捜査までやめさせようとした様子はない。

少なくともこの時点では七三一はアンタッチャブルではなく。


u00緑丸


u13このせ 
帝銀事件毒物は「なんらかの青酸化合物

つまり21世紀未来の今に至るもよくわかってない。

やはり初動のミスがひびいている。

u14しょくち 
食中毒と間違えた近所の住民が踏み込み、茶碗を洗ってしまった。さらに駆けつけた警官は残る茶碗の液体を、その場にあった醤油の空き瓶に入れて保存した。

u14かんて 
鑑定ではこの液体から青酸ナトリウムいわゆる青酸ソーダの反応が出た、
が、
あいにくナトリウム醤油の成分でもあるんで。醤油が溶けて混じったのか、最初から青酸ナトリウムだったのか、はっきりしなくなっちまったのだ。

そんなこんなで帝銀椎名町支店16人殺傷したがなんだったのか、
数十年経った現在でもいまだはっきりしないまま。
けっきょく現物がまともに鑑定できてないんで。

がなんだたったかによって犯人像ががらりと変わってしまうんであるが。


4月25日 日曜日
帝銀事件から3か月後──

u14ていぎんじ 

「おお、東京から。はるばる伊那までご苦労さん」

u14おおと 
「わたしは警視庁小林、こちらは小川です」
か、覚えやすい。まあ上がりなさい」

u14よくぼ 
「よく僕まで探し当てたね」
「はあ、最初は嘱託技師だった川島氏を訪ねたのですが──」

u14しょくた 
嘱託の自分では話せない、いくつも首が飛ぶから、と、島倉大尉を紹介され、島倉氏は研究第2科班長だったあなたならさらに詳しい話を聞けるはずだと」
「ふふ、あいつらめ、僕に押しつけたな」

u14このぴ 
「このピペット駒込型と言ってな。化学部隊研究所で使っていた。皇軍解体のどさくさで持ち出されたのかもしれないな」

u14りくぐ 伴繁雄@元帝国陸軍技術少佐
陸軍には数多くの研究所があったが、
僕のいた9研2科のやってたことが、最も近いんじゃないかな」

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「君らがお探しの、毒薬の出所として」

9研こと登戸研究所こと第九陸軍技術研究所

はじめ神奈川県川崎にあったが空襲を逃れるため、信州北陸兵庫などへ“疎開”、

u14いなむ 
伊那村では小学校の校舎を接収、>研究棟にして、終戦までそこにいた。

u149けん 
9研兵器行政本部直属で、役目はおもに秘密戦向けの秘密兵器秘密研究。

1科特殊戦電波兵器、気球兵器、牛疫ウィルス
2科謀略戦暗殺兵器、盗聴器、秘密インキ、特殊爆薬、特殊カメラ
3科経済謀略戦偽札、公文書偽造──

u14きき 
気球兵器こと風船爆弾は、じっさい本土めがけて1万基近く飛ばされ、偏西風に乗って遠く西海岸、中西部まで到達、米国当局にかなりの脅威を与えた。
アメリカ人に免疫のない日本脳炎を送り込まれるとやべーと思われたんである。

u14にせさ 
偽札はけっこう完成度高く、中国ソ連の経済混乱をねらってじっさい投入された。

さらに雷雲を発生させて米爆撃機B29のエンジンを止める特殊ガス
超音波で敵を倒す怪力線」──

ほとんどがトンデモ兵器で、どれもこれも皇國の降伏には間に合わなかった。

という登戸研究所の実態が知られるようになったのは、
ずうっとのちのこと。このころ関係者みんな口にチャック中。

u14ていぎ 
帝銀で使われたのが青酸カリとすると、矛盾が多すぎるんだな」

u13だいにやく

「とくに嚥下してから倒れるまで1分以上かかっている点だ。
青酸カリよりも、むしろ2科でつくったアセトシアノヒドリンが当てはまると思う」

アセト……?

アセトン・シアン・ヒドリン、どっちにしてもまあ言いにくいんで、
2科ではニトリールと呼んでいたがね。

u14こい 
「こいつは同じ青酸化合物でも、即効性青酸カリとは逆に、
遅効性つまり効き目の遅さ、が売りなのだ」

青酸化合物というものは、たいてい飲んだだけでは死なん。

u131ぷんご 
までいって、>胃酸と反応、>シアン化水素つまり青酸ガス化して、>本人の呼吸で改めて肺から吸収、>血管を通して臓器が低酸素で破壊され、>に至る。

青酸カリが「飲んで一呼吸で死ぬ」といわれるのはそういうことだ。

9研開発のアセトシアノヒドリンはこの青酸ガス化を少しだけ遅らせる。

u13だいにやく05 
だから嚥下して、>数分経ってから有毒化し、>人を殺す。
>解剖しても青酸化合物としかわからず特定できない。

対個人謀略兵器、つまり暗殺兵器だよ。

もしくは集団自決用としても考えられていた。
青酸カリでは先に飲んだ者がすぐ倒れるので、遅れた者が怖じ気づく。効果が出るまで数分の猶予があれば、その懸念がなくなるわけだ。

ただ帝銀事件と合致しない点は、舌やのどが焼けるような刺激性の味だな。それはむしろ青酸カリの特徴だ。ニトリールは目的からして無味無臭だったはずだ。

まあ少しの細工でそういう味にもできないこともないが、その理由がわからん。
帝銀にしてもわざわざ飲みにくくした利点がまったくないからな。

u14けんき 
研究所員なら、そういうことを知っていましたか」
「そうだ、と答えるしかないな。同じ階でやっていれば、隣がなにをやってるのかぐらい知るのは容易かっただろう」

9研が、大陸でそのう、人間を相手に試験した、という話は事実ですか?」


u14しまく


u14しまくら 
島倉も口が軽いな」


u14なかで 

1943年@昭和18年某日 上海──

u14いまで 
いま伝染病が流行っている。君たち捕虜が発病したら日本軍も困る。
予防薬を用意したので飲んでもらいたい。
安全である証しとして、我々がまず飲むから、その通りにすること。


u14まずだ 
まず第1薬を飲み、すぐに第2薬を──

u14えまって

「え、待って下さい、それはもしや」

u14そうだて 
「そうだ、帝銀と同じ前口上だよ、面妖なことにな」

上海での「試験」はうまくいった。

u14しなじんの 
支那人捕虜たちは2、3分経ったあとで苦しみだし、さらに数分で死んだ。


u14あせと 
アセトシアノヒドリン@青酸ニトリール5600gつくられ、アンプルに仕分けされてひそかに保管されていた。致死量1gで、つまり単純に5600人を殺せる量。

そして終戦登戸研究所の試作資料すべて焼却廃棄する命令が下され、
青酸ニトリールもすべて廃棄された、

はず。

u14そのと 
そのとき廃棄作業を命じられたのは、研究員3名倉庫係、計4名。

彼らには青酸ニトリールを廃棄前に抜き取るチャンスがあるにはあった。


さらに、ずっと時代がくだって──これまた↓新たな「帝銀毒薬」が推理された。

バイナリ式青酸化合物 第1薬シアン配糖体第2薬酵素

u14bknazono.jpg 
報道のお春”の異名をとったTBS報道ディレクター@吉永春子が、
番組案を深掘りして発表した説、いま流行りのバイナリ式。

毒性のない青酸化合物第1薬、それと合体して毒化させる酵素第2薬で、胃内で例によってシアン化水素つまり青酸ガスに変身する。

その道の研究者の全面協力もあって化学的つじつまも合ってるし、犯人第1薬を飲んでもへっちゃらだった説明もつく。

ただし、酵素なんてもの自体、第二次世界大戦直後じゃまだほぼ知られてなくて、
少なくとも大日本帝國の研究レベルだとぜんぜん無理で、

だから、

米軍ならやれてたはず、だから米軍による人体実験だった」
って陰謀論方面な結論へとさまよってしまうところでにわかに怪しげな…。

u14bkmkultra.jpg 
もちろんユナイテッドステイツオブアメーリカーが、ジャスティスにみちあふれて品行方正だったかというと、むしろせんぜんそんなこと一度もないのは言うまでもなし。

u14せんりょうか 
占領下日本GHQ公衆衛生局と元七三一部隊員による囚人使ったチフス人体実験
グアテマラ米当局とむすんだ医師が、現地の兵士・孤児・売春婦・精神病棟患者梅毒淋病を感染させたグアテマラ性病実験
まさかの米国内でもCIAがやらかしたLSDやら覚醒剤やらのちゃんぽん薬で洗脳実験MKウルトラ、さらに米国内の一般市街地ダイオキシンやら黄熱病やら毒ガスやら巻きまくって効き目調べたり──

なんていうぶっとんだ武勇伝の数々があるし。

なので米軍黒幕説は例によって人気が高いんだけども、

u14bkheisa.jpg 
しかし情報封鎖しやすく発覚しにくい刑務所捕虜収容所閉鎖病棟ならいざ知らず、
戦後混乱期とはいえ社会秩序それなりに安定の日本、首都東京、しかも住宅地の真っ直中にある銀行で、ふつうの民間人多数相手に人体実験なんて、
あまりにリスキーすぎ、バレたときのダメージ途方もなさすぎ、の割にそこまでしてやるメリットもたいしてなさすぎの陰謀なんで。まあいわずもがなん。


さらに、こんな説も。

第1薬刺激は強いが無害薬品第2薬青酸カリ

歯医者さん方面から出てきた新説。

その根拠は犯人の口にした用語「ホウロウ質

u14これせ 
これ戦後まもなく当用漢字指定とあわせて「エナメル質」に統一されたんだが。
それをあえて古式ゆかしい「琺瑯質ほうろうしつ」と頑固に言いつづけてるのは、戦前東京歯科医学専門学校からはじまる老舗にして名門東京歯科大くらいで。

ホウロウ質」なんて言いかたは東歯がらみで外れなし、っつうのを根拠に、

u14はんに 
犯人歯医者(つうか東歯卒業生)」とみなして。

第1薬が舌が刺されるくらいヒリヒリして焼けるような苦さだったのは猛毒だったからじゃない、第2薬青酸カリの強い刺激味をごまかして、すんなり飲ませるためのカモフラージュだった、というひとひねりがポイントなんである。

u14はのは 歯の博物館
歯科には悲鳴上げるほどしみるけどじゃない薬品(なんの目的なんだそれは患者への嫌がらせか)がたくさんある(しかもたくさんあるのかよ!)、という。

第1薬を飲んだ銀行員たちがうへーにがー(>皿<)となったものの、本当にバタバタ倒れていったのは第2薬を飲んだ後だったことや、
犯人第1薬を飲んでも平気(うへーにがー(>皿<)は我慢?)だったこと、

うへーにがー(>皿<)説じつは意外に最もつじつま合う推理だったりする。

さらに、のち真犯人?とささやかれるある人物が、
まさにこのうへーにがー(>皿<)説の条件にぴったり合うんである。


u00緑丸


別角度からの手がかり。GHQ方面。

犯人の口にした「パーカー中尉」「ホートクまたはホーネット中尉」。

u14えば 
荏原椎名町を担当するGHQ防疫部隊にそういう士官がいるかどうか、それを知る日本人は何人いるか、そのなかに旧軍特務機関関係者はいるのか、GHQ公安課にその一覧を申し入れてるんだが、いまだ満足な返事は返ってこない。

そこで成智は、蛇の道は蛇なルートで非公式に情報ゲット。

u14ぱー 
まずパーカー中尉、>同名の士官がいた。管轄に荏原をふくむ伝染病予防班にいたことも。ただし1946年から47年6月まで。荏原に関わっていたのは1947年3月頃。

ホートクorホーネット中尉、>この名前は衛生部門には見つからないが、ハートネットという大尉なら、公衆衛生部門に一時期配属されていた。
ただしこっちもいたのは1947年4月まで。

2人とも安田銀行未遂帝銀事件のとき、すでに転属、もしくは帰国。過去の人。

u14つまりはん 
つまり犯人もしくは犯人に内部情報を教えた人物は、
1947年頃までGHQ防疫部隊の内情を知りうる立場にいた、
が、それ以後そうでなくなった者、の可能性高し。

終戦まもなくは専門職がとにかく人材不足で、
GHQの防疫作業にも旧軍防疫部隊関係者が嘱託雇いされていた。

そこに七三一部隊の元隊員が紛れ込んでいた可能性はじゅうぶんある。


u00緑丸



なんだとこのヤロー!


u13やるき

やる気があるから言ったんだろうがよ!

u13あんたがき 
「あんたが忌憚のない意見を言えっていうから言ったまでだ!
それを怒るなんてバカな話があるかい!

u13なーにが 
なーにが係長警部だ! 唐変木め!

u14はははお

「ははは、おい見たか、甲斐さん固まってたぜ」

u14じゅん 
巡査の分際で係長にケンカ売るなんてすげーや」
「前代未聞の基地外だな平塚は」

u14そうさほんぶで

「なにしろケンカ八兵衛だからな」
「ま、終わったな、あいつ」


──6月25日 金曜日

藤田刑事部長による捜査要綱 全国警察本部に急送。

犯人医療、防疫、消毒等の経歴の持ち主または研究試験等の経験者、特に引揚者関係当該関係者、特務機関員憲兵等」
犯人は過去においてこの種の経験を持つことが──」


捜査本部の人員をこの方面に集中動員することに。
名刺班も動いていたが、そっちは傍流で捜査本部では気にもされていなかった。


u14さらにな 
成智特命捜査班はさらに一歩先を行っていて、

u14ななさんい 
七三一部隊員名簿から、年齢や人相、アリバイ成立で、つぎつぎと名前が消え──、

7月には、有力容疑者数名まで絞り込んでいた。

u14かりに 
「──仮に、あくまで仮にだ、部隊満人支那人実験台にしていたとしようか」

u14だがそ 
「だがそれと帝銀のような犯罪はまったく根っこが違うよ」
「どう違うんですか。人を殺すのは同じでしょう」

「倫理的に正しい話をしたいのか、事件を解決したいのかどちらかね」
「失礼しました、つづきを拝聴します」

u14せん 
「僕はなにも戦争だからしかたなかった、と弁明するつもりはない。
だが周囲から隔絶されたあの施設のなかで、支那人捕虜間諜を引き渡されて、を植えつけろ、を飲ませろ、そして経過を観察せよと命令されれば、
これは人ではないのだ、と割り切る者は多かっただろう」

u14だがて 
「だが、帝銀事件は、自分の日常の延長線上にある日本の町で、自分や自分の家族と同じ日本人の、しかもうら若いお嬢さんや小さな子供にまでを飲ませ、
苦しみもがいて死ぬのを平然と見ているなど、

並の神経でやれるものじゃないよ。やれるとすれば性格異常者だろう」

u14ぐた 
「具体的に心当たりがあるような口ぶりですが?」

u14もしはん 
「……もし犯人七三一に籍を置いた者とすれば、僕にはあの男しか思いつかん」


成智警部補50人以上の七三一部隊の関係者を聴取したが、

u14おおく 
多くの元隊員その男の名を挙げた。

u14やったとu14やった 
「やったとすればあいつだろう」「あの男犯人だよ」

u14しら 
「調べてみればいい」

u13とえいせ

u14いない

あの男以外にやれる者はいない」


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冒頭文>つげ義春著『ねじ式』より
 
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