【事件激情】再掲@サティアンズ 第十八解【オウム11月戦争計画】



────早川紀代秀の書いたものとされる「早川ノート」抜粋
(〓はあまりに乱筆のため読み取れない文字)
カルマからの自由 カルマの解放〓〓〓〓〓〓〓〓
もう戦うしかない 救済には四〓〓
ヒナヤーナ マハーヤーナ
タントラヤーナ ヴァジラヤーナ
遊びの救済は終った
ユダヤ世界せいは〓〓まもなく
最高の科学者→優秀な兵器 数あつめ
平和→怒りの行相(ママ)にフォームをかえる (調和を〓〓)
'95 11月→戦争
〈サリン・イペリット・マイクロ波・マスコミこうせい〉〓〓わかっていることである
尊師にとって 敗ぼくは→死である
(宝島30 1995年12月 岩上安身/オウム「11月戦争」の恐怖より)

1995年4月6日、赤坂署生活安全課がオウム信者の車を捜索。
銃の部品類とともに、システム手帳と大学ノートが押収された。
通称「早川ノート」
そこにはオウム真理教の国家転覆計画が記されていた。

オウム真理教による犯行の経緯、警察の捜査は、原則公開された情報にもとづく。
登場する公官庁、機関、組織、部局もすべて実在する。
ただし白鳥百合子はじめこの色で示されるのは、架空の警察官であり、
実在する人物と彼女らの関わりは、創作全開ソースは妄想である。
また、被害者のうちこの色この表記*の人物は、仮名である。




書き主認定された早川紀代秀は、書いたのは自分ではなく「防衛庁長官」岐部哲也で本当は「岐部ノート」なのだ、と再三否定しているが。
'95-'05 歌バカ (通常盤)


防衛庁長官岐部哲也@マハーカッサバはいまいち認知度低い幹部で「平井堅がインド人だったら」みたいな顔、麻原の空中
まあたいてい訂正されず「早川ノート」のままだったが。
早川だろうが岐部だろうが、要はオウム真理教の上級幹部層にこういう物騒な意識が共有されてこういう準備をしてた、しようとしてたのは間違いないところで。
「早川ノート(仮)」は覚書きらしく、汚ったない手書きで、
兵器や高性能爆薬をロシアから買うためのメモ、
オーストラリアでウラン鉱脈を探してるメモ、
サリンの製造工程、サリンプラント略図や薬物についてのメモ、
エリツィン大統領の側近ロボフなどロシア人脈のメモ、
幹部会議メモ、武装化から信仰のこと、書き主の神秘体験まで、
サラダみたいにぐっちゃぐちゃ書き殴られている。

とにかくこの「早川ノート(仮)」と、さまざまな説法、出版物から、
オウムの「ハルマゲドン」と「救済」の正体が見えてくる。
麻原予言のすごい恐怖な災厄の中身とその時期は、まあころころころころ変わる。

「2006年にハルマゲドン」「いや97年」「いや1999年」
「96年から98年1月」


「1995年から一気に日本はハルマゲドン、第三次世界大戦」「95年から2000年」
「96年春から第三次世界大戦」「2003~2006年、広島にもう一度原爆が
だから結局いつだよ。
Armageddon/Armageddon 1975
「ハルマゲドン」は聖書のオマケ「ヨハネ黙示録」に登場する。
オカルト好きの人気コンテンツだ。カルトにも。
ハルマゲドンはゲだしドーンだし仰々しい響きだけども、ヘブライ語で「メキドの丘」って古代によく合戦のあった中東の地名でしかなく。リアルメキドの丘 全世界の軍隊が乗るのは…無理ぽい
まんまこの丘のことか、天王山とか関ヶ原とかと同じ「決戦の地」のたとえみたいなもんか、今となってはわかんないんだけども、いちおうそこで未来的にキリスト軍対悪い顔のやつ率いる全世界の王の軍が最終決戦、もちろんキリスト側が勝つんだなこれが。
とあるんだが、![]()
宗教、映画、ドラマ、小説、マンガ等々、巷にあふれる多種多様多彩なハルマゲドン像は、黙示録に数行しかない描写からそれぞれ都合よくでっち上げたもんでしかなく、どれがホンモノかというとどれも勝手な創作だ。というか黙示録そのものが未来小説コナンみたいなもんであるし。
麻原(や他のカルトも)はノストラダムスの大予言とごっちゃにしてすごい大変な災厄人いっぱい死ぬ超戦争的な俗っぽい使い方してるんで。元ネタは聖書じゃなくてアニメとかマンガだろう。だいたい日本で起こるって時点でいかにもなんで。
宗教とくにカルトは、教祖の求心力ねらいで多かれ少なかれこの手の終末観を出してくる。ただ「いつ」かはぼかしたり20年先とか近いような遠いような未来を設定して「賞味期限切れ」にならないよう保険を掛けてるんだが、
オウムは思い切りよ杉で2、3年後とか来年とか、賞味期限めっちゃ近い。
ゆえに求心力が劇薬効果的にドーピングされる、のはいいんだが、その反面あっちゅう間にその期日が来てしまう、もちろん的中しない、というのが致命的な弱点である。
となれば自分で起こすしかない。
マッチポンプ式のセルフハルマゲドンである。
▼日本征服Ver.1

「1995年11月、国会開院式にあわせてヘリで東京上空からサリンを散布、
天皇、閣僚、国会議員、そして東京都民を大量殺戮。
日本の混乱に乗じて、アメリカ・ロシア・北朝鮮の核戦争が起き、
その間、教団はサティアンのシェルターに籠もり、
核戦争後に国家機能が消滅した日本をオウムが統治する。
もちろん麻原は神聖法皇としていちばん偉い」
もしくは、
▼日本征服Ver.2
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日本の主要都市で同時多発でサリンを散布、ハルマゲドンを呼び起こし、
その混乱に乗じて2.26事件みたいなクーデターを起こして首都制圧、
宗教国家「太陽寂静国」を建国する。
もちろん麻原は神聖法皇としていちばん偉い」

その後、1995年11月で真理元年になりor1997年に麻原は日本の王となり、
2003年に世界の大部分はオウム勢力圏になる予定。
どっちも「混乱に乗じて」のとこらへんから十六次元的に飛躍して、どうすりゃ都合よく外国が三つ巴でしかも日本で核戦争してくれるようにもっていけるのか、何をどうすりゃ国民がオウムに従うのか、
そのへん質問したら尊師に「常識に縛られている!」って怒られるんだろう。
いちおうそれ向けの軍隊もつくろうとしてたらしい。
そのひとつが「白い愛の戦士」↓

日雇いやホームレスのたまり場で娯楽映画「白い愛の戦士」のエキストラ募集。
集まった50人を「体力づくり」とだまして和歌山の山村にある小学校@休校中で強化合宿。自衛隊レンジャー部隊出身信者がマジ軍事教練。で、新信徒庁長官大内早苗@ソーナーが説法>オウムに勧誘。特殊部隊をつくろうとしていた。
(まもなくバレて小学校から追ン出され、あえなくひと夏の思ひ出に)
ロシアの特殊部隊訓練に短期間参加した信者もいたし(@銃を撃って反動すっげーくらいの体験ツアー的訓練だけども)
ミラレパ新實ひきいる風紀委員集団自治省でも格闘訓練とか思いついたように始めたそしていつの間にかやめた。
征服後の新憲法まで考えて「皇室は葛城姓を与えて民籍に」とか妙なとこに細部までこだわってるのに、最も考えとけよな征服までのプロセス部分はなんもなし。
まあそのーなんだー。もうちょっと真面目に準備ちゃんとしようぜ。
そのへんがオウムの薄っぺらさバカバカしさとしていろいろ揶揄されたりするんだが、
それでも上のトンデモ天下統一計画のうち、実現可能な部分が1か所だけある。

「サリンを散布」
計画とっかかり段階「サリンを散布」だけは、ブツさえあればやれてしまうんで。
そしてリアルに犠牲者多数が出るんである。

じっさい早川は国境を越える物凄いネゴ力を発揮、軍用ヘリをホントに輸入して上九一色まで持って来ちゃったし、「早川ノート(仮)」ではヘリのレンタル業者もリストアップされてたし、のちに登場する「あれ」も手に入れてたし。
さらに松本サリン事件で使ったサリン散布トラックも量産しようとしていた。
あとは撒くサリンさえ量産できれば実行に移せてしまう、ジェノサイドが。
つうか麻原にとってこれが最重要に大事だったはず。
ほかの計画部分のやっつけ仕事とくらべてサリン都民ポア計画だけはビジョンが異様に鮮明。“さりんとみんぽあ”って妙に響きがかわいいが。
'95 11月→戦争
東京都民の一斉ポア、ハルマゲドン(セルフ)の実現。
1995年が明ける直前、
麻原一味は行き当たりばったりしながら意外なほどその危険水域へと近づいている。
そして終末にむかってひずみひび割れもゆっくりと。

1994年12月17日──

上九一色村からちっとばかり離れた、とある某場所

富田隆@シーハ 端本悟@ガフヴァラティーリャ
「すまんな端本、車まで手配してもらって。巻き込んじまったな」
「そんなのいいって。車は適当に乗り捨てろ」

ソーマ@オウムシスターズ長女
セーラー@オウムシスターズ次女

「お姉ちゃん、ぜったい幸せになってね」

「ありがとう、クミちゃん。あなたたちも」

噂のふたりソーマとシーハ富田、ついに駆け落ち、愛の逃避行である。
ガフヴァ端本とセーラーは、車を用意したり、駆け落ちの段取りまで全面協力。
ソーマはセーラーの姉だし、富田も端本に空手を教えてくれた先生だし。
ソーマとシーハの熱愛問題はヒラ信者にいたるまで知らない者はなかった。

ソーマは教団の広告塔にしてアイドル信者で、このとき麻原直属の法皇官房イニシエーション部に所属。麻原のお気に入り。
だから富田隆との熱愛発覚は激しく問題になった。
そもそも初めは麻原の「すぐハルマゲドン突入だ、みんな早めに結婚しとけ」っつうかんじの軽口を、シーハ富田が真に受けて、ダンスの教え子で好みだったソーマにコクったのが始まり。こらオウムで恋愛はダメでしょって話で終わりそうな。
ところが、それがそうならなかった。

「うれしい」
応じるのかよ。
このソーマ、信心深い一方で天然というか、女子のリビドーにも正直なとこがあって、前にもそのへん麻原に怒られたりしてる。本人に悪気はないんだろうが天性の小悪魔にょろよというか。
勇んだシーハ富田は麻原に直訴>「結婚させて」>「ハルマゲドンが済んだらな」
いつだよそれ。
待てないシーハは「一緒に脱走しよう」とソーマに持ちかけるが、

ソーマが富田に告白する。
「こんなわたしと結婚してくれますか」
衝撃の過去。

「わたしは──」

「尊師に──」


尊師が人を超えた神としてありがたいイニシエーションを施してくださっただの左道タントラだの霊的エネルギー注入だのを信じるようなないような信じたいような。

その後もたびたび特別イニシエーションの“ありがたい”施しは続いた。
麻原側近中川智正が手配師役で河口湖のモーテルに呼び出され。
彼女だけでなくそういう女信者が何人もいる。中には未成年も。
でも意識の奥の奥底じゃ教祖の権威をかさにきたセクハラレイプで。それも心の奥底では分かっていて。だから隠していることが後ろめたくて。

「尊師は神としてイニシエーションを施したんだから、
わたしは自分がバージンだと思ってる。こんなわたしと結婚してくれますか」
ソーマはフラれるの半ば覚悟で告白したようだけども、
シーハ富田、そこは漢。
教団の醜い暗部を知って憤る。あのクソでぶめ。
逆に燃える。

が、ソーマ、「地獄落ちだ」「来世はシカになるぞ動物になるぞ」
さんざん責め脅されて、いったんは「あきらめます、遮断します」
泣く泣く誓わされる。シカそんなにいやか。
ソーマはいちおう麻原マンセー信者で、そのへんが無敵カップル端本セーラー組@男女とも筋金入り不平分子とはちがって脆いんで。

ソーマと会えなくなってしまって、罰としてステージまで降格のシーハ富田は悶々、納得ならず。
露骨に不満をもらし「不平分子」とされて上層部と緊張ただよう。
そんな卑劣で汚い奴らに引き裂かれてたまるか。ますます燃え上がる。
なんか軽めの話が状況がお膳立てしていつの間にかマジ恋になってるんである。

一方、麻原の意向で、ソーマはLSDやら覚醒剤で薬漬けにされてしまい。
これで純愛もあえなくおしまい、と思いきや、

「はい、もしもし」
「端本さん? ソーマです」

「わたし逃げてきました、隆さんに知らせてください」
いきなりソーマ自ら脱走である。
麻原一味、こういうときの女子のド根性見くびってました。
この日はオウム出資のロシアンオーケストラキーレーン↓来日公演で、


麻原と取り巻き連中が出かけた隙にサティアンから抜け出したんである。
端本セーラーの関係に比べると、富田ソーマの恋路はなにが2人を、とくにソーマを突き動かしたのか正直よくわからん部分がある。
ソーマからのヘルプに応じた端本は富田に連絡、車も用意しお膳立て。
こうして2人は、ついに駆け落ち下向。
シーハ富田、自分の名前が赤文字であるにもかかわらずいいのか。
というかたしか社交ダンス講師だけにダンサーの女房と一緒に入信したはずだが、いなかったことにされてるな完全に。

「チカちゃんとキィちゃんには?」
「…………」
「なんであの子たち! お姉ちゃんがあんなに──」
「……クミちゃん怒らないで。いつかあの子たちとも話せるよ、ちゃんと」
三女タントラナンダー、四女タントラアバヤー、
妹2人@未成年は教団に忠実。姉たちの豪快な破戒っぷりを快く思わず、溝ができて。
だからソーマも下の妹2人に何も言わずお別れするしかなかった。

「富田さん、姉をお願いします」「ありがとう、あんたと端本も」
「クミちゃん、あの子たちをお願いね」「元気でな」



「ありがとうね、悟さん。無理言って」
「ぜんぜん無理じゃないし、隆さんにも世話になってたし、気にするなって」

「お姉ちゃんにはホント幸せになってほしいんだ」

わたしは、ありがたく尊師のお力をいただきます

妹たちにはまだ何もしないでください
せめてあの子たちが大人になるまで

あの子たちはまだ子どもです、お願いします、どうか



お姉さんから聞いたのか?

お姉ちゃん、そんなのぜったい自分で言わない人だよ。
私が知ってるってこともお姉ちゃん知らないと思う。

こうしてオウムシスターズ4姉妹は散り散りとなり、

それぞれ数奇な運命をたどる。

姉たちとは違って、妹たちはオウムの価値観の下で“まっとうに”生きた。
三女タントラナンダーは、19歳にして菩長補に出世、ラーメン工場(@ダーキニーの日常ワーク。神聖な食、しかもグル好物のラーメンづくりは名誉なワークだった)の責任者にまでのし上がる。
姉妹4人が無邪気に笑顔で舞い踊ってた頃の関係に戻ることはなかった。

「ねえ、悟さん。……私たちも、ここ出ない?」
「え?」
「私たちも下向して、ふつうの結婚生活、しましょうよ」
「ん、そうだな……」

その悟さん、少し複雑な心境。
シーハ富田も自分も、松本サリン事件の実行犯だからだ。
しかも端本はプラス坂本弁護士一家殺害にも関わってる。
もし逮捕されたら、死刑だろう。

このまま罪が暴かれることなく、彼女にも知られることなく、
ずっと一緒にいられるんだろか。
富田はどうだ。松本サリン事件に関わったこと、ソーマにずっと隠していけるのか。
そしておれはどうだ? おれとセーラーは。
なんとなくこのまま教団にいて、
修行と恋愛を両立できるんじゃないかなーなんて考えてた。
できればずっと。
そんなのいつまで続くのか、考えないようにしてたんだけども。
いつか終わりが来るのは、分かっていた。

ふう。




んぶゃっ

「こ、こいつ」「逃がすな」「捕まえろっ」

「あっ痛たっ」「手押さえろ手!」「痛だだだ噛まれた」

「くそーっ、はなせーっ」

杉マリコ*@ジャズピアニスト@23歳
趣味=ボクシング
オウム同級生に騙されて出家強要>反抗>監禁>脱走>監禁以下くり返し中。
「出せーっこのやろーっ」

脱走をはかるがまた失敗、窓のない独房に監禁される。
そこでも反骨。麻原著の小冊子を「こんなもんいらないっ」
ゴミ箱に投げ捨て。

オウム看護婦「大悪行!」


オウム看護婦と取っ組み合い>大暴れ
>今度は縛られる。

「凝りすぎだって。これ誰の趣味だよ」

それでもマリコ*荒ぶる。
治療省大臣林郁夫@ミスターDV男


「むうううーまたおまえかー!」
頭をゴンゴン叩かれ、全身麻酔薬チオペンタールを大量投与。

「ひどい! 私が妊娠してるの知ってて!」
「ようし、これで少しは大人し──」


より凶暴化。

とにかく今どき珍しいくらい不屈のメンタルと無限のフィジカルで反抗し続ける。
オウムはこういう強い人にはどうすればいいのか分からなくなってしまうんである。
みんなさん基本ヘタレだし。みんな1日1食しかもパンとお菓子じゃなー。

で、牢獄コンテナに監禁。魔物を封印するみたいに。
これが幅120cm・奥行き75cmしかないコンテナってよりロッカー。
せいぜいうずくまるくらいで横になることもできない。
真っ暗闇、しかも大音響のマントラがずっと鳴ってて。
食事は1日1回>パン・まんじゅう・クッキー各1とバナナ1のみ、大小便はバケツ。

マリコ*は勝ち気だけども決してアホではない。
こうなったら下手な抵抗はお腹の子が危なくなるだけ。
大事なのは精神的に打ち負かされないこと。
ちょっと、いやかなり、ていうかめっちゃきついけど、逃げるチャンスはきっと来る。

お腹の子のためにも屈してたまるか。

「さっきから外、騒がしいな」
「なんだろうな」

「サリンとか自動小銃とかよう、正直もうついていけないぜ」
林泰男、杉本繁郎、平田信。
この3人、さいきん林の部屋で中学生の隠れタバコかよ的にたむろすることが多い。
まともなぶっちゃけ話のできる数少ない法友なんで。

科学技術省次官林泰男@ヴァジラチッタイシディンナ
マスコミの通称「殺人マシン林泰男」
のち最もデンジャーなオウム逃亡犯として報道されたが、じっさいの彼は誠実で温厚かつ後輩の面倒見もよくて慕われてる穏やかなナイスガイだった。
ちなみにミスターDV林郁夫とは親戚でもなんでもない。
国鉄職員だった父親が帰化朝鮮人、外地で軍人だった祖父は北朝鮮工作船支援者の疑いで公安調査庁にマークされていた。
オウムはなにかと北朝鮮との関係を疑われ、「オウム全体が在日朝鮮人の組織」という陰謀論的な噂まで飛びかい、公安警察にすらそのへんのコネクションを真面目に疑われて捜査されたが、
なぜか林泰男は、北朝鮮がバックボーンに最も色濃くほの見えるにもかかわらず、なぜかそういう方々にスルーされがちな信者である。
工学院大2部電気工学科卒でいわゆる高学歴エリートではなく、教団では科学者ではなくむしろ技術屋で、電気班として電気系統の配線や無線、盗聴作業にも関わる。
そういう地道な実務をこなしてる目からして、村井秀夫と科学技術省を「現実と虚構の区別もできない無能で身勝手な男」「愚かしい存在」「金ばかり使ってろくなものを作らない」「教団のためにならない」とみていた。
だからその無能で身勝手な村井の部下にされたのが嫌で嫌でしかたなかったらしく。
車両省平田信@ポーシャ


「なあ聞いたか、シーハとソーマ」
「おお、2人で下向だろ。また思い切ったよな。もめてたしな上と」
「ガフヴァとセーラーが手伝ったってよ」
「さすがフリーマンカップル。自由すぎるぜ」
「また締めつけきつくなるんじゃないのか。やっさんも気をつけないと」
自治省次官杉本繁郎@ガンポパ


「フリーマンもいい気なもんだよなー。好き勝手やってもお咎めなしで、こっちにとばっちりが来るんだから。っておれは別に心配する邪淫のじゃの字もないけどさー」
「ポパすねるなって」

ちなみに、この「まともな話のできる法友3人」のひとりポパことガンポパ杉本繁郎、
すでに最も暗黒面なリンチ殺人落田事件・冨田事件に関与してるんである。
そして残る泰男と平田信も否応なくオウム無間地獄道にからめとられることになる。
まーこの3人の関係はきほん実話だけどもアホな会話はテキトーな創作だし、
やっさんとかポパも勝手につくったあだ名だしだが。
どうやらこんな風なややダルい空気感はあった様子。

マインドコントロールとか言っても、いかにもです的いっちゃった目で虚ろにグルグルグルグル舞ってばっかりいたわけじゃなくて、
外界と同じくそれなりの人間模様に悲喜こもごもがある。
ただその思考回路があちこちショートカットして大幅に狂ってるだけだ。
まあ生活環境も外界とは大幅にちがう。
![]()
1日1食@しかも殺生禁止(人殺しばっかしてるんですーかり忘れてたが)なので肉抜きのオウム食なる根菜の煮浸しみたいなの>すら最近ケチって出なくなり>お供物なるパンとまんじゅうとフルーツとかが毎日の食事、きほん睡眠1日3時間、あとは修行かワーク、自由時間なしテレビもネットもなし読んでいいのはオウム本だけ。
ただし上級幹部は除く。![]()
![]()
もしこの時代にTwitterがあったら「イニシエーションなう」とかアホな信者がつぶやいて豪快に炎上させそうだからきっとそれも禁止だろう。
「現世の汚れた音楽」もきほん「聴くな」だったけども、これはさすがにあんま守られず部屋でみんなこっそりJ-POPとか聴いてたり。そもそも麻原がカラオケ好きだ。
教団上層部のバカバカしさと自分らの境遇への若干イラッ混じりの醒めた目線、日に日に増す閉塞感への怯え、といいながらプルシャは肌身離さない気持ち、多種多様な![]()
マインドコントロールで条件反射的に刻み込まれた信仰心、そしていつ不信心や破戒認定されて修行(リンチ)されるか分からない、死と隣り合わせの緊張、
矛盾するもろもろがごっちゃくたに共存してたカオスが、
末期のサティアン内世界だった。

「まだ騒がしいな。ケンカか? ちょっと行ってみるか」
「やっさん、やめとこうよ面倒だし」
「でも助けが必要かも、ちょっと見てくるわ、ポパいやなら待ってろよ」

「やめろ! 行かなくていいって!」
「どうしたんだよ。急にむきになるなよポパ」
「とにかくこういうとき行くな、絶対に行くな」
「わかった、わかったから、そんな怒るなよ」
ガンポパ杉本が落田事件に加担させられたのも、
たまたま騒ぎを聞いて様子を見に行ってなりゆきで巻き込まれたんで。
「ところでやっさん、毒ガス攻撃ってさー、どうよ?」

「どうよって、んなのないって。おれぜったいやめろって部屋の窓ふさがせなかったけど、ほらこのとおりなんともないし」
「ひょっとしていまサティアンで窓開くのって、この部屋だけじゃない?」
「そうかもな。井上くんもたまに来てたぜ、日光浴びに」
「光合成かよ」

「でもやっさんが検知器で計ったら、このへん反応とか出たって言ってたじゃん」
「隣にある工場、あれ肥料つくる会社だから。あのくらいの反応出るよ当然。このへん牧草地だから農薬だって撒いてるし。あ、2人ともこれ他の連中には言うなよ」
「そうだな、グルご自身やご家族にも症状が出てるとか言ってるわけだしな」

「………」「………」「………」
「そういや院長先生も信じてるみたいだったぜ、毒ガス攻撃」

「へーえ、あのおじさんよくわかんないな。偉い医者然としてるかと思えば、
いきなり子どもみたいに純粋というか」
「あとほら井上くんが、早稲田の近くだっけ部屋借りてしばらくいたろ。そんとき毒ガス撒かれたーとか騒いでたの覚えてる? 鼻血だらだら出して」
「あんなの単に鼻血だろ。ほんと毒ガスなら鼻血で済まないって」

「ま、でも井上くんにもこういう否定ぽいこと言わない方がいいよな」
「そうだな。彼はそういうのぶっちゃけて話せるかんじと違うしグルと直だし」

「………」「………」「………」
「なあ、どうなるんだろう、これから」
それを思い浮かべること自体、グルに帰依してな以下略だが、でもそれでも、

ふう。
終わりが近づいてることは、分かっていた。

一方、警察は──
1994年師走も押し迫った頃、
順調に進んでいた対オウム捜査、いきなりつまづく。
「なに、宮崎地検が?」

次席検事「相手は宗教団体であるからして、調書だけでは起訴には足りない。認可を受けた医院が犯罪に加担するとは思えない。公判に耐えられる証拠を慎重に──」
これ以上どんな証拠があるんだ? 充分すぎるだろ今でも。
ていうか要するにオウムにさわりたくないだけじゃないか地検のやつら。

というのも、宮崎地検の次席検事、5年前の熊本県波野村強制捜査のとき、熊本地検の担当検事だったんである。そのときオウムに押しかけられて宗教弾圧とかしつこく街宣され、検察の仕事あがったりでもーさんざん。おまけにろくな罪に問えなかった。
だからオウムに関わりたくないんだろう。
警察はようやく対オウムで意志統一され始めていたが、
検察はまだそのへんの認識ぜんぜんである。
宮崎県警も粘ったけども、地検は「まだまだ」の一点張りで一歩も譲らず。
けっきょく宮崎地検をうんと言わせることできず。
年内の強制捜査は無理だろってことになってしまった。

警察庁刑事局も張り切ってたのになんかこう出鼻をくじかれたかんじ。
となると、仕切り直しで強制捜査は年明け以降。
でも、4月に統一地方選挙があるんで警察は全国的に選挙違反系で忙しくなる。
しかたないから、強制捜査は大幅に先延ばし。
じゃ来年春の選挙おわってからってことで。ちゃんちゃん。

「それマジですか? 春まで放っといたら彼らに時間を与えてしまいますよ!」
「しかし検察が腰を上げないことにはな。まあそう怒るな。ここまで来たんだ、焦らずとも上九一色の施設が走って逃げるわけじゃない」

そういうことじゃなくて!
時間が過ぎるほど、オウムが危険な存在になっていくというのに!
白鳥百合子はいろんなツテから自分の集めた情報と、

教団内にやっとのことで確保できた「協力者」からの話からして、

時間が経てば経つほどやばい。
じっさい1994年末の時点でオウム真理教は、

サリン溶液を計33.6kg生成。
八王子サリン、松本サリン、散布実験で使った分を引いた残り約15リットル、

そして量産用サリンプラントではサリンこそまだ完成しないものの、第3工程のジクロ生成には2回成功して50~80リットルずつ、さらにそのジクロを使って第4工程にも取り組んで、1回だけジフロ@最終前駆体の生成にも成功していた。
陰謀大好き論者がよくよりどころとする「第七サティアンでサリンはつくれない」というどこぞのカリフォルニアの専門家の意見だけども、
たしかにサリンプラントでサリンはできない。つくったことは一度もない。
クシティガルバ棟とサリンプラント建設前の第七サティアン3階に急ごしらえした臨時反応釜、遠藤誠一のCMI棟ことジーヴァカ棟で生成されたんである。
そして最終第5工程は、設備の気密補強もまだろくにできてないとはいえ、
工程そのものは前の4工程に比べればそうむずかしくなく、
ジクロとジフロを混ぜ、イソプロピルアルコールを加えて、アブラカタブラすると、

最終生成物つまりサリンが生まれる。
この当時サリンプラントは、必要な最終素材を3つとも手にしていた。
目標の70トンは無理でもけっこうな量のサリンをつくる一歩手前にいたわけで。
だから強制捜査を4か月も先延ばしする刑事局の判断は、致命的誤りなんである。
ここまできてこんなくだらないことで足踏みするなんて!

うーどうすれば。
長官には今度直訴やったらクビだぞとか目が笑ってない笑顔でクギ刺されたけど。
クビ上等でもう一度直談判してみる?
でも長官がその気になっても警察が地検に命令はできない。
まず長官が検事総長を説得。で、最高検から地検に要請してもらう、と。
駄目だ、これじゃけっきょく春になっちゃうや。
悠長な仕掛けではもう間に合わない。どうする。
ひとつだけ方法がある。
思いっ切り劇薬だけど。副作用も激しくついてるけど。
たぶんこれしかない。でも。

でも、きっと憎まれるな、私は。

警部、渋谷くん。
ひとりって、やっぱり不便だよ。

おとうさん、
私に最後までやり抜く勇気をください。
こうして1994年は終わり、そして年が明ける。
【第十九解 宇宙人】へとつづく






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