【事件激情】再掲@サティアンズ 第九解【陸自空挺団乗っ取り計画】



人は自分のレベルに応じたグルに出会う
──豊田亨@地下鉄サリン事件実行犯が、公判でふれた仏教の言葉

オウム真理教による犯行の経緯、警察の事件捜査は、原則公開された情報にもとづく。
ただし“丸メガネの女”はじめこの色で示されている人物は、架空の警察官であり、
実在する警察官・自衛官と彼女らの関わりは、創作全開ソースは妄想である。
また今回登場する、うわさ、都市伝説、陰謀説は、
どれひとつ、真実とは証明されてない念為。


試しに「城内康光」をグーグル様でggってみますれば、

絞り込みワード候補筆頭は「オウム」
「警察庁長官」よりも先に出てくる。
デジタルの海にただよう警察系フォークロアでは、
わりかしメジャー級のひとつ、
「警察内で囁かれる“都市伝説”がある」という“都市伝説”。
これ↓

「あーれー」「良いではないか良いではないか」
“ある警察官僚が神奈川県警本部長時代の1983年、
部下の女性職員を強姦。そのスキャンダルを側近に隠蔽させ、
さらに被害女性を愛人にしていた。
その官僚はトップに昇進、今は海外で別の仕事をしている”

この“伝説”を一橋文哉@「毎度新事実を発見!世紀の大スクープ!」が紹介。
ありとあらゆる有名大事件の真相と犯人を知ってるらしい一橋は、元新聞記者とは思えんほどの裏とりってなにおいしいの?並のガセや陰謀論そのもの胡散くさネタも多いというか、ほぼそればっかなんで話半分いや話4京分の1くらいだが、
いつの間にかこの「伝説」に下の話がくっついた。
これ↓
“その警察官僚は、レイプスキャンダルを山口組系の後藤組に知られ、
弱みを握られていたため、後藤組の資金源オウム真理教関係の捜査に消極的で、
警察幹部という地位を利用して坂本弁護士一家事件の捜査を妨害した”
で、これまた虚実ない交ぜ雑誌「噂の真相」が、
「その警察官僚とは、城内康光@前長官である」
なんて書いちゃって、伝説を補強。
これがネットで無限増殖してしまい、城内実@衆院議員@康光息子のブログにまでしつこく書きこむ粘着も現れ、みのるんマジギレンなんて一件も起きた。
ちなみに城内康光は神奈川県警に赴任したことはなく。
問題の83年当時は群馬県警の本部長だった。
ただ「関東近県」としてる噂もあってそれだといちおう群馬もまー入ることは入る。
さらにこの都市伝説には「後藤組にレイプスキャンダルを隠蔽してもらった」バージョンもある。ますます信用度は激低である。
「オウム真理教の前身オウム神仙の会が起こした犯罪」になってることもあるけども、これも時期的なつじつまが都市伝説特有の安心安定のいいかげんさ也。
これはさらに「オウムが第七サティアンでサリンじゃなくてシャブを製造、後藤組が売りさばいていた」論にもリンクして。
憚りながら (宝島社文庫)
後藤忠政組長が引退後の著書で、後藤組と創価学会のヤバめの関係を書いちゃったこともあるし、後藤組、日蓮正宗本山、オウムともに本拠が富士宮市だしで、
オウム─後藤組─創価学会─統一協会─北朝鮮─ロシアの裏コネ、それを操るロックフェラーだかCIAだかユダヤ人だかという足りないのはトカゲ星人くらいの大陰謀コネクションである。
まー例によってだし、仮に一部が事実でも、しょうじきそういう系に興味ないんで。
とりあえず陰謀論宇宙ではいまだに「神奈川県警本部長」のまま伝説流通中。単に知らないのかあえてスルーしてるのか読まずにコピペしてるだけなのか。
「いやさ伝説のモトは、城内本人じゃなくてね」
城内のお気に入りキャリアが愛知県警刑事部長のときにやらかしたW不倫で、
相手の女@人妻が別れ話のもつれで警察庁内で自殺未遂騒ぎ、
不倫キャリアは依願退職>パチンコ業界に天下り。
不倫白書 1 (キングシリーズ 漫画スーパーワイド)
のち相手の女がレイプと恐喝を訴えて裁判>城内ファミリー総動員でうやむやにした、
っていう真相を後藤組に知られて以下同文、
ってさらに派生した一部虚実入り混じりの伝説もある。
(このレイプ疑惑&裁判がまーた奇々怪々なんだがまあそれは別の話)
こうなるともはや「古事記と日本書紀には本当の歴史が隠喩で込められてます」わかんねーよそんなんレベルである。
で、なんでこういう下半身列伝ばかり立つかというと原因は大きく二つ。
一. 城内長官は「警察庁のヒトラー」「暴君ネロ」と呼ばれたオレ様長官で、周りをファミリーで固め、意に沿わない者は徹底排除。だから敵も多かった、と敵は言う。
二. オウム事件の多くは城内長官時代に起きたが、城内在任中まったく捜査は進まなかった。長官が國松に交代してすぐ対オウム捜査が一気に進んだ。
まあじつをいうと…、これだけなんだが。
上の暴露の数々はいろいろ断言してるわりには、じつは城内─後藤組─オウムの関係を示す客観的根拠はひとっつもない。
これでオウム一味認定は飛躍し杉であろ、というか陰謀論者まーちっと脳細胞を使用してものを言ってくれであるが。
むしろそのへんが色濃くある大物は、ほかにいる。
後藤田正晴と十二人の総理たち―もう鳴らない“ゴット・フォン” (文春文庫)
カミソリこと後藤田正晴@元警察庁長官。当時自民党の元老。
ちなみに佐々淳行@突入せよ!あさま山荘事件の永遠の親分である。
このカミソリ後藤田の選挙区徳島の後援会長の息子が、
オウム真理教の法皇官房次長

サルヴァニーヴァラナヴィシュカンビンこと、
石川公一だった。
灘高校>東大理科Ⅲ類合格>飛び級で東大医学部在学中のスーパーエリートが、
例によってまあ考えすぎというか非物質文明的なアレにハマって以下同文である。
のち石川はなにひとつ訴追を受けずこそっと釈放される。麻原三女アーチャリーのマスオさん候補かつオウム上級幹部でありかつあのリムジン謀議にも居合わせながらも。ほかの下位信者たちがこまごました違法行為で実刑になってたりしたのに。
とかふんだんにツッコミどころはある。城内よりもよっぽど。
なんだけどもカミソリ正晴を一味認定する声よりも、なぜか城内とオウムをむすびつけたがる声は圧倒的じゃないか我が軍は。
さて城内長官はこれらのいいかげんな噂を抜きにしてもなんだかアレである。
RoboCop Super Deluxe
New York Wish
男警官制服──────────婦警制服
「警備局長時代、パチンコ業界>北朝鮮のアングラマネー疑惑調査を自民党議員から要求されながら、警察OBが天下りしてるから拒否」「警察官の制服をリニューアるが、警備員みたいと評判悪い」「拳銃の納入メーカーを変更」「で、それらは利権でうまい汁をちゅうちゅうするため」
「龍が如く」より
なんか功績より悪評の方が多い、
というか7割がレイプスキャンダル、残る3割は他の悪評である。
警察への憎悪に満ちたネット検索だからよけいにそうってのもあるけども、他の長官はいちおうポジティブな話題もちゃんと出てくるから、とにかく突出してる。
これまた疑惑まみれだった漆間巌と歴代1、2位を争う不人気長官である。
「暴対法」も当時刑事局長だった國松孝次の功績扱いで、長官だった城内はまーたくスルー。なんかちょっと気の毒なくらい。
とはいえ、
「独裁的だが後藤田以来の逸材」という触れ込みだった城内長官率いる警察庁が、
全国で頻発するオウム犯罪エスカレーションにまーたくの無為無策で。
次の國松長官に代わってたった2か月後、
全警察がオウム殲滅へと劇的に舵を切って、5年以上もやりたい放題に暴れてたオウム教団が、それから半年で事実上滅亡に追い込まれた、
という表的歴史は、動かしようもないわけで。
要するに制服リニューアルとかパワーゲームとかどーでもいいことやってたわりに、
いちばん肝心のお巡りさんのおシゴトがまるでお粗末でした、
っつうのは、ちょうどオウムの末期と國松登板が重なっただけだとかいろいろ言い訳やタイミングはあれども否定しようもなく。
そんな背景もあって“都市伝説の男”の都市伝説は、
延々しつこく語り継がれるんである。
ということを背景として、松本サリン事件発生から1週間後の、
1994年7月上旬──
横浜市磯子区
神奈川県警 磯子署
「磯子区弁護士一家失踪事件」捜査本部
事件発生からじき5年。刑事部長も署長も捜1課長も代替わり、捜査員の数も減った。
できれば渋いジャジーなBGMを頼む
志賀警部補@撤退する一方の我が毛髪をいかに頭頂部に残留させうるか悩み中。
と、【第二解】のしょっぱなに時空が戻るんである。
この頃、志賀班はオウム脱会信者(オウム的には下向信徒)何人かとの接触に成功。
そこで新たに得た情報が↓
オウム真理教高知支部で麻原彰晃が説法、そのなかで、
「日本の再軍備はABC兵器である」
「例えば、ちょっと古くなるけどサリン系のものとか」
「サリン、今これがいちばん恐怖の毒ガスなんだね」
のちに「サリン説法」と呼ばれるやつである。
で、問題なのは、
先週起きたばかりの松本サリン事件よりずっと前の説法だってことで。
その元信者の遍歴も照らし合わせて調べると、
高知のサリン説法は遅くとも昨年93年夏より前のことだったとわかる。
つまり松本サリン事件より1年も前の説法。
サリン──1991年の湾岸戦争でサダムフセイン─イラクが多国籍軍にばらまいてくるかも、と、いっとき騒がれた化学兵器のひとつ、
が、それから2年経った93年には、あの人は今?状態の忘れられワードだった。
んだが麻原はそのサリンを名指しでふれた。脈絡もなく唐突に。
松本サリン事件があったから──いやいやちゃうちゃう、それより前の年だし。
この説法の頃、麻原付近で、サリンの話題がやりとりされてたんではないのか。
そうなると昨年捜査中断した薬物ルートが気になってくる。
オウムがダミー会社を通して購入した膨大な化学薬品。
神奈川県警は、長野県警ひみつのヤマシタさんよりも早い段階から、ちがうアプローチで、同じオウムの薬物購入ルートを洗ってたんである。
──という志賀警部補の報告を聞いて、
上林捜査1課長は「あっ」ってかんじに思い出す。
今年94年4月にオウム真理教被害対策弁護団からもたらされた、
情報提供の↓ひとつを。
「1993年4月9日、高知支部にて麻原がサリン説法を行った」
「あっ」てかんじなのは、
捜査が進展するぜいやっほううい、じゃなくて、
別の大人のしっとり湿度ある事情的な「あっ」で。
被害対策弁護団というか団長にして全団員の滝本太郎弁護士は、麻原の説法で毒ガスや大量殺戮兵器の話題がたびたび繰り返されてきたこともたびたび知らせてくる。
神奈川県警はもはや慣習のようにスルー。そんなの抱え込みたくない。
が、今回は情報をもたらした脱会信者たちが、富士山総本部道場から逃げ出して、
静岡県警に保護されてた <<< この部分が超問題で。
静岡県警はオウム施設から逃げてくる脱会信者を保護するたびに、
エスピーくん なんか顔こわいよー泣いちゃうよー
「坂本弁護士一家と似た人間が施設にいなかったか」
いちいち聞き取りしてるという。
坂本一家3人がいまも生きて監禁されてるか、

マインドコントロール
されて信者になってるかも、と静岡県警は考えてるらしい。
静岡県警はそのへんの聞き取り結果をまーたく神奈川県警に知らせてこない。
情報共有するつもりは毛頭なくて、自分たちで坂本事件を解決してやるべと目論んでるのかもしれない。
神奈川県警に恥をかかせてもいいや、いやいやぜひともかかせてやれってかんじで。
相変わらず仲の悪さを誇る隣国同士である。このくだり妄想にして創作だが。
そうやって疑心暗鬼をつのらせた神奈川県警、
さすがにこのサリン説法ネタを放置スルーし切れなくなる。
とうぜんながらその焦燥感はキャリア幹部にも急速に伝染。
できれば渋いジャジーなBGMを頼む
こうなると下っ端の警部補はもはや蚊帳の外なんだが、
その妙に精緻を極めた絶妙の噛み合わせにしてでき杉の、
勝手に事態が転がっていく展開、偉いさんたちの右往左往を眺めつつ、
志賀警部補はなぜか不意に、
“彼女”を思い出した。
その数時間後、
神奈川県警刑事部>警察庁刑事局に、
「松本サリン事件以前の93年4月に、高知支部で麻原がサリン説法」
の報告が上がった。静岡県警が先に報告したらマジ困るしもう亜光速で。
それよりもずっと早く杉田本部長から城内長官にも直通電話で注進。
杉田は城内の忠実な取り巻き「ファミリー」なんで。
さて、それからまもなく、
城内長官がふらりと警察庁記者クラブにやって来て、
「次に道を譲ろうと思う」
記者たちは唐突杉でびっくり。
この楽屋裏の展開、ソースは半分妄想、創作半分くらい全開である。
とっとと城内長官は退任を発表。季節外れだし、前フリもなく急な降板劇。
後任の長官の椅子<國松孝次@次長が、
空いた次長の椅子<井上幸彦@長官官房長が、
さらに空いた長官官房長の椅子<関口祐弘@大阪府警本部長が、
と最高首脳クラスが慌ただしく席替えすることが決まる。
7月12日、松本サリン事件からわずか2週間後のことだった。
【第四解】の土田邸で、土田と佐々と永田町1丁目10と本郷がわざとらしく説明的に語り合ってたのは、この7月12日の城内長官急激辞任>交代劇のことである。
この突貫人事からたった2か月後の9月、またもやバタバタっと同じ顔ぶれの席替えがあるんで、いかにこの7月人事が急場しのぎの間に合わせだったか、である。
記者クラブの記者たちも「なにかあった也か」と感じはしたけども、
まー大人としては気づかないふり也。
公職から退いたものの城内前長官は
「警察庁顧問」の肩書きで人事院ビルの一画にデスクをもらって残る。
急なリタイヤすぎて、天下り斡旋担当の長官官房人事課も天下り先を用意できなかったんでないの?とひそひそされてたけども、
まもなくそうではなさそうなことが分かる。
「これ、新手の車だね。石川ナンバー?」
「先週までのはこれでぜんぶです、すいません、警視どの。急に他の件で追われて」
「渋谷くん、無理しないで。本業がお留守はまずいし。もっとリラックスしよ」
「おまえはリラックスしすぎだろ、なんでジャージなんだ。寝巻きか」
「(╯⊙ ⊱ ⊙╰ ) これ私服。デキるいい女は自宅でジャージと決まってます」
永田町1丁目10、本郷@公安1課係長と渋谷@本富士署公安係が都内でやってるのは、
公安得意の“泳がせ捜査”。
例のヨガ道場潜入でキャッチした美女と野獣、
の、とくに「野獣」の方を追尾。
「野獣」の会う相手、出回り先、そこに出入りする人間と車両をピックアップ。
あいにく使える人員が超少ないので追跡にも限界があるけども、
そうやって点と線をたどって、
行き当たった山陽方面ナンバーの車数台が、
宮崎県警の捜査1課管理官に、
「大牟田父*拉致犯が乗り換えた車」候補として手渡されたんである。
まもなく「野獣」が、ガフヴァラティーリャもしくはガフヴァこと端本悟、
というのも分かった。どうやら「自治省」に属してるらしい。
自治省はオウム内の特高というかゲシュタポというか風紀委員みたいな部門らしく、脱会信者たちからひときわ恐れられている。
自治省の“大臣”はミラレパ@新実智光。麻原四女@4歳に「前世を教えて」とかストーカーチックにつきまとって気味悪がられてるロリ疑惑は内緒だ。
ガフヴァ端本は遊軍的な立場らしく、
ふだん上九一色のサティアンよりも外を出歩いている方が多い。
ときにガフヴァ端本に美女と野獣の「美女」オウムシスターズ次女セーラーが同行していることもある。
ただこれが自治省の仕事でなのかプライベートなのかは不詳、
でも2人の様子は…どうみてもラブラブな…。
「オウムって恋愛は御法度じゃないのか?」
でも隠れてこそこそ会ってる風にも見えない。
その変な矛盾のワケは、さすがに外からの監視ではわからん機微で。
でもそれはまた別の話。
「2人の恋バナ疑惑は置いとくとして。端本が外で会ってた連中が気になるなー」
彼らは「近未来問題研究会」という若手信者のグループのようですね。
「メンバーは10人前後。新宿を中心に占いやヨガやビデオ上映会で若者をひきつけてセミナーに誘ったりとか」
「若者向けの勧誘担当だろうな」
「うーん、そういうグループだとすると、自治省の裏シゴト要員の端本悟とやたらと会ってる理由がわからない。しかも隠れてこそこそと。なんだろう、この違和感」
うーん、これは?
こいつがグループのリーダーのようだ。ただ相当に用心深いやつで、外に現れたのも車に乗り込む一瞬だけ。この遠目の写真が精一杯だった。
んー、君はいったいダレ?
「今日は疲れたなー、2人ともそろそろ帰りたいでしょ」
「つまりもう寝るから帰れということだな」
くそ、相変わらず急な階段だ。昭和の古民家ってやつは。
あいつもけったいなとこに住みやがって。
「警部はなぜ警視どのに協力されてるのですか?」
「んん? なぜって、まあ…」
「え、ひょっとして? 奥さんいらっしゃるのに」
「なにがひょっとしてだ、女子中学生か。あいつの予測に一理あると思うからだ。
渋谷、おまえこそなんで子犬みたいにあいつにくっついてるんだ」
「警視どのを警察官として尊敬し、かつ女性として好きだからであります」
「……しれっと凄いこと言うな、バブル世代は」
「しかし警部がもし一歩踏み出すおつもりなら、自分は涙を呑んで身を引きます」
「要らん! 縁起でもない! なんだ一歩踏み出すって。
勝手な設定つくるな! しかも涙目になるな!」
「いいか渋谷、あいつ、年齢不詳に見えるが、大道寺あや子と同い

がんッ

「こら!当たったら死ぬだろーが!」
「あーらごめんあそばせ、つい手が滑って。おっほほほ」
「これが調べてもらいたい車のナンバー」
井上嘉浩@アーナンダ師長
@諜報省次官@長官は麻原四女4歳なんで事実上長官

「たぶん警察のものだと思う」
「わかりました」
小杉敏行@巡査長
@本富士署警ら課@オウム警官
外界&オウム内のほとんどの出家&在家信者にも、
省庁制とともに生まれた新組織「諜報省」の存在は隠されていた。
「近未来問題研究会」という隠れ蓑に隠れつつ、
アーナンダ井上率いる諜報省は、スパイ映画ばりの諜報活動をそろそろと始める。
警察と自衛隊にひそむオウム信者たちを使って。
その一方で、
たああッ
「解説してほしい写真が何枚かあるんだけど」

「んー、このパイプ…、スクラバーの一部だな」
「んーと、ごめん、日本語で頼んます」
「強制排気設備。化学プラントには付きものだよ。
プラント稼働中に発生する有毒ガスを清浄化する設備だ」
「この建物、内部の写真はないのか?」
「まだ中は撮れてないの。じゃ分かる範囲でいいから教えて。この建物内にそういう化学プラントが存在してるとして、ある合成物質をどれだけ作れそうか」
「その物質がなにかによる」
「あなたたちは、GBと呼んでたっけ?」
しーん。
「──サリンか」
いま永田町1丁目10が内密で会ってる相手>とある中堅幹部自衛官。
所属部隊>「化学学校」
埼玉県大宮駐屯地 陸上自衛隊 化学学校
戦後日本の鬼っ子的扱いである自衛隊のさらに鬼っ子というか、
あんまり声を大にして存在感を口にしにくい部隊だった。
なにしろ日本で唯一の化学兵器研究機関、
つまりA(N)BC兵器に対抗するための部隊なんで。
とうぜん微量ながら化学兵器細菌兵器ももれなく取りそろえております。
攻撃に使えるほど量はなくてあくまで防護装備の性能試験のためなんだが、自衛隊アンチが生業のプロ市民と乗せられやすい善良なる方々がヒスるといかんので内緒だった。
化学学校は兵隊さんというよりは化学者集団でもあるんだが。ただし、いざというときは、彼らが防護服頼りにホットゾーンに飛び込むんである。
化学学校では微量ながらGBつまりサリンことイソプロピルメタンフルオロホスホネートを保有していて、密閉隔離された実験室「薬品庫」で化学防護ツールの性能実験に使ってるのは超極秘で。
「このパイプのサイズからみて排気設備は相当の大容量大出力だと思う。少なくとも研究開発や実験用サイズじゃない。量産ライン規模だ」
「おそらくサリンでも、トン単位で生成できる」
「トン? キロじゃなくてトン?」
「そうだ」
しーん。
「しかし、ぼくはむしろケミカルハザードを危ぶむな」
「というと?」
「このパイプ、ご覧のとおり無秩序でぐちゃぐちゃだ。合理的な設計思想によるものとは思えない。化学プラント建設の専門家は関わっていないだろう。となるとプラント自体が欠陥品ということもあり得る。稼働中に漏出が起きるリスクが高い」
「ガス漏れに液漏れ?」
「そう、サリンは生成段階の前駆体でもかなり毒性があるから、周辺の環境に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。ぼくが保健所なら即刻操業停止を命じるね」
「保健所ねえ…。すでにそのケミカルハザードが何度か起きてるとしたら?」
「え、上九一色で?」
そのひとことで、彼は自衛隊もとうの昔からこの第七サティアンに注目してるのを証してしまったわけなんだが。
じっさい名物「そうかえん」こと総合火力演習でおなじみ東富士演習場や北富士演習場、各駐屯地が上九一色とは目と鼻の先。
飛行訓練してればいやでもあの薄気味悪いサティアン群が目に入るし。
そのへんじつは、餅は餅屋というか自衛隊は警察より早く事態を読んで、
独自に動き始めるんである。
武装勢力オウム真理教を警察力で鎮圧できず、内戦内乱となる最悪展開に備えて。
「そうだ、あそこの土壌を学校で分析してもらえば…うーんダメ。ごめん忘れて」
「科警研にもガスクロマトグラフィーはあるよ、知ってるだろうけど」
「わたしが勝手に採取して頼んでも意味ないの。事件の捜査員じゃないと」
「あ、“学校長”、今日はご迷惑を」
「いいさ、ゆっくりやりなさい」
「いやー“総監”、道場破りしてすみません」
「あんた、それ使いかた間違ってると思うぞ」
土田國保は、警察官にとっては元警視総監、
そして自衛官にとっては元防衛大学校長である。
「まあ君も、せっかく久しぶりに面も付けたしひと当てしていきなさい」
「え、わたしは…いやーもう相応に…そろそろ失礼しよかなと…」
「彼女、適当にごまかして一度も立ち会いしてないですよ」
「う、裏切り者っ…」

「あんた上背あるし、構えだけは強そうなんだけどな」
「はいっ、見かけ倒しには自信あり。そのへんの小学生にも負けるよ!」
「まあ人には向き不向きがあるからなあ」
「 (。´-_-`。) あのー“総監”、にこやかにトドメ刺さないでください」
「ところで、噂でもいいけど、どこかの部隊で変なことが起きてるとか聞いてない?」
「変なこととは」
「たとえば、隊員の間で……へんなものが流行ってるとか」
「オウム?」
やあっ
「……なんで瞬速でオウムって口をついて出たのか教えて」
「これは噂だぞ、あくまで噂な」
「ある部隊で、オウム真理教に入信する隊員がちらほらいるらしい。
熱心な隊員がいて、周りを勧誘してるとも聞いた」
「そういうのって規律違反とかにならないの?」
「お巡りさんと違って自衛官のプライベート管理はけっこうゆるいんだよ。寮に入らなくてもいいし」
「厳しすぎると、さいきんの若いもんはすぐ辞めちまうから。ただでさえ人気職種とは言いがたいしさ、うちは」
「そのあくまで噂の部隊、どこか聞いてもいい?」
「めーんっ」
「痛でっ」
キリッ
「習志野第1空挺団」
「ちょっとぉ! 痛いよお!」

陸上自衛隊 第1空挺団
本部 習志野駐屯地 東部方面隊隷下
風林火山
前動続行
精鋭無比
輸送機からパラシュート降下、ヘリボーン、対ゲリラコマンド。
「いざ鎌倉」のとき、いの一番に最前線へと出向くのは、彼ら。
東日本大震災の救難活動でも自慢の機動力を活かし縦横無尽にフル活躍した。
陸上自衛隊 第1空挺団 [DVD]
自衛隊最精鋭の即応集団である。
井上嘉浩率いる諜報省は、警察官以上に自衛官の入信キャンペーン中。
とくに自衛隊最強の実戦部隊第1空挺団には、現役団員の白井三等陸曹@オウム自衛官をとおしてじわじわ浸透しつつあり。
ねらいは、第1空挺団の乗っ取り。
そしてオウム法皇国軍への編入。
「尊師はさらなる武装化を望んでおられる」

村井秀夫@マンジュシュリーミトラ
@科学技術省大臣および武装化責任者
「新たに、青酸ガス、ホスゲンの開発に取りかかり──」
「クシティガルバ。オウム真理教はサリンという力を得た」
「おまえの貢献は大きい。だが松本市の報道でサリンの名が出すぎた。来るべき日に備え、充分な量が備蓄できるまで、サリンの使用はしばらく控えよう。それに代わる武装を急がねばならない」
土谷正実@クシティガルバ@厚生省次官 化学班責任者
「おまえが出来ると言ったVXガスの製造を始めなさい。1キロつくれ、1キロ必要だ」
「分かりました、グル」
【第十解 ヘゲモニーの方程式】へとつづく
いつの間にかこの「伝説」に下の話がくっついた。
これ↓
“その警察官僚は、レイプスキャンダルを山口組系の後藤組に知られ、
弱みを握られていたため、後藤組の資金源オウム真理教関係の捜査に消極的で、
警察幹部という地位を利用して坂本弁護士一家事件の捜査を妨害した”
で、これまた虚実ない交ぜ雑誌「噂の真相」が、
「その警察官僚とは、城内康光@前長官である」
なんて書いちゃって、伝説を補強。
これがネットで無限増殖してしまい、城内実@衆院議員@康光息子のブログにまでしつこく書きこむ粘着も現れ、みのるんマジギレンなんて一件も起きた。
ちなみに城内康光は神奈川県警に赴任したことはなく。
問題の83年当時は群馬県警の本部長だった。
ただ「関東近県」としてる噂もあってそれだといちおう群馬もまー入ることは入る。

さらにこの都市伝説には「後藤組にレイプスキャンダルを隠蔽してもらった」バージョンもある。ますます信用度は激低である。
「オウム真理教の前身オウム神仙の会が起こした犯罪」になってることもあるけども、これも時期的なつじつまが都市伝説特有の安心安定のいいかげんさ也。
これはさらに「オウムが第七サティアンでサリンじゃなくてシャブを製造、後藤組が売りさばいていた」論にもリンクして。

後藤忠政組長が引退後の著書で、後藤組と創価学会のヤバめの関係を書いちゃったこともあるし、後藤組、日蓮正宗本山、オウムともに本拠が富士宮市だしで、
オウム─後藤組─創価学会─統一協会─北朝鮮─ロシアの裏コネ、それを操るロックフェラーだかCIAだかユダヤ人だかという足りないのはトカゲ星人くらいの大陰謀コネクションである。
まー例によってだし、仮に一部が事実でも、しょうじきそういう系に興味ないんで。
とりあえず陰謀論宇宙ではいまだに「神奈川県警本部長」のまま伝説流通中。単に知らないのかあえてスルーしてるのか読まずにコピペしてるだけなのか。

「いやさ伝説のモトは、城内本人じゃなくてね」
城内のお気に入りキャリアが愛知県警刑事部長のときにやらかしたW不倫で、
相手の女@人妻が別れ話のもつれで警察庁内で自殺未遂騒ぎ、
不倫キャリアは依願退職>パチンコ業界に天下り。

のち相手の女がレイプと恐喝を訴えて裁判>城内ファミリー総動員でうやむやにした、
っていう真相を後藤組に知られて以下同文、
ってさらに派生した一部虚実入り混じりの伝説もある。
(このレイプ疑惑&裁判がまーた奇々怪々なんだがまあそれは別の話)
こうなるともはや「古事記と日本書紀には本当の歴史が隠喩で込められてます」わかんねーよそんなんレベルである。
で、なんでこういう下半身列伝ばかり立つかというと原因は大きく二つ。
一. 城内長官は「警察庁のヒトラー」「暴君ネロ」と呼ばれたオレ様長官で、周りをファミリーで固め、意に沿わない者は徹底排除。だから敵も多かった、と敵は言う。

二. オウム事件の多くは城内長官時代に起きたが、城内在任中まったく捜査は進まなかった。長官が國松に交代してすぐ対オウム捜査が一気に進んだ。
まあじつをいうと…、これだけなんだが。
上の暴露の数々はいろいろ断言してるわりには、じつは城内─後藤組─オウムの関係を示す客観的根拠はひとっつもない。
これでオウム一味認定は飛躍し杉であろ、というか陰謀論者まーちっと脳細胞を使用してものを言ってくれであるが。
むしろそのへんが色濃くある大物は、ほかにいる。

後藤田正晴と十二人の総理たち―もう鳴らない“ゴット・フォン” (文春文庫)
カミソリこと後藤田正晴@元警察庁長官。当時自民党の元老。
ちなみに佐々淳行@突入せよ!あさま山荘事件の永遠の親分である。
このカミソリ後藤田の選挙区徳島の後援会長の息子が、
オウム真理教の法皇官房次長


サルヴァニーヴァラナヴィシュカンビンこと、
石川公一だった。
灘高校>東大理科Ⅲ類合格>飛び級で東大医学部在学中のスーパーエリートが、
例によってまあ考えすぎというか非物質文明的なアレにハマって以下同文である。
のち石川はなにひとつ訴追を受けずこそっと釈放される。麻原三女アーチャリーのマスオさん候補かつオウム上級幹部でありかつあのリムジン謀議にも居合わせながらも。ほかの下位信者たちがこまごました違法行為で実刑になってたりしたのに。
とかふんだんにツッコミどころはある。城内よりもよっぽど。
なんだけどもカミソリ正晴を一味認定する声よりも、なぜか城内とオウムをむすびつけたがる声は圧倒的じゃないか我が軍は。
さて城内長官はこれらのいいかげんな噂を抜きにしてもなんだかアレである。
RoboCop Super Deluxe


男警官制服──────────婦警制服
「警備局長時代、パチンコ業界>北朝鮮のアングラマネー疑惑調査を自民党議員から要求されながら、警察OBが天下りしてるから拒否」「警察官の制服をリニューアるが、警備員みたいと評判悪い」「拳銃の納入メーカーを変更」「で、それらは利権でうまい汁をちゅうちゅうするため」

なんか功績より悪評の方が多い、
というか7割がレイプスキャンダル、残る3割は他の悪評である。
警察への憎悪に満ちたネット検索だからよけいにそうってのもあるけども、他の長官はいちおうポジティブな話題もちゃんと出てくるから、とにかく突出してる。
これまた疑惑まみれだった漆間巌と歴代1、2位を争う不人気長官である。
「暴対法」も当時刑事局長だった國松孝次の功績扱いで、長官だった城内はまーたくスルー。なんかちょっと気の毒なくらい。
とはいえ、
「独裁的だが後藤田以来の逸材」という触れ込みだった城内長官率いる警察庁が、
全国で頻発するオウム犯罪エスカレーションにまーたくの無為無策で。

次の國松長官に代わってたった2か月後、
全警察がオウム殲滅へと劇的に舵を切って、5年以上もやりたい放題に暴れてたオウム教団が、それから半年で事実上滅亡に追い込まれた、
という表的歴史は、動かしようもないわけで。
要するに制服リニューアルとかパワーゲームとかどーでもいいことやってたわりに、
いちばん肝心のお巡りさんのおシゴトがまるでお粗末でした、
っつうのは、ちょうどオウムの末期と國松登板が重なっただけだとかいろいろ言い訳やタイミングはあれども否定しようもなく。
そんな背景もあって“都市伝説の男”の都市伝説は、
延々しつこく語り継がれるんである。
ということを背景として、松本サリン事件発生から1週間後の、
1994年7月上旬──
横浜市磯子区

神奈川県警 磯子署
「磯子区弁護士一家失踪事件」捜査本部

事件発生からじき5年。刑事部長も署長も捜1課長も代替わり、捜査員の数も減った。

志賀警部補@撤退する一方の我が毛髪をいかに頭頂部に残留させうるか悩み中。
と、【第二解】のしょっぱなに時空が戻るんである。
この頃、志賀班はオウム脱会信者(オウム的には下向信徒)何人かとの接触に成功。
そこで新たに得た情報が↓

オウム真理教高知支部で麻原彰晃が説法、そのなかで、
「日本の再軍備はABC兵器である」
「例えば、ちょっと古くなるけどサリン系のものとか」
「サリン、今これがいちばん恐怖の毒ガスなんだね」
のちに「サリン説法」と呼ばれるやつである。
で、問題なのは、
先週起きたばかりの松本サリン事件よりずっと前の説法だってことで。
その元信者の遍歴も照らし合わせて調べると、
高知のサリン説法は遅くとも昨年93年夏より前のことだったとわかる。
つまり松本サリン事件より1年も前の説法。

サリン──1991年の湾岸戦争でサダムフセイン─イラクが多国籍軍にばらまいてくるかも、と、いっとき騒がれた化学兵器のひとつ、
が、それから2年経った93年には、あの人は今?状態の忘れられワードだった。
んだが麻原はそのサリンを名指しでふれた。脈絡もなく唐突に。
松本サリン事件があったから──いやいやちゃうちゃう、それより前の年だし。
この説法の頃、麻原付近で、サリンの話題がやりとりされてたんではないのか。
そうなると昨年捜査中断した薬物ルートが気になってくる。
オウムがダミー会社を通して購入した膨大な化学薬品。
神奈川県警は、長野県警ひみつのヤマシタさんよりも早い段階から、ちがうアプローチで、同じオウムの薬物購入ルートを洗ってたんである。
──という志賀警部補の報告を聞いて、
上林捜査1課長は「あっ」ってかんじに思い出す。
今年94年4月にオウム真理教被害対策弁護団からもたらされた、
情報提供の↓ひとつを。

「1993年4月9日、高知支部にて麻原がサリン説法を行った」
「あっ」てかんじなのは、
捜査が進展するぜいやっほううい、じゃなくて、
別の大人のしっとり湿度ある事情的な「あっ」で。

被害対策弁護団というか団長にして全団員の滝本太郎弁護士は、麻原の説法で毒ガスや大量殺戮兵器の話題がたびたび繰り返されてきたこともたびたび知らせてくる。
神奈川県警はもはや慣習のようにスルー。そんなの抱え込みたくない。

が、今回は情報をもたらした脱会信者たちが、富士山総本部道場から逃げ出して、
静岡県警に保護されてた <<< この部分が超問題で。
静岡県警はオウム施設から逃げてくる脱会信者を保護するたびに、

「坂本弁護士一家と似た人間が施設にいなかったか」
いちいち聞き取りしてるという。
坂本一家3人がいまも生きて監禁されてるか、


マインドコントロール
されて信者になってるかも、と静岡県警は考えてるらしい。
静岡県警はそのへんの聞き取り結果をまーたく神奈川県警に知らせてこない。
情報共有するつもりは毛頭なくて、自分たちで坂本事件を解決してやるべと目論んでるのかもしれない。
神奈川県警に恥をかかせてもいいや、いやいやぜひともかかせてやれってかんじで。
相変わらず仲の悪さを誇る隣国同士である。このくだり妄想にして創作だが。

そうやって疑心暗鬼をつのらせた神奈川県警、
さすがにこのサリン説法ネタを放置スルーし切れなくなる。
とうぜんながらその焦燥感はキャリア幹部にも急速に伝染。

こうなると下っ端の警部補はもはや蚊帳の外なんだが、
その妙に精緻を極めた絶妙の噛み合わせにしてでき杉の、
勝手に事態が転がっていく展開、偉いさんたちの右往左往を眺めつつ、
志賀警部補はなぜか不意に、

“彼女”を思い出した。
その数時間後、
神奈川県警刑事部>警察庁刑事局に、
「松本サリン事件以前の93年4月に、高知支部で麻原がサリン説法」
の報告が上がった。静岡県警が先に報告したらマジ困るしもう亜光速で。

それよりもずっと早く杉田本部長から城内長官にも直通電話で注進。
杉田は城内の忠実な取り巻き「ファミリー」なんで。
さて、それからまもなく、

城内長官がふらりと警察庁記者クラブにやって来て、

「次に道を譲ろうと思う」
記者たちは唐突杉でびっくり。
この楽屋裏の展開、ソースは半分妄想、創作半分くらい全開である。
とっとと城内長官は退任を発表。季節外れだし、前フリもなく急な降板劇。

後任の長官の椅子<國松孝次@次長が、
空いた次長の椅子<井上幸彦@長官官房長が、
さらに空いた長官官房長の椅子<関口祐弘@大阪府警本部長が、
と最高首脳クラスが慌ただしく席替えすることが決まる。
7月12日、松本サリン事件からわずか2週間後のことだった。



【第四解】の土田邸で、土田と佐々と永田町1丁目10と本郷がわざとらしく説明的に語り合ってたのは、この7月12日の城内長官急激辞任>交代劇のことである。
この突貫人事からたった2か月後の9月、またもやバタバタっと同じ顔ぶれの席替えがあるんで、いかにこの7月人事が急場しのぎの間に合わせだったか、である。
記者クラブの記者たちも「なにかあった也か」と感じはしたけども、
まー大人としては気づかないふり也。

公職から退いたものの城内前長官は
「警察庁顧問」の肩書きで人事院ビルの一画にデスクをもらって残る。
急なリタイヤすぎて、天下り斡旋担当の長官官房人事課も天下り先を用意できなかったんでないの?とひそひそされてたけども、
まもなくそうではなさそうなことが分かる。

「これ、新手の車だね。石川ナンバー?」

「先週までのはこれでぜんぶです、すいません、警視どの。急に他の件で追われて」

「渋谷くん、無理しないで。本業がお留守はまずいし。もっとリラックスしよ」
「おまえはリラックスしすぎだろ、なんでジャージなんだ。寝巻きか」
「(╯⊙ ⊱ ⊙╰ ) これ私服。デキるいい女は自宅でジャージと決まってます」
永田町1丁目10、本郷@公安1課係長と渋谷@本富士署公安係が都内でやってるのは、

公安得意の“泳がせ捜査”。



例のヨガ道場潜入でキャッチした美女と野獣、

の、とくに「野獣」の方を追尾。


「野獣」の会う相手、出回り先、そこに出入りする人間と車両をピックアップ。
あいにく使える人員が超少ないので追跡にも限界があるけども、
そうやって点と線をたどって、
行き当たった山陽方面ナンバーの車数台が、

宮崎県警の捜査1課管理官に、
「大牟田父*拉致犯が乗り換えた車」候補として手渡されたんである。

まもなく「野獣」が、ガフヴァラティーリャもしくはガフヴァこと端本悟、
というのも分かった。どうやら「自治省」に属してるらしい。
自治省はオウム内の特高というかゲシュタポというか風紀委員みたいな部門らしく、脱会信者たちからひときわ恐れられている。

自治省の“大臣”はミラレパ@新実智光。麻原四女@4歳に「前世を教えて」とかストーカーチックにつきまとって気味悪がられてるロリ疑惑は内緒だ。

ガフヴァ端本は遊軍的な立場らしく、
ふだん上九一色のサティアンよりも外を出歩いている方が多い。

ときにガフヴァ端本に美女と野獣の「美女」オウムシスターズ次女セーラーが同行していることもある。
ただこれが自治省の仕事でなのかプライベートなのかは不詳、


でも2人の様子は…どうみてもラブラブな…。
「オウムって恋愛は御法度じゃないのか?」
でも隠れてこそこそ会ってる風にも見えない。

その変な矛盾のワケは、さすがに外からの監視ではわからん機微で。
でもそれはまた別の話。

「2人の恋バナ疑惑は置いとくとして。端本が外で会ってた連中が気になるなー」



彼らは「近未来問題研究会」という若手信者のグループのようですね。
「メンバーは10人前後。新宿を中心に占いやヨガやビデオ上映会で若者をひきつけてセミナーに誘ったりとか」
「若者向けの勧誘担当だろうな」

「うーん、そういうグループだとすると、自治省の裏シゴト要員の端本悟とやたらと会ってる理由がわからない。しかも隠れてこそこそと。なんだろう、この違和感」
うーん、これは?

こいつがグループのリーダーのようだ。ただ相当に用心深いやつで、外に現れたのも車に乗り込む一瞬だけ。この遠目の写真が精一杯だった。

んー、君はいったいダレ?
「今日は疲れたなー、2人ともそろそろ帰りたいでしょ」
「つまりもう寝るから帰れということだな」

くそ、相変わらず急な階段だ。昭和の古民家ってやつは。
あいつもけったいなとこに住みやがって。

「警部はなぜ警視どのに協力されてるのですか?」
「んん? なぜって、まあ…」
「え、ひょっとして? 奥さんいらっしゃるのに」

「なにがひょっとしてだ、女子中学生か。あいつの予測に一理あると思うからだ。
渋谷、おまえこそなんで子犬みたいにあいつにくっついてるんだ」

「警視どのを警察官として尊敬し、かつ女性として好きだからであります」

「……しれっと凄いこと言うな、バブル世代は」
「しかし警部がもし一歩踏み出すおつもりなら、自分は涙を呑んで身を引きます」
「要らん! 縁起でもない! なんだ一歩踏み出すって。
勝手な設定つくるな! しかも涙目になるな!」

「いいか渋谷、あいつ、年齢不詳に見えるが、大道寺あや子と同い

がんッ



「こら!当たったら死ぬだろーが!」

「あーらごめんあそばせ、つい手が滑って。おっほほほ」
「これが調べてもらいたい車のナンバー」
井上嘉浩@アーナンダ師長
@諜報省次官@長官は麻原四女4歳なんで事実上長官


「たぶん警察のものだと思う」
「わかりました」

小杉敏行@巡査長
@本富士署警ら課@オウム警官
外界&オウム内のほとんどの出家&在家信者にも、
省庁制とともに生まれた新組織「諜報省」の存在は隠されていた。
「近未来問題研究会」という隠れ蓑に隠れつつ、
アーナンダ井上率いる諜報省は、スパイ映画ばりの諜報活動をそろそろと始める。
警察と自衛隊にひそむオウム信者たちを使って。
その一方で、

たああッ


「解説してほしい写真が何枚かあるんだけど」


「んー、このパイプ…、スクラバーの一部だな」
「んーと、ごめん、日本語で頼んます」
「強制排気設備。化学プラントには付きものだよ。
プラント稼働中に発生する有毒ガスを清浄化する設備だ」

「この建物、内部の写真はないのか?」
「まだ中は撮れてないの。じゃ分かる範囲でいいから教えて。この建物内にそういう化学プラントが存在してるとして、ある合成物質をどれだけ作れそうか」
「その物質がなにかによる」

「あなたたちは、GBと呼んでたっけ?」
しーん。

「──サリンか」
いま永田町1丁目10が内密で会ってる相手>とある中堅幹部自衛官。
所属部隊>「化学学校」

埼玉県大宮駐屯地 陸上自衛隊 化学学校
戦後日本の鬼っ子的扱いである自衛隊のさらに鬼っ子というか、
あんまり声を大にして存在感を口にしにくい部隊だった。
なにしろ日本で唯一の化学兵器研究機関、
つまりA(N)BC兵器に対抗するための部隊なんで。

とうぜん微量ながら化学兵器細菌兵器ももれなく取りそろえております。
攻撃に使えるほど量はなくてあくまで防護装備の性能試験のためなんだが、自衛隊アンチが生業のプロ市民と乗せられやすい善良なる方々がヒスるといかんので内緒だった。
化学学校は兵隊さんというよりは化学者集団でもあるんだが。ただし、いざというときは、彼らが防護服頼りにホットゾーンに飛び込むんである。
化学学校では微量ながらGBつまりサリンことイソプロピルメタンフルオロホスホネートを保有していて、密閉隔離された実験室「薬品庫」で化学防護ツールの性能実験に使ってるのは超極秘で。

「このパイプのサイズからみて排気設備は相当の大容量大出力だと思う。少なくとも研究開発や実験用サイズじゃない。量産ライン規模だ」

「おそらくサリンでも、トン単位で生成できる」

「トン? キロじゃなくてトン?」
「そうだ」
しーん。
「しかし、ぼくはむしろケミカルハザードを危ぶむな」
「というと?」

「このパイプ、ご覧のとおり無秩序でぐちゃぐちゃだ。合理的な設計思想によるものとは思えない。化学プラント建設の専門家は関わっていないだろう。となるとプラント自体が欠陥品ということもあり得る。稼働中に漏出が起きるリスクが高い」
「ガス漏れに液漏れ?」
「そう、サリンは生成段階の前駆体でもかなり毒性があるから、周辺の環境に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。ぼくが保健所なら即刻操業停止を命じるね」

「保健所ねえ…。すでにそのケミカルハザードが何度か起きてるとしたら?」
「え、上九一色で?」
そのひとことで、彼は自衛隊もとうの昔からこの第七サティアンに注目してるのを証してしまったわけなんだが。

じっさい名物「そうかえん」こと総合火力演習でおなじみ東富士演習場や北富士演習場、各駐屯地が上九一色とは目と鼻の先。
飛行訓練してればいやでもあの薄気味悪いサティアン群が目に入るし。
そのへんじつは、餅は餅屋というか自衛隊は警察より早く事態を読んで、
独自に動き始めるんである。
武装勢力オウム真理教を警察力で鎮圧できず、内戦内乱となる最悪展開に備えて。

「そうだ、あそこの土壌を学校で分析してもらえば…うーんダメ。ごめん忘れて」
「科警研にもガスクロマトグラフィーはあるよ、知ってるだろうけど」
「わたしが勝手に採取して頼んでも意味ないの。事件の捜査員じゃないと」

「あ、“学校長”、今日はご迷惑を」
「いいさ、ゆっくりやりなさい」
「いやー“総監”、道場破りしてすみません」
「あんた、それ使いかた間違ってると思うぞ」
土田國保は、警察官にとっては元警視総監、
そして自衛官にとっては元防衛大学校長である。
「まあ君も、せっかく久しぶりに面も付けたしひと当てしていきなさい」

「え、わたしは…いやーもう相応に…そろそろ失礼しよかなと…」
「彼女、適当にごまかして一度も立ち会いしてないですよ」
「う、裏切り者っ…」

「あんた上背あるし、構えだけは強そうなんだけどな」
「はいっ、見かけ倒しには自信あり。そのへんの小学生にも負けるよ!」
「まあ人には向き不向きがあるからなあ」
「 (。´-_-`。) あのー“総監”、にこやかにトドメ刺さないでください」

「ところで、噂でもいいけど、どこかの部隊で変なことが起きてるとか聞いてない?」

「変なこととは」
「たとえば、隊員の間で……へんなものが流行ってるとか」

「オウム?」

やあっ

「……なんで瞬速でオウムって口をついて出たのか教えて」
「これは噂だぞ、あくまで噂な」

「ある部隊で、オウム真理教に入信する隊員がちらほらいるらしい。
熱心な隊員がいて、周りを勧誘してるとも聞いた」

「そういうのって規律違反とかにならないの?」
「お巡りさんと違って自衛官のプライベート管理はけっこうゆるいんだよ。寮に入らなくてもいいし」

「厳しすぎると、さいきんの若いもんはすぐ辞めちまうから。ただでさえ人気職種とは言いがたいしさ、うちは」

「そのあくまで噂の部隊、どこか聞いてもいい?」



「痛でっ」

「習志野第1空挺団」
「ちょっとぉ! 痛いよお!」

陸上自衛隊 第1空挺団

本部 習志野駐屯地 東部方面隊隷下



輸送機からパラシュート降下、ヘリボーン、対ゲリラコマンド。
「いざ鎌倉」のとき、いの一番に最前線へと出向くのは、彼ら。
東日本大震災の救難活動でも自慢の機動力を活かし縦横無尽にフル活躍した。

自衛隊最精鋭の即応集団である。
井上嘉浩率いる諜報省は、警察官以上に自衛官の入信キャンペーン中。
とくに自衛隊最強の実戦部隊第1空挺団には、現役団員の白井三等陸曹@オウム自衛官をとおしてじわじわ浸透しつつあり。
ねらいは、第1空挺団の乗っ取り。
そしてオウム法皇国軍への編入。
「尊師はさらなる武装化を望んでおられる」

村井秀夫@マンジュシュリーミトラ
@科学技術省大臣および武装化責任者

「新たに、青酸ガス、ホスゲンの開発に取りかかり──」
「クシティガルバ。オウム真理教はサリンという力を得た」

「おまえの貢献は大きい。だが松本市の報道でサリンの名が出すぎた。来るべき日に備え、充分な量が備蓄できるまで、サリンの使用はしばらく控えよう。それに代わる武装を急がねばならない」

土谷正実@クシティガルバ@厚生省次官 化学班責任者
「おまえが出来ると言ったVXガスの製造を始めなさい。1キロつくれ、1キロ必要だ」
「分かりました、グル」
【第十解 ヘゲモニーの方程式】へとつづく





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