【事件激情】ウルトラNW : 第37便【9.11 ON THE DAY】








【事件激情】ウルトラNW : 第37便【9.11 ON THE DAY】
「運がよかった、今日の死者は200人以下で済んだ。
今にもっと大きなビルで1万人以上の死者がでる」
────「タワーリング・インフェルノ」1974年

ぱきっ からんっ

「げほっげほっ」
Stanley Praimnath
スタンリー・プレムナス


「い、いったい何がおきたん?」

サウスタワー81階 富士銀行オフィスは175便の直撃でめったくそに崩壊したが、
その場にいたプレムナスは奇跡の無傷。
わずか6m横に機体の残骸がめり込んでいた。まさに九死に一生。



登場する事件テロ紛争戦争、その捜査活動は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子はじめこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりも、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。
FBIニューヨーク支局の一部捜査官による独自捜査も、CIAとFBI高官による妨害行為もリアル現実には行われておらず想像にして妄想だが、ある意図がある。





プルルル……

プルルル……

「ハロー、こちらバレリー・ジェームズの事務所です」
“ヴァル? おれだ!”
Valerie James
バレリー・ジェームズ


「ジョン! よかった! ケガはない?」

「おれは平気さ。ピンピンしてる。いやしかし、こっちはひでえありさまだ」

「ビルに何が当たったか知ってるか?」
“ボーイング747らしいって聞いたけど”
「うーむ、やっぱりそうか」

「おれ雇った連中も死んじまったかな。この仕事失うわけにはいかんのだがなあ」
“これから彼らはますますあなたを必要とするわ”
「おお、おれもそう思うぜ」

「どうか気をつけてね、ジョン」

「マイハニー、愛してるよ」


「アンナ! おれだハニー、おれは無事だ、いま外にいる。
ああ、気をつけるさ。マイハニー、愛してるよ」

「リン! おれだハニー、心配させてすまんな。
おれはピンピンしてるって真っ先に知らせたくてな」
Northtower(WTC1)
1st floor
ノースタワー1階ロビー



「どんな具合だね?」
「高層階へ行くエレベーターが壊れて階段でしかいけない。
階段もすでに一部崩壊してるという情報もある」

「消防無線が高層階まで届かない。ポイントマンを置いてもうまく機能しないんだ」

「ビルにある内線設備でなんとかならないか」
「警備員用のインカムなら1ダースほどある。持ってこさせよう」
こんちくしょうめ、オレ様のビルに何てことしやがる。

「警備保安部で動けるやつは託児所へ向かえッ。残ってる子供たちを最優先で避難させるぞ。エレベーターは使えんと思え、非常階段を使うんだ、走れっ」

88th floor of Northtower(WTC1)
ノースタワー 88階
Franck De Martini
フランク・デマルティーニ
ワールドレードセンター建築主任@内装工事管理


「正直言って危険だ。あんたらは下へ降りてもいいぞ」

「人手が要るだろ、力貸すぜ」
「おれも手伝おう」

「よし、やるか!」

このときノースタワー80階から92階にいた生存者たちも大ピンチに陥っていた。
火災の熱や壁の崩壊で非常階段の扉がゆがんで開かなくなってしまい。

「げほっげほっ」


「おお、助かった!」
「早く降りて降りて!」

「建築主任から地上要員へ。直行エレベーターが落下寸前だ。
このことを消防隊員に伝えてくれ」

デマルティーニと同僚パブロ・オーティズ Pablo Ortiz、
港湾公社のピート・ネグロン Pete Negron、カルロス・ダコスタ Carlos Da Costa。

彼らは逃げようと思えば逃げられたのに踏みとどまり、
黙々とノースタワー高層各階の避難路を確保して回った。

90階、89階、88階、86階、78階で、バールのようなものつまりバールで
開かなくなった非常階段のドアをこじ開け、壁を破って、

エレベーターの扉もこじ開け、懐中電灯で降りる人々を誘導した。
デマルティーニたちの職務に各階の非常ドアを開けるなんて義務はなかった。だが逃げることなく自ら役割を引き受け、少なくとも70人の生命を救った。
残された時間の許す限り。

壁のないオープンなフロア構造があだとなって火はたやすく燃え広がる。
フロア上の可燃物は20分ほどで焼き尽くされ、火はつぎの獲物をめざして外壁を這いのぼり、さらに上の階へと燃え移って以下繰り返し。



高層階に取り残された人々は耐えられず次々と窓ガラスを割った。熱と煙から逃れようと窓枠の外に身を乗り出してしがみつく。
だがその後ろでは新しい酸素をゲットした火がますます勢いづく絶望的展開に。



South Tower(WTC2)
Fuji Bank on the 81st floor office
サウスタワー 81階
富士銀行オフィス(だった瓦礫の山)


「おーい」


「そっちに誰かいるかー?」

「こ、ここに1人いるーーっ」
「ケガは? 動けるか?」
「なんとか動ける。でも瓦礫で通れないんだ」

「おっ、天井と瓦礫の間に人が通れそうな隙間があるぞ」


「え、届かな……」
「飛べっ、それしかない、ジャンプだ! がんばれ!
誰か知らんがお前ならできる!絶対できる!」
修造級のポジティブシンキングな煽り、かつ、
とにかく火事場というかヤケクソのクソヂカラで。

「ファイトオオオッ」
「よーし、頑張ったな。おれはブライアンだ、よろしく」
「……あ、ど、どうも、僕はスタンリー」

「ところでいま手を掴んだとき、なんでファイトーって叫んだの?」
「……い、いえ、なんでもないす」
「ひょっとしてフリだった? すまん、なんか俺言わないといけなかった?」
「あ、あの……僕が悪いんです……」
スタンリー・プレムナスは、84階から降りてきたユーロブレイカーズ社のブライアン・クラーク Brian Clarkに助け出され、地上をめざすことに。

プレムナスとBクラークの奇跡のサバイバルは、陰惨な9.11でも神エピソード的に何十回も美談扱いされて、ネット上でも動画がどっしゃり見つかる。
South Tower(WTC2)
The emergency stairs on the 65th floor
サウスタワー
65階 非常階段


「焦らず、速やかに、秩序をもって、避難せよっ」
モルガンスタンレー従業員2680人は日ごろの避難訓練のおかげでパニクらず、訓練で繰り返し覚えたとおりに整然と階下へと降りていった。
モルガンスタンレーは44階から72階までオフィスがあるが、


リック・レスコラの巨体がぶるんぶるん縦横無尽に躍動、避難を指揮。
レスコラはみんなの士気を高めるため、ベトナム戦争のときもやったように、
ウェールズの軍歌「ハーレックの男たち」をしれっと
「コーンウォール」にした替え歌をトラメガで熱唱。

「ぼさっとするな、コーンウォールの漢たちだ!♪
輝く槍の穂先が見えないか?♪」

「戦士の旗がなびくのを見よ。いざ戦場へ♪
コーンウォール人は揺るぎなし♪」
若い証券メンには原曲すら知りもしない替え歌だったが、
ともかく勇ましいっぽい軍歌調にみんな勇気づけられ、歩きに歩く。

生還できた証券マンたちは振り返る。
「僕らは魔法に掛けられたように訓練どおり行動した。ふだん思いもしなかったが、災害時には脳は機能停止して考えることもできやしない。でもあの日はみんなどう動くべきかどこへ行くべきか、まったく迷わなかった。体で覚えていた」

とうぜんながら他社ではこういう魔法はなかったんだが、最も母数の多いモルガンスタンレーの神業的な撤収が影響したのか、この日、不思議と我先に人を押しのけて逃げ出すようなパニくりや醜い争いはおこらず。
もともとWTCにいたのが教育水準も高めのアッパーミドル以上が大半だったことも大きいだろうけども。もっと雑多な階層だったらどうなったかは神のみぞ知る。

警官や警備員の誘導にしたがって秩序よく脱出。

「ビルが不安定な状態だっ、道の反対側に寄って移動しろっ」

地上から空を見上げて、初めて彼らはそれまで居た場所で
なにが起きていたか目の当たりにして恐怖した。

Southtower(WTC2)
1st floor
サウスタワー1階ロビー


「近くの産科クリニックから応援に来た」

「産科だあ? 今ここでお産やってるように見えるか?」

「そんなことくらい見ないでも分かってる」

「軍事医療従事実績、災害トリアージ資格、FEMA*予備登録医療従事者、
これだけじゃ不足というなら帰るが?」*アメリカ連邦緊急事態管理庁

「…………( ゚д゚ )」

「助かった! ミス……あー」
「ウッドカッターだ」
「トリアージを頼めるか? 負傷者が多すぎて初動が追っつかない」

「タグはそこにある。あっちのグループのトリアージを頼む」
「引き受けた」

2機目の激突したサウスタワーは、ノースタワーとはちと違う状況下に。
あやうくタワーを素通りしそうになったのか、操縦桿を握るマルワン・アルシェヒは直前で機体を急激に傾けてコースを変え、>結果、傾斜角45度、時速870kmでサウスタワーの東部分に突っ込んだ。

80階81階を中心に、破壊は77階から85階まで及んで。
11便がノースタワーど真ん中をぶち抜いたのと異なり、
175便の切り裂いたのはサウスタワーのおもに東半分だった。

‘Sky lobby’ of the 78th floor, Southtower
サウスタワー78階 スカイロビー

──ィイイ

「ん?」








機体はビル内部を蹴散らしながら四散。あの全世界生中継された大爆発は積まれていたジェット燃料のわずか17%ていどの発火で、残りは引火する前に空中に吹き飛ばされて揮発するか、タワー深部で二次爆発をおこした。

「うう、痛い」「助けて」「誰かー」

「うう、げほっ」

「くそっ、手がやばい……」

「いまの、何だったんだ」

「爆弾?」



「なにこれ……」
175便の突入した階はノースタワーより低く、78階スカイロビー@エレベーター乗換ロビーは左翼エンジン部分の直撃を受けた。

「カレン? カレンはどこ?」

「……彼女はここに」

運悪くスカイロビーは避難する人とオフィスに戻ろうとする人であふれ、
そこに機体と瓦礫と炎と爆風が無慈悲に襲いかかった。

ロビーは一瞬で死体が累々と横たわり、その間からわずかな重傷者の呻き声、千切れた腕や脚があちこちに転がる、この世の地獄絵図な惨状に。
激突の瞬間、サウスタワーの78階より上に居合わせたのは約630人。
避難を拒んで高層階に居残ったか避難未遂で出戻ってたのがこの人数。

激突>爆発で約200人が即死、400人超えが最初の爆発後も生きてた模様。緊急電話や家族への通報によれば、88・89階に約100人、104階@サンドラ・オニール・アンド・パートナーズ社に約70人、100~103階 エーオン社では167人が生存していた。
さてサウスタワーがノースと
“ちと違う状況下”とは↓これ
1つだけ生き残った非常階段A


ツインタワーの78階には「エレベーター乗換駅」のスカイロビーがあり、このフロアがエレベーターの終着駅や停車駅や始発駅だったりするせいで、他の階だと非常階段Aの通る場所をエレベーター昇降用機械がでーんと陣取ってる。
なので76─82階の間だけ、それも非常階段A1本だけが、中央部から離れて北西角へと大きくコの字型に迂回していたんである。ちょうど激突を避けるかのように。
>結果、いくつもの偶然が重なって、
サウスタワーでは1本だけ高層階から下に降りられる非常階段が崩壊せず残った。
ノースタワーのエレベーターと非常階段が一撃ですべて失われてしまったのと比べて偶然が呼んだ蜘蛛の糸のような希望だった、

ただし、例によって儲け重視の銭ゲバくそ設計のため、コの字の横移動には、
半壊したスカイロビーを徒歩で横切らないといけないし、

「あそこだ!」

その入口も目立たず分かりにくいの極致で、
平常運転時ですら階段Aの迂回ルートに気づくのは難しい。


ましてや最低限の非常灯程度のほぼ暗さと煙と瓦礫と負傷と酷な時間限定@56分そして焦りと絶望と恐怖でメンタルいっぱいいっぱいという五重苦くらいの逆境のなか、
非常階段Aの迂回ドアに行き当たるのはもはや運まかせだった。



州課税局職員メアリー・ジョスとリン・ヤンは大火傷、エーオン社員エド・ニコルズは右腕切断するほどの重傷、同僚ジュディ・ウェインとジジ・シンガーも歩くのがやっとっつうかんじで、無傷元気なのはひとりもいなかった。
が、休むわけにはいかないと分かっている。

という非常階段A事情はこのとき知る者は限られるわけで、
降りない決断をした生存者がいたのも無理ない。
火は下から上へ燃えるつまり下の階も火事だから降りるのは自殺行為だ、と降りるのを恐れて屋上めざして階段を上がっていった者はかなり多く。
また動けない重傷者に寄り添って励ましながら救助を待つ者も──
このときの決断が生死を分けることになった。






Ⅱ Delayed
Non-life-threatening injuries
“準緊急治療群/要治療、生命の危機なし、待機可”

「次!」
Southtower
1st floor
サウスタワー 1階ロビー




Ⅲ Minimal
Minor injuries
“非緊急治療群/軽症”
「次っ」





「次っ」

Ⅰ Immediate
Life-threatening injuries
“緊急治療群/要緊急治療、生命の危機的状況”

「次っ」



「次っ」



「火傷がひどい」
「急げ急げッ」「バイタル気をつけろ」


ウ~~ウ~~ウ~~パパパーーーーッ


9-1-1@緊急通報電話 “救助隊員が向かいます。その場から動かないで”
9-1-1 “他にも数百人が同じ状況なんです。順番を待って下さい”


ブラッド “こちらの建物でも爆発があった。僕たちは部屋に閉じこめられている”
ロコ “いま105階にいる。200人くらいが一緒だ”
スティーブン “きっと大丈夫だから。母さんから教わったお祈りを全部唱えたからさ”




「わたしのケガはどうなってるのかしら? 自分じゃ見えないの」

「娘を呼んで。わたしは死んでないって知らせてやらないと」

「心配しないでいい、安心しろ」


「気を落ち着けて、医療班を待つんだ」

「もう娘を呼んでくれた? あの子、きっと心配してる、
私は生きてると早く教えてあげないと」

「ああ、あんたの娘もすぐ駆けつけるよ、近くまで来てる、安心しな」


「早く娘にママは生きてるよって知らせないと」

「娘は、娘はまだ?」

「もう少しで来る。大丈夫大丈夫」


0 Deceased
Pain medication only, until death
“不処置群/死亡、救命不能、緩和措置のみ”

「ああ、なぜ? わたしまだ生きてる、死んでないわたしは死んでないわ」

「わたしは死んでないわたしは死んでないわたし死んでない!」


「次っ」
「わたしは死んでないわたし死んでないわたし死んでないわたし死んでない!」

World Trade Center 5
ワールドトレードセンター5
ワールドトレードセンター村の残る各ビルからもさすがに全員避難が始まる。

「慌てずすみやかに、順序よく歩いてっ」

World Trade Center 4
ワールドトレードセンター4


「立ち止まらず移動しなさいっ」

「できるだけビルから離れてっ」

ブラッド “クリス、煙が入ってきていて、これからどうなるか、わからない。ただ知って欲しいのは君という人がいたおかげで、僕の人生がどれほどすばらしく豊かなものになったということだよ。愛してる、さよなら”

エド “馬鹿みたいな話なんだけど。リズ、実は君に内緒でローマ旅行の予約をしてしまっててね。ああ、君の誕生日でちょっとしたサプライズにどうかなと思ってさ。
すまないがキャンセルしといてくれないか”

「はあはあはあ、痛ったあ、足くじいてるかなこりゃ」

「頑張って歩いてるのに、ちっとも着かんしフェデラルプラザ! ニューヨーク支局ってこんな遠かったっけ? ひょっとしてまた道に迷った?」

「はれ? 川? 海に出た? 海なんて途中にあったっけ?」

「おーあれに見えるは自由の女神……ってあれ?」

「ぐげーっ、かんぜん逆方向に来ちゃってるじゃん!」
プルル…

「はい、どちらさま」
“アンティツェフだ、例の回線は確保できた”
「ありがと、ジョン」
“マイクだ。それで回線はどこと繋げばいい?”

「今から回線の接続先を言います。ホワイトハウスのミスタークラーク、CIAテロ対策センタービンラディン問題課、アンマンのヨルダン総合情報部内査局、
そして最後の1つは──」

「──イエメンにいるアリ・スーハン捜査官に」
【38便 ペンタグラム バーニング】へとつづく









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