【事件激情】再掲@サティアンズ 第十五解【治療省大臣林郁夫】



【事件激情】再掲@サティアンズ 第十五解【治療省大臣林郁夫】
────「オウム真理教とムラの論理」熊本日日新聞社編 朝日文庫
H・Iさん(43)の意見を聞いた。
元国立療養所晴嵐荘病院・循環器科医長。心臓移植の研究者でもあった。
現在は、オウム真理教付属病院(東京・中野区)に勤務。
妻も麻酔科の医師。家族で出家したという。

「修行は催眠や洗脳じゃありませんね。
私は自分の判断で教義を理解して入信したのです」

「道場は有害な情報にあふれた社会とは隔絶されています。
しかし、その環境を選んだのも自分です」

「宗教までも催眠・洗脳というのなら何でもそうです。
現代人は消費や享楽をあおるCM情報などに流されて、
ひとつの方向に行かされているじゃありませんか」

治療省大臣林郁夫@ボーディサットヴァクリシュナナンダ師長@48歳

裁判で麻原と師弟対決したり、苦悩あふれる自叙伝「オウムと私」(タイトルもう少しどうにかならんかったんかい)を出したり、何度かドラマ化されたり。
「悲劇の人」のイメージが強い。「加害者もまた被害者です」的な。
だがそれ以前にメディカル部門の最高幹部として、イリーガルドラッグイニシエーションや、拉致監禁、薬物尋問、記憶操作を実務面で推進した非合法活動の主要人物で。
オウムきっての高学歴エリートで。
そして早川紀代秀と並んで教祖麻原より年上で、
社会経験も分別もある(はずの)大人の信者で。
そして地下鉄サリン事件の実行犯で。

オウム真理教による犯行の経緯、警察の捜査は、原則公開された情報にもとづく。
ただし“丸メガネの女”は、架空の警察官であり、
実在する人物と彼女の関わりは、創作全開ソースは妄想である。




滝本太郎弁護士んーんーんーんー(UFO的浮遊音)が、
「リンチ殺人」とともに神奈川県警に情報提供したもうひとつ、
「麻薬による宗教儀式」

LSD入りジュースを飲んで、ぱらりるれろりろーん。
「キリストのイニシエーション」
単なる薬物効果で手っ取り早く神秘体験もどきを演出である。
もはやヨガも仏教もぜんぜん関係なくなってるんだが。
LSDと覚醒剤のコンボジュースの、
「ルドラチャクリンのイニシエーション」
ドラッグハイ状態で、
「修行するぞ修行するぞ修行するぞ」
「三宝に帰依するぞ三宝に帰依するぞ三宝に帰依するぞ」
「悪趣をポアするぞ悪趣をポアするぞ悪趣をポアするぞ」
っつう決意文なるキーワードをたたき込む洗脳テクノロジー。
もう宗教ですらない、麻薬中毒患者のたまり場である。

もともと麻原、口ではくるくる偉そうなこと言うんだが、
ヨガやら修行の類がじつはうまくない。たぶん高弟の誰よりも劣る。

宣伝用の演出で雪ん中に半裸で座ったりしたけど、ほんとは寒いしやりたくないし。
たとえば、水中クンバカという水ん中で呼吸を最小限にしてうんたら修行、

井上嘉浩@アーナンダがこれでテレビ番組向けに5分30秒潜ってみせた。
彼はこういう荒行が得意である。

「なにを怖がっているんだ!」
麻原これにきつくダメ出し。
でもそういう麻原の水中クンバカ最長記録はつつうと、
15秒。

「なにを怖がってるんだ! あ、おれか」
そういう麻原的に時間もかかるししめんどくさいし下手したら弟子より劣る求道的部分をはしょって忠実なロボットを増やせて便利やん最高やんってことで積極的導入。
できれば最初からそうしたかったんだと思われ。

さらに非合法活動が増えるにつれて麻原どんどん疑い深くなり。
スパイ狩りのため薬物でうすらぼけぷー状態にして尋問するナルコを多用。
その発展型で脳電気ショックで記憶を消す記憶操作法ニューナルコも多用。
オウム真理教が信者確保と統制のためにやってることは、いわゆる破壊的カルトはもちろん新興宗教や怪しげビジネス、怪しげセミナー、果ては信者数10人から30人くらいの零細プチカルトと大差ない。よりどころが違ってもやってることは金型でもあるかのようにきほん同じだ。
だが、とくにオウムから脱し切れず、脱会してもすぐ出戻る信者も多数なのは、この安易な薬物投与と電気ショックでグルマンセーの教えが深層心理レベルまで深く刷り込まれてるのが大きな原因で、もはや理屈で納得させてなんとかなるレベルじゃなく。

薬物イニシエーションがどのようなものか、
元信者や元下級幹部のブログに体験談が書かれてたりする。
カルトからの脱却
白龍のオウム・アーレフで過ごした日々
んー、もろヤクのトリップに宗教的昂揚がミックスされてすごいことになっている。
この刷り込みはしつこくなかなか消せない。ブログの元信者もなんとか現実と宗教アイデンティティの折り合いをつけて脱麻原しようと何年ものたうち回ってて痛々しい。
そのへんオウムは史上幾多のカルトの中でも最凶最悪にタチが悪い。
外部にバレるとやばいのは教団も認識してて、とくに在家信者の薬物イニシエーションは着替えさせオムツ装着。失禁した尿から薬物が検出されるのを避けるために。
強制捜査を目前にして、麻原がまず林郁夫らに廃棄させたのが、ルドラチャクリンのイニシエーションの仕様書と決意文だった。

そして信者の霊的ステージも修行やら成就やら数字で計れない尺度は薄まって、
ブラック企業並の“営業”ノルマ、教義やらを丸暗記する学校みたいなペーパーテストが外界以上にハバをきかせるようになっていく。もはや俗世以上に俗世的。
そういうつらいのがいやで救いを求めてきたヘタレたち呆然。
1994年秋以降、末期に至り、もはやオウムは宗教らしい体裁すら失っていく。

古参幹部たちも「なんか…これって違う、よな」
うっすら感じながらも、そういう疑い自体よろしくない、と打ち消して加担する。
グルに帰依してな以下略だし、それにさあ、あのう、ほれ、そのう、
とりあえず特権階級って居心地いいよね!


イクオが教団のサリン開発を初めて知ったのは、
死にそうなミラレパ新實を治療したときでした。
ミラレパは八王子サリン事件で自分で撒いたサリン吸ってしまったのでした。

げっ、と逃げ腰になったイクオ、
でもこの頃、妻りらがロシア支部に、2人の子は波野村シャンバラ精舎にいて、
「逃げたら家族が殺される」
さらに例によって「疑うことはグルに帰依以下略」って思考停止もあって、
イクオは非合法部分にどんどん深入りする羽目になります。

サリンにくらべたら、
麻薬イニシエーションなんて脳電気ショックなんて薬物支配なんて、
イクオ的にはぜんぜんかわいいもんでした。
イクオからしたらどうしようもなかった、ってかんじですが、家族からしたら、勝手に自分で選んで勝手に家族を巻き込んで、勝手に家族のためにとかいって犯罪に手を染めて、挙げ句に家族にまで犯罪やらせて。なんか不幸のマッチポンプというか。

なにこれ。家族が別れて住めなんて聞いてないし。
わたしが出家なんて絶対いやって離婚して子ども引き取っても結果同じだったじゃん、というか少なくとも子どもにはふつうに会えてたはずじゃん、子どもたち学校も行かせてもらえなくてどんどんバカになるし。

ついこのあいだまでイクオとりらは絵に描いたようなエリート夫婦でした。
イクオは慶應大学医学部卒、心臓外科医として有名病院勤務。
りらも負けてません、父=高級官僚と母=名医一族。名門のご令嬢かつ慶大医卒の麻酔医という才媛。
美男美女カポー、高級マンション、子ども2人、ひともうらやむ幸せファミリー、

だったのに、なんで? なんでこんなことに?
改めてりらは悔やむんですが、もう引き返せません。
だって麻酔医のりらもトンチキオウム医学に組み込まれ、
イリーガルドラッグ仕様のイニシエーションに加担することになってたからです。

たしかにダーリンの宗教萌えは結婚前から不安要素ではありました。
死んじゃった患者について悩み、生と死に悩みだして、世界のすべてを説明できる法則があってそれを教えてくれる師がいるはずだとかいって師匠さがしがライフワークになってました。ないですってそんな法則、いないですってそんな師匠。
いたらそれ必ず詐欺師か自信過剰の人ですから。
結婚式も当時イクオが入信してた阿含宗の仏式で、りらも入信してましたんですが、もともと宗教にあんま興味ないんで。夫の趣味に付き合わされてたかんじ。

だから一家そろって全財産お布施して出家だって夫が言い出したときは相当モメました。そりゃそうでしょう。趣味が高じ杉よ!
でも慶大時代にりらの方から積極的アタックして惚れた弱みといいますか、別れて子どもがどうなるかなんて考えたりしてけっきょくりらが折れまして。

家も家財も車も預金もぜんぶとられて、え? お布施っていうんですか? はあ、とにかくその寄付だかお布施だかさせられて家族そろって文無しで出家です。
周りからしますと転落人生にしか見えませんし、りらも半分くらいというか90%くらいそう思ってますけど、夫はモチベハイなんで不平も言えません。殴られるし。

そうイクオは入信前から妻に手を上げるやつになってました。
魂の苦悩のせいなのか生か死か知りませんがそれ以前にただのDV夫です。

あと入信ずっと前の“理想を求めるエリート医師”時代から、
18歳年下の看護婦と不倫してましたり。
しかも出家で不倫を清算したはずの看護婦も誘って出家させましたり。
イクオの「悲劇の人」イメージがすううっと薄まっていきます。
もちろん魂の告白本にそういう不適切なことは載ってません。
医者が死だの生だの意味だのに執着し出すとまずロクなことにならないのは、
百億万年前から定説で決まってるんですが、

やっぱり、よりによっていちばんあかんゴールに行き着いてしまいます。
イクオ一家の出家は90年5月、オウムが選挙で惨敗して石垣島で高い会費のセミナーやって選挙で散財して凹んだ分を取り戻そうとしてた頃です。
このときすでに麻原一味は坂本弁護士一家殺害で禁断の一線を越えちゃってましたし、同じ頃に国会前でボツリヌス菌も撒いちゃってます。
いっぱい宗教書読んだり宗教入ってみたりしてたイクオですが、
長年の心の遍歴は、なにひとつ役に立たなかった模様です。
心臓外科の権威でいい大人だったイクオは、ブランド的に箔もつくんで広告塔になり、オウム真理教附属医院のトップ、つづいて治療省大臣になって、
宗教と科学の出来の悪いアップリケみたいなオウム医学体系を構築します。
教義を採り入れた独自医療の成果で附属医院の死亡率は異常に高くなります。
生と死をテーマにうんうん悩んでいたイクオ的にそれどうよ、ですが、どうも頭の中で理屈をこねてというか思考停止してこれもありだよね、にしてたようです。

グルとイクオの師弟関係はけっこう複雑です。
教団の首領としては有益なイクオを重宝しつつ、究極エリートへの憧れと妬みとそんなイクオを子分に従えてる満足感と、それゆえの疑心暗鬼がない交ぜなグルです。
教祖麻原をふくめ、オウムには元阿含宗もけっこういました。
阿含宗@旧名観音慈恵会はまあ通好みの密教系新興宗教ですが、「阿含宗では物足りない、もっと本物を」って自分探ししてるうちに仏教の原点とか宣伝してるオウムへ行き着いてしまうパターンです。オウムの修行のいくつかは阿含宗のをパクってより激しいかんじに変えてるんで、これぞ本物とかつい思っちゃうんでしょう。
イクオは12年も阿含宗やってたんで3年しかやってない麻原にはちょっと警戒しときたい存在です。
人心を察知するのに長け(もちろん宗教者でなく詐欺師的に)てるグルは、
「こいつ、まずくなったらおれの寝首をかくやつだ」
警戒しつつイクオをちょっとずつ裏稼業にとり込んでった模様です。
まあ寝首に関してはいつもいつも当たらないグルの予想が珍しく当たります。

で、そのうち嫁りらも不倫相手エイコも同じ附属医院で働き始めます。
妻妾同職場の物凄い構図です。怖いです。その場に居合わせたくないです。

エイコは初々しい新人看護婦として就職した病院で医科長イクオと出会いまして、イケメソだし理想を目指して医療の意義とか生と死とか深く考えてて@それって医者的にふらふらしててかえって危ないってことなんですが新人看護婦にそこまでわかりません。
人の命を救う医療の大先輩として「先生」を尊敬、目がきらきら。

そこから>不倫。うーん真面目で男慣れしてない美人看護婦の陥る不幸パターンです。
善良だけどじつに自分が無いというか、エイコはイクオに誘われるままセミナーに参加、そこで言われるまま入信、気づけば出家までさせられてました。先生がいいというからなんとなく見てみただけでオウムの教えにそんな興味もないのに。
いくらピュアでも流されすぎなエイコです。


リラもエイコも、もともと気質は善良で邪気がなく、なにごともなければ、
「いい人」カテゴリーの住人として人生を送れるはずの女性たちでした。

そういう人ほど、イクオみたいないらん活力のありあまる“善意”の人にぐいぐい巻き込まれて、災いのまっただ中に気づけば立ってしまってるもんであります。
被害者にとったらいくら元がいい人だろうが犯人は犯人なんですが。
オウム犯罪で捕まった信者の少なからずがこういうパターンでした。

イクオは教団での地位が上がるのとあわせて、爽やかナイスミドルがみるみる独裁的になり怒りっぽくなり、もともと暴力癖が芽生えてたのがさらに悪くなって、りらだけでなく、エイコにもすぐ手を上げる最低のクズ野郎になり果てます。

なんだか裁判で涙に暮れてるイクオの魂の彷徨と苦悩なんてぜんぜん薄っぺらでどうでもいい自己憐憫にしか聞こえなくなってきます。

エイコは逮捕されて、やっと自分の意志をみせます。
この期に及んで「黙秘しないと地獄行きだ」とか接見で脅してくるオウム弁護士とその後ろの教団に激しく愛想つかし、オウム弁護士を解任。
オウムとの訣別を表明、教団の敵だった被害対策弁護団に弁護を依頼します。
「先生」と出会ったとき新人だったエイコも30歳になっていました。

「先生」の人生にからめとられたあの日あのとき以来、

エイコが初めて自分の意志で決めた自分の行動でした。



なんて内輪でわさわさやってるあいだに、
警察のオウム包囲網が着々と出来上がり始めた。

長野県警の“ヤマシタさん”と並行して、
宮崎県警の秘匿捜査本部もじりじり立件に向けて進み中。

例の「拉致ワゴンから乗り換えた車」をつきとめる捜査は、まず文明の利器Nシステムではなく、高速インターの料金所めぐりから。まさに足で稼ぐ超地道な捜査。刑事ドラマならBGMとともに10秒で終わる部分がじつはいちばん長いし重要。

大っぴらには使えないが、捜査本部を仕切る管理官の手元には、

“丸メガネ”から託された数組の自動車ナンバーがある。
中国自動車道を東へ東へと果てしない聞き込み行脚を続ける捜査員が、ついに、


料金所係員「車の中で点滴されて寝てる男の人を見た。ヘンに思ったから覚えてる」
その料金所の記録をせっせと遡り、丸メガネのくれたナンバー候補と照合。
該当するナンバーの車は…、

あった!

車種とナンバーが分かれば次は早い。全国津々浦々を網羅するNシステム様が活躍。
全国幹線道路のNシステムが読み取った膨大な自動車ナンバーは、警察庁4階にある情報通信局のメインサーバに昼夜せっせと自動入力されている。
「乗り換えた車」が、オウム真理教附属医院のある都内に直行ではなく、いったん途中で東名高速から下りて、山梨県上九一色村を経由したらしいと分かる。

じつは拉致ワゴンの自損事故で時間ロスしたので麻酔薬が足りないと慌てたオウム医師佐々木正光が、上九一色の治療省に立ち寄って麻酔薬補給をしたんである。

あとはもうこの「乗り換えた車」を見失うことはなく、
都内のオウム真理教附属医院までの大牟田父*拉致ルートが全部つながった。

ばんざーいばんざーい
さらに全捜の達しで制約の外れた秘匿捜査本部は、ついに直接オウムにぶっこんだ。
「大牟田父*の移送と治療に関わった信者の任意聴取をしたい」
オウム弁護士青山吉伸は「ワークが忙しくて」とかしぶってたが、そんなんじゃやりすごせないと分かったのか、10月になってやっと信者の聴取に応じる。



大牟田父*のオウム次女香織俊彦夫婦、オウム三女理恵、拉致ワゴンに同乗してたオウム医師佐々木正光、オウム看護婦村上栄子、附属医院のオウム医師オウム看護婦。

オウム側の言い分↓
「大牟田父*が脳梗塞で危なかったので附属医院に入院させ、治療してあげた」
まあオウムらしい勢いだけやたらいいまくしたてなんだが、なんでわざわざ動かしたら危ない患者を1300キロも車に乗せて東京まで運ぶんだよ、である。
口裏合わせも半端なのか証言もバラバラで矛盾だらけ。
でも既存の医療は信用できないから娘たちがぜひオウム医療でと望んだとか屁理屈こねようと思えばこねられる。オウム側はそれで押し通すつもりだったろう。
でも、
大牟田父*くらい資産持ちだとかかりつけの主治医だっているし、
定期的に健康診断だって受けてるんである。
捜査本部はきっちり主治医の証言も取った。

主治医の回答↓
「拉致前に診察したが大牟田父*さんに脳梗塞の兆候はまったくなかった。解放後にも検査したが、もちろん脳梗塞もないし、治療跡もまったくなかった」
オウムの釈明あっさり論破。
宮崎県警は立件にむけて着々と証拠固めを加速する。
それだけでなく、静岡山梨千葉愛知、そして神奈川長野──あちこちの県警刑事部が、オウムがらみ事件の捜査に乗り出していた。
ここまで来たら、さすがにオウムも警察の方針が変わったことに気づく。

オウム真理教は、警察こそ「真の敵」だと知った。
救済を阻む弾圧者、CIAとフリーメーソンとユダヤ人とあとえーといろいろこの国を闇からコントロールしている巨悪の手先、やつらがついに牙を剥き、本性を現した!
弾圧者と戦え! 真理を守れ! 救済を救済するぞ!




「ただいま」
「警視どの!」


「渋谷です、警視どの。出所おめでとうございます」
「出所じゃないけどね」
「……開けてください。今後の作戦会議しましょう」

「悪いけど帰ってくれる。一人でいたいんだよね」
「じゃ明日また来ます」
「明日もだめ」
「じゃあさっ──」

「明後日も明日明後日も明々後日も五明後日もだめ」
「あのう、じゃ、いつなら」
「ずっと。わたしはまだ監視対象だし、君も面倒なことになるよ」
「構いません、自分は警部とは違います。警視どのを見捨てたりしません」

「あのさあ、そういうのありがた迷惑だよ、重いよ、帰りなさい」
「帰りません」

「あーもういいかげん察しろ! 無能!」

「…え」

「なにヒーロー気どってんの。まさかわたしを助けようとか思ってる?
あんた何もできないじゃん。子犬みたいに尻尾振ってばっかで。
わたしがやばいことになったのも、あんたらをダシにされたからだよ!

作戦会議? いちばんの作戦はあんたたちと組まないこと! あんたみたいな能なし引き入れて損した。わたしの仕事はあんたらには高度すぎるってつくづく分かったよ!」
「警視どの……」
「あーあ、今までみたいに一人でやってた方がずっと効率いいわ。誰かと一緒になんて仲間ごっこ飽きた、面倒増えるばっかり。人は人形みたいに操るに限るよ」
「警……」

「あーもーうるさい、帰れ! 二度と来るな役立たず!」



【第十六解 ワイルドスワン】へとつづく






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