【事件激情】県警対14歳 ─終章─【酒鬼薔薇聖斗事件】

1995-99年にそれは起きた。


携帯電話が爆発的に普及。あっというまにポケベルを駆逐、まもなくiモードがスタート、携帯はケータイとなった。
翌1998年、アップルが初代iMacを発売。のちWindows系メーカーもとっつきやすく改良。さらに接続使用料も大幅に下がり、
インターネットユーザーのすそ野が一気に広がった。
そして社会の仕組みも、子ども国を取り巻く環境も、
根こそぎ変わっていく。

偶然ながらコレ↑もちょうど97-98年が絶頂期、
やっぱり時代の変わり目に咲いたアダ花で、新世紀になったら亜光速で忘れ去られ。
酒鬼薔薇聖斗、
ただ一地方の怪事件に終わらず。
1997年6月28日午後8時36分を境に、何かが決定的に変わった。
もろもろな余波も。
キレる17歳、少年法改正と厳罰化、少年A冤罪説、革マル派の侵入盗聴事件、検察調書や犯行メモ、市教委書類の流出──
そんなのぜんぶ書いてると無限に広がる大宇宙なので、
せめて、事件で人生変わった人々の「その後」を──
ちなみに実在の人々なんで、後日談は妄想やねつ造ではない。
被害者遺族

彼らもまた、友が丘から去った。
3月竜が台通り魔事件の犠牲者山下彩花の自宅には、
逮捕以来、朝から晩までマスコミが押し寄せ。翌日予定してた百ヵ日法要も中止に。
一家は親戚や友人宅に避難して離ればなれに。
のち母親京子は手記『彩花へ 「生きる力」をありがとう』を発表した。
淳の父親守ものちに手記『淳』を発表した。
注目を浴びたこの事件で、
加害者 >少年法や責任能力なんちゃらで税金でぬくぬく好待遇
一方、
被害者と遺族 >無視、蚊帳の外、ほったらかし、援助ナシ、悲惨
なぜか加害者の代わりに被害者側が延々と罰を受け続ける、という体制の矛盾が表面化して世の中が沸騰。
「クソガキを甘やかすな!」
更正? 反省?
そんなのしていらんから痛い目に遭わせろ!
少年犯罪の厳罰化&刑事訴追の年齢引下げへと光速で傾いていく。
人権派「加害者といえど人権が…」、
統計派「未成年の犯罪はむしろ減ってるし、低年齢の凶悪犯罪も昔からあって…」
っつう異論は、この奔流を前にまったく説得力持てず。
いや言えば言うほど逆効果に。
その着火剤として、酒鬼薔薇聖斗事件は充分すぎるほどの破壊力だった。
そして、
子どもが犠牲となる殺人のお決まり犯人像だった、
無職30杉オタクに、
不登校の中学生オタク、が加わった。
加害者家族

神戸から去った。ゆくえは隠された。
両親は「ボクがこうなったのはみんな親のせい」と恨む彼から面会すら拒否られてたが、そのうちなんとなく和解。
何度目かの面会で母親が、
「冤罪というのはありえへんの?」
と訊くと、ベソ顔の彼の答えは、
「ありえへん」
1998年、被害男児の遺族、1億4000万円の民事訴訟を起こす。
「両親の責任を認めさせる」「審判内容が法廷なら公表」
をねらいまして。
が、
彼&両親は全面的に訴えを受け入れて、
賠償金1億4000万円がそのまま判決。
一方、山下彩花の遺族との間でも、慰謝料8000万円で示談成立。
計2億2000万円の負債。2億2000万円って……何円だっけ?
彼と両親は手記の印税のほか月12000円を遺族に支払っている。完済は何世代後かしらんが。
数年後、両親が新聞に近況を語った記事が載って、

「あれこれマスコミに話すな」と彼激怒。
で、没交渉に。
いびつだった親子の絆はやっぱりいびつなまま終了した。
田中“デカ長”

田中刑事と逆探知Gは、酒鬼薔薇逮捕後も土師家に残り、マスコミや野次馬から一家を守り、支え続けた。
田中刑事がついに土師家を去る日、
最後に守が、しみじみと、
「おってくれて、助かりました」

彼女はその言葉が忘れられず。
警察を退職後、
土師守たち犯罪被害者遺族が設立メンバーに加わって生まれたNPO「ひょうご被害者支援センター」に参加。
事務局長として犯罪被害者のために忙しく駆けめぐる。
山下捜査1課長

その後、警察署長などを歴任。
酒鬼薔薇聖斗事件について語ることはなかった。
むしろ忘れられなかったのは、
かつて捜査主任官を務めた「赤報隊事件」こと「朝日新聞阪神支局襲撃事件」。
定年後、一度は郷里鹿児島へと帰ったが、やはり彼は骨の髄までデカだった。まもなく兵庫に戻って赤報隊事件資料の整理を続けた。

2002年5月、阪神支局事件は未解決のまま時効。
「解明しなければならない事件だった。私もこの事件から逃れることができない」
県警は時効成立後も捜査本部を残して捜査を続ける異例の措置をとった。
ある警察キャリア

酒鬼薔薇事件から2年半後
ギガトン級の警察不祥事が炸裂。
きっかけは↓この事件

新潟県警の長年の怠慢と不手際とウソ発表がバレて大騒ぎになるんだが、
じつはそれさえプロローグでしかなく、
少女@19歳、9年ぶりの救出のまさにその日、


県警本部長と幹部たちが、
警察庁の関東管区警察局長と一緒に、
温泉旅館で一献やりつつ接待麻雀。
しかも局長は警察庁肝いりの県警特別監察の任務で来ていた。
監査側と監査され側が一緒に遊ぶのもまずいのに、
プラス、
少女@19歳救出の急報が来てもそのまま麻雀つづけてました、いや楽しかった、
と明るみに。
「雪見酒疑惑」は、もうね、
総本山の警察庁まで巻き込むスキャンダラスなスキャンダルに発展。
この雪見酒局長こそが、

そう、この人です。
酒鬼薔薇事件解決のあと、関東管区警察局長に昇進してたんである。
まあ管区局長は「上がりポスト」で勝ち組とはいえんけども、いちおう最高幹部サークルの仲間入りで、いろいろケチついてきた身としては上々の花道かも、
という矢先の、
警察史に名を刻むスーパードラゴンスープレックス超々級の大失態。
なんつーかこの人、地下鉄サリン、長官狙撃事件、酒鬼薔薇聖斗事件、そしてコレ。
なぜか年表に載りそな大事件にちょうど居合わせてしまう、とことん間の悪さ。
長官まで史上初の懲戒処分(減給)を受けて、
騒動の張本人が無傷でいられるわけなし。

当然ながら誰かポスケテと見回しても、

今度ばかりは誰も助けてくれず、警察を去る。
最後の最後まで間が悪かった。
というか彼ひとりだけ間が悪いんじゃなく、
ニッポン警察そのものが、
この前後もこのあとも、




出るわ出るわ。事件数は急上昇、検挙率は急降下──、
このあと何年も警察はぐらぐら揺れ続ける。
一方、
酒鬼薔薇聖斗との対決を制した兵庫県警は、



……やっぱり、あんま変わりまへん。
ただ、警察はこういう負の面ばかりじゃなくて。
特命専従班の架空の刑事たちは、まあ架空ゆえに一種理想像なんだが、彼らのような警察官もキャリアノンキャリア含めてたくさんいる、とは言っときたい。
友が丘中学

岩田校長
当時いろいろ管理責任なんかをバッシングされたが、まあうやむや。
ところが、
翌年3月、思わぬ形でこの人、ニュース種に。
卒業式が終わったその足で大阪へ直行。
どこ行くと思ったら、

しかもステージで野球拳まで。

じつは校長、かなりのマニアでありました。
が、運悪しというか天網恢々というか、
写真週刊誌に屹立する勇姿がバーンと掲載。
とたんフルボッコにして火だるま。当然ながらパイや卵もなすりつけられ、
定年直前で謹慎処分。あえなく天下りもパア。何もかも失う。
それでも元校長は
「勤務時間ならいざ知らず、ワシはなんも悪いことしとらん」(声:常田富士男)
なじみの踊り子にも「たいへんやったね」と慰められ。
それはそれは頑固に通い詰めたんそうじゃあ(声:市原悦子)
ある少女

神戸市内の看護専門学校で学ぶナースの卵たち、
その中にひとりの女性の姿が。
熊谷ナオミ*

3月竜が台通り魔事件で刺されて、命をとりとめた女の子。
事件から10年。当時9歳だった彼女も19歳。

事件でナオミ*は心身ともに傷。男子が怖くて近づけず、一人で歩くのに怯え。
そんなナオミ*が、一念発起して目指したのは、

自分を救った医療の道、自分を支えて励ましてくれた看護婦さん(当時の呼び名)のような看護師さん(今の呼び名)。
「今度はわたしが人を助ける番や」
というほのあたたかな希望の光、で終わろうと思ったけれども、
やはり彼のその後をスルーってわけにはいかないわけで。
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