( ̄へ  ̄ 「
殺人予備罪で
逮捕はダメ。一つの犯罪を複数の罪名で起訴できない」
(゚⊥゚)「えっ?」
_, ._
( ゚ Д゚)「え、じゃなくて。
警察さんも
刑事訴訟法勉強しろよ少しは」
警視庁=
井上総監は、首魁
麻原を
サリン製造の
殺人予備罪で捕まえようとしていた。
というのも
サリン─
オウム─
麻原は結びつくんだけど、
地下鉄サリン事件─
オウムのリンクがいまだ見つけられてないんで。
実行犯もはっきりしませんじゃ立件も危うし。
だったら
殺人予備容疑で
サティアンを捜索中なんだし、
立証できる
サリンプラント建設>
殺人予備で捕まえといて、
勾留中に
地下鉄サリンで自供>
殺人罪切り換えで余裕だろ。
という、
警視庁の自称完璧プラン<
東京地検から
ダメ出し。←いまここ(´・ω・`)「でもほら
殺人未遂で
逮捕して、
殺人罪に切り換えたりするっしょ」
(╯⊙ ⊱ ⊙╰ )「それとこれとはぜんぜん違う。ダメと言ったら
ダメなの!」
もし
地下鉄サリンの
殺人予備罪で起訴したら、もう
殺人罪で裁けなくなる。
殺人予備の刑罰上限>「
懲役2年以下」……軽杉である。
それに
殺人予備罪なんかじゃ「
地下鉄サリン事件の証拠ありまへん」と
オウム側に教えるようなもので、
逮捕済み
幹部の取り調べにも悪影響だ。
/)
///)
/,.=゙''"/
/ i f ,.r='"-‐'つ____ こまけぇこたぁいいんだよ!!
/ / _,.-‐'~/⌒ ⌒\
/ ,i ,二ニ⊃( >). (<)\
/ ノ il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
,イ「ト、 ,!,!| |r┬-| |
/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ /(╯⊙ ⊱ ⊙╰ ) 「いやだから
ダメだって。そのAA使いたいだけだろ」
「だいたいこんな全国規模の
大捜査線にしといてそんなケチな容疑じゃ国民が納得しない。
殺人の
共謀共同正犯で
麻原を立件できるまで証拠固めするように」
検察は全国の
地検から応援の
検事をかき集めて、
オウム大量逮捕に備えていた。
検察庁もまた総力戦。
警察の法律知識不足のせいでずっこけるつもりはないんである。
警察庁的には「だったら
神奈川県警に逮捕させたらいいんじゃね?」
このときまでに元
信者岡﨑一明、ほぼ
完落ち。
「
坂本弁護士一家殺害は、
教祖麻原の命令」と
岡﨑は供述。
問題なく
逮捕状がとれる。
村井は死んだが、
早川・
新實も
殺人罪で追及できる。
地下鉄サリンは余罪追及の枠でなんとかすればいいし。
が、
警視庁がこの案ダンコ
拒否。「
神奈川なぞなーんもやっておらぬではないか!」
「最後にしゃしゃり出て馳走だけお呼ばれ
(゚Д゚)ウマーなど断じて認められぬわっ。
我が軍が
地下鉄サリン事件で
麻原を
逮捕するんだ
我が軍が!」
警視庁の大兵力がなければ
対オウム捜査は不可能なんで、
警察庁も黙るしかない。
凸(゚皿゚メ)「
検察はけしからん!」
ほとんど
井上総監のパシリ
(;゜ё゜;;)に成り下がってる
関口祐弘@警察庁次長は、
吉永検事総長への陳情行脚ですっかり板挟みに。
総監は怒ってばっかだし、
検察はけんもほろろだし
(ToT)
そんな一方で、
検察の親玉
最高検はそれよりもっとスケール大なことを考えていた。
刑法77条の適用。
つまり
「内乱罪」である。
きっかけは
岐部哲也逮捕がらみで押収された
「早川ノート」*第十八解
'95 11月→戦争とか、
原爆製造のため
オーストラリアの
ウラン鉱床を買おうとしてたとか、
戦闘機ミグを手に入れようとしてたとか、とにかく物騒なことが書かれてるが、
最高検が注目したのは、
中古の
「戦車」の輸入を計画してるらしいくだり。
そんなんふつうムリやろ、だが、じっさい
オウムは
軍用ヘリを直輸入しちゃったわけで。
戦車だってきっとやればできる子である。
化学兵器細菌兵器、
自動小銃、
軍用ヘリときて、
戦車まで加わったら、
もはや
犯罪者カテゴリーじゃなく、堂々たる
反乱軍だ。
戦後、
内乱罪も
内乱予備罪も適用は一度たりともなし。
条件が異様なまでに厳しいんである。
が、ひょっとして今度こそ対
オウムだったらあるかもしれない。
さらに
法務省外局
@公安調査庁も、
破防法こと@
破壊活動防止法の適用をもくろんで動き始める。
破防法はそもそも
暴力上等夜露死苦時代の
日本共産党と
武装朝鮮人集団を取り締まるために生まれた
特別刑法で、
公安調査庁も
破防法とセットでできた情報機関なんだが、
冷戦終了とともにすっかり存在意義かぎりなく激薄になって、
公安調査庁は
公安警察以上に存亡の危機にある。
が、今回の
オウム騒動をきっかけに、
永田町が、
白鳥百合子のコードネームではなく
政界という意味の
永田町が、
内乱罪とか
破防法の適用を後押し、
法務省─
検察庁&
公安調査庁がそれに乗っかる画策を始めたんである。
厨二病の荒唐無稽マンガ的な世直しごっこが、大人の世界とぶつかったとき、
大人の思惑まじって実像をはるかに超えた
恐怖の大王にすり替わりつつあった。

警視庁各
警察署の留置場は、
オウム信者で満員御礼である。
留置管理課が苦労してんのが、
オウム信者同士を近い房に置いたり、移動中にばったり出くわしたりしないようにすること。お互い影響し合うとやばいんで。
警察庁大衆班カルトチームの
白鳥警視は
刑事部公安部の取調官を集めて、
「さて、みなさん。
オウム信者を取り調べる際の注意点ですが」
「
管理官、なんで
看護婦の格好なんですか」
「
げ、着替え忘れた。ち、ちょっとタンマ」
キリッ「さて、みなさん。
オウム信者を取り調べる際の注意点ですが」
彼らは一見へなへなした若者に見えますが、
思想犯と同じく意思強固です。
怒鳴ったり脅したり暴力じみたりも通じません。
彼らが芯から過ちを認めるまで、とことん対話することをおすすめします。
・
怒鳴るな脅すなもちろん
殴るな蹴るな・
麻原や
教団や
教義を頭ごなしに否定すんな
・
オウム出版物@
白鳥セレクションを熟読して
教義を理解しよう!
・不用意に
さわらないで(はぁと
「
白鳥セレクション¥2千円で絶賛販売中です」
「金とんのかよ」
最後の「
さわらないで」っつうの、
取調官たち「
?」
「彼らは
非信者と会話したり触れられるのを忌み嫌うのです」
ステージの違う者同士が会話したりふれ合うと、低
ステージ側の
カルマが高
ステージ側に流れ込んでくる、よくないこと、と彼らは教え込まれています。
「
カルマがつく」とか「
エネルギー交換」とか呼ぶときもあります。
カルマはまあ、霊的な
毒素みたいな設定と考えて下さい。
とくに私たち
非信者と接するのは最も忌むべきこととされます。
非信者は
カルマだらけだから、同じ部屋にいるだけで、
毒素が流れ込んできて穢れると思っているのです。
「頭おかしいぜ」
「そうやってバカにしてかかると、彼らは二度と口きいてくれませんよ」
「
弁護士と
接見するたびにあいつら貝みたいになって、
みんな弱ってるんですが、あれなんとかならんですかね」
青山吉伸はじめ
オウム弁護士は、
弁護士の特権を利用して
信者@
勾留中に接見、
「
黙秘しろ」「さもないと
地獄に落ちる」「
警察と話すと
カルマがつくぞ」
調べ官たちがせっかく苦労してほぐしかけても、
>
オウム弁護士と接見>必ず口を閉ざして>ふりだしに戻る、なんで。
弁護士と会わせないってわけにもいかないんでどうしたもんやらである。
「その件はあと少ーし我慢して下さい。手を打ちますから」
レクチャーの場には
小山金七警部@
落としの金七捕物帖もいて、
さすがに2人とも顔見知りとしてふるまうことはないけども、
なにげに
白鳥とアイコンタクトしたり。
(やっと日の当たる場所で会えたな
メガネちゃん)
(うん、でも、遅すぎたよ)

「おれ、
長官狙撃犯にされそうなんだ。困った弱った」
車両省平田信@ポーシャ師たしかに
南千住署の
特捜本部は、
平田信を
長官狙撃の有力被疑者とみている。
射撃部に所属して
インターハイ出場経験もある
教団随一といわれる射撃の腕前、
183cmという長身、そして
3月30日のアリバイがない。
自分が疑われてると知った
平田信は、
4月23日、
東京総本部に入るの目撃されたのを最後に姿を消した。
のち
オウム看護婦@斎藤明美を誘って一緒に逃亡したとわかる。
「女連れがいい」と友人
林泰男にアドバイスされたからだった。
マコトと
アケミ、
17年にわたる長い長い長い逃避行が始まるんである。

「
局長、人事に私の兼任を通してもらいたいんですが」
「
警視庁の
公安総務課にデスクを移したいんです。
局長と
櫻井部長は
カズヒーと
マサルンと呼び合う仲ですし、
融通きかせてもらえますよね?」
「
カズヒーと
マサルンなんて呼び合っとらん
(苛まあ分かった、今週中に話を通しておく」
「あ、それだと遅いんで。
本日付になるようお願いします」
杉田和博@警察庁警備局長
「なんで君はいつもいつも急なのだ! 急かす理由を言う気はあるのか」
「そろそろ
ラスボス逮捕が近いですよね。
でもこっちにいるとワンクッションあって即応しにくいし、
お隣さんから微妙に報告されない情報もちらほらありますんで」
「
白鳥百合子警視、
警視庁公安部公安総務課管理官(調査担当)から
警察庁出向
警備局警備企画課チヨダ運営、
公安第1課大衆班カルトチーム管理官兼任にくわえ、
警視庁公安総務課支援を命ず」
というねじれまくりの人事で古巣へと。
「というわけで出戻りました。よろしくお願いします(はぁと」
「君と仕事したことはあったかな」
「一瞬ニアミスしてます。
部長が
公総の
課長のとき
4か月ほど私は
係長でした」
「思い出した。そして当時の怒りも甦ってきたぞ」
櫻井勝@警視庁公安部長
「
杉田局長から話は聞いた。
吉岡部付が君を欲しいと言ってる」
のち
小杉問題でつまずき、ダメ役人のイメージが強いけども、もとは
警備局長候補にして末は博士か大臣かの誉れ高い
公安エースで、満を持しての
公安部長だった。
「私は君のような人間などまったく評価しないが、高く買う者は少なくないようだな。まったく
杉田さんともあろう人までなぜ君など相手にするのか」
「先に申し上げておきますが、私、もともと
警視庁の人なんで。お目付役で来たんじゃありませんよ。あくまで
対オウム捜査のため参りました。
私は告げ口みたいな無粋な真似はしませんので、
恩ある
カズヒー先輩に報告し忘れがあれば直接伝えた方がいいと思いますよ、マジで」
「ふん、意味のわからんことを」
じつは図星
ドキッ。このとき
マサルンはすでに恩のある
カズヒー先輩に隠し事を抱えている。
隠し事その1「
麻原の居場所=
第六サティアンでほぼ確定の件」
それ
サッチョーにすら秘密。もはや絶対的独裁者モード
井上総監の厳命だった。
警備局の指揮下にある
公安部が、
警備局長に隠し事なんて異常中の異常で。
井上総監絶対王政の
警視庁はこんな風に隠しグセの芽がまかれたあげく、
まもなく致命的な
「小杉問題」を引き起こすんだけども。
「おう、
白鳥。相変わらず
ムダに別嬪だな。いいかげんおれの
愛人になれ」
「
部付は相変わらず
セクハラ大魔王ですね、へへ」
公安部付兼
刑事部付吉岡今朝男@警視正@公安部ナンバー3@叩き上げ
ノンキャリてっぺん。
「私を拾っていただき感謝します、
部付」
「おまえの上司なんて誰にやらせても気の毒だからな。おれが預かるしかないだろ」
本当のところは
公安総務課長小風イリュージョン*第二十六解が使えねー
キャリアすぎるんで、そんなもんの下に
“魔女”白鳥を置いたらすぐ血の雨が降る、と苦労人
吉岡らしく配慮したからだった、というのを
白鳥も分かっててまああえて言わんけど。
「
白鳥がわざわざ
サッチョーから出戻るとは、いよいよ大詰めか」
「はい、ここでミスると取り返しつきませんのでご迷惑かえりみず」
「やはり
麻原か?」
「いえ。
麻原は本丸ですけどいまや無力です。あとは
捜査1課がやるでしょうし、私がわざわざ出しゃばってきゃんきゃん騒ぐ必要もないです」
「私にとって
事実上のラスボスは、
非合法活動の現場を仕切る
井上嘉浩です。
彼を野放しのままでは
麻原を捕まえても
報復テロをやるでしょう。
私はこの
井上を捕まえたいんです」
「じゃ
実働部隊が欲しいだろ。おい、入れ」
「
駒ちゃん、
大久保くん」
「公式にご一緒できてうれしいです、
警視」
「
警部」
「リハビリ代わりだ。デスクワークまかせろ」
「
部付、あなたは神様ですか? 私があと
10歳ババアだったら速攻ホレます!」
「……微妙にうれしくならんのはなぜなんだ?」
「お、あと
渋谷もいちおう呼んであるぞ。まあいらんかもしれんが」
「そういや静かだと思ったら
渋谷くんいないじゃないですか」
「期待にたがわず遅刻だな」
「あーん、
警視どのー。渋滞で動きませんー」

一方、
警視庁捜査1課@選ばれし捜査第1課員たちは、こつこつと地味に地道に
地下鉄サリン事件の立件にむけて証拠をかき集めてるところ。
刑事ドラマだと軽快なBGMとともに15秒で終わる部分だがホントはいちばん大事。
サリンがまかれた車両の乗客つまり
被害者に聞き込みに回って、目撃証言をかき集め、
実行犯の人相、どこで乗ってきたか、どこで降りたか、を割り出し、
実行犯の乗った駅と降りた駅周辺の
Nシステムや
防犯カメラもひたすら根気よくチェック。
実行犯を送迎した車、その経路も割り出し。
さらに
マハーポーシャの事務所捜索で押収した
東京地下鉄ガイドマップ。調べると
8人分の
指紋。
指紋の主が
実行犯たちに違いない。
連日の
強制捜査で
信者の面割写真もかなり多数ゲット済み。これと例の
インテグラMOの
第七サティアンが
ワーク場所の
信者を照らし合わせ、


そいつらの顔写真を
被害者たちに見せて、「この男」「こんな顔をしていた」というのを何人かはだいたい特定していた。
ただ、これだけじゃ
信者と似てる男が
現場にいた、というだけ。
指紋識別システムもヒットなし。
松本剛のような
前科がないんである。
ここまできたのに
オウムを追い込むあと一押しが足りない。

「
井上嘉浩がどうやって
捜査の網をかいくぐってるのか、
皆目謎だったんですが、やっと糸口らしきものが。
3月16日夜、
白鳥警視が襲撃された件が引っかかるんです」
「その1週間前の
3月9日、
警視の
人事情報にアクセスしてきた
人物がいます」
「でも
駒ちゃん、
公安部の
職員名簿は外から閲覧できないよ」
「ええ、外部からは。でも
公安で
閲覧資格を持つ人間ならアクセスできます。
ただし
白鳥警視は
秘匿作業の関係者ですから、アクセスできても閲覧できるのはせいぜい
階級と前任現任の
部課程度です。
詳細情報まで見るには、
最上位の閲覧権限が必要ですから。

案の定
その人物も詳細を覗こうとしてアクセス制限ではじかれてました」
「誰なのそいつ?」
「個人の特定までは……ただ、
その人物が、
本富士署内の端末から接続していたことは確かです」
「みんな、ちょっといいかな」
「
この人物は低度の閲覧権限しか持っていないのに、どうやってか最高機密の
白鳥警視の個人情報を手に入れたんです」
「そう、だから、可能性をいろいろ考えたんだけど…」
「
渋谷くん」
「えっ?」
「あなた、
3月12日の夜、私の携帯電話に留守電を残したでしょ。
あれは
本富士署内からかけてきたんだよね。そのとき近くに誰かいなかった?」
「
ぼぼぼぼくじゃありませんっ信じてくださいっ」
「もー
泣くな! 渋谷くんが怪しいなんて言ってないでしょ。
誰かが通話先の番号をのぞき見して、
携帯番号から私を探り当てたかもしれないの。よく思い出して」
「でもあのとき、部屋には誰も……あれ?……
あ、そうだ、あのとき
小杉さんが部屋から出て行って──」
「だから僕はその隙にこっそり
警視どのに電話して──
それから缶コーヒー買いに行って、戻ったら
小杉さんも戻ってきて、
……あ、ちがうや
小杉さん、もう部屋にいて」


「
小杉?」

「
本富士署公安係、
小杉敏行巡査長。オウムの
在家信者だ」
「漏洩したのは
小杉巡査長、九割がた間違いなさそうね。あ、
大久保くん」
「へい」
「
渋谷くんが走り出すから止めてね」
だッ
「こら
渋谷どこ行く」
「
ごずぎをぶぢの゛めじまずっ」
「分かりやすすぎだおまえ、早まるな」
「
うわーん、ぼくのせいですー」
「うわ鼻水垂らすな
バカ」
気を取り直して、
小杉が今どうなってるか調べたら、あきれる事実が判明。
滋賀県警が
インテグラの押収
MO解読して、
小杉巡査長=
オウム警官、と発覚したのが、
3月25日。公安警官しかも
地下鉄サリン事件特捜本部@築地署に。
が、その後の
小風イリュージョン*第二十六解で、
警視庁の対処は大幅に遅れ。
ようやく翌週の
30日@
國松長官が
撃たれた当日、警視庁警務部が、
文京区独身寮「
菊坂寮」に立ち入り調査。
小杉の部屋には
オウム本や
機関誌、あの
ヘッドギアまで。
31日にようやく
小杉巡査長は
地下鉄サリン事件特捜本部から外される。
オウム警官と分かってから、
なんと1週間もかかったんである。
じつは
小杉=
オウムってことは、ずっと前から
菊坂寮や
本富士署の一部では公然の秘密で、知ってる人間は知ってたんである。
でも
信教の自由だのあってコトを
署としては荒立てたくない。だからずっとごく内々でなあなあにして伏せられていた。
署長交代時には
オウム警官小杉の件はアンタッチャブルな厄ネタとして口頭で代々引き継がれ、そしてもちろん
警視庁本庁はまったく知らされないまま今に至る。
4月1日、
小杉は
監察係の聴取で、
オウム信者ってことはあっさり認めたけれども、
情報漏えいは強く否定。
監察係もとくにツッコミもせず。
警務部人事1課付@つまり
仕事無しにされ、
とくに処分受けることもなく、
4月21日付で
江東運転免許試験場に異動。
人事調査も打ち切られ、それっきり
小杉は忘れ去られた。
←いまここ身内に大甘い、とされる典型的な
警察的スイーツな展開である。
「それが、
小杉はそのあとも
捜査情報を洩らしていた疑いが濃いんです」
「
4月7日、
小杉の配属された部署と同室の端末から、
自動車ナンバーが照会されていました。しかしその部署ではその車に関わる業務は行っていません。もちろん
小杉も含めて。そもそも彼はこのとき仕事ナシですから」
問題の車を洗ったところ、所有者の親族に
在家信者がいた。
さらにそのナンバーの車が、翌日から
山梨県、
静岡県、
東京都内を動き回り、
栃木県日光市にも向かった、と
Nシステム様のデータベースに記録あり。
「
井上は
小杉に
手配車両かどうかを照会させ、
未手配の車を使っていると思われます。だから
井上は
検問にも
Nシステムにも引っかからなかったんです」
「しかし
小杉も身バレしてとばされて監視もされてるだろ」
「でも
4月1日に
監察の聴取を受けたのに、
7日には平気で情報を流してますよ」
つまり
4月1日以降でさえ
小杉監視はザル同然。いや監視があるかすら怪しい。
「だとすると大胆不敵というかバカというか悪運が強いというか…」
「その三つともでしょうね」
「よし
小杉を捕まえれば、
井上のやつ
捜査情報を得られなくなるな」
「いいえ、彼はこのままにしておく。
せっかくだから彼には
井上捕獲に一役買ってもらいましょう」

一方の
オウム裏ワーク信者たち──
ゴールデンウィークの
大規模テロを計画中である。
麻原からは「
30日に
石油コンビナートを
爆破しろ、政権交代するまで
30日ごとに
テロをやれ」と命じられてるんだが、
コンビナート爆破も
列車転覆炎上も下見してそんな景気よくいかねーしと分かり、
中川智正「簡単なのは
青酸ガスで、次が
小包郵便爆弾だと思う」
なので
林泰男の命令で、
八木澤善次と
松下悟史が
日光山中に埋めてあった
シアン化ナトリウムを掘り出して都内に持ち帰った。
さらに
中川智正が、
第二厚生省の
菊地直子を
上九一色から呼び出し、
クシティガルバ棟にある薬品を持ち出せそうなら持ってくるように指示。
走る爆弾娘こと
菊地直子は
中川と性的関係があり、だから
菊地に頼んだらしい。
走る爆弾娘、ほかにも何人もの
男信者とあれがそれで
“邪悪心”な関係で、劣情禁止が形ばかりでドロドロの
オウムのなかでもひときわ
尻軽き恋多き女である。
菊地直子は頼まれたとおり
上九一色に戻ると、
クシティガルバ棟から
トリクロフェノールや
濃硝酸、
濃硫酸、
塩素酸カリウムを
八王子アジトまで運んでくる。←
ダイオキシン、
青酸ガス、
小包爆弾の原材料である。
クシティガルバ棟にはまだ
警察に押収されてない
劇物毒物がどっさり眠ったままだからなんだが、連日
強制捜査やってるってのに
中川も
菊地もなんとまあ大胆な。
「狙うのは
新宿駅地下街。
青酸ガスを充満させ>
大量ポア」
使う車はもちろん
井上嘉浩が安全かどうかを確認した。



「お、
小杉の野郎、ほんとにナンバー照会してきやがりました。4台分」
「前の2台は手配済みにして。後の2台は手配無しで」
4月29日 土曜日 みどりの日@前
天皇誕生日──
ゴールデンウィーク突入。
超人出の
某テーマパーク周辺にひそかに
警官隊集結。
「
5月7日、
サリンをまく」という
犯行予告電話があったからで。
首都高を走る有蓋トラックの運ちゃん、気味悪いかんじ。
なぜか後ろに
パトカーがぴったりくっついて離れない。
その運ちゃんだけでなくて都内の全トラックの運ちゃんが
パトにくっつかれて気味悪いかんじに。
警視庁は
パト、
覆面パト総動員で
オウムの
ラジコンヘリ@サリン攻撃を警戒してるのだった。
ラジコンヘリ操縦士と目される
防衛庁長官岐部哲也は、干され
幹部だったらしくて忠誠指数も低め、
逮捕後すぐしゃべります状態だった。
まあ、ただ供述の大半が自分語りの愚痴なんだが。
ぽつぽつ
ラジコンヘリのことも自白し始めてたけども、まだ「
ラジコンヘリすでにこの世のものでナシ」を確信できない以上、手は抜けないんである。
そしてこちら、
やんごとなき方面でも。
皇宮警察も
やんごとなき方々への
サリン攻撃を警戒。
側衛チームには、
医官が影のごとく付き添う。
硫酸アトロピン入り注射器持参で。
4月30日 日曜日──
新宿地下街 広大なる地下迷宮。
警察の厳戒網をくぐり脱けた
林泰男、
構内の
トイレ個室のゴミ箱に
青酸ガス発生器を仕掛ける。

中川智正手製の
発生器はかなり凝った
バイナリ式。
時限装置は
濃硫酸@ペットボトル、徐々に酸が容器の
PET素材を溶かしてこぼれ落ち、
>下の
塩素酸カリウム&
砂糖と混じって>反応、
発火。
>その熱が下の
希硫酸入りビニ袋を溶かして、
>流れ出た
希硫酸がその下のビニ袋@
シアン化ナトリウムが出会って>
>
反応>
青酸ガス発生\(^O^)/
>
青酸ガスは
トイレの
空調を通して>
地下街全体に拡散
\(^O^)/という仕掛け。
だが
中川智正、かんじんの
濃硫酸をとり違えるポカやらかし、
時限装置ピクとも働かず
不発。5月3日 水曜日 憲法記念日──
再度挑戦。今度は責任とって
中川智正自ら現場へ。
のつもりが、人が多すぎて
トイレ出入りも多すぎて。
中川ちとビビリまして、仕掛けることできず涙目で帰る。
「次こそ成功させるぞ。
5日にやる」
5月4日 木曜日 国民の休日@祝日にはさまれた平日は祝日なんで祝日──
オウム弁護士の口止め作戦に対して
警察が手を打った。
教団顧問弁護士青山吉伸@アパーヤージャハ正悟師逮捕。容疑は
名誉毀損という奇策。
上九一色村の
肥料業者を「
教団施設に
毒ガス攻撃」と
刑事告訴した例の一件で足をすくわれた。
オウム弁護士は
青山以外にもいるんで、その後も取り調べ妨害はずるずると続くんだが。
ステージの高い
青山が消えて、接見作戦の威力は弱まった。
5月5日 金曜日
こどもの日──
午後7時38分──
ふたたび
新宿地下街構内
男子トイレ
青酸ガス発生器の
バイナリ式時限装置、
今度こそ三度目の正直、設計どおりに作動した。
しゅううう── 濃硫酸がペットボトルを溶かしてこぼれ出て、
下の
塩素酸カリウム+
砂糖と
反応、
ボウッ ≫ 【周波数とメロン】後篇へとつづく