【事件激情】ウルトラNW : 第16便@再掲【暗殺学校】
*第15便
【事件激情】ウルトラNW : 第16便@再掲【暗殺学校】
米国の介入がきっかけで右派軍政と左派ゲリラの内戦が起き、90年代の内戦終
結までに多くの犠牲者を出した中米のエルサルバドルとグアテマラ。
米国から強制送還されたギャングと麻薬犯罪組織が巣くい、かつて反共産主義、
いまは反組織犯罪を掲げる米国の「支配」が続く。
ラファエル・ランディバル大(グアテマラ市)のレンソ・ロサル教授(政治学)
は「米国は変わらない。かつての敵は共産主義、いまの敵は麻薬犯罪組織。常に
武力で解決しようとするスタイルも同じだ」と指摘する。
最終的な目的は、脅威の米国到達を防ぐことだ、というのだ。
──毎日新聞「中南米の乱」2012.8.より
7th July, 2001
2001年7月7日
Saturday
土曜日
Route 46
Route 46, South Hackensack, New Jersey
ニュージャージー州サウスハッケンサック 国道46号線
Dave Agar, Police officer
パトロール警官デイブ・エーガー
不審者チェックは地味だけどけっこう大事な仕事なんだぜ。こういう幹線道路沿いの安モーテルの駐車場では、よく盗難車や指名手配犯の車が見つかったりするしね。
Knight Inn
Knight Inn, Jade East motel
ジェイドイーストモーテル ナイツイン
んー、なんとなくあの1988年型トヨタカローラが気になるな。
【事件激情】ウルトラNW : 第16便@再掲【暗殺学校】
米国の介入がきっかけで右派軍政と左派ゲリラの内戦が起き、90年代の内戦終
結までに多くの犠牲者を出した中米のエルサルバドルとグアテマラ。
米国から強制送還されたギャングと麻薬犯罪組織が巣くい、かつて反共産主義、
いまは反組織犯罪を掲げる米国の「支配」が続く。
ラファエル・ランディバル大(グアテマラ市)のレンソ・ロサル教授(政治学)
は「米国は変わらない。かつての敵は共産主義、いまの敵は麻薬犯罪組織。常に
武力で解決しようとするスタイルも同じだ」と指摘する。
最終的な目的は、脅威の米国到達を防ぐことだ、というのだ。
──毎日新聞「中南米の乱」2012.8.より
7th July, 2001
2001年7月7日
Saturday
土曜日
Route 46
Route 46, South Hackensack, New Jersey
ニュージャージー州サウスハッケンサック 国道46号線
Dave Agar, Police officer
パトロール警官デイブ・エーガー
不審者チェックは地味だけどけっこう大事な仕事なんだぜ。こういう幹線道路沿いの安モーテルの駐車場では、よく盗難車や指名手配犯の車が見つかったりするしね。
Knight Inn
Knight Inn, Jade East motel
ジェイドイーストモーテル ナイツイン
んー、なんとなくあの1988年型トヨタカローラが気になるな。
こんなとき役に立つのが、NCIC@全米犯罪情報センター様だぜ!
NCICは入力ナンバーに盗難届が出ていたり、所有者がアメリカの司法の及ぶ範囲で指名手配になってればたちどころに表示する。全米法執行機関の必携ツールである。
所有者 ナワフ・アルハズミ 住所 カリフォルニア州サンディエゴ市
あーアラブ人か。なんて読むかよくわからんなこいつら。みんな同じ顔に見えるし。
とくに怪しいこともない、というかまんどくせ。次行くぜ。
そりゃそうである。このときまだCIAはアルハズミとアルミダル略してハズミダルの件を隠してるんで、指名手配もされてないし、NCICで引っかかるはずもない。
が、
このとき、このモーテルには、筋肉メンアブドルアジズ・アルオマリがチェックイン、
さらにハズミダル2人組も同じ週に近くの食堂でメシ食ったのがカード履歴に残ってたんで、彼ら主要メンもモーテルに居合わせた可能性高し。
当局はまたまた9.11前に実行犯を引っ捕らえる機会を逃したわけで。
9th July, Monday
7月9日
月曜日
アメリカ入りした「飛行機計画」の筋肉メンが次々と銀行口座とクレカをゲット中。
筋肉メンは本番当日の腕力担当であると同時に軍資金受け子の役割も担うことになっていた。頭数が増えれば振込額も小分けにできてより目立たちにくくなる。
口座を持つには米国在住中の身分つまり社会保障ナンバーが必要なんで、彼らは先入りしていた主要メンたちを保証人に、あっさりと各州の住民IDを手にしていった。
クレカやデビットカードの購入記録によりますれば、
このころからアルカイダメンはとある似た買い物を繰り返している。
キャンピングナイフ、アウトドア用レザーマンマルチツール、
ボックスカッター、折り畳み小型ナイフ──
どれも刃渡りが4インチ*10cm以内
つまり航空便の機内持ち込み可のサイズだった。
19th July, Thursday
7月19日
木曜日
モハメド・アタ、スペインでハリドシェイク・モハメド、ラムジ・ビナルシブとすりあわせ*【第14便】を済ませ、マドリード発>アトランタ着のデルタ航空に乗る。
これがアタの生涯最後のアメリカ国外旅行となる。
Hartsfield-Jackson Atlanta International Airport, Georgia
アトランタで再入国するアタちょっとピンチに。
過去13か月のうちアメリカ国外にいたのが3週間しかなかったんで、「移民」枠扱いで二次審査に回されそうになったんである。移民枠はとうぜん審査も厳しくなる。
でもけっきょくは一次審査でなんとか「商用・留学滞在」と認められて審査をパス。
もうお約束の流れというか、出国前のアタがビザ期限切れで不法滞在状態だったことや、交通違反の出頭命令スルーで逮捕状が出てたことも、
入国審査でまったくかすりもせず。
54 days before ‘Nine Eleven’
──9.11まであと54日
登場する事件テロ紛争戦争、その捜査は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子はじめこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりは、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。
Tokyo
東京
「頭を上げてください、水鳥さん」
「なぜ、ご自分に責任があると思われるのですか?」
「わたしのしたことが白鳥さんを窮地に追いやったのは間違いありません」
「ペルーの事件が日本人に一人の死者も出さず解決したのは、白鳥さんが裏で工作したからだと疑っていました。見張り役だった少年が人質を撃たなかったのは、白鳥さんが少年の家族を利用してそう仕向けたのではないかと」
「その疑念がふくらみ、誰かに打ち明けずにいられませんでした。
いえ、決して白鳥さんを告発しようと思ったのではありません」
「自分だけで抱え込んでいるのがただつらかったのです。
いま思えばとんでもなく愚かなことをしました」
「それでどなたかに疑念を伝えたと?」
「はい、元上司に。尊敬し、信頼する先輩でした」
「……でした?」
「ペルーの件を洩らすことができたのは、彼しかいません」
ガンガンガンガンガンガンッ
「おきろ売女プッタ、誰が眠っていいと言った?」
「水か電気か、どっちが欲しい?」
「…………」
「決められないなら両方になるぞ」
「……電気」
ガンッ
「電気をわたしの体に流してください、お願いします、だ」
「電気をわたしの体に流してください、お願いします」
ガチャッ
ギギッ
ジャキッ
ギリリッ
カチャッ
カチカチ……
ガチッ
カチカチカチ、ガチッ
「おまえが電気のほうを欲しがったんだぞ」
「自分で選んで決めたんだからな」
カチ、カチ
カチ──
ヂヂヂヂ──
バチバチバチバチバチバチバチ
「ひっ、ひぐっ、ひっ、ひっ、うひっ」
「ぐふっ、いひっ、はあはあはあ」
「はあはあはあ、う、ううっ」
──1975年に南米チリ軍事政権による拷問を告発した英国人女医
シェイラ・キャシディの証言 : 「週刊女性自身」1976.2.12
“拷問の館に帰ると、尋問官たちは、私をめった打ちにし、
また‘人間バーベキュー’の拷問を──”
“「電流をもっと強くしろ」
地獄の責め苦が、それから1時間もつづきました──”
“──悲鳴さえあげることのできない激痛に、
神経は切りきざまれ、恥ずかしいことに、
私は大小便をたれ流したのです──”
シュウウウ──
「あ、ああう、うっふ、くふっ」
「ああ、うう、はあはあ」
「汗だの小便だの汚しやがって。それじゃ俺たち犯るフォジャール気にならねえよ。
セックスの前に水浴びできれいにしてやる」
「なに驚いてる? 選べとは命令したが、片方しかやらないとは言ってないぞ」
「おまえは俺たちの命令に従う。だが、
おまえの言うことを聞くかは俺たちが決める」
「ひッ、やめ──」
「いやああ──」
警察庁警備局に属する秘匿部署「チヨダ」
全国都道府県警の公安警察を裏で束ねる司令塔
もともとの符牒「サクラ」が、神奈川県警の共産党幹部盗聴事件で身バレしたんで、>解散、>と見せかけて「チヨダ」に改名してみたけれど、>こんどはオウム事件流れでやけに名が売れてしまったので、>“何者でもない”という意味で「ゼロ」に再改名。>結局それがまた名前になっちゃったんで、>「名前の言えないあれ」「名無し」になって、>警察庁警備局フロアからひそかにべつの警察関連施設へと引っ越した。
移転先はスッパ抜きねらいの左翼メディアもまだつかんでいない。
で、その「名無し」の隠れ拠点のある某所で。
3人の男がひそかに秘匿で内緒の密談中。
安藤隆春@警視庁公安部長
「すこぶる深刻な事態です」
杉田和博@内閣危機管理監
「仕掛けたのが何者かはわからんわけだな」
‘本郷’ @警視@警視庁公安1課管理官
「白鳥には敵が多いですが、ここまで大仕掛けができる相手となると限られてきます。複数国の公的機関も動かしたわけですから厄介です」
「やはり杉田さんが内調とI・Sで進めているあの案件が理由ではありませんか?
白鳥はあれの要中の要といっていい存在ですから」
「うーむ、そうだとしても白鳥の役割を知る者は限られているはずだが……」
「白鳥の口癖ではないですが、“読めばちゃんとそこに書いてある”。ピースをつなぎ合わせ、白鳥のはたしている役割を読み解いた者がいるのかもしれません」
「この件の全容は、我々のうちに留めるとしよう。野田くん@警視総監にも田中くん@長官にも、備局長@漆間巌にもまだ伏せておきたい。我々だけで対処する」
「外務省は? 白鳥拘束を把握しているのか?」
「水鳥室長は誰にも明かしていないと。元上司の耳に入ることを恐れています」
「まあ、元上司からの漏洩が本当なら、それが賢明かもしれんな」
「水鳥室長によればブシュネル大使が個人的に協力してくれると言っています」
「それと、白鳥から、万一の際の緊急連絡先を聞いています」
「ライザ・ゴードン-ハガティ。NSC@国家安全保障会議のスタッフで、」
「対テロ調整官リチャード・クラークと白鳥の連絡窓口です」
東京の‘本郷’/安藤から>ワシントンのライザ・ゴードン-ハガティ経由で、>
>リチャード・クラークの耳に白鳥拘禁の知らせが届き、
>FBIニューヨーク支局の秘匿捜査チームにも。そして、>
Salou, Catalunya(Cataluña), Estado Español
Salou, Catalonia, Spain
スペイン カタルーニャ州 リゾート地サロウ
「やっと見つけましたぜ、ジョン」
「ロシーニ、なんでここに?」
Mark Rossini
マーク・ロシーニ@FBIニューヨーク支局特別捜査官
「なんでって、チーフはずっと携帯電話の電源切ってるじゃないすか。
だからスペインにまだいた俺が、パシリとして参上したんすよ。
ミスタークラークが大至急連絡ほしいとのことです」
「おお、ディックか? ジョン・オニールだが、どうした?」
「バレリー、すまんが日程切り上げて帰国しなきゃならん」
「──ちょいと野暮用ができたらしい」
ザザザザーッ
「けはっけはっけはっ」
「げッげッ、かはッ」
「くふっ、ひっ、ひっ、うう」
カラ、カラ、カラ、カラ──
カラカラカラカラカラ──
「けほっ、うっ、けほっ、おねが、ひ、れす、もう、やめて、ゆるひ……」
「てっ」
ごぼごぼっ、ばしゃッ
ぎしっ、ばしゃッ
ごぼっ……
ごぼぼっ、ぎしっ、ばしゃっ
ぎし……、ぎし……
ぎし…
「引き揚げろ」
「水を吐かせろ、もう一度だ」
Headquarters of Central Intelligence Agency
Directorate of Operations
Bin Laden Issue Station, Counterterrorism Center
CIA本部
>工作総本部
>国際テロ対策センター
>ビンラディン問題課
入国管理局のデータベースにアクセスして、
Khalid al-Mihdhar
ハリド・アルミダルが2月にアメリカから出国、
7月4日に再びアメリカに入国 *【第13便】
したことを確認。
偽名で入国したアルミダルをCIAがどう識別したのかは明らかにされていない。
きほんアメリカのVIPと利権ガチガチなサウジアラビア様からの訪米客様をわずらわすのは連邦職員にとって鬼門なわけで、サウジに関しては相当に甘々であるが。
ビンラディンがサウジ国籍メン中心に筋肉メンを起用したのは正解だった。
というよりそもそも難易度の高いサウジアラビアのパスポートを
お尋ね者がしかも偽名で再取得できたのがおかしいんである。
アルカイダの古参メンとして中東では認知されてるアルミダルはパスポート取得どころか申請に姿を現した時点で逮捕されてないといかんのだが、そうはならなかった。
アルミダル再渡米の情報は、例によってCIAの部外秘扱いに。またもやFBIにも国務省にも知らせないまま、これまた電脳倉庫の奥底深くしまい込まれた。
どうしてくれよう
(……ユリコがいねーとこの件うまくリークする手段がないじゃん)
にしても、なぜCIAは、
ここまでしてアルミダルのアメリカ入国を頑なに隠し続けたのか。
「わざと見逃して9.11をやら自作自(略」とかの陰謀論はおいといて、
のちのリチャード・クラークやFBI捜査官たちによる“推理”が説得力あったりする。
“CIAはアルミダルアルハズミを二重スパイに雇おうとしてたんじゃないか” 説。
たしかに2人は古参メンでビンラディンにも近い。
内通者にできたら極上の情報源になるだろう。
米国内のテロ対策はFBIの管轄だけども、この2人は駆逐艦コール爆破テロにも関わっていたから、諜報の侘び寂びを知らぬ無粋なFBIはすぐ逮捕してしまうだろう。
CIAが米国内で活動するのは禁止だけども、そんなもん建前で、ニューヨーク‘裏’支局@ワールドトレードセンター7がこっそりとか、“たまたま米国内にいる友好国の諜報員”に外注したりとか、いっくらでも抜け道はあるわけで。
だからCIAはあえて2人のアメリカ入りの情報を独り占めにして泳がせていた、
そのせいでテロがおきて“多少”の被害が出ようとも。
──という説。
はたして9.11までの間にCIA側の勧誘が2人に接触してたかどうかまでは不明だが。
市井の陰謀論者じゃなくて、どんぴしゃの時期にナショナルセキュリティーのトップ付近にいた元対テロ調整官クラークの推理だし、それなりの説得力あり。
この説はFBI捜査官はじめ多くの関係者が同意する一方で、
CIA長官テネットやテロ対策センター長ブラックは顔真っ赤にして否定している。
そりゃそうだろうというか、もしCIA側の勧誘がハズミダルにすでに誘いをかけていて、2人がそれに乗るふりをしながらしれっとテロ支度を進め、しれっとアメリカン77に乗り込んでいたとしたら、
もうCIA一同は身の破滅どころじゃないんで、
この真相については、今に至るもはっきりしないままである。
(今日、何曜日なんだろ……)
(ていうか、いま昼? 夜?)
──ソルジェニーツィン著「収容所群島 1918-1956」@1974年より
‘ソ連内務人民委員部@NKVD 32種類の拷問’
15. 監獄は、箱あるいは戸棚から始まる
21. 不眠は拷問のきわめて有力な手段であり、目に見える跡を残さない
──アメリカ連邦議会上院情報特別委員会 調査報告書@2014年より
──「CIAがテロ容疑者に行った‘強化尋問技術’」
8.1 狭い場所に閉じ込め、場合によって暗闇にする
12. 48時間以上の睡眠妨害を行う 最長時間は180時間
New York
ニューヨーク
こちらの某所でも秘密の緊急会合中
Richard A. Clarke
リチャード・クラーク@対テロ調整官
Liza Gordon-Hagerty
ライザ・ゴードン-ハガティ@NSC上級スタッフ@クラークの補佐
John P. O’Neill
ジョン・オニール@FBIニューヨーク支局国家安全保障担当特別主任捜査官
と、
味方にも秘密で内緒のアルカイダメン追跡チームの面々
Steven Gordon
スティーブン・ゴードン
John and Mike, Anticev Bros.
ジョン&マイク・アンティツェフ兄弟
Daniel Coleman
ダン・コールマン
「警視庁の警視インスペクターによると、1997年のペルー大使公邸人質事件の際、
ユリコがペルー当局と殺人を共謀した、という容疑で拘束されたようだ」
ペルーでは、前年11月の大統領アルベルト・フジモリ失脚>日本逃亡で、
新政権からフジモリ界隈への追及が始まっているところ。
が、このフジモン退治は、ほかの中南米のアルゼンチンやグアテマラ、エルサルバドル、チリのような軍事独裁>政変>民主化の流れとはびみょうに性格違って、
はっきりいって単なる政争の延長みたいなもんである。
トレド新大統領はまー悪い人じゃないんだけども、おもな政策ははっきりいって「脱フジモリ」しかないし、フジモンのハイパーインフレ抑え込み>経済復興や極左ゲリラ退治をやってのけたような仕事力はやっぱり持ってないしで。
支持率維持的にも「フジモン=人類史上稀に見る極悪独裁者」を演出したいわけ
なんだが、
フジモンはたしかに汚職と不正と賄賂にまみれてて、側近モンテシノスはCIAの元協力者の元軍人、市民や知識人や左派学生の拉致暗殺も小規模ながらやらかしてたものの、
ほかの中南米の軍事独裁政権のように、政治犯ですらない一般国民を村単位、10万単位で皆殺しとかまでいってたかというと、まだまだ小悪党スケールだった。
極悪演出のため新政権がいろいろ引っ張り出してきたネタのひとつが、
「日本大使公邸事件のMRTAゲリラを私刑的に射殺」罪。*【ウルトラ 11機目】
突入した特殊部隊が拘束したゲリラをその場で即射殺した疑いで、
フジモンや特殊部隊への捜査が始まっている。
無辜の民間人じゃなく、「テロリスト@人質事件実施中」の射殺が「人道犯罪キリッ」っつうのは、かなーりのムリクリ感だが、罪状は多い方が演出に都合がいいからね。
2000年3月、MRTAメンの棺桶を墓所から引っ張り出して、
朽ちかけてた死体を再検死。
の結果、当時の噂どおり、
少なくとも6人が近距離斜め上から頭部を撃たれたとわかる。
つまり処刑スタイルで。
ベネズエラに逃げていたフジモンの片割れモンテシノスも
2001年6月、政府間駆け引きの末、ペルーに引き渡された。
そしてこのあと2002年には特殊部隊指揮官以下12名に逮捕状が出され、日本に実質亡命中のフジモリも「人道犯罪キリッ」で引き渡し要求されることになる。
「ユリコの容疑は、これにかこつけたものだろう」
仮にユリコが日本人人質を救うために何らかの工作をしたとしても、テロリストの射殺とは関わりようもない。おそらく共謀容疑はでっち上げだろう。しかし──
「ブシュネル大使の危惧するとおり、ユリコが法廷に立たされれば、有罪無罪にかかわらず、彼女はインテリジェンスの一線から退かざるを得なくなるだろう。日本の官僚界にもユリコを排除したい者は少なくないという。
省官庁の兼ね合いからか、警察庁の国際テロ対策室は、外交官資格を持たず国外で活動していたそうだ。ユリコも例外ではなかった。
彼女は身を守るために多様な予防措置を施していたが、今回裏を掻かれた。
彼女の身分はあくまで旅行者に過ぎず、
外交官保護を主張して引き渡し交渉という手は封じられているのだ」
「死の部隊なんて冷戦の亡霊みたいな風物がまだ生き残ってやがったんだな」
「どういうやつらなんです?」
「…………」
「………悪夢をばらまくプロだ」
「死の部隊 デススクワッド」
自由民主主義()の守護者アメリカの裏の黒い顔、中南米に対してやらかしてきた負の面の象徴。ラテンの土壌に蒔いた種が咲かせた毒の花。
アメリカの「柔らかい脇腹」こと中南米の左翼政権打倒、赤化阻止。
グアテマラはその典型的かつ最凶級に悲惨だった国で、
CIAがお膳立て、>グアテマラの反主流派と軍部に傭兵と武器を与えて手なずけ、>左派政権をぶっ潰して、>親米独裁政権をこしらえると、
例によって反体制派や先住民の虐殺弾圧暗殺が吹き荒れる。
まー呆れるほど絵に描いたようなおなじみ中南米パターン。
なんで絵に描いたようにどの国でも同じパターンに陥るかというと、
どの国も同じ学校で同じ教科書で同じやりかたを同じ先生↑から教わったからであり。
先生はもちろん、
BGM「星条旗よ永遠なれ」
ユナイテッドステイツ・オブ・アメーリカー。
対中南米政策の中心になったのは大統領直轄の米国国際開発局@USAID。
というと途上国支援の組織みたいに思うけども、実態はCIAの出先機関で、職員の大半がCIA局員。独裁政権の国民弾圧を応援するのが仕事だった。
CIA仕切りで中米パナマに開校した、
アメリカ陸軍米州学校@SOA : School of the Americas
というよりSOAのAを暗殺者@AssassinsのAに読み替えた、
「スクール・オブ・アサシンズ 暗殺学校」
の悪名の方で有名だったりする。
ここで中南米の軍人と警官と民兵が養成訓練を受け、自国民を息もできないほどぶちのめして跪かせる技術をみっちり学んで帰って行った。この「暗殺教室」の予算1千万ドルはアメリカの国防費からまかなっていた。
「スクール・オブ・アメリカズは西半球で最も残虐な暗殺者、
最も残忍な独裁者、さらに最悪の人権侵害者を育ててきた」
──ジョー・モークリー米民主党下院議員
じっさい中南米の独裁者たちの多くが暗殺米州学校のOBだった。
エルサルバドル、ブラジル、グアテマラ、チリ、パナマ、アルゼンチン、ウルグアイ
ボリビア、パラグアイ、ハイチ、ニカラグア、コロンビア、ホンジュラス、ペルー
アメリカのもたらした殺しと拷問の技術と、
中南米特有の土着性がミックスされて、>凶悪度MAXになる。
「(米州学校の)米国人の多くはむしろ善良で倫理的だった。ジュネーブ条約を順守し、一般市民や兵士の面倒を十分みろ、と教えようとした」「中南米は非戦闘員も殺したスペインの植民地文化と先住民のいけにえ文化を混ぜてしまった」
──ベンハミン・ゴドイ@評論家@米州学校幹部コース'70年卒
(毎日新聞「中南米の乱」2012)
アメリカの育てた虐殺と拷問のプロたちはこう呼ばれた。
Escuadrones de la muerte エスクワドロネス・デ・ラ・ムエルテ
Death Squads デススクワッド
‘死の部隊’
スクールオブアサシンアメリカズとよく似てるもの、思い出しませんかね?
そう、アルカイダの軍事訓練キャンプ。
両者の違いは、経営者がアメリカか、ビンラディンか、ただそこだけだ。
冷戦終了にともなう内戦の終熄、ラテンアメリカ諸国が軍政から民主化へ進むなかでも、死の部隊メンはしぶとく治安機構に巣食ったまま、旧罪を告発しようとする動きを、昔取った杵柄よろしう脅迫と暗殺と拉致で阻もうとしている。←いまここ
「グアテマラの治安警察がミスシラトリを陥れる動機はなんなんだ?」
「日本警察の把握する限りでは、接点が見つからないらしい」
「つまり、グアテマラがどうこうじゃなく、誰かが死の部隊をカネかエサで釣った」
「おそらく。ペルーやICPOも同様だろう」
「いまこうしている間も、ユリコは激しい虐待と拷問に苦しめられてます」
「拉致からすでに半月が過ぎています。まったく猶予はありません。
彼女の心身の状態が心配です。一刻も早く救い出さないと」
「しかし正規の外交ルートでは逮捕が表沙汰になるからダメ、
力ずくで奪い返すのもダメ。じゃどうすれば?」
「そんなもん決まってるだろ、こんなとこでタラタラくっちゃべってないで、とっととグアテマラへ飛んで、ドアぶち破ってシラトリを連れ帰るんだよ」
あのー
「ちょっとゴードン、さっき力ずくじゃダメと言ってたの聞いてなかったのかい?」
「いやそうでもない」
「えっ?」
「ゴードン捜査官、もう少し聞かせてくれ」
「ユナイテッドステイツの旗ひらめかせて突っ込めばそりゃ大問題になることくらい分かってる。だが、シラトリの逮捕自体を公表せずいまだに隠してるってことは、あっちも今はまだ大っぴらにされたくないわけだ」
「だから素性の知れない武装集団が押し込んで収容所を火の海にして立ち去れば、そこにいた囚人のことを騒ぎ立てるやつはいないだろう。
いまもグアテマラじゃゲリラの残党やギャングが暴れてる。現場にそれっぽい忘れ物でもしていけばそいつらのしわざってことでおさまる」
じゃ行くぜ
「あんたらが乗らないならおれだけでやる。時間がもったいないからな」
もう立って出て行きかけてるし…
「さすが陸軍特殊戦スクール卒。すがすがしいほどの力ずく」
「それだと普通にグアテマラに出入国するのは危険だが、そこはどうする」
当たり前だ
「もちろんメキシコかベリーズから密入国する」
「おいおい、ちょっと待てっ!」
「おまえら正気か!」
「しくじったらどうするんだ、全員クビどころかブタ箱だぞ!」
「じゃチーフは、ミスシラトリがどうなってもいいと言うんですか?」
「そ、そうは言わんが。法の許す範囲内でやれることやればいいだろ!」
「それではユリコは別の意味で助からないんですよ」
「クラーク! なんとか言えよ」
「私も法の範囲内で助け出す方策を考えるべきだと思う」
「だろ?」
「だが今回はそれでは済まない、超法規的措置もやむをえない」
「おい!」
「チーフらしくないですよ」
「どうかしたんですか」「スペインで変なもん食べたとか?」
「どうかしてんのはおまえらだろうが!」
「とにかく! おれはいまの話きかなかったことにするからな。
シラトリには同情するが、あいつがああなったのはあいつ自身の問題だ。
おれたちが道連れになってまで面倒みてやる義理はないだろ」
「おい、なんでドン引きの顔してるんだ。いいか、おまえら、正気に戻れ」
「後悔しても知らんぞ」
「見損ないましたよ、チーフ」
「おれには、未来があるんだ」
──米上院情報特別委員会 調査報告書より
──「CIAがテロ容疑者に行った‘強化尋問技術’」
“食事と水分を摂ることを拒否したテロ容疑者には、
直腸からの補水と栄養補給が強制された──”
“──無理矢理直腸からボトル2本分の栄養ドリンクを注入され、”
“──同日に‘ランチ・トレー’と称して、”
“──ヒヨコ豆とごまのペースト、ソースを絡めたパスタ、
ナッツ、干しぶどうのピューレを直腸に注入された”
「ジョン、いいですか」
「おれはマイクだがおれでいいなら」
まあどっちでもいいか
「ミスシラトリから聞いたアンワル・アルアウラキですがね。
ざっと調べただけでもなかなか香ばしい御仁ですよ」
「イエメン生まれのアメリカ育ち、サンディエゴのイスラム協会で導師イマームを務めてます。そのあとワシントン郊外のダルアルヒジュラモスクの導師イマームに収まり、それ以後は足取りがたどれません。もうアメリカにいない可能性もあります」
「で、まずいのはアルアウラキのモスクにハリド・アルミダルが出入りしていた可能性が高くなってるんです。だから重要な手がかりではあるんですが……。
本当はサンディエゴのイスラムコミュニティに入り込んでる情報屋あたりに接触したいところなんですが、そうなるとサンディエゴ支局を無視するわけにもいかないし、
これ以上目立つ動きをすると……」
「CIAやうちのITOSの法律屋どもに感づかれるか」
「アルアウラキの線を追うことを禁止されたら元も子もないですからねえ、
どうすればいいですかね、マイク?」
「おれはジョンだが、おれの意見でいいなら」
「へ? いつのまに入れ替わったので? マイクは?」
「なんか途中でトイレにでも行ったんじゃないか?」
「どっちかに肉とか目印書くとかできないですかね。別の色の袋に入れるとか」
「おれたちを肉まんあんまんと一緒にしてるだろ」
ぱしッ、ぱしッ
ぱしッ
ぱしッ
ガイィィンッ
ィイイィィ────ンンン
“音も容疑者の意志をくじく拷問に活用された。またグアンタナモ基地内の収容キャンプでは大音響で音楽を聴かせる“音責め”も実施された”
“使われた楽曲はレッドホットチリペッパーズ、メタリカ、
エミネム、ブリトニー・スピアーズ……”
グワァァンッ
“セサミストリートの主題歌を何時間も繰り返し聴かされたテロ容疑者もいた”
──米上院特別委「CIAがテロ容疑者に行った‘強化尋問技術’」調査報告書より
ガァアアアア────ンンン
“音責めに曲を使われた悪魔崇拝サタニスト系バンドスキニー・パピーは、国防総省に対し、楽曲使用料として666,000ドルを請求する訴えを起こした”
──CTVニュース
ガァァアアン
アァァ────ンンン
パカッ
「最近は警視庁も経費節減がうるさくなってきた。
だが一見ムダ使いに思える用途も、それぞれ理由がある」
「たとえばこの航空券だ。同人物が同日の目的地の異なる便を5便予約している」
「…………」
「とうぜん1人ですべて乗るのは不可能だから、4便は空席のまま離陸することになる。これを無駄と考えるのは当然だろう、数字しか見ない者なら。
無駄な航空券予約をやめて1便に限定したいがそれは却下される。
この無駄には理由があったからだ」
「…………」
「しかし少しでも手間を省き、経費を浮かせられないかと、ここ数か月は、予約された便のどれかに搭乗したことが確認された時点で、それ以降の便は空席のはずだから離陸前キャンセルの手続きを取るようになっていた。総務課内の独断で。
一番の敵は無能な怠け者ではなく、無能な働き者というわけだ」
「君は公安総務課庶務係に属する警察職員として、警察官ではないものの、
同じく守秘義務があるのを知っているね」
「………」
「5便のうちどの便以降がキャンセルされるか、知ることのできた人間は限られている。その一人が君だ。君は航空会社にキャンセルの手続きをする担当だった。
可能性のある関係者全員を精査した結果、
残念ながら、守秘義務を破ったのは君だと考えざるを得ない」
「………しかたなかっ
ダンッ
「カネか、女か、両方か、どうせ理由はそんなとこだろうが、てめえのとっくに詰んだ人生の言い訳なんざどうでもいいこった。いま俺たちの知りてえことはひとつ」
「てめえが情報を売った相手はどこのどいつじゃ?」
「──連絡先に使われていた携帯電話が見つかりました。
最後に信号の途絶えた場所に捨てられていました」
「プリペイド式でどうやらネットで転売されたものらしく、所有者も分かりません。着信専用にしてたのか、ほかの通話履歴はありませんでした」
「くそっ、周到なやつだ」
「しかし、姐さんの一大事なのに、コマには知らせなくていいんですか」
「駒込の立場はいま微妙で白鳥アンチの耳目を集めるから、この問題から切り離しておきたいという安藤部長の判断だ。おれもそう思う」
「今のあいつじゃ姐さんラチられたのも自分のせいとか言い出しかねないしなあ」
←行確作業の任務中
すやすや
そこに一瞬も名前の出てこない安心安定の渋谷である。
「外務省の例の視察対象はどうだね」
“フルで行確をかけていますが、今のところは何も”
「ところで杉田さん、ひとつ確認させていただきたい」
“なんだね”
「白鳥の置かれた厳しい状況をかんがみるに、救出に成功したとしても、心身に深刻なダメージを負い、今後、現状の職務を担えなくなる可能性がありますが、」
“そうであってもあなたは、白鳥を切り捨てず、守りますか?”
「姐さんを嵌めた野郎、突き止めたらおれがこの手でバラバラにしてやる
つもりだったが、無念ながらおれは留守番かクソっ」
「まったく……。パスポートくらい更新しとけよ大久保」
「 (。´-_-`。) すんまそん」
「しかしどこのどいつか、そのへんの見込みはついているので? 日本赤軍か中核派? 革マル? オウム? それとも総聯とか? まさかアルカイダ?」
「そのどれも動機はあっても、関係国や国際機関へのコネもカネもない」
「白鳥が排除されれば得をする者たちなら容易に想像がつく。だが、実行できるだけの力を持つ者となると限られてくる。くわえて今回の計画を考えた人物が問題でな。
なぜかいくつもの相反する性質がみられて絞り切れんのだ」
「白鳥の生命をただ奪うのではなく、罪を着せ、無力にして一線から追いやる。白鳥の関わる案件そのものの価値も貶めて頓挫させる。冷徹な計算で立てられた計画だ」
「だがその一方で、なぜか白鳥を虐待し、苦痛を与えることに
なぜか過分なまでの労力とリスクをかけている」
「ただ殺すより数段難しいにもかかわらずだ。
そこは計算や冷徹さとはまた異なる匂いがする」
「そこにあるのは、白鳥個人に対する強烈な悪意、憎悪か、怨恨か──」
「水鳥室長が、証拠も確証もなく直感だが、と断ったうえで、白鳥の拉致を計画した者をプロファイリングしていた。それがおれにはわずかだが解に近い気がする」
「この計画の立案者か、もしくはその決定に影響を及ぼす地位に、」
「おそらく女がいる」
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NCICは入力ナンバーに盗難届が出ていたり、所有者がアメリカの司法の及ぶ範囲で指名手配になってればたちどころに表示する。全米法執行機関の必携ツールである。
所有者 ナワフ・アルハズミ 住所 カリフォルニア州サンディエゴ市
あーアラブ人か。なんて読むかよくわからんなこいつら。みんな同じ顔に見えるし。
とくに怪しいこともない、というかまんどくせ。次行くぜ。
そりゃそうである。このときまだCIAはアルハズミとアルミダル略してハズミダルの件を隠してるんで、指名手配もされてないし、NCICで引っかかるはずもない。
が、
このとき、このモーテルには、筋肉メンアブドルアジズ・アルオマリがチェックイン、
さらにハズミダル2人組も同じ週に近くの食堂でメシ食ったのがカード履歴に残ってたんで、彼ら主要メンもモーテルに居合わせた可能性高し。
当局はまたまた9.11前に実行犯を引っ捕らえる機会を逃したわけで。
9th July, Monday
7月9日
月曜日
アメリカ入りした「飛行機計画」の筋肉メンが次々と銀行口座とクレカをゲット中。
筋肉メンは本番当日の腕力担当であると同時に軍資金受け子の役割も担うことになっていた。頭数が増えれば振込額も小分けにできてより目立たちにくくなる。
口座を持つには米国在住中の身分つまり社会保障ナンバーが必要なんで、彼らは先入りしていた主要メンたちを保証人に、あっさりと各州の住民IDを手にしていった。
クレカやデビットカードの購入記録によりますれば、
このころからアルカイダメンはとある似た買い物を繰り返している。
キャンピングナイフ、アウトドア用レザーマンマルチツール、
ボックスカッター、折り畳み小型ナイフ──
どれも刃渡りが4インチ*10cm以内
つまり航空便の機内持ち込み可のサイズだった。
19th July, Thursday
7月19日
木曜日
モハメド・アタ、スペインでハリドシェイク・モハメド、ラムジ・ビナルシブとすりあわせ*【第14便】を済ませ、マドリード発>アトランタ着のデルタ航空に乗る。
これがアタの生涯最後のアメリカ国外旅行となる。
Hartsfield-Jackson Atlanta International Airport, Georgia
アトランタで再入国するアタちょっとピンチに。
過去13か月のうちアメリカ国外にいたのが3週間しかなかったんで、「移民」枠扱いで二次審査に回されそうになったんである。移民枠はとうぜん審査も厳しくなる。
でもけっきょくは一次審査でなんとか「商用・留学滞在」と認められて審査をパス。
もうお約束の流れというか、出国前のアタがビザ期限切れで不法滞在状態だったことや、交通違反の出頭命令スルーで逮捕状が出てたことも、
入国審査でまったくかすりもせず。
54 days before ‘Nine Eleven’
──9.11まであと54日
登場する事件テロ紛争戦争、その捜査は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子はじめこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりは、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。
Tokyo
東京
「頭を上げてください、水鳥さん」
「なぜ、ご自分に責任があると思われるのですか?」
「わたしのしたことが白鳥さんを窮地に追いやったのは間違いありません」
「ペルーの事件が日本人に一人の死者も出さず解決したのは、白鳥さんが裏で工作したからだと疑っていました。見張り役だった少年が人質を撃たなかったのは、白鳥さんが少年の家族を利用してそう仕向けたのではないかと」
「その疑念がふくらみ、誰かに打ち明けずにいられませんでした。
いえ、決して白鳥さんを告発しようと思ったのではありません」
「自分だけで抱え込んでいるのがただつらかったのです。
いま思えばとんでもなく愚かなことをしました」
「それでどなたかに疑念を伝えたと?」
「はい、元上司に。尊敬し、信頼する先輩でした」
「……でした?」
「ペルーの件を洩らすことができたのは、彼しかいません」
ガンガンガンガンガンガンッ
「おきろ売女プッタ、誰が眠っていいと言った?」
「水か電気か、どっちが欲しい?」
「…………」
「決められないなら両方になるぞ」
「……電気」
ガンッ
「電気をわたしの体に流してください、お願いします、だ」
「電気をわたしの体に流してください、お願いします」
ガチャッ
ギギッ
ジャキッ
ギリリッ
カチャッ
カチカチ……
ガチッ
カチカチカチ、ガチッ
「おまえが電気のほうを欲しがったんだぞ」
「自分で選んで決めたんだからな」
カチ、カチ
カチ──
ヂヂヂヂ──
バチバチバチバチバチバチバチ
「ひっ、ひぐっ、ひっ、ひっ、うひっ」
「ぐふっ、いひっ、はあはあはあ」
「はあはあはあ、う、ううっ」
──1975年に南米チリ軍事政権による拷問を告発した英国人女医
シェイラ・キャシディの証言 : 「週刊女性自身」1976.2.12
“拷問の館に帰ると、尋問官たちは、私をめった打ちにし、
また‘人間バーベキュー’の拷問を──”
“「電流をもっと強くしろ」
地獄の責め苦が、それから1時間もつづきました──”
“──悲鳴さえあげることのできない激痛に、
神経は切りきざまれ、恥ずかしいことに、
私は大小便をたれ流したのです──”
シュウウウ──
「あ、ああう、うっふ、くふっ」
「ああ、うう、はあはあ」
「汗だの小便だの汚しやがって。それじゃ俺たち犯るフォジャール気にならねえよ。
セックスの前に水浴びできれいにしてやる」
「なに驚いてる? 選べとは命令したが、片方しかやらないとは言ってないぞ」
「おまえは俺たちの命令に従う。だが、
おまえの言うことを聞くかは俺たちが決める」
「ひッ、やめ──」
「いやああ──」
警察庁警備局に属する秘匿部署「チヨダ」
全国都道府県警の公安警察を裏で束ねる司令塔
もともとの符牒「サクラ」が、神奈川県警の共産党幹部盗聴事件で身バレしたんで、>解散、>と見せかけて「チヨダ」に改名してみたけれど、>こんどはオウム事件流れでやけに名が売れてしまったので、>“何者でもない”という意味で「ゼロ」に再改名。>結局それがまた名前になっちゃったんで、>「名前の言えないあれ」「名無し」になって、>警察庁警備局フロアからひそかにべつの警察関連施設へと引っ越した。
移転先はスッパ抜きねらいの左翼メディアもまだつかんでいない。
で、その「名無し」の隠れ拠点のある某所で。
3人の男がひそかに秘匿で内緒の密談中。
安藤隆春@警視庁公安部長
「すこぶる深刻な事態です」
杉田和博@内閣危機管理監
「仕掛けたのが何者かはわからんわけだな」
‘本郷’ @警視@警視庁公安1課管理官
「白鳥には敵が多いですが、ここまで大仕掛けができる相手となると限られてきます。複数国の公的機関も動かしたわけですから厄介です」
「やはり杉田さんが内調とI・Sで進めているあの案件が理由ではありませんか?
白鳥はあれの要中の要といっていい存在ですから」
「うーむ、そうだとしても白鳥の役割を知る者は限られているはずだが……」
「白鳥の口癖ではないですが、“読めばちゃんとそこに書いてある”。ピースをつなぎ合わせ、白鳥のはたしている役割を読み解いた者がいるのかもしれません」
「この件の全容は、我々のうちに留めるとしよう。野田くん@警視総監にも田中くん@長官にも、備局長@漆間巌にもまだ伏せておきたい。我々だけで対処する」
「外務省は? 白鳥拘束を把握しているのか?」
「水鳥室長は誰にも明かしていないと。元上司の耳に入ることを恐れています」
「まあ、元上司からの漏洩が本当なら、それが賢明かもしれんな」
「水鳥室長によればブシュネル大使が個人的に協力してくれると言っています」
「それと、白鳥から、万一の際の緊急連絡先を聞いています」
「ライザ・ゴードン-ハガティ。NSC@国家安全保障会議のスタッフで、」
「対テロ調整官リチャード・クラークと白鳥の連絡窓口です」
東京の‘本郷’/安藤から>ワシントンのライザ・ゴードン-ハガティ経由で、>
>リチャード・クラークの耳に白鳥拘禁の知らせが届き、
>FBIニューヨーク支局の秘匿捜査チームにも。そして、>
Salou, Catalunya(Cataluña), Estado Español
Salou, Catalonia, Spain
スペイン カタルーニャ州 リゾート地サロウ
「やっと見つけましたぜ、ジョン」
「ロシーニ、なんでここに?」
Mark Rossini
マーク・ロシーニ@FBIニューヨーク支局特別捜査官
「なんでって、チーフはずっと携帯電話の電源切ってるじゃないすか。
だからスペインにまだいた俺が、パシリとして参上したんすよ。
ミスタークラークが大至急連絡ほしいとのことです」
「おお、ディックか? ジョン・オニールだが、どうした?」
「バレリー、すまんが日程切り上げて帰国しなきゃならん」
「──ちょいと野暮用ができたらしい」
ザザザザーッ
「けはっけはっけはっ」
「げッげッ、かはッ」
「くふっ、ひっ、ひっ、うう」
カラ、カラ、カラ、カラ──
カラカラカラカラカラ──
「けほっ、うっ、けほっ、おねが、ひ、れす、もう、やめて、ゆるひ……」
「てっ」
ごぼごぼっ、ばしゃッ
ぎしっ、ばしゃッ
ごぼっ……
ごぼぼっ、ぎしっ、ばしゃっ
ぎし……、ぎし……
ぎし…
「引き揚げろ」
「水を吐かせろ、もう一度だ」
Headquarters of Central Intelligence Agency
Directorate of Operations
Bin Laden Issue Station, Counterterrorism Center
CIA本部
>工作総本部
>国際テロ対策センター
>ビンラディン問題課
入国管理局のデータベースにアクセスして、
Khalid al-Mihdhar
ハリド・アルミダルが2月にアメリカから出国、
7月4日に再びアメリカに入国 *【第13便】
したことを確認。
偽名で入国したアルミダルをCIAがどう識別したのかは明らかにされていない。
きほんアメリカのVIPと利権ガチガチなサウジアラビア様からの訪米客様をわずらわすのは連邦職員にとって鬼門なわけで、サウジに関しては相当に甘々であるが。
ビンラディンがサウジ国籍メン中心に筋肉メンを起用したのは正解だった。
というよりそもそも難易度の高いサウジアラビアのパスポートを
お尋ね者がしかも偽名で再取得できたのがおかしいんである。
アルカイダの古参メンとして中東では認知されてるアルミダルはパスポート取得どころか申請に姿を現した時点で逮捕されてないといかんのだが、そうはならなかった。
アルミダル再渡米の情報は、例によってCIAの部外秘扱いに。またもやFBIにも国務省にも知らせないまま、これまた電脳倉庫の奥底深くしまい込まれた。
どうしてくれよう
(……ユリコがいねーとこの件うまくリークする手段がないじゃん)
にしても、なぜCIAは、
ここまでしてアルミダルのアメリカ入国を頑なに隠し続けたのか。
「わざと見逃して9.11をやら自作自(略」とかの陰謀論はおいといて、
のちのリチャード・クラークやFBI捜査官たちによる“推理”が説得力あったりする。
“CIAはアルミダルアルハズミを二重スパイに雇おうとしてたんじゃないか” 説。
たしかに2人は古参メンでビンラディンにも近い。
内通者にできたら極上の情報源になるだろう。
米国内のテロ対策はFBIの管轄だけども、この2人は駆逐艦コール爆破テロにも関わっていたから、諜報の侘び寂びを知らぬ無粋なFBIはすぐ逮捕してしまうだろう。
CIAが米国内で活動するのは禁止だけども、そんなもん建前で、ニューヨーク‘裏’支局@ワールドトレードセンター7がこっそりとか、“たまたま米国内にいる友好国の諜報員”に外注したりとか、いっくらでも抜け道はあるわけで。
だからCIAはあえて2人のアメリカ入りの情報を独り占めにして泳がせていた、
そのせいでテロがおきて“多少”の被害が出ようとも。
──という説。
はたして9.11までの間にCIA側の勧誘が2人に接触してたかどうかまでは不明だが。
市井の陰謀論者じゃなくて、どんぴしゃの時期にナショナルセキュリティーのトップ付近にいた元対テロ調整官クラークの推理だし、それなりの説得力あり。
この説はFBI捜査官はじめ多くの関係者が同意する一方で、
CIA長官テネットやテロ対策センター長ブラックは顔真っ赤にして否定している。
そりゃそうだろうというか、もしCIA側の勧誘がハズミダルにすでに誘いをかけていて、2人がそれに乗るふりをしながらしれっとテロ支度を進め、しれっとアメリカン77に乗り込んでいたとしたら、
もうCIA一同は身の破滅どころじゃないんで、
この真相については、今に至るもはっきりしないままである。
(今日、何曜日なんだろ……)
(ていうか、いま昼? 夜?)
──ソルジェニーツィン著「収容所群島 1918-1956」@1974年より
‘ソ連内務人民委員部@NKVD 32種類の拷問’
15. 監獄は、箱あるいは戸棚から始まる
21. 不眠は拷問のきわめて有力な手段であり、目に見える跡を残さない
──アメリカ連邦議会上院情報特別委員会 調査報告書@2014年より
──「CIAがテロ容疑者に行った‘強化尋問技術’」
8.1 狭い場所に閉じ込め、場合によって暗闇にする
12. 48時間以上の睡眠妨害を行う 最長時間は180時間
New York
ニューヨーク
こちらの某所でも秘密の緊急会合中
Richard A. Clarke
リチャード・クラーク@対テロ調整官
Liza Gordon-Hagerty
ライザ・ゴードン-ハガティ@NSC上級スタッフ@クラークの補佐
John P. O’Neill
ジョン・オニール@FBIニューヨーク支局国家安全保障担当特別主任捜査官
と、
味方にも秘密で内緒のアルカイダメン追跡チームの面々
Steven Gordon
スティーブン・ゴードン
John and Mike, Anticev Bros.
ジョン&マイク・アンティツェフ兄弟
Daniel Coleman
ダン・コールマン
「警視庁の警視インスペクターによると、1997年のペルー大使公邸人質事件の際、
ユリコがペルー当局と殺人を共謀した、という容疑で拘束されたようだ」
ペルーでは、前年11月の大統領アルベルト・フジモリ失脚>日本逃亡で、
新政権からフジモリ界隈への追及が始まっているところ。
が、このフジモン退治は、ほかの中南米のアルゼンチンやグアテマラ、エルサルバドル、チリのような軍事独裁>政変>民主化の流れとはびみょうに性格違って、
はっきりいって単なる政争の延長みたいなもんである。
トレド新大統領はまー悪い人じゃないんだけども、おもな政策ははっきりいって「脱フジモリ」しかないし、フジモンのハイパーインフレ抑え込み>経済復興や極左ゲリラ退治をやってのけたような仕事力はやっぱり持ってないしで。
支持率維持的にも「フジモン=人類史上稀に見る極悪独裁者」を演出したいわけ
なんだが、
フジモンはたしかに汚職と不正と賄賂にまみれてて、側近モンテシノスはCIAの元協力者の元軍人、市民や知識人や左派学生の拉致暗殺も小規模ながらやらかしてたものの、
ほかの中南米の軍事独裁政権のように、政治犯ですらない一般国民を村単位、10万単位で皆殺しとかまでいってたかというと、まだまだ小悪党スケールだった。
極悪演出のため新政権がいろいろ引っ張り出してきたネタのひとつが、
「日本大使公邸事件のMRTAゲリラを私刑的に射殺」罪。*【ウルトラ 11機目】
突入した特殊部隊が拘束したゲリラをその場で即射殺した疑いで、
フジモンや特殊部隊への捜査が始まっている。
無辜の民間人じゃなく、「テロリスト@人質事件実施中」の射殺が「人道犯罪キリッ」っつうのは、かなーりのムリクリ感だが、罪状は多い方が演出に都合がいいからね。
2000年3月、MRTAメンの棺桶を墓所から引っ張り出して、
朽ちかけてた死体を再検死。
の結果、当時の噂どおり、
少なくとも6人が近距離斜め上から頭部を撃たれたとわかる。
つまり処刑スタイルで。
ベネズエラに逃げていたフジモンの片割れモンテシノスも
2001年6月、政府間駆け引きの末、ペルーに引き渡された。
そしてこのあと2002年には特殊部隊指揮官以下12名に逮捕状が出され、日本に実質亡命中のフジモリも「人道犯罪キリッ」で引き渡し要求されることになる。
「ユリコの容疑は、これにかこつけたものだろう」
仮にユリコが日本人人質を救うために何らかの工作をしたとしても、テロリストの射殺とは関わりようもない。おそらく共謀容疑はでっち上げだろう。しかし──
「ブシュネル大使の危惧するとおり、ユリコが法廷に立たされれば、有罪無罪にかかわらず、彼女はインテリジェンスの一線から退かざるを得なくなるだろう。日本の官僚界にもユリコを排除したい者は少なくないという。
省官庁の兼ね合いからか、警察庁の国際テロ対策室は、外交官資格を持たず国外で活動していたそうだ。ユリコも例外ではなかった。
彼女は身を守るために多様な予防措置を施していたが、今回裏を掻かれた。
彼女の身分はあくまで旅行者に過ぎず、
外交官保護を主張して引き渡し交渉という手は封じられているのだ」
「死の部隊なんて冷戦の亡霊みたいな風物がまだ生き残ってやがったんだな」
「どういうやつらなんです?」
「…………」
「………悪夢をばらまくプロだ」
「死の部隊 デススクワッド」
自由民主主義()の守護者アメリカの裏の黒い顔、中南米に対してやらかしてきた負の面の象徴。ラテンの土壌に蒔いた種が咲かせた毒の花。
アメリカの「柔らかい脇腹」こと中南米の左翼政権打倒、赤化阻止。
グアテマラはその典型的かつ最凶級に悲惨だった国で、
CIAがお膳立て、>グアテマラの反主流派と軍部に傭兵と武器を与えて手なずけ、>左派政権をぶっ潰して、>親米独裁政権をこしらえると、
例によって反体制派や先住民の虐殺弾圧暗殺が吹き荒れる。
まー呆れるほど絵に描いたようなおなじみ中南米パターン。
なんで絵に描いたようにどの国でも同じパターンに陥るかというと、
どの国も同じ学校で同じ教科書で同じやりかたを同じ先生↑から教わったからであり。
先生はもちろん、
BGM「星条旗よ永遠なれ」
ユナイテッドステイツ・オブ・アメーリカー。
対中南米政策の中心になったのは大統領直轄の米国国際開発局@USAID。
というと途上国支援の組織みたいに思うけども、実態はCIAの出先機関で、職員の大半がCIA局員。独裁政権の国民弾圧を応援するのが仕事だった。
CIA仕切りで中米パナマに開校した、
アメリカ陸軍米州学校@SOA : School of the Americas
というよりSOAのAを暗殺者@AssassinsのAに読み替えた、
「スクール・オブ・アサシンズ 暗殺学校」
の悪名の方で有名だったりする。
ここで中南米の軍人と警官と民兵が養成訓練を受け、自国民を息もできないほどぶちのめして跪かせる技術をみっちり学んで帰って行った。この「暗殺教室」の予算1千万ドルはアメリカの国防費からまかなっていた。
「スクール・オブ・アメリカズは西半球で最も残虐な暗殺者、
最も残忍な独裁者、さらに最悪の人権侵害者を育ててきた」
──ジョー・モークリー米民主党下院議員
じっさい中南米の独裁者たちの多くが
エルサルバドル、ブラジル、グアテマラ、チリ、パナマ、アルゼンチン、ウルグアイ
ボリビア、パラグアイ、ハイチ、ニカラグア、コロンビア、ホンジュラス、ペルー
アメリカのもたらした殺しと拷問の技術と、
中南米特有の土着性がミックスされて、>凶悪度MAXになる。
「(米州学校の)米国人の多くはむしろ善良で倫理的だった。ジュネーブ条約を順守し、一般市民や兵士の面倒を十分みろ、と教えようとした」「中南米は非戦闘員も殺したスペインの植民地文化と先住民のいけにえ文化を混ぜてしまった」
──ベンハミン・ゴドイ@評論家@米州学校幹部コース'70年卒
(毎日新聞「中南米の乱」2012)
アメリカの育てた虐殺と拷問のプロたちはこう呼ばれた。
Escuadrones de la muerte エスクワドロネス・デ・ラ・ムエルテ
Death Squads デススクワッド
‘死の部隊’
スクールオブ
そう、アルカイダの軍事訓練キャンプ。
両者の違いは、経営者がアメリカか、ビンラディンか、ただそこだけだ。
冷戦終了にともなう内戦の終熄、ラテンアメリカ諸国が軍政から民主化へ進むなかでも、死の部隊メンはしぶとく治安機構に巣食ったまま、旧罪を告発しようとする動きを、昔取った杵柄よろしう脅迫と暗殺と拉致で阻もうとしている。←いまここ
「グアテマラの治安警察がミスシラトリを陥れる動機はなんなんだ?」
「日本警察の把握する限りでは、接点が見つからないらしい」
「つまり、グアテマラがどうこうじゃなく、誰かが死の部隊をカネかエサで釣った」
「おそらく。ペルーやICPOも同様だろう」
「いまこうしている間も、ユリコは激しい虐待と拷問に苦しめられてます」
「拉致からすでに半月が過ぎています。まったく猶予はありません。
彼女の心身の状態が心配です。一刻も早く救い出さないと」
「しかし正規の外交ルートでは逮捕が表沙汰になるからダメ、
力ずくで奪い返すのもダメ。じゃどうすれば?」
「そんなもん決まってるだろ、こんなとこでタラタラくっちゃべってないで、とっととグアテマラへ飛んで、ドアぶち破ってシラトリを連れ帰るんだよ」
あのー
「ちょっとゴードン、さっき力ずくじゃダメと言ってたの聞いてなかったのかい?」
「いやそうでもない」
「えっ?」
「ゴードン捜査官、もう少し聞かせてくれ」
「ユナイテッドステイツの旗ひらめかせて突っ込めばそりゃ大問題になることくらい分かってる。だが、シラトリの逮捕自体を公表せずいまだに隠してるってことは、あっちも今はまだ大っぴらにされたくないわけだ」
「だから素性の知れない武装集団が押し込んで収容所を火の海にして立ち去れば、そこにいた囚人のことを騒ぎ立てるやつはいないだろう。
いまもグアテマラじゃゲリラの残党やギャングが暴れてる。現場にそれっぽい忘れ物でもしていけばそいつらのしわざってことでおさまる」
じゃ行くぜ
「あんたらが乗らないならおれだけでやる。時間がもったいないからな」
もう立って出て行きかけてるし…
「さすが陸軍特殊戦スクール卒。すがすがしいほどの力ずく」
「それだと普通にグアテマラに出入国するのは危険だが、そこはどうする」
当たり前だ
「もちろんメキシコかベリーズから密入国する」
「おいおい、ちょっと待てっ!」
「おまえら正気か!」
「しくじったらどうするんだ、全員クビどころかブタ箱だぞ!」
「じゃチーフは、ミスシラトリがどうなってもいいと言うんですか?」
「そ、そうは言わんが。法の許す範囲内でやれることやればいいだろ!」
「それではユリコは別の意味で助からないんですよ」
「クラーク! なんとか言えよ」
「私も法の範囲内で助け出す方策を考えるべきだと思う」
「だろ?」
「だが今回はそれでは済まない、超法規的措置もやむをえない」
「おい!」
「チーフらしくないですよ」
「どうかしたんですか」「スペインで変なもん食べたとか?」
「どうかしてんのはおまえらだろうが!」
「とにかく! おれはいまの話きかなかったことにするからな。
シラトリには同情するが、あいつがああなったのはあいつ自身の問題だ。
おれたちが道連れになってまで面倒みてやる義理はないだろ」
「おい、なんでドン引きの顔してるんだ。いいか、おまえら、正気に戻れ」
「後悔しても知らんぞ」
「見損ないましたよ、チーフ」
「おれには、未来があるんだ」
──米上院情報特別委員会 調査報告書より
──「CIAがテロ容疑者に行った‘強化尋問技術’」
“食事と水分を摂ることを拒否したテロ容疑者には、
直腸からの補水と栄養補給が強制された──”
“──無理矢理直腸からボトル2本分の栄養ドリンクを注入され、”
“──同日に‘ランチ・トレー’と称して、”
“──ヒヨコ豆とごまのペースト、ソースを絡めたパスタ、
ナッツ、干しぶどうのピューレを直腸に注入された”
「ジョン、いいですか」
「おれはマイクだがおれでいいなら」
まあどっちでもいいか
「ミスシラトリから聞いたアンワル・アルアウラキですがね。
ざっと調べただけでもなかなか香ばしい御仁ですよ」
「イエメン生まれのアメリカ育ち、サンディエゴのイスラム協会で導師イマームを務めてます。そのあとワシントン郊外のダルアルヒジュラモスクの導師イマームに収まり、それ以後は足取りがたどれません。もうアメリカにいない可能性もあります」
「で、まずいのはアルアウラキのモスクにハリド・アルミダルが出入りしていた可能性が高くなってるんです。だから重要な手がかりではあるんですが……。
本当はサンディエゴのイスラムコミュニティに入り込んでる情報屋あたりに接触したいところなんですが、そうなるとサンディエゴ支局を無視するわけにもいかないし、
これ以上目立つ動きをすると……」
「CIAやうちのITOSの法律屋どもに感づかれるか」
「アルアウラキの線を追うことを禁止されたら元も子もないですからねえ、
どうすればいいですかね、マイク?」
「おれはジョンだが、おれの意見でいいなら」
「へ? いつのまに入れ替わったので? マイクは?」
「なんか途中でトイレにでも行ったんじゃないか?」
「どっちかに肉とか目印書くとかできないですかね。別の色の袋に入れるとか」
「おれたちを肉まんあんまんと一緒にしてるだろ」
ぱしッ、ぱしッ
ぱしッ
ぱしッ
ガイィィンッ
ィイイィィ────ンンン
“音も容疑者の意志をくじく拷問に活用された。またグアンタナモ基地内の収容キャンプでは大音響で音楽を聴かせる“音責め”も実施された”
“使われた楽曲はレッドホットチリペッパーズ、メタリカ、
エミネム、ブリトニー・スピアーズ……”
グワァァンッ
“セサミストリートの主題歌を何時間も繰り返し聴かされたテロ容疑者もいた”
──米上院特別委「CIAがテロ容疑者に行った‘強化尋問技術’」調査報告書より
ガァアアアア────ンンン
“音責めに曲を使われた悪魔崇拝サタニスト系バンドスキニー・パピーは、国防総省に対し、楽曲使用料として666,000ドルを請求する訴えを起こした”
──CTVニュース
ガァァアアン
アァァ────ンンン
パカッ
「最近は警視庁も経費節減がうるさくなってきた。
だが一見ムダ使いに思える用途も、それぞれ理由がある」
「たとえばこの航空券だ。同人物が同日の目的地の異なる便を5便予約している」
「…………」
「とうぜん1人ですべて乗るのは不可能だから、4便は空席のまま離陸することになる。これを無駄と考えるのは当然だろう、数字しか見ない者なら。
無駄な航空券予約をやめて1便に限定したいがそれは却下される。
この無駄には理由があったからだ」
「…………」
「しかし少しでも手間を省き、経費を浮かせられないかと、ここ数か月は、予約された便のどれかに搭乗したことが確認された時点で、それ以降の便は空席のはずだから離陸前キャンセルの手続きを取るようになっていた。総務課内の独断で。
一番の敵は無能な怠け者ではなく、無能な働き者というわけだ」
「君は公安総務課庶務係に属する警察職員として、警察官ではないものの、
同じく守秘義務があるのを知っているね」
「………」
「5便のうちどの便以降がキャンセルされるか、知ることのできた人間は限られている。その一人が君だ。君は航空会社にキャンセルの手続きをする担当だった。
可能性のある関係者全員を精査した結果、
残念ながら、守秘義務を破ったのは君だと考えざるを得ない」
「………しかたなかっ
ダンッ
「カネか、女か、両方か、どうせ理由はそんなとこだろうが、てめえのとっくに詰んだ人生の言い訳なんざどうでもいいこった。いま俺たちの知りてえことはひとつ」
「てめえが情報を売った相手はどこのどいつじゃ?」
「──連絡先に使われていた携帯電話が見つかりました。
最後に信号の途絶えた場所に捨てられていました」
「プリペイド式でどうやらネットで転売されたものらしく、所有者も分かりません。着信専用にしてたのか、ほかの通話履歴はありませんでした」
「くそっ、周到なやつだ」
「しかし、姐さんの一大事なのに、コマには知らせなくていいんですか」
「駒込の立場はいま微妙で白鳥アンチの耳目を集めるから、この問題から切り離しておきたいという安藤部長の判断だ。おれもそう思う」
「今のあいつじゃ姐さんラチられたのも自分のせいとか言い出しかねないしなあ」
←行確作業の任務中
すやすや
そこに一瞬も名前の出てこない安心安定の渋谷である。
「外務省の例の視察対象はどうだね」
“フルで行確をかけていますが、今のところは何も”
「ところで杉田さん、ひとつ確認させていただきたい」
“なんだね”
「白鳥の置かれた厳しい状況をかんがみるに、救出に成功したとしても、心身に深刻なダメージを負い、今後、現状の職務を担えなくなる可能性がありますが、」
“そうであってもあなたは、白鳥を切り捨てず、守りますか?”
「姐さんを嵌めた野郎、突き止めたらおれがこの手でバラバラにしてやる
つもりだったが、無念ながらおれは留守番かクソっ」
「まったく……。パスポートくらい更新しとけよ大久保」
「 (。´-_-`。) すんまそん」
「しかしどこのどいつか、そのへんの見込みはついているので? 日本赤軍か中核派? 革マル? オウム? それとも総聯とか? まさかアルカイダ?」
「そのどれも動機はあっても、関係国や国際機関へのコネもカネもない」
「白鳥が排除されれば得をする者たちなら容易に想像がつく。だが、実行できるだけの力を持つ者となると限られてくる。くわえて今回の計画を考えた人物が問題でな。
なぜかいくつもの相反する性質がみられて絞り切れんのだ」
「白鳥の生命をただ奪うのではなく、罪を着せ、無力にして一線から追いやる。白鳥の関わる案件そのものの価値も貶めて頓挫させる。冷徹な計算で立てられた計画だ」
「だがその一方で、なぜか白鳥を虐待し、苦痛を与えることに
なぜか過分なまでの労力とリスクをかけている」
「ただ殺すより数段難しいにもかかわらずだ。
そこは計算や冷徹さとはまた異なる匂いがする」
「そこにあるのは、白鳥個人に対する強烈な悪意、憎悪か、怨恨か──」
「水鳥室長が、証拠も確証もなく直感だが、と断ったうえで、白鳥の拉致を計画した者をプロファイリングしていた。それがおれにはわずかだが解に近い気がする」
「この計画の立案者か、もしくはその決定に影響を及ぼす地位に、」
「おそらく女がいる」
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| 再掲激情@911/下山事件 | 18:33 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑