【事件激情】ウルトラNW : 第26便【マスード暗殺】









*第25便──────────
【事件激情】ウルトラNW : 第26便【マスード暗殺】
「これぞ死亡フラグだ」というフラグの立った瞬間
「おれ、国へ帰ったら結婚するんだ」
「あなたに会えて光栄でした」
「向こうでまた会おう」
「このお守り、おまえに貸してやるよ」
そして、

「戦争が終わったら?_大学に入りなおして建築家になりたいね」
───────────────_──アマド・シャ・マスード
────────────────_アフガン北部同盟総司令官
─────────────_ソ連侵攻前は建築科の学生だった

أفغانستان
Afghanistan
アフガニスタン


تخار ولايت
Takhar
タハール州
8th September, 2001
2001年9月8日
Saturday
土曜日
ヒジュラ暦 1422年 ジュマダーアルアーヒラ月 第19日
The area of Influence of the Northern Alliance
北部同盟支配域

首都カブールの北東120km、パンジシール渓谷から北東辺境一帯。
アフガンの覇者タリバーンとにらみ合う「北部同盟」こと「アフガニスタン救国・民族イスラム統一戦線」のわずかに残された支配圏。
アンチタリバーン勢力の最後の砦である。

国連ではこの北部同盟が「アフガニスタン政府代表」として席を持っている。
つってもじっさいには国土の10分の1の領域に押し込められてる北部同盟なんで、あくまで国際社会がタリバーンを国家として認めないための建前上なんだけども。
北部同盟の顔ぶれはタジク人、ウズベク人、ハザラ人、そして非タリバーンのパシュトゥン人──要はタリバーンに負けた部族の残党がここに逃げ込んだ形。

なにこの烏合の衆感。ぜってえ頼りにならねえ勝てる気がしねえ。

そんな北部同盟に「その2人組」がやって来たのは、8月中旬のことである。

フランスのテレビ記者とカメラマンで、2人ともベルギー人。
北部同盟の事実上の総大将シャ・マスード将軍のインタビューを申し込んでいた。
ahmed

احمد شاه مسعود
Ahmed Shah Massoud
アマド・シャ・マスード。人呼んで「パンジシールの獅子」
北部同盟の副大統領兼国防大臣兼総司令官。
もうちょい詳しく北部同盟とマスードを知りたいなら
下をクリック↓


諸部族諸軍閥の寄せ集め所帯を事実上、率いているのがこのタジク人の司令官。
いちおうタジク人の親分はラバニっつうおっさんがいて、いちおうラバニが北部同盟の大統領でもあるけど、なんにしろマスードが内外にカリスマすぎるせいか影が薄い。
ちなみに渓谷含む一帯はもともとマスードの支配地で、同盟の家主さんでもある。
他の軍閥ボスも権力欲だけは旺盛だが、戦闘力と戦功と人望と知名度でマスードより数段落ちるし、おめーら居候だしで、しぶしぶマスードの軍門に降ってる状態。

マスードは1978─89年の対ソ聖戦で名を馳せた聖戦士ムジャヒディンの大英雄で、



パンジシール渓谷を行き来するソ連軍の補給部隊をさんざんっぱら撃破、アフガンを“ソ連のベトナム化”に仕立て上げ、ソ連軍撤退に大きな役割をはたす。

いまなお渓谷のあちこちにそのときの戦果のソ連軍車両のスクラップが残る。
アフガン戦国時代を勝ち抜き、天下を掌中に収めたタリバーンも、
この天然の要害にはかなわず手を出しかねている。

まさに難攻不落、この渓谷にいる限り、マスード絶対マケナーイ。
といってここから出たら勝てないんで延々と籠城してるんだが。

アフガンの軍閥ボスたちが強欲な山賊やならず者と大差ないやつばかりの中、古武士然とした知的な求道者的イメージのマスードは、西洋でも日本でも人気である。

ソ連軍がアフガンから撤退するときも、マスードはソ連兵捕虜をすすんで解放、ソ連軍の撤退も妨害しないと約束してちゃんと約束を守った──なんて逸話も日本人好み。さりげにイケメンナイスミドルだしフランス語しゃべれるしね。
ちなみにほかの↓軍閥の超絶イケメソな親分たち



ドスタム
……まあ、あれだ、そりゃマスードが人気投票1位になるよな。

ただし、ファンが讃えるほどじっさいのマスード本人が権力に淡泊で清く正しく美しかったかというとそこはほれあんまり突っつくなよで、宣伝戦による虚像部分もある。
ただ、西洋人を味方につけるにはどう振る舞えばいいか、
自己プロデュースに秀でていたのはたしかだ。

石油業界のロビー活動でクリントン政権がアフガン情勢に見て見ぬふり*【第9便】をしていた頃は、さすがの武人マスードをもってしても劣勢は覆せず、2001年初めにタハール州の州都ターロカーンも陥落、じりじり領土を削られていた。
が、タリバーンがアルカイダと組んでアメリカの逆鱗にふれた辺りから潮目が変わり、機を見るに敏なマスードはチャンスを逃さず乗っかる。


CIAの主戦派@テロ対策センター長ブラックやビンラディン問題課長リッチB、
このマスードにタリバーンとの代理戦争やらせようと目論んで肩入れ。
庇護者タリバーンを蹴散らさずしてアルカイダ削除デリートはなく、
つまりオサマ・ビンラディンの首も獲れない、
アルカイダ壊滅にはタリバーン撃破が前提条件である。

CIA得意の、というか毎度それしかできん伝統芸能、
「反政府派にドルと武器ぶっこんで政権転覆(゚д゚)ウマー作戦」である。
CIAはマスードに資金につづいて、本格的な武器供給も計画中。

遠くない将来、アメリカはアルカイダ潰しに本腰を入れる。そのときは米軍の支援を受けたマスード率いる北部同盟がタリバーンに決戦を挑むことになるはずだ。
そして、その日はかなり近い。

北部同盟のみなさん「オラわくわくしてきたぞ」
もっともCIAはそのつもりでも、ブッシュ政権は例のユノカル@ガスパイプライン敷設したいお(*´益`*)のロビー活動にこたえて、タリバーンとの国交樹立も選択肢に入れてたから、まだ北部同盟はアメリカにハシゴ外されるかもしれんのだけども。
とにかくマスードがトレンド急上昇なのはたしかで、欧米からの取材申込みも増える。
フランスTV局の「ベルギー人2人組」もまたそんなかんじでやってきた。

2人はロンドンのイスラム観察センターの依頼状と、北部同盟の軍閥ボスのひとりアブドル・ラスル・サイヤフ司令官の推薦状を持っていた。
だが、やっとマスードの支配地に到着しても、なかなか思うようにコトが運ばない。

「指示を待て」
と言われたっきり、もうそろそろ3週間経つんですが。
延々と待たされ、てか放置ほったらかし。いつ頃会えるのか、そもそも会わす気があるのかも教えてもらえんまま。もしかして忘れられてる?
進展なしのまま9月に入ると、さすがに焦れて、
「いくらなんでも放置プレイにもほどがあるだろ!」


「放送予定に間に合わなくなる! これ以上待たすならもう帰るぞ!」


「指示を待て」

「………」
ところで、
この「フランスから来た2人組」の言う放送予定なるものが、
>「間に合わない」というのは嘘なんだが。
というか、
>そんな予定、初めっからフランスのどのTV局にも存在しないんだが。
そして、

2人組はベルギー国籍のパスポートを持っていたが、
>そのパスポート、どっちも盗品なんだが。

彼らの持ってきた高そうなテレビカメラは、
>去年フランスで盗まれたやつなんだが。

つまりはこの↑この2人組↑

>ベルギー人でもテレビ記者でもないんだが。
3 days before ‘Nine Eleven’
──9.11まであと3日

登場する事件テロ紛争戦争、その捜査活動は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子はじめこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりも、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。
白鳥とFBIニューヨーク支局による非公式捜査もリアル界では行われていない。
そこから派生する出来事も実在の人物のもの含め架空である。
ただし非公式捜査で明らかになる実行犯の行動は、公表された情報に基づいている。





「いまメール送ったから。至急そのリストを航空会社の予約名簿と照会させて!」

「え、メール? ぼくの打ったテキストは、その…ねぎらいとかお褒めの言葉とかですね」
“いいから早くメール見て! やりかたは前に話したとおりで!
モーン支局長にも力貸してもらって! 可能な限り早く!”




ふうー。

なんとかおさまってくれた……かな。
びっくりしたー。あのまま頭爆発してサヨナラかと思った。
むかーしそんな映画あったな、えーとスキャ……、
……スキャ……スキャンダラスみたいな、なんだっけ。

病院へ……ぜったい即入院手術だろうな……これのケリがついたら行こう。


「あともう少しだけ持ちこたえろわたしの脳血管くん!」
白鳥は毎度テキトーにやってるように見えて、

じっさいは万一のときニューヨーク支局の捜査官が罪に問われるのを避けるため、
非公式捜査の目に見える証拠が残らないよう用心に用心を重ねていた。

自分の携帯電話は盗聴防止スクランブル仕様にして、すべての通話が米国内のレンタル回線から日本の警視庁の回線を経由、通話先も追跡できないようにしてあった。

さらにeメールも捜査官たちの情報屋の名義のアカウント経由で




これまた地球を半周してニューヨーク支局に届くようにしてある。

メールの中身もハリド・アルミダルとナワフ・アルハズミとその関連のワードがNSA*の覗き見盗み聞きシステムに引っかからんようにまったく別案件に見える文面にしていたし、捜査官から発信するメールやファクスでもそのルールを徹底させていた。
*National Security Agency 国家安全保障局

だからこのときダン・コールマンの受けとった白鳥メールも
当然そういうカモフラージュを施されていて。
コールマンはルールに則ってそれを読み解き、

えーと、ハニ・ハンジュル、フェイズ……なんて読むんだこれ? バニ……?
「バニアハマド」


「フェイズ・バニアハマド」

「あ、はい、ご予約承っております、ミスターえーとバニャーマッド」
「………」
チェックインの際、バニアハマドはホテルマンと「下手な英語」でやりとりした。

「2日の後、3人、来る」

「ようこそミルナーホテルへ」

Boston, Massachusetts───────*現在のホテル名は異なる
マサチューセッツ州ボストン
Milner Hotel Boston Common
ミルナーホテル

このホテルから車で15分足らずの距離に、

Boston Logan International Airport
ボストン・ローガン国際空港がある。
えーとハニハンジュルマルワンシェヒもしくはアルシェヒ──


──フェイズアーメドバニアハマドアタモハメあれ?

「さすがに徹夜3連ちゃんは眠いっすよミスシラトリ」

でも1文字間違えるとヒットしないへっぽこ検索エンジンだからなー。
綴りを間違えないようにコピペコピペ、っと。
相変わらず我が軍のIT環境は遅れすぎだよ。なんで局内でメールひとつ送るのに3つもソフト開いていちいち変換しないといけないわけ?

ふう、やっと送れた。さーてひさびさにシャワー浴びてひさびさに寝よ。
コールマンのPCから送信されたのは、ハニ・ハンジュル、マルワン・アルシェヒ、フェイズ・バニアハマド、モハメド・アタの4人の氏名を国内航空便の搭乗券購入リストと照会する要請メール。事情を密かに知るモーン支局長の承認済の記名付き。

送信先は、>ワシントン FBI本部の金融捜査部。
FBIの金融捜査部は、クレジットカード使用履歴をとりまとめる信用情報管理会社のデータサーバにアクセスする権限を持っている。いちいち判事に申請して令状発行してもらうより手っ取り早いんで、金融犯罪以外の捜査でもなにげに普段使いされる。
だから正確には、金融捜査部がするのは航空券予約名簿じゃなくて、
航空券購入に使われたクレカ番号の照会なんであるが。
こういう照会は、支局が好き勝手に要請することはできず、いちおうFBI本部の対テロ司令塔ITOS@国際テロ作戦セクションを通して、というルールがある。

で、この身内のはずのITOSこそ、アルミダル情報隠しの元凶CIA出向組の巣窟。
白鳥の仕切る非公式捜査を知られちゃダメゼッタイな最も警戒すべき相手なわけで。
ただ白鳥のこしらえたルール通りにやれば、このメールもハリド・アルミダルとはなんの関わりもない案件に見えるはずだ、
が、

このとき寝不足臨界突破のコールマンは気づかなかったが、


マウスをうっかり滑らせ、覚書メモから10ケタほどの数字を一緒にコピペ、


ってここまでは誰もが経験する凡ミス。

そして、そのまま気づかず送信。
白鳥もまさかコールマンが初期の共有情報を使い続けてたとは思いもせず。

もっとも、一見その数字はなんの意味もないものだし、
元の共有情報ファイルにはアルミダルとアルハズミの名はカケラもないし、

凡ミスはしたものの、意味のない数字9ケタごとき問題にはならな

いはずな

んだが、

Pennsylvania Avenue NW, Washington DC
ワシントンDCペンシルバニア北西通り
Federal Bureau of Investigation Headquarters@連邦捜査局本部
> Counterterrorism and Counterintelligence Division@対テロ/防諜本部
> ITOS@International Terrorism Operation Section@国際テロ作戦セクション


「この照会要請メールの末尾に誤入力されたと思われる9ケタの数字ですが、」
Dina Corsi
ダイナ・コルシ
FBI本部ITOS次長補佐官
@CIA局員 ビンラディン問題課から出向中


「ハリド・アルミダルが昨年のアメリカ入国した際に使用された、
サウジアラビア国籍のパスポート番号の後半部分と一致します」

「念のためアラート要件に入れておいたら先ほどヒットしました」

「FBI捜査官が知ることのできないはずの情報です」
Tom Wilshere
トム・ウィルシャー
FBI本部ITOS次長
@CIA局員 ビンラディン問題課から出向中


「では、なぜそんなものが紛れ込んでるんだね?」
「FBI側が違法な手口で機密情報を手に入れている疑いがあります」
「まさか。偶然では?」

「ええ、偶然でしょうとも。9ケタの一致する数列も、そのメールの送信者がFBI捜査官で、しかもハリド・アルミダル情報開示を巡って散々ゴネたニューヨーク支局の対テロ特捜班所属だということも、そしてなにより、」


「あのジョン・オニールの部下だった、というのも偶然でしょうとも」
「オ、オ、オニール?」


「すす、すぐ調べさせねば」

CIA旧アレック支局ことビンラディン問題課の局員にとって、さんざんっばら手柄をかっさらわれた怨敵ジョン・オニールの名は効果てきめんの呪文だった。
ところで──
じつは前の便で入れるのをすっかり忘れてたんだが、
9月7日には陰謀論界で有名なハイジャッカー目撃談があったの思い出したんで、
一瞬だけ時系列は、↓7日金曜の午後へと22時間ほど巻き戻りまして。


映画の都ハリウッ

ドでないほうの、フロリダ州ハリウッド。
またもや当然のごとくビーチリゾートだが。

シーフードレストランバー「シャッカムス」──*2003年にクローズド
9月7日金曜の午後4時半ごろ──

9.11テロリストの写真にそっくりな男2人と素性不明の男1人の3人組が現れ、


モハメド・アタ(にそっくりな男)はウォッカのオレンジジュース割り、マルワン・アルシェヒ(にそっくりな男)はキューバリブレを注文。アタ(にそっくりな男)はウォッカを5杯もぐいぐいやって酔っ払った。この2人は熱っぽく話し込んでいて。

そのあいだ「第三の男」は店内のアーケードゲームで遊んでいた。

男たちはそれから3時間半くらい──午後7時ころまで店にいて、

支払伝票の金額48ドル*約6000円を見て、酔ったアタ(にそっくりな男)は怒り出してバーテンダーパトリシア・イドリシや支配人トニー・エイモスと言い争いになり、
エイモスから「カネ持ってないから払えないんだろ」と煽られ、
「おれはアメリカンエアラインのパイロットだ。
F(ピー音)king billクソったれ札くらい払ってやるっ」

50ドル札と100ドル札の束から50ドルを叩きつけて。


「2ドルはチップだ!ドヤ顔」 (´-`).。oO(少ねーよチップ
ニセ札横行社会にしてカード社会のアメリカでは、高額紙幣を束にして持ち歩いてるやつなんてそれだけでろくなもんじゃなく疑いの目で見られる。
じつはこの店から徒歩5分弱のごく近場に、
アタたちが5月13日から6月13日まで活動拠点にしていた、
ジャクソンストリートの↓アパートがあった。

*アパートはこの10年後に取り壊された
この「酔いどれアタ」は、陰謀論者が大大大好きな目撃談である。
「ゴリゴリなイスラム教徒なのに、女が接客する店に来て、酒を飲んで酔っ払ったり、4文字言葉four letter wordを口走ったりするはずがないキリッ、だからアタたちは偽イスラム! 偽テロリスト! だからアメリカ政府の自(以下略」

例のアタにセフレいたとか麻薬やってたとかポークチョップ@つまり豚肉大好きとか酒場入り浸りとか、筋肉メンがポルノやデリヘルやストリップで厳格なイスラム教徒にあるまじき煩悩を満たしてつまり自作自(以下略と同じ系統のエピである。
ところで、
この飲み屋の目撃談を根拠になにか主張したい人にはまことに遺憾ながら、
9月7日から10日まで9.11直前の4日間、アタの所在はクレカ使用もろもろからかなりはっきり追跡できてしまうんである。*【第25便】
底意地悪くこまごまと検証してみると、

アタは7日午後3時15分頃にフロリダを発ち、>空路メリーランド州ボルチモアへ、

>翌8日の時点でも同じメリーランド州ローレルにいて、


ローレル市内2カ所のウェスタンユニオン窓口でUAEに送金手続き、>

>そして翌9日にボルチモアを発ち、

>そのままフロリダには戻らず、>ボストンへと飛んだ。
フロリダの居酒屋で酔っ払ってたはずのアタは、ちょうど同じ時間帯、フロリダから亜音速で離れゆく機上の人で、そのあとは1700km離れたワシントン近郊にいた。
この時点でキリッとか言ってた人のライフはゼロよ息してないわだが、
いちおうフォローすると、物理的に往復不可能な距離じゃない。
*リンクが見えない人はこちら
空路3時間弱、陸路だと片道15時間、行き来はできますですよ、いちおう。
が、なんのためにわざわざ1700kmも離れたフロリダ南部にある居酒屋まで行って酔っ払ってクダまいて、>さらに車で15時間くらいかけてトンボ返りする?
そもそもボルチモア行きの機に乗ってたのは替え玉? なんのためにわざわざ替え玉? 両方で半端に目立ってるし。ドッペルゲンガー?

ちなみに7日は「ブッシュ大統領が10日─11日に滞在予定」発表されたフロリダ州サラソタやロングボートキーで「モハメド・アタとマルワン・アルシェヒそっくり」な男たちが出没、現地のホリデーインに泊まった、という目撃談もある日で。*【第25便】
同じフロリダ州でもハリウッドとサラソタは半島の反対側だから、移動距離は360km以上あって、クルマ飛ばしても片道3時間半かかる。
もしどれも事実なら、9月7日のアタは3カ所に同時に存在しないといけない。
そんなんもうドッペルゲンガーですら足りねえし。バイバイン使わないと。

ちなみに「テロリストが来た店」はメディアで話題になって人も押しかけた。
でも、9.11から1か月も経たないうちに目撃談の設定が微妙に変わっていく。

アタの飲んだのはクランベリージュースになり、ウォッカで酔っ払って支払いでぶーたれる役はアルシェヒになった。そのうちアタがゲーム機で遊ぶ設定に変わって──
のち「テロリストが来た店」は、朝日新聞の取材を拒否した、

ということじゃあああああ。
というわけで、時間はふたたび↓9月8日へと戻りまして──

George Bush Center for Intelligence, McLean, Virginia
バージニア州マクレーン ジョージ・ブッシュ情報センター
Headquarters of Central Intelligence Agency
CIA@中央情報局本部
CIAを所在地をもって「ラングレー」とか呼ぶのが事情通っぽい風潮だが、じっさいの住所はラングレーではなくマクレーン。ちなみに本部庁舎名に冠されたジョージ・ブッシュは、息子ブッシュではなく、CIA長官も務めた父ブッシュの方である。

>Directorate of Operations@工作総本部
> CTC@Counterterrorism Center@テロ対策センター
> Bin Laden Issue Station@ビンラディン問題課



Jennifer Matthews
ジェニファー・マシューズ
@ビンラディン問題課分析官 兼 報告書作成主任


「フランシスは居る? 呼ばれたんだけど」

「奥で待っています」

「ジェン、忙しいとこ呼びつけてごめんなさいね」

「さっき提出してもらったFBIの通話履歴の解析レポート、
あなたにひとつだけ確認したいことがあって……」

「なにか問題でも?」
「さすが仕事早くて、助かったわ」


Alfreda Francis Bikowsky
“赤毛のフランシス”ことアルフレーダ・フランシス・ビコウスキー。
ジェニファー・マシューズの先輩で、マシューズと同じくアレック支局で情報分析官としてめきめき頭角を現した女子局員の星。
ハリド・アルミダル情報をFBIから隠す遮断工作に関与*【次発便】し、

9.11後は容疑者への「
「拷問女王トーチャークイーン」の悪名を轟かせる女である。

のち「フランシスと呼ばれる赤毛の女CIA」をめぐって、9.11の遠因となった情報遮断だの拷問だの情報分析ミスによる冤罪だの、キナ臭い話が数限りなく拡散してCIAは焦る。
「フランシス」はCIA的にマジ核心的タブーのド真ん中にいたわけで、彼女の関わったもろもろが白日の下に引きずり出されると組織としても相当まずかったらしく。
CIAは「秘密工作担当者および協力者の身の安全」のための情報保護法をタテに「フランシス」の議会召喚を頑として拒否。さらにメディアやジャーナリストやブロガーに、「フランシス」の素性を探るやつは片っ端から訴追する、と警告。
なりふりかまわず組織防衛に走った。
そんなこんなでいまだビコウスキーの人物像は、
もやっとベールに包まれている。
なので、とうぜんながら事件激情のビコウスキーは想像上の生きものである。

「わたしの助手マイケル・アン・ケイシー*【次発便】、彼女はとても野心家でね」


「ぎらぎらしててオフェンス的で、ちょっと昔のあなたに似てるかも。」


「わたしたちを踏み台に成り上がるチャンスを虎視眈々と窺ってる」

「ま、それはかまわない。そういうガツガツしたの嫌いじゃないからね」

「ジェン? 聞いてる?」

「え、あ、えーと、ちょっと待って。話が見えないけど?」
「まあつまりずっと彼女にチャンスをあげようと思ってたわけよ、だから、」


「あなたに頼んだのと同じレポートをマイケル・アンにも頼んだの」


「悪いけどダイナ・コルシからあなた含む2名で、
ダブルチェックさせるよう指示があったからね」

「それで今、両者を見比べてるんだけど、やっぱりマイケル・アンはまだまだ全然ねえ。あなたと比べるのは10年早いってとこ。詰めが甘いというか、未熟という以前に勘が鈍いというか。酷だけど素質の違いもあるのかなあ」

「でもそんなのはどうでもいいの。要点はレポートの出来不出来じゃないから。
あなたに確認したいと言った部分は、」


「こっちのマイケル・アンのレポートには載っているいくつかの通話の一部が、」


「なぜかあなたのレポートでは消えてる。正確には通話記録5本に一部欠落がある」


「ジェニファー・マシューズともあろう人が凡ミスかしら?」

「ごめん。お恥ずかしいけど、そうかもしれない」

「問題の通話履歴は、マイケル・アンのレポートと照らし合わせたら、5本とも同じ通話先だった。正確には転送先かな? 通話はメンフィスもしくはコロンバスの電話局管内にある回線にまずつながり、そこから太平洋を越えて東京に転送されていた」

「転送先の回線は、警視庁Metropolitan Police Department」
あなたのレポートから消えていたのは、
5箇所ともこの“東京、警視庁への転送”について触れた1行分だった」

「マイケル・アンのレポートも“東京・警視庁”までしか調べてなかったけど、
日米の捜査官が個人的に電話でやりとりするのは珍しいことじゃないから、
それ以上突っ込まなくても、まあしょうがないでしょう。
じゃあ、なぜあなたのレポートでこれが消えていたのか?
引っかかったから、わたしがその先をたどってみた」

「通話の相手は警視庁の中にはいなかった。そこからさらに外部の回線へと転送されていた。その先は追跡不能。とても手の込んだ巧妙な通信ロンダリングね。
でもわずかーな痕跡から、転送先がアメリカ国内の、東海岸のどこかにある携帯端末、というのは推測できた。わざわざ地球を半周してアメリカに舞い戻ってきたのね。
その相手はニューヨークとさほど遠くない地域にいながら、どうしてもこのFBI捜査官の通話相手が自分だという証拠を残したくなかったようね。
さて、ジェン。ここからがあなたに確認したいことだけど、」

「たしかあなたは日本の公安警察Public Security Bureauの女性と懇意にしてたよね?」

「名前はユリコシラトリ、だっけ?」

「懇意ってほどじゃないよ。ショワー*の指示で昨年から何回か情報解析手法のヒアリングしただけ。すべて録音して上から問題なしと判定もらってる」
* マイケル・ショワー : 前アレック支局チーフ

「いまシラトリは、ニューヨークに滞在してるんだっけ?」
「さあ? さいきんは付き合いないから知らないけど?」
「ねえ、ジェン、わたし、非常にがっかりしてるんだよ」


「あなたはわたしと将来DCI*の椅子を競い合うライバルだと思ってるんだから。
以前のあなたならこんな初歩的なヘマ絶対に犯さなかった」

「“無慈悲ルースレス”と男どもに畏怖されていた
ジェニファー・マシューズはどこへ消えたのかな」
*Director of the Central Intelligence 中央情報長官。アメリカのインテリジェンスコミュニティーの統括で、CIA長官Director of Central Intelligence Agencyが兼務する。Agency(局)の有無で大違い。だが国防総省がCIA長官に情報を渡したがらず、2004年に廃止されるまでろくに機能しなかった。ウルトラではややこしくなるだけなんで中央情報長官の肩書きは無視スルーしている。

「あなたにこんな判断ミスやるような焦りを感じさせるほど、
素敵な友だちなのかな、そのシラトリって女性は?」

「だったら、ちょっと妬けるなー」

「わたしが言うのも変だけど、この小さな改竄さえなかったら、わたしも見過ごしていたでしょうね。あなたもシラトリも、うやむやで言い抜けられていたと思うよ?」

「 More than enough is too much.
「過ぎたるは及ばざるが如し、って言葉、お忘れ?」

「………フランシス、」


「なーんでそんな話になるかなー!」


「ちょっと想像力たくましすぎじゃない?」


「レポートの欠落は改竄なんて大げさなものじゃなく、わたしの単純ミスで一括消去してしまっただけ。それは混乱させたみたいで謝ります。でもそれだけの話だし!」

「大体わたし、ユリコシラトリとは個人的な関わりないから! 私情を持ち込んで嘘混じりのレポート作るなんて、わたしがやってなんの得があるの?」

「このわたしが情に流されてそんな愚かな真似するわけないでしょ!
そもそもそんな風に思われたことからして大いに心外ッ」


「フランシスならわたしがどういうキャラか知ってると思ってたけど?」


「すでにITOSはこの件で動き出してるよ。わたしの今した話はコルシに届いている。
でもあなたは、あくまで偶然で、わたしの勘ぐりすぎだと?」
「もちろんっ」


「当ったり前よ! これでなにもないと分かったら、」

「きっちり詫び入れてもらうからね!」

「…………」

カッカッカッ

「……………」



(なーにがマイケルだこのヤロ調子こいてんじゃねーぞごら)

カッ、カッ、カッ、カッ

カッ、カッ、


(……ごめん、ユリコ。しくじった)

「ニューヨーク支局のコールマン捜査官がユリコシラトリと結託し、ハリド・アルミダルの追跡捜査を不当に進めているのは間違いないかと思われます」
Dina Corsi
ダイナ・コルシ
@FBI本部ITOS次長補佐官
@CIA局員 ビンラディン問題課から出向中


「コールマン1人ではなくニューヨーク支局の複数名が関与している可能性があります。退職した元主任捜査官ジョン・オニールも関わっているかもしれません」
Tom Wilshere
トム・ウィルシャー
@FBI本部ITOS次長@CIA局員 ビンラディン問題課から出向中


「すみやかにユリコシラトリの身柄を拘束し、違法捜査を差し止めさせます」

「シラトリの拘束と聴取は、ニューアーク支局が担当し、
ニューヨーク支局には一切関与させないこと。
支局内のどの捜査官まで汚染されているか分からず、
証拠の破棄隠蔽が行われる恐れがあるためです」

「シラトリへの聴取及び家宅捜索で違法行為の物証を掴んだ時点で、すみやかに司法省に対し、ニューヨーク支局の対テロ特捜班への査問を要請します」

「──以上、でしたよね、次長」

「うむ、そんなかんじで」

「次長、ワトソン副長官補には伝えますか?」

「あーそうだな、そうし」



「あー進展があってからでいいんじゃ、ないかな、みたいなかんじ」
9th September, 2001
2001年9月9日
Sunday
日曜日
ヒジュラ暦 1422年 ジュマダーアルアーヒラ月 第20日
أفغانستان
Afghanistan
アフガニスタン

تخار ولايت
Takhar
タハール州
خواجا بهاء الدين
Khawajah Bahauddin
ホジャバハウディン
The area of Influence of the Northern Alliance
北部同盟支配地域
ここで長らく待たされていた例の「フランスのテレビ記者」2人組。

「出かける、支度しろ」

「テレビカメラを持っていった方がいいのか?」


「出かける、支度しろ」

(……持っていくか)


「テレビ記者」の本当の名は、ダフマン・アブデルサタール

「テレビカメラマン」の本当の名は、バラウィ・エルウアエル
2人の暗殺者を生み出したのは、


ベルギー首都ブリュッセル郊外の町モレンベーク。

イスラム教徒移民がより集まって暮らす町。住民のなんと半分がイスラム。
区域によっては9割がイスラム教徒だったりする。
ベルギー人はイスラムに占拠されたこの町を自虐と嫌悪と不安を込めて呼ぶ。

“モレンベキスタン”
イスラム移民あるところに失業あり貧苦あり不満あり原理主義ありジハード主義あり。

この町のマンションの一室にあるモスク‘CIB’こと「サントルイスラミックベルジュ」。とうぜんお約束で原理主義、怒りと憎悪をかき立てる系。そして過激派の職安の役割もはたし、テロ組織のリクルーターが公然と出入り。ジハーディストの温床。

そう、あの2016年【パリ同時多発テロ】の首謀者も、
この“モレンベキスタン”の住人であり、モスクCIBの常連だった。
21世紀欧州を蝕む病魔“文明の衝突”の土壌が、早くもこの頃にはできあがっていた──そして欧州共同体の唱える美しい理想のもとに放置されたんである。

「テレビ記者」ダフマン・アブデルサタール、
ホントはチュニジア人。ベルギーには留学生として来ていた。欧州に留学できるくらいだから、まあまあのお坊ちゃん。信仰心薄しのいまどきな世俗的若者だった
が、

異国の生活と成績わろしに悩み、

やがてモスクに入り浸るようになって──
んんんん? なんかどっか聞いたような。

まいど! ごりっごりの
アフガン軍事訓練キャンプに参加していたダフマンとバラウィをテレビ記者に偽装させてアフガンに送り込んだのは、アルカイダナンバー2アイマン・ザワヒリ。

いや、まだ仮免のナンバー2。エジプト人で外様のザワヒリが最高幹部になるにあたってビンラディンから課せられた「昇進試験」が、これだった。*【第13便】
ロンドンイスラム観察センターの依頼状も、ザワヒリがつくった偽文書である。

そして2人組の推薦状を書いたラスル・サイヤーフは、いちおう北部同盟の一員ではあるものの、もともとタリバーンと同じパシュトゥン人だし。宗教思想はワッハーブ派でタリバーンに近いし。もとはアルカイダと仲良しだし。そもそもビンラディンとアルカイダがスーダンから追い出されたとき「アフガンに来なよ」と迎え入れたのもこのサイヤーフだし──といううさんくさい敵味方か味方の敵かわからんやつ。
こんなんに推薦されても意味なしというかフラグが立つばかりというか……。

3週間も待たせてたから、用心深く2人の身元調査でもしてたのかと思いきや、ぜんぜんしてなかったっぽい。ちょっと裏取りすればバレるインチキだったのに。


こういう国々にありがちなルーズさと、“おまえより立場が上だと示すためにもったいぶる”という、これまたありがちなマウンティングってだけだったかもしれない。

ともかくこの日、マスードは「フランスのテレビ局」の取材を受けることになった。
25年もの間戦場を生き延びてきたマスードのサバイバル能力とサバイバル運。
この日、それに最初で最後の狂いが生じた。

マスードの側近たちを信用させたのが、高そげなテレビカメラ。
のちフランスの情報機関DGSE@対外治安総局とアメリカのFBIが共同で、カメラの製造番号で追跡調査、このカメラが、前年12月フランスのグルノーブルでクリスマスの撮影をしていた写真記者が盗まれたものだと突き止める。
──というのはすべて後から分かった話だが。

2人の刺客アサシンズの前に、ようやくマスードを前が姿を現した。

「いやいやムシュー、長く待たせたようで申しわけなかったな」

「さあ、始めようか」


「まず最初にお聞きしたいのが──」









「ライラーハイッラ、アッラー アッラーの他に神なし」











マスードが?


「クラークだ」
“テネットだ。マスードがやられた”


「こちらも今さっき聞いた。負傷したという情報もあるようだが」
“我々の複数の情報源によれば、ほぼ即死だ。北部同盟は大混乱に陥ってる”

これでタリバーンの天敵が消えた。
、となると、

つぎはこっちに来る番か。
同じ頃──

Newark, New Jersey
FBI Newark field office
ニュージャージー州ニューアーク
FBIニューアーク支局
「今夜はワシントンの本部から直命の仕事だ!」

「ハドソン川の向こうは隣の庭先だぞ。目立たず、すみやかに職務を遂行しろ。長引かせてNYFO*やNYPD*を呼び寄せるな」*FBIニューヨーク支局の意 *ニューヨーク市警

「やれやれ日曜だってのにド深夜から捕り物かよ」

「本部から来た話って。なんでニューヨーク支局にこそこそ隠すんだろ?」
「さあ? なんにしろ、触らぬ神に祟り無しFar from Jupiterでしょ」

「FBIのロゴを必要以上にひけらかすな!」

“ニューヨーク、ダウンタウン方面、ソーホー”


“ただいまホランドトンネル通過、”

“マンハッタン側、キャナルストリート交差点に出た”

“トンプソンストリートとプリンスストリート交差点の東”

“ピンクと赤のアパートメントだ”



“拘束対象は女性だが、国籍国の警察官で、武器を所持している可能性もある”





“十分に警戒してかかれ!”






(疲れた、ちょっと今夜は早めに寝とこかね)
2 days before ‘Nine Eleven’
──9.11まであと2日
【第27便 死亡の塔】へとつづく








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