「
あーダメだ、失敗だ!」
諜報省次官井上嘉浩@アーナンダ師長蒸気が出たのになんの
被害も出てない。中身は
ただの水ってどういうことよ?
ほんとなら
ボツリヌス菌がばらまかれてたはずなのに。
地下鉄サリン事件5日前に起きた【霞ヶ関駅アタッシェケース事件】の怪
麻原「都心で大事件を起こし、警察の目を上九一色からそらさせよう。警察庁に近い霞ヶ関駅でボツリヌス菌散布せよ」
目的も標的もほぼ同じ「プレ地下鉄サリン事件」ともいえるんだが。
ただし15日のこの騒動、被害ゼロ、
そもそも毒物ですらなかったんで、殺人未遂も殺人予備も成り立たず、起訴されず追及されず終わったんでさだかではなく。
なんで失敗したかもじつはよくわかってなくて、
科学技術省製作の噴霧器アタッシェケース、噴出口の穴があいてると目立つんでメッシュで覆ったけどもそこで菌が詰まってしまったか。
そもそも遠藤誠一@ジーヴァカのボツリヌス菌の培養が失敗だったか。
「こっちが
敵の目の前で危ない思いして仕掛けたのに、なんなの一体!
作ったやつが自分で仕掛けに行けばいいんだ!」
どっちにしろ
井上の怒りは
作ったやつ→安心安定の
無能村井以下
科学技術省や
ジーヴァカじゃなくて
ただのバカだろ
遠藤!に一緒くたに向けられてるんである。
一方の
警察も、対応が不適切もいいとこで、このあと
地下鉄ぜんぶが
厳戒状態になってもいいようなのに、なぜか以後もとくに気にかけた様子もなく──
3月20日の朝に至るまで
地下鉄全線まーたくの無防備だった。
のち
被害者の会の
高橋シズエと面会した
國松元
長官、
「
オウムがなんらかの
かく乱工作に出るという情報は得ていたが、どこで何をするのか特定できなかった」と言い訳したんだが、
わずか5日前にズバリ「
地下鉄」「
毒物散布」という立派ヒントがあったんである。
同じ所に2度砲弾は落ちない、ってことで以後
地下鉄はスルーしたのか。
それで
警察の陰謀ガー真犯人ガーとかは言わないけども、よくわからない。たぶん
警察にも「
なぜ地下鉄を警戒してなかった?」が、わからないんでないだろうか。
というくらい
地下鉄サリン事件直前の
警視庁はカオスの極みにあった。
というのも、
「
強制捜査Dデイは
3月19日とする!」
「え、
4日後ですか」「
総監…それは…」「準備がとても間に合いません」
「あー君たちは
それを私だと思い込んで話しかけておるのか、それとも気づきながらわざとやってるのかね」
「あ、こ、これはすみません、
総監」「まったく気づきませんでした」
「
(似たよーなもんじゃんか)」
井上幸彦@警視総監 「
そのとおり! 4日しかないのだ! だからとっととやる! ぼさっとするでない!」
警視庁は
警視庁で焦らなきゃ急がなきゃの事情ありで、
マスコミから「なぜ早く踏み込まないのか」「
假谷さんを救え」やいのやいの責め立てられてるんである。
最悪予想>着手に遅れたから
手遅れでした>
警視庁猛バッシング喰らう>どうせ
警察庁は待ったかけるだけで責任とりもしない>ならば
勝手にやらせてもらう! おいっちにぃおいっちにぃ警察庁なんて知るか也!
警視庁独断で
強制捜査に乗り込むぜ夜露死苦!もちろんそこに
警視庁ノンキャリ軍団の
サッチョーへの反発心も。
さらに
城内ファミリーの牛耳る
警察庁に対して腹に一物あり@
井上総監が乗っかって煽ったもんだからもうとまらなくなった。
そのあとはまさに
修羅場。上九一色村サティアン群、さらに
東京総本部はじめ
都内13拠点も
一斉家宅捜索するんで、
捜査1課400名総動員でも足りない。
特別人事発動ゴーッ!化学の知識のある
捜査員を、
捜査2課3課さらに
所轄署からも引っ張ってきてどんどん
捜査1課に臨時編入。さらに
生活安全部からも
化学工場事故検証の経験者を引っ張ってきてこれも編入。
2月の定例人事異動がやっと終わったばかりなのに…(TмT)、
警務部一同号泣である。
さらにただでさえこのミッションインポッシブルに、
「すべて
秘密裏に目立たないように
やれ!」「
記者クラブにも気づかれず
やれ!」
総監閣下のムチャぶり続けざまに炸裂。
だから大混乱なんだけども、静かに静かに準備は進み、何をするかまったく知らないまま、ただただ突然の辞令騒ぎに右往左往する兵隊たちである。
さらにワケワカのまま編入された臨時
捜査1課員、自己紹介も挨拶も説明もないままいきなり
防護マスクの装着訓練させられ。
警視庁は
松本サリン事件を受けて、
化学防護マスク64個を慌てて買ってたんである。
同時に、
警視庁航空隊のヘリが
山梨へと飛び、
上九一色村の
サティアン群を空撮。粛々と突入計画を練り始める。
井上幸彦。
機動隊長経験もある
武闘派。が、
あさま山荘事件翌年に
機動隊長になった、
というほんのちょっと生まれる時代が遅かった
戦国武将。
伊達政宗みたいな。
即断即決、
剛胆不敵、やると言ったら
やる。
もののふの生き様みせてやらん! さあ皆の者! 討ち入りの支度じゃあっ!─────────なぜおまえが言う!という
剛烈大将の下、
警視庁軍団、大車輪で準備に激走。
本富士署公安係小杉@オウム警官も、
なにか
本庁がざわめいてるのは感じとる。
署内の
刑事課も落ち着かない。
強制捜査が近い? でもいつが
Dデイかは分からない。
本庁幹部も知らず、
捜査1課でさえ「
19日決行」を知るのは
寺尾捜1課長だけ。
だから
所轄はだまって言うとおりにしてろや状態で。
とにかく
本庁方面が急に緊迫してるかんじ。
この静かな大騒ぎ、お隣の
警察庁はお隣にもかかわらずぜんぜん気づいてないんだが、
とうぜん
白鳥は敏感に嗅ぎとる。
でも、
(上に知らせるのは
やめとこ)悪い顔や。
あ、いかん、
マリモ。
マリモの水入れ換えないと。
もう
3日も帰れてないし。また帰れんし──
「うーん誰かに頼も。
渋──」
「また、
佐々さんでいいや」
でいいやとはなんだ! 「おい、いま何時だ」
「
3時くらいじゃないか?」
「終電とっくに終わってるよな」
「また待ちぼうけかよ。ほんとにこの道とおるの?」
「確認したから間違いない、……はずだ」
「今日も帰ってこないな。明日また来よう」
「あれ?
ガフヴァは?」
「
端本ぉおお、またどっか消えたな。
フリーマンにもほどがあるぞ」
「
無線もつながらんし。どこ行ったんだやつは」
「まさかまた
セーラーとどっかに。くっそー」
「いいよあんなやつ置き去りで(怖いし)。帰ろ帰ろ」
待ちぼうけをくらった
白鳥百合子ポア実行担当隊である。
3月16日 木曜日 朝 ──
地下鉄サリン事件の
4日前 おはようみんな! 昨日に続いて「
朝いちばん御前会議」だよ!
顔をそろえたのは、
井上総監、
石川重明@刑事部長 櫻井勝@公安部長 寺尾正大@捜1課長、
小風明@公安総務課長、という昨日の
警視庁幹部の面々、にくわえて、
コーヘイくん中田好昭@警備部長 (また着ぐるみなの? 流行り?)
(しかもどうして
兵庫県警の?)
機動隊を前備えとするからには
警備部はとうぜん引っ張りこまれるわけである。
「というわけで、
機動隊に
第一線やってもらうからな!」
コーヘイくん「……え?」 というわけでって、なんのわけで? え?
中田的に初耳。
コーヘイくん 「
オウム捜査は
警察庁主導と決まってたんじゃないですか?」
「それに、
上九一色は
山梨県ですよ。
機動隊は勝手に
他県へ出動できません!」
「
機動隊を動かすには
警察庁の許可が必要です!」
「
オウムが
自動小銃持ってるとか、
サリンとかそういう話はどうするんですか? 危ないじゃないですか
機動隊員が!」
でも
剛腕井上の前ではそんな強く言えず、
2デシベルくらいでボソボソつぶやいたくらいで押されてしまいましたんである。
コーヘイくん でもちょっとだけ勇気を振り絞って、というか
保身力全開で、
中田警備部長、
警察庁警備局の
近石警備課長に全力でチクったんで全力で。
2年後の
「酒鬼薔薇聖斗事件」にも
兵庫県警本部長として登場するこの人、このみごとな小役人っぷりは
「新潟監禁少女救出時にもかかわらず雪見酒麻雀事件」でもぞんぶんに発揮されるんだが。
中田部長のチクりで初めて
警察庁は、
隣人の爆走トライアルを知ったんである。
ちっ、あっさりバレちゃったか。残念。
警察庁大慌て。こっちは
黄金週間までには、くらいのイメージだったのに、
いきなり
3日後!? 前倒し杉だ! 國松長官、急ぎ電話>
井上総監「
資格者」と呼ばれる
国家公務員資格I種試験合格警察庁採用者警察キャリアは
絶対的年功序列なんか文章黒いぞー、
負け組はつぎつぎ早期退官して後進に道を譲ってくバトルロワイアルなオキテゆえ、
高級官僚クラスはきれーに序列がそろってる。
長官───國松 1961年入庁
警視総監─井上 1962年入庁
次長───関口 1963年入庁
官房長──菅沼 1964年入庁
刑事局長─垣見 1965年入庁
警備局長─杉田 1966年入庁
國松は現役でただひとり
井上より年次も格も上、じっさいの職歴でも先輩後輩。
城内舎弟のもやしども何するものぞ@
剛腕井上も、
國松パイセンにだけは渋々ながら耳を傾ける。そのへん体育会系なんで。
警視庁が
教団に一番槍をつける、これは認めよう。
だが
19日は急ぎ杉だ。
教団施設にまだ
サリンが残ってるとの情報もある。
いやいや当方、
逃亡信者の情報から
第七サティアンの
プラントは失敗、
サリンはもう
加水分解されて、
無い、と断定しておりまするゆえ。
こちらも別の情報源から
サリンがまだ残っている、と情報を得ているのだ。
「その情報が正しいかどうかは分からぬでしょう」
「そう、どちらの情報も現段階では確かではない。ならば、最前線に向かう
警察官の尊い生命のことも考えなければ」
ぬぬむ………(そういうとこ突かれると
武将型は弱い)
「
ラジコンヘリや
自動小銃も仔細がわからないのだ。
機動隊に
対化学兵器、
対自動小銃の対策もさせなければ」
「ぬ、そこは
警視庁としてもしかと配慮していくさ支度しておりますぞ」
言っておくが
警視庁の持っている
防護マスク程度では
サリンを防ぐには足りない。
サリンは皮膚からも眼球からも吸収される。
自衛隊の
化学戦装備が必要だ。
それはそうでありますが……
(え、そうなの? 知らなんだじつは焦)というわけで
井上総監が、まあしぶしぶパイセンに譲歩、
強制捜査の
決行日Dデイは
警察庁の判断にお委ねし申す、となった。
「ただーし、我ら
警視庁、早駆けの
出陣をやめたわけではありませぬぞ」
「
假谷さんを早く
オウムから救い出せと
マスコミの突き上げが激しく。
どうせ
杉田局長あたりが
『慎重すぎることはありません』となどと嘯きおるでありましょうが、あやつの言うなりにしておっては
来年になってしまう。
この期に及んで
来月やら
春以降やらぬるい日程を決められては、
警視庁としては
承服いたしかねるしだい」
(そのときは今度こそ
勝手にやらせてもらいますからな!)
チェケラッ!とりあえず暴走超特急の速度を少し緩められてひと息の
國松長官である。
が、今度は
國松・垣見・杉田の三者会議でまた会議は踊る。
垣見「可能だったら
19日でもいいんじゃないか」
杉田「いやいや、しっかり準備して訓練もして。
慎重すぎることはありません」
「本当に
『慎重すぎることはありません』と言うんだな…」
「は?」
けっきょく三者会議は物別れに。
午後にはこの3人プラス、
刑事局と
警備局の幹部連も加わってさらに言い合い続く。
刑事局「
サリンない
ない早く
早く」
警備局「
サリンある
ある遅く
遅く」
お互い主張するだけで一歩も譲らず、ただ時だけ過ぎて。
頭痛が痛い…。
“はい、どちらさま” 「君、
警視庁の動きを知ってて黙っていたな」
“あ、ついうっかり報告するの忘れてました、以後気をつけます”「もう一度、私に意見する気はあるかね」
「──私もう1回
直訴したら
クビなのでは?」
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