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【事件激情】ネバダたん〈2〉【佐世保小6同級生殺人事件】

Chapter2 黒いアイドル


contents < (1)<<

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*「あんな残虐なことをする子とは思えないんだ」

なんなんだ、これは。
警察は戸惑った。「子どもがやったとは思えない」

警察はカッターの折れた刃先血の海の中から回収した。家庭用工作カッターでここまでやるとは、よほど殺意と力を込めたことになる。

なのに──とベテランの県警捜査幹部。
「今までで一番謎の事件だ」。
加害少女は年のわりに小柄で1、2歳年下にすら見える。話しぶりからもしてもこの子になんであんなことができたのか…。

加害少女は担任(男)が学習ルームへ向かったあと、一人でボウ然と廊下を歩いているところを、5年担任の女教師と出くわして手を握られなだめられながら「わたしはどうなるの」「ミタちゃん大丈夫かな」と何度も訊いている。

2日後に保護中(つまり拘留中)の加害少女と会った弁護士も、
「言葉づかいも非常に丁寧、コミュニケーションにまったく難はない」。

弁護士と向き合った少女は、
なんでやったのかな。よく考えていたらこんなことにはならなかった。会って謝りたい
と頭をかかえて涙を流していた。
無言のことが多い。泣きながらも大きな動揺も見せず、素直にこちらの話を聞いている」
「小学生なら落ち着かなく動き回ったりするだろうが、彼女は冷静でじっとしている

残酷すぎる犯行。面会ではごく冷静で静かな態度。
ギャップがありすぎる。一体なんでこうなったのか。

少女は動機についても一応話した。
ぶりっこ、とネットの掲示板に書かれたから」

ぶりっこ?



そんなことぐらいで殺すのか? あんな残忍に?

しかも、「掲示板のほかには、被害少女とのトラブルはなかった」とも。2人はもともと大の仲良しだった。
オジサン捜査員たちは戸惑うばかり。動機の他愛なさと犯行の凶悪ぶりがちぐはぐすぎる!

加害少女の扱いはあたふたと家庭裁判所に移された。少年法は「少年を罰するのではなく、更正させる」のが目的なので、警察が捜査するようにはいかない。

のち被害少女の父親も審判記録を読んで途方に暮れた。
「あまりに幼い受け答え。想像と違った」


*ネットで盛り上がる“不謹慎な人気”

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マスコミもまた事件を扱いかねた。少年法の壁もある。
犯行後、15分も現場に留まっていたのを「猟奇犯罪」的に取り上げたが、それも長続きしなかった。
この事件には凶悪ぶりを裏付けるマスコミ好みの“物語”がなかった。

サイコパスな殺人鬼は、まず猫やネズミのような小動物を殺し始めるという。またゆがんだ性衝動も濃密に結びつく。酒鬼薔薇聖斗も、前年に起きた長崎幼児殺人の中1少年もそうだった。

だがこの少女にはそんなサイコパスな匂いはない。いじめすらない、本人もなかったと言う。
事件は何もないところからいきなり湧いた。

例によって、パソコンやネットのせいだとか、暴力的なゲームやテレビやマンガが原因だとか、学校教育が悪い、親が悪い、いやいじめがあった、いや今どきの子どもは、とそれぞれが自分好みの「元凶」をあげつらった。加害少女を血も涙もないモンスター扱いする者もいた。

「普通の子」報道に、親たちはパニックになった。
じゃあうちの子は? 知らない間にモンスターになってないのか?」


一方、ネット上の“その筋”は、お祭り状態だ。

ネバダたん」「ネヴァたん」と名付けて(;´Д`)ハァハァし、アイドルに祭り上げた。
美少女だったのも“不謹慎な人気”に火をつけた。ネバダたんを描いたイラストもあふれた。あどけない顔のまま血まみれのカッターを持つような。

3年後、ドイツではズバリ「Nevada tan」というニューメタルバンドまで結成されてヒットを飛ばした。なんというバカなドイツ人。(さすがに翌年、別の名前に変わっている)

周りがやいのやいの騒ぐ間も、渦の中心の「ネバダたん」は謎のままだった。

ネバダたんとは何者だったのか。

彼女らが「友だち」だった頃に戻ると、少しだけ見えてくる。



*5年生の春。少女たちは惹かれ合った──不幸にも

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佐世保市。
旧海軍の軍港で、今も陸・海自衛隊と米第七艦隊の基地がある。人口25万人。大人の6割が基地にかかわる仕事に就いている。

「ミタちゃん」
彼女がこの軍港の町に転校してきたのは、4年生の春。新聞社の佐世保支局長として赴任した父親と一緒に。3年前に母親を亡くし、男男女3人の父子家庭。末っ子がミタちゃんだ。

ミタちゃんはすぐクラスになじむ。大柄で明るく活発、人を笑わせる性格で、「ミタちゃん」「ミタッチ」と好かれていた。担任からも「ミタちゃんなら大丈夫」と信頼されるリーダー系。

5年生の春、女子がささいなことで二つに割れていがみ合った。ミタちゃんと同じ“陣営”になったのがネバダたん」だ。


ネバダ
友だちと遊ぶよりひとりで絵を描く方が好き。ただ本人の自虐のとおり決して絵は上手くない。成績は優秀。クラス内にそつなく自分の位置をキープしていた。

自宅は山の中腹で、バスの本数も少なくて不便。両親、高校生の姉、祖母の5人家族。父親はサラリーマンだったが病気で倒れ、自営業を始めて家にいた。母親はパートで週末も仕事だ。ふだん家にいる父親の方がより教育熱心だったらしい。

「物静かで優しい」
先生からみたネバダの印象。先生の手伝いもよくする子でパソコン得意。「ただ、みんながいる所では明るいが、ひとりだと暗いことがあった」。
本人も自己紹介の用紙に、「性格は裏と表があるらしい…」とおどけ気味に書いている。

「はっきりノーと言えない、自己主張ができない。でもしっかり者の頑張り屋」
これは彼女の両親の見立て。よく会話もしていた。放任でも虐待系や過干渉だったわけでもない。
担任の家庭訪問で父親は我が娘を自慢した。担任も問題ないと思った。


ミタちゃんとネバダの2人とも絵を描くのが好きだったこともあってすぐ親しくなり、交換日記を始めた。さっそく“敵陣営”の子の悪口を書きまくった


*知的な少女だったのに何があった

事件のあと、HPは消されたが、ネバダの言葉はコピペ増殖して今も電子の海に散らばっている。

それをたどると、人と接するのがちょっと苦手な女の子で、まあ「ゴス」というかバイオレンスやホラー系を好んだり、魔術魔法に興味があったりはするが、行き過ぎってほどではない。まだ。

自然破壊を悲しんだり戦争や差別に反対し、「世界に一つだけの花」風の詩を書いてみたり、この年頃の文系少女特有のちょっと背伸びで健全で純粋

意外に大人びた部分とガキっぽさが同居している。文章もそれなりに破綻なく構築されて小6と思えばむしろ知的で「異常」の兆候はまだない。

6月1日の血まみれの姿なんて少しも浮かばない。
決して問題児ではなく、「よい子」だった。


そうしてミタちゃんとネバダが仲良くなった頃、彼女たちの5年1組はおかしくなった。

学級崩壊だ。



──学習ルームの惨劇まであと1年。  >>(3)

▽参考文献
▽取り入れなかった噂・デマ・中傷・事実と確認できなかった話

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| 事件激情 | 01:57 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

いよいよもってと期待しましたが、ここまで読む限りでは
よくある学校の風景ですよね。

期待が増幅して身体の中で重くなり、殺人に走ってしまいそうなので、
次回は真相を明かしてくださいよ~!(笑)

| かあたん | 2010/03/29 11:41 | URL |

何がトリガになったのか、期待しながら続編を待つ!

| いわのふ | 2010/03/29 15:58 | URL |

Re: タイトルなし

>かあたんどの

そうですね、調べ始めたときは初めからイッチャッてるのかと思いましたが、わずか4か月前まで驚くほどフツーなんですね。こうして見ても殺人のさの字も見えない。

なんだかだらだら続いてすんません。けっこういろいろ書かないと真相が見えない、っつう厄介な話で。

次回から暗雲が立ちこめます(たしか)。

| noriaky231(仮名 | 2010/03/30 13:39 | URL |

Re: タイトルなし

>巌の府どの

なんだかこの時点では、ふつーの学園少女モノみたいですね。

トリガはなんだったのか。次回くらいから分かり始めます。すんません長くなりそうす。

| noriaky231(仮名 | 2010/03/30 13:41 | URL |















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