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【事件激情】サティアンズ 最終解 ─終段【地下鉄サリン事件】

title前解へ戻る39  title目次へ39  s00主な登場人物01  s00事件関連年表01 


赤い毛糸にだいだいの毛糸を結びたい
だいだいの毛糸にレモンいろの毛糸を
レモンいろの毛糸に空いろの毛糸も結びたい
この街に生きる一人一人の心を結びたいんだ

──坂本都子の詩




s30こんばん 
法務省検察公安調査庁内乱罪破防法の適用に向けて動いている」
「与党の一部先生方も後押しにかかっている」
警察庁内部にも同調する者がいる」

s30よそくどおり 
「しかしウチの大臣まで破防法推しとはなあ。君が正しかった。あの先生は本来ハト派のはずだから正直意外だった。よくあの人の心の変化が分かったな」

「資料をふつうに読めば書いてありましたので」

s30できみの 
「で、君の意見は?」

「政治は移り気です。しかし警察はあえて不変、波風から距離を置き粛々と進むべき、私はそう学んできました」

s30ないらんざnew 
内乱罪破防法なんて冷戦時代の亡霊を今さら呼び寄せても、
オウムのような集団には無意味どころか逆効果です。

いま教団を解散という形でつぶせば、数百数千の信者は散り散りばらばらとなって社会に紛れこみ、全容が分からなくなるでしょう。

s30なにより

なによりそんな冠を与えれば、麻原殉教者に祭りあげ、反体制のカリスマにしてしまいます。信者は結束を固め、より強固な反社会集団となります。

名誉ある政治犯の勲章を、麻原彰晃に与えてはなりません」

s30ただむかnew 
「ただ、昔っから警察はこうやって政治がからむと滅法弱いんですよねー。
政治とまともにぶつかれば遺恨を残します。

となると皆さんの老後も危ない。
だからここでこっそり集まって暗い顔されてるんですよね」

s30しつれいな 
「相変わらず失礼なやつめ」
「まあ、正直その通りだからな。白鳥警視、君の意見は」

「あらよろしいのですか、たかが警視風情の意見で」

s28にんぎょうだ301 
「意見を聞かなければ、君はまた勝手に動くではないか!」

「では、皆さんお望みのようですので披瀝いたします」

s30メロンだnew 
メロン大好き


「は?」


s30けいさnew 
警察庁が他省庁の職掌に対して口を出すことは難しい。とくに警察っていまいち官界で発言力ありませんしね。ですから内乱罪破防法の適用に反対はできません。

しかし、適用しにくい空気をお膳立てすることはできます」

s30しんじゃかnewnew 
信者から巻き上げた金でメロン食い放題の贅沢三昧、
自称最終解脱者、ほんとは詐欺師あがりの銭ゲバな宗教屋
自らは手を下さず手下に人殺しをやらせる卑怯なゴロツキ、
教祖の地位を利用し、清楚な美人信者を片っ端から愛人にして、少女ばかりそろえたハーレムで、未成年への性的虐待を繰り返した、処女好きのロリコン変態おやじ、

そんなくだらない男の風呂の残り湯を聖水とありがたがる愚かな信者
子どもにも笑われそうな陳腐な新発明
声がでかいだけですぐ底の割れるご都合主義の屁理屈、
どっかからパクってきた幼稚な歌──

s30ようちな 
オウム真理教の危険で狂的な顔ではなく、アホバカを強調し、
革命や内乱から最も遠い、安っぽいお笑いイメージで徹底的に貶め、

得体の知れない恐怖の異形集団という位置から、
低俗なゴシップネタにひきずりおろすのです。

それと並行してこれまで以上に信者集金ネットワークの摘発と解体を徹底すれば、
教団はじっさい無力になる。

それも世間に知らしめる。

しぜんと内乱罪破防法も腰砕けになるでしょう。

s30なづけて 
「名付けてメロン大好き大作戦

「……その名前をいちいち官能的な顔で言わなくてはならんのか?」

s30しかしますこみ 
「しかしマスコミが都合よく仕掛けに乗るかな」
「彼らが、まともに後先を考えて報道したことなんてありますか?」
「まあ、そうか」

s30だがさいばん 
「だが裁判で麻原殉教者のごとく振る舞うかもしれんぞ」
「あ、それ絶対あり得ないですから。あの男はこちらの思惑どおり動きます」
「それは憶測ではないか」
「いいえ、情報を精査したうえでの解析です」

「だが全国でオウムと対峙する第一線の警察官の気持ちを思うとしのびないな」

s30しのびないnewnew 
s30もうしわけなくnew 
「はい。それだけは申し訳なく思います」

s30しかしな 
「君もだぞ白鳥オウム捜査の真の功労者は君だ。
いま君の口にした対応策は、君自身の功績も汚すことになるぞ」

s30こうせきもnewnew 
「それが?」

s30よそくどおり 
「…………」

白鳥警視、今日ここで話し合われたこと、ここにいた顔ぶれ、決して他言なきよう」

「こういうシーンの決まり文句ってありますよね」

s30このことって 
「“え? 今なにか話しましたっけ?”

失礼します」


ますます過熱するオウム報道は、
恐怖・不気味・危険的な煽りと、おバカ扱いがいりまじってカオスになり。

s30ほうむしょう 
さてここで後門の虎のごとく現れて、
おいしいとこ狙いの法務省である。

検察庁公安調査庁入国管理局刑務所少年院拘置所とかの元締め。

省庁の官僚てっぺんはふつう「事務次官」なんだが、
法務省だけは独特で、省の序列1位=なぜか検事総長@最高検察庁

上級幹部はそろって検事で、法務省すなわち≒検察庁である。

s30こうもんの 
そしてサティアンズでもずっと続いた警察検察の息の合ってない感からしても、ぜんぜん一枚岩じゃないし。
オウム内乱罪破防法についても、まったく異なる目線で見てるわけで。

世論の追い風を得て、>内乱罪破防法まで一気突破してまえという法務省の思惑。
内乱罪破防法なら、事件をまとめて断罪する一発ドーンが可能だ。
そして冷戦終焉でアイデンティティも終演しそうな公安調査庁も復活のチャンス!

s29ながたちょう 
4月下旬政府与党首脳連絡会議与党責任者会議で「内乱罪の適用」が話題となる。
検察与党族議員の連携プレーによる布石だった。

さらに検察庁宗教法人法の「公共の福祉」を理由に、
東京地裁宗教法人オウム真理教の解散請求、
10月、史上初の宗教法人解散命令が下る。

法務省すなわち≒検察庁的には、ここまで「計画通り」

次は警察庁のターン。ビハインドからの巻き返し、
オウム報道の水面下で情報戦が始まる。


mark8_60.jpg 


s30あそろそろ 
「あ、そろそろ始まりますよ」

s30あれあねさんは 
「あれ、姐さんは?」
「それが昨日の夕方からいないみたいで」
「え、アバラ2本と指3本やってんのに?」

s30やはりあそこ 
「やはり、あそこ、ですかね」
「まあ、見届けるつもりなんだろうな」

s30おれもいった 
……おれも行った方がよかったか?

「どうされました、警部
「ん、いやなんでもない」


1995年5月16日 火曜日──

午前5時35分──

麻原彰晃こと松本智津夫および地下鉄サリン事件関与の31名の身柄を確保せよ」

s30しょにちいらい 
警視庁強制捜査初日以来の1200名超えの大軍を動員。

強制捜査開始から55日。

s30さいしゅうきょくめん

警察オウム真理教ハルマゲドンは、ついに最終局面を迎えたんである。


s0sサティアンズタイトル

1995年5月16日から現在までの
オウム真理教もしくはアレフ警察のおもな動きは、公開された情報にもとづく。
登場する公官庁、企業、機関、組織、部局、役職もすべて実在する。
白鳥百合子はじめこの色で示されるのは、架空の人物であり、
実在する人物、事件、出来事と架空の彼らの交差する部分は、
例によって創作全開ソースは妄想なんであるが、その内容には一応意図がある。
またこの色この形*の人物は仮名である。



s30cptしんりのむこうがわ550 
s30さいせんぽうは03

第六サティアン突入の最先鋒は、井上警視総監がかつて大隊長だった六機こと第六機動隊3個中隊270名+もちろん内緒で秘密の特科中隊SAPも。

s30げんばとうかつは 
現場統括は初日とおなじく、山田正治@捜査1課理事官。

ここまでの強制捜査オウム側からの武力行使はない。
だが教祖逮捕となれば今度こそ何が起きるか分からんし。

突入部隊は化学防護服と、またまた異例の全員拳銃携帯でのぞんだ。

s30けんじゅうけいたい 
s30あばらまだ 
(うーアバラまだめっちゃ痛い…)

s30しかもこるnewnew 
(しかもコルセットでウエスト太く見えるし、ぐぬぬ)

s30うざうざ 
うざうざ400人も集まったマスコミも大期待中。

s30でんどうかった 
s30とびらを 

午前5時48分──

第六サティアンの扉を電動カッターで焼き切るテレビ映えしそうな絵にマスコミ殺到。
信者たちの目もそちらに引き寄せられる。

が、

このド派手なパフォーマンス、じつは陽動。
本当の麻原捜索チームはその隙に裏口から、

「こんちわー三河屋っすーじゃない警視庁ですー」

ふつうにノックしてふつうに第六サティアンに入っていた。

“本当の麻原捜索チーム”は、誘拐企業恐喝立てこもり担当の捜査1課特殊犯捜査係を中心に、機捜隊所轄から選ばれた捜査員15人

s30ごきぶり 
で、いきなりゴキブリの大群とご対面。中はゴミだらけ。悪臭むんむん。

出迎えたのは、教祖夫人@松本知子ガキども子どもたち。

s30おっとはながい 
「夫は長い間ここにはいません。ずっと東京です」
「ではこの建物を捜索して、いたる所を壊すことになりますが」
「どうぞ、かまいません」

s30ほかのさてぃあん 
ほかのサティアンやら周辺施設群では、
地下鉄サリン事件にかかわった信者がさくさく逮捕されていく。

地下鉄サリン実行犯杉本繁郎、いつのまにか戻ってきてた廣瀬健一横山真人
サリン製造 プラント建設渡部和美滝沢和義森脇佳子垂井明美池田悦郎


午前9時13分──

s25そうさいち 
寺尾正大@捜査1課長記者発表
信者13人殺人及び殺人未遂で、1人を有印私文書偽装などの容疑で逮捕した」

いや、そんな雑魚よか麻原は?

s30だがかんじんの 
だがかんじんの麻原狩りは思いがけず難航中なんである。

“本当の麻原捜索チーム”がタレコミの隠し部屋をさんざんっぱら苦労して壁を壊した結果、とっくになくなってると判明。くそ、ガセか捜査錯乱の偽情報だったか。

どこだ。必ず第六サティアン内にいるはずだ。

s30だいにかみくで02 
第二上九で最大の建造物 第六サティアン

s30やくよんじゅう 
約43m×約23mの地上3階。
で、構造がまた小憎ったらしい。

s30にくったらしい02 
1階=麻原とその家族の住居、2階=信者修行場、
3階=幹部個室など“蜂の巣”と揶揄された捜索泣かせの2畳小部屋127室!
しかもいちいち頑丈な鍵と分厚い鉄板の蝶番が掛かっている。

s30おまけにまど 
おまけに窓がほとんどナシで電気も切られた暗闇状態。地獄のように暑いし臭いし。
いちいちカギ開けてらんないので、片っ端からハンマーで壁をたたき壊すんだが。

s30ふじがみね 
s30かんべんしてよ 
しかも富士ヶ嶺一帯ガスってくるし。
ちょっと勘弁してよ状態に。

“本当の麻原捜索チーム”の所轄刑事が、ふと、
2か月前に見て妙に引っかかってた光景を思い出した。
あのとき信者たちは、第六サティアンの外壁に雨除けカバーを取り付けていた。

あそこに空気穴があったんじゃないか。

彼はふだん所轄署盗犯係だったけども、地下鉄サリン事件発生で築地署捜査本部に動員され、被害者たちの聴取を担当して以来、オウム捜査に関わっていた。
今日は“本当の以下略”を邪魔する信者を排除する露払い役で参加中。

「壁に不自然な空気穴がある。どこかに隠し部屋があるぞ」

s30じんかい 
人海戦術で壁を叩いて、音から裏が空洞の場所を探す。

「ここだ」

2階にあるマンガ本で一杯の三女アーチャリーの部屋。その天井を破ると、2階天井と3階床の間に仕切り板で囲まれたスペースを発見。

s30はかい 
ハンマーで破壊。すると──
 
「髪が見えます! あ、いやヒゲです!

山田理事官が駆けつける。

s30あさはらかはい 
「…………」

s30あさはらか 
麻原か?」

s30あさはらかはい 
「ういっ」

「降りてこい」
「──ひとりで降りられません」

「誰か脚立もってこいっ」

s30にくったらしい 
s30かくしべnew

“隠し部屋を見つけた──”

s30みつけたnew

“隠し部屋に麻原らしき男を発見”

数人がかりでぶよぶよの肉玉を引きずり下ろし。

s30おもくて 
「重くてどうもすみません」

頭にはおなじみヘッドギア。だが電源は入ってない。

三女アーチャリーが泣きながらすがりつく。

s30すがりつくnew

“──男は麻原彰晃本人と認めている”


s30かくしべや 
2階天井裏の隠し部屋@3畳のカプセルホテルみたいで、
高さ50cm×幅1m×長さ3.35m。
中には寝袋、ウェットティッシュ、洗濯かご、ヘッドホン、
そして札束960万円

最初に空気穴に気づいた盗犯係所轄は脇役なんで最後列に追いやられていたが、
山田理事官が彼を呼び寄せ、

「おまえが手錠を掛けろ」

名誉ある役目だけども、彼は検挙班じゃなかったんで手錠をバスに置いてきていた。
慌てて他の捜査員から借りて、麻原手錠をかけた。

s30ごぜん9じnew

午前9時46分麻原彰晃こと松本智津夫確保した”

s30みとめている

医師が身体検査をしようとすると、

「やめてください! カルマがつく! だめだめ! パワーが落ちる! だめ!」

s30このなさけない 
この情けない男が、本当にあの麻原なのか。なぜこんなやつを信者は崇めたんだ。

本庁に護送せよ!」


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s30ごそうせよ02

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s30ごそうせよ16 
s30もういい 
s30もういいまる 
「もういい、丸メガネ

20150211083026b45_1.jpg 
s30ここはあんた 
「あんたは頑張った。もういい」

s30いいんだa 
s30そうさいんに01

“あ、麻原代表がいま捜査員に囲まれて出てきました!”

s30いいんだ02a

麻原彰晃が、いま逮捕です!”
 
s30このくnew2 
s30かこまれてnew2new 
s30このくっせnew 
「このくっせぇゴミ溜め出ようぜ、な。ここはあんたのいるとこじゃねえ」

s30でようぜnew

s30いるとこ 
s30ねーわ

プップー

s30ぷっぷ 
s30ごそうしゃが
 
『えー、麻原こと松本容疑者を乗せた護送車が、いま動き出し──』

s30おとこはあさはら

「終わったな」

ふっオレ様、決まりすぎじゃねえか参ったなこりゃ。

kako-ENyAOgtEjLOvsWdf301.jpg 
「あんた、オレに惚れんなよ」

s30てまたいねえ 
ってまたいねえし、例によって忍者かよ。てか礼のひとつく──

s30らい 
らい──

s30ありがとうnew


s30ありがとうまたね 
s30またね 
s30またね02anew2 
「ありがとう、またね!」

s30またね03 

s30へっ 
「へへっ」

やっぱ男は仁王立ちだな。
s14仁王立ち 
ってガスって富士山見えねーし。


当初、麻原護送はヘリが予定されていたが、あいにく天候荒れまして、

午前10時45分、陸路で東京へと出発。

s30そのしゃないで 
その車内で捜査員たち相手に麻原は饒舌に語りまくった。

「地獄界は三つの世界に分かれているんです。天国界は…」



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s30あらあさはら 
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「あら、麻原捕まったん?」
「そや」

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「怖いなあ宗教なあ。あんたも言うとったやろバモバモ…なんやっけ。あんまり宗教はまらんといてや」

s25おーすげ 
「かあさん、あれ宗教とちゃうよ。ぼくが自分で考えただけやし。

それと、かあさん、バモバモやないで」

s30ばもいどおき

バモイドオキ神や」


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s30さりんはもうない 
井上幸彦警視総監は記者会見で意気揚々と、
サリンはもうない」

ところが同じ日の村山富市首相の会見↓

s28そうじゃのう 
そうじゃのう…―村山富市「首相体験」のすべてを語る 
サリンはまだ隠されている可能性があるので厳重警戒を続ける」

s30げんばの 
「現場の警察官が頑張って治安を回復してるのに、
なんで不安を煽るようなことをわざわざ言うかなああああああああああ

首相会見の官僚的草案を用意したのは警察庁で、
ここでも警視庁警察庁ぎくしゃくしてるんである。


16日 午後7時──

s30とちょう 
新宿副都心 東京都庁

s30ゆうびん 
に、都知事公邸から回送されてきた郵便小包。
なので麻原逮捕と同じ日に開封されたのは偶然である。

s30なかみは 
その中身はへんてつもない単行本、

のはずが、

s30ほんをくりぬいて 
本をくりぬいてRDX爆薬が詰め込まれ、
表紙を開くと、

s30こづつみばくだん 
東京都庁小包爆弾事件

秘書室副参事が左手の指ぜんぶ、右手親指を失い、右耳鼓膜破れるなど重傷。

これがオウム真理教、最後のテロ事件となった。


mark8_60.jpg 


麻原逮捕翌日、5月17日──

オウム組織の徹底殲滅が始まる。

s30すぎなみくの 
中川智正杉並区永福アジト近くの路上で逮捕。


そのまた翌日18日──


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