【事件激情】ウルトラNW : 第34便-続々【9.11 ON THE DAY】








【事件激情】ウルトラNW : 第34便-続々【9.11 ON THE DAY】
11th September, 2001
2001年9月11日
Tuesday
火曜日
am8:13
午前8時13分──

ゴォォォォォ──
American Airlines Flight 11
アメリカン11便





ゴォォォォォォォォ──


ゴォォォォ──



「هجوم!」


ダッ


「うおおおおおおおおおおおおおっ」
「えっ」


──────────
ファーストクラス担当のカレン・マーティンとバーバラ・アレステギをプラスティックナイフとカッターナイフで刺傷、操縦室の鍵を奪うと、操縦室に押し入り、機長ジョン・オゴノフスキーと副操縦士トマス・マクギネスを速攻で殺害する。
腕に覚えあり
このときサタム・アルスカミの前の席9Bに居合わせた乗客、
元イスラエル軍特殊部隊にしてネット起業家ダニエル・ルーウィン。
「エンテベの奇跡」*にも参戦した経験がある猛者。*エンテベ空港ハイジャック救出作戦
すくっ
「おい、貴様ら、やめろ!」
すぱっ
「あ、あれ?」
あっけなく喉をかっ切られて死亡。
戦いのプロの自分がオモチャみたいな刃物で殺されるとは思わなかっただろう。
ハイジャッカーの一人(おそらくアルオマリ)が腹に巻いた爆弾を見せて乗員乗客を近寄らせないようにした。おそらく爆弾は見せかけのハッタリだったと思われ。
さらに防犯催涙スプレーをまき散らしたため、
カーテン1枚隔てただけのビジネスクラスの乗客もたまらず何が起きたかよく分からないまま後部エコノミー席へと逃げ出し、
ファーストクラスとビジネスクラスは無人となった。
am8:14
午前8時14分──
Boston Logan International Airport
ボストン・ローガン国際空港
United Airlines Flight 175
“2機目”ユナイテッド175便、14分の遅延で離陸。
乗員9名、乗客51名
と、マルワン・アルシェヒと筋肉メン@フェイズ・バニアハマド@アーメド・アルガムディ@ハムザ・アルガムディ@モハンド・アルシェフリの5人を乗せて。
「よし! ハゲネズミとピーガルくん宛のメール送信完了! これだけ資料やデータ盛りだくさんにしとけばわたしが抜けても当面は仕事進められるっしょ!」
ハゲネズミ→
(………)
ピーガルくん→
(………ಠ益ಠ )
「ほんとはわたしが自分で進めたかったけどなあ……」
「あーっ、いかんっ! ってしんみりする暇もなく時間やばいざんっ!」
「わっわっ、遅刻だ遅刻」
「わっせわっせ、急げや急げ」
だって絶対わたし泣くじゃんね
「やる太郎の前でディックと警視に電話かける罰ゲームだけは避けたい!」
「うわー化粧めっちゃてきとー。ま、いっかやる太郎だし。
鼻クソとか顔についてなきゃいいっしょ」
プルル…… プルル……
「えーっ、なんだよこの急いでるときに!」
「ん? 誰だこの番号、ってあっ、売店のあの子の携帯!
ってことはアンティツェフのどっちか!」
「はい、ジョン」
“マイクだ。金融捜査部からの照会結果のファクスを遮断された”
「はぁ? またあ?」
“今度はITOSじゃない。もう一段上だ。どうやらピカードと司法省も噛んでる”
「ピカードって、やる太郎の天敵のチョビヒゲ? 何なのみんな公私混同ばっかして腹立つ! 税金で喰わせてもらってるんだから国民守る仕事しろよ仕事を!」
“いまワトソン副長官補が抗議に向かってるが、少し時間がかかりそうだ。そちらにも面倒な妨害が行くかも知れん、気をつけろ”
「まったく、そんな必死にわたしを目の敵にしなくても、
昼には病院送りになって途中退場しますよ」
なめんなよばーろー
「でもなんかむかついてきたから、立つ鳥跡を濁させてもらうけどね」
am8:20
午前8時20分──
Washington Dulles International Airport
ワシントン・ダレス国際空港
American Airlines Flight 77
“3機目”アメリカン77便 乗員6名、乗客53名と、
Hani Hanjour
ハニ・ハンジュル
Khalid al-Mihdhar
ハリド・アルミダル
Nawaf al-Hazmi
ナワフ・アルハズミ
Salem al-Hazmi
サレム・アルハズミ
Majed Moqed
マジド・モケド
、っつう5人のアルカイダメンを乗せて。
「おいっ、77便はどうなった!」
「まさかそのまま離陸させてねえだろうな!」
「ああ、あれならさっき離陸したぞ」
「なに! アルカイダを乗せたままか!」
「そんな情報は来てない。ありもしないことを言うな」
「くそっくそっ、おまえらの頭はオートミールでも詰まってんのかッ」
「おいおい、言葉遣いに気をつけろ。ペナルティが増えるぞ」
26 minutes before ‘Nine Eleven’
──アメリカ同時多発テロまで残り26分

ゴオオオオオオオオオオ────

ゴオオオオオオオオオオ────

「彼らはメースか何かを撒いて操縦室に籠もっています」
Betty Ann Ong
Flight Attendant : American 11
ベティ・オング
@アメリカン11便フライトアテンダント

「操縦室と連絡がとれません、ドアも開きません」
‘We’re getting hijacked.’
「これハイジャックじゃないかと思います」
am8:24
午前8時24分──
“We have some planes”
「我々は何機かを手にしている」
“We are returning to Airport.”
「空港に戻っているところだ」
“Nobody move. Everything will be okay.”
「誰も動かなければ、何もしない」
“If you try to make any moves,You’ll endanger
yourself and the airplane. Just stay quiet.”
「もし少しでも変な動きをすれば、お前たちも飛行機も
無事ではいられない。静かにしていろ」
モハメド・アタは乗員乗客を脅すためクールに機内放送したつもりが、
間違えて機内じゃなく外へ向けて大々的に無線発信していた。
オゴノフスキー機長が殺される直前、「トークバックボタン」をわざとか偶然か押したことでこうなったといわれている。
アタはこの10分後にも、
“Nobody move, please. We are going back to the airport.
Don't try to make any stupid moves.”
「誰も動くな、空港に戻っている、バカな動きをしようとするな」
と、“機内放送”。もちろんこれも機内にはまったく流れず機外へ全開発信。
残るアテンダントたちもパニックをおそれて乗客に知らせなかったため、アメリカン11便の乗客たちは最後の瞬間まで実際なにが起きているのか分からないままだった。
「あっ、ユリコー、珍しく早いじゃん」
「おはよ、チュリポーン。あなたは道場?」
「また金持ちのボンボンから小金毟り取る仕事だよ」
「いろいろありがとね、チュリポーン」
「ユリコーはわたしの可愛い妹だもの。勉強とおカネ貸す以外なら何でも言って」
「う、うん」
何度言っても妹扱いなんすけど
(わたしが非常に若く見えるのは分かってるけど、さすがに妹って……)
「ふう、なんとか間に合いそう」
「なんか落ち込む隙もないくらいバタバタしてるな今朝は。
シャバにいられる最後の日かもしれんのに、こんなんでいいんかしらん」
「まー、わたしらしいっちゃ、らしいか、こういうのも」
「ワールドトレードセンターまでお願い」

「んー、つながらん。どうしたのかな、スティービー」
決して韻踏んでるのではない
「とりあえずまた携帯交替させとくか」
ウ~~ウ~~ウ~~~

ウ~~~ウ~~~ウ~~~
バッバッバッバーーーッ


ヒャウヒャウヒャウ
ウ~~ウ~~ウ~~~ウ~~~
ババババババーーーッ

「うへーいいねーアメリカさんの消防車の豪快な突破力、毎回惚れるなー」
今朝の第1ハシゴ車隊/第7ポンプ車隊こと第1大隊、「ガス臭い」通報で出動である。
消防局は通報があればとにかく空振り覚悟でなんでも出動しなければならないんで。
ドキュメンタリー撮影中ノーデ兄弟*【第13便-続】の兄ジュールは、火事撮影の練習代わりのつもりで、調査に向かうジョゼフ・ファイファー大隊長に頼み込んで同行。
ぶー
新人消防士トニー、今日は居残りで電話番。
弟ギデオンも消防署に残ってトニーの撮影。
“場所はチャーチとリスペナードの交差点角”
このくらいの通報は日常茶飯事なんで、ジョゼフ・ファイファー大隊長以下ファイヤーメンも慣れた感じで緊張感もなさげである。


ゴオオオオオオオオオオオオ──


ギィィィィィィ─────

────────────ン
am8:30
午前8時30分──
16 minutes before ‘Nine Eleven’
──アメリカ同時多発テロまで残り16分
首都ワシントンとポトマック川を挟んだ対岸、
Arlington, Virginia
‘Pentagon’@United States Department of Defense
バージニア州
アーリントン
国防総省@ペンタゴン
ペンタゴン西側のヘリポートではブッシュ大統領の乗る「マリーンワン」を迎える準備中。「エアフォースワン」と呼ぶのは空軍機だからで、大統領専用ヘリは海兵隊機なんで「マリーンワン」である。
マリーンワンがペンタゴンに降りるのは異例のことで、
いつもならこんなかんじ
いつもなら「マリーンワン」はホワイトハウスのガーデンに着陸するんだが、今日はそこで恒例の議会向け1200名招待のガーデンパーティの準備が進められている。
さすがにそこに着陸していろいろ吹っ飛ばすわけにもいかないため、まずマリーンワンをペンタゴンに着陸させ、大統領専用車でホワイトハウスに向かう予定だった。
このヘリポートには近所のフォートマイヤー消防署から毎日派遣される消防車が横付けされている。ジェット燃料火災にも対応できる化学泡搭載の特別仕様だった。
そしてペンタゴンの奥の院では──、
ラムズフェルド国防長官が、国防計画見直しについて国防族の連邦議員と朝食会。
Donald Rumsfeld
US Secretary of Defense
ドナルド・ラムズフェルド国防長官

「近い将来、世界中で衝撃的な出来事が発生するだろう」
でもラムちゃん的にはその前に2.3兆ドルの使途不明金問題*【第32便】がひじょーに頭痛い。ヘタすると国防長官も無傷ではいられないし。
──というなんだかおだやかじゃない空気のペンタゴンから12kmほど西の、
Maclean, Virginia
Headquarters of Central intelligence Agency
バージニア州マクリーン
CIA本部
Charles E. Allen
Assistant Director of Central intelligence for Collection
チャールズ・アレンCIA次官情報総本部担当、カーク・リポールド海軍中佐と朝食中。
やらかしてばかりの工作総本部に対して、情報総本部は情報収集と解析を中心に行う分析官集団で「比較的ましな方のCIA」 CIAでは伝統的に軽んじられてきた部門。
リポールド中佐はUSSコールの艦長である。
そう、アデン港の自爆テロ*【第5便-続】*【第9便】で大破した駆逐艦。
中佐はCIA対テロセンターでその実体験を語るべく招かれたのである。
自分の艦を“病院送り”にされて、陸に上がったカメ状態の中佐はイラつき中。
Commander Kirk Lippold
カーク・リポールド海軍中佐

「世論の反応が鈍い。アメリカ国民はテロの脅威をわかってないですよ」
湾岸危機のときイラクのクウェート侵攻をただ一人予測して無視スルーされた苦い経験のあるベテラン分析官アレン的には「おれぁ寅さんの気持ちぁわかる」
「まあなあ、常識が吹っ飛ぶ事態にならないと目覚めないんじゃないかな」
チャリ坊またフラグが立つようなことを……。
「中佐にはその調子で対テロセンターの連中にも喝を入れてもらいたいんだよ。
あそこの連中はどうもその深刻さをピンときてないみたいなんでね」
と、現状に憤る2人が向かった対テロセンターの最奥部では、
“赤毛のフランシス”がオペレーション中。
対テロの戦いではぜんぜんなく、CIAの対テロ権益をめぐる戦い。架空の戦いだけど。
まさにアレンの危惧するとおり、「いま、そこにある危機」に目を向けず、明後日の方向ばかり向いてますの図。架空の戦いだけど。
「シラトリ、やっと先回りして特定した。これがあなたがつぎに使う携帯電話の番号」
(結局ニューヨーク観光もろくにしてないよなー)
“端末の所在を特定した。通話の開始とともに傍受録音を実行する”
「ずいぶんと手こずらせてくれたけど、これでチェックメイト。
その携帯電話で協力者と捜査について話した瞬間、あなたはおしまい」
(あ、アンティツェフのどっちかから電話だ)
“対象端末に着信。コール中”
「さよなら、ユリコシラトリ」

「CIAを敵に回したことを法廷で後悔しなさい」

“フランシス!”
“やめなさい!”
“フランシス、わたしの声、聴こえてるんでしょ?”
“今すぐそのバカげた遊びをやめて、FBIの回線遮断を解除しなさい”
「……ジェン?」
「はい、どちらさま」
“アンティツェフだ。今朝、ゴードンとは連絡とったか?”
「え、うん。ちょっと前から取れてないけど。なに?」

“今朝早く、早番の若いのがゴードン宛にかかってきた電話をとったらしいんだ。相手は中年女性で旅行代理店からだったそうだ。心当たりあるかね?”
「それ、トトワのアドバンス・トラベルサービスのマチルドという人じゃなかった?」
“一方的にまくしたてられて聞き取れなかったようだが”
「ありがと、ジョン。ちょっと切るね」
“マイクだ”
「えっと、アドバンス・トラベルサービスの電話番号は……」
「留守電だ……店のほうはそりゃそうだよね」
「ハロー、アドバンストラベルサービスですか? FBIゴードン特別捜査官のパートナー白鳥です。ミスマチルド、これをお聞きになりましたら急ぎ電話をください」
“フランシス、今すぐ遮断を解除してニューヨークのFBIに情報を渡しなさい”
「ジェン、あなた、“視てた”の? どうやって?」
“わたしを舐めてもらったら困るなあ。
日本の携帯ゲーム機ってスグレモノよねえ、”
“通信機能も持たせられるし、デスクの下で操作してても見えなかったでしょう?”
「ジェニファー、自分がいまどれほど愚かなことしてるか分かってる? シラトリに加担していたと白状したも同然だよ。積み上げたキャリアを投げ捨てたってことよ?」
「糞食らえ」
「なんですって?」
「そんなの糞食らえだよ、フランシス。わたしのことより、あなたがいま何を遮断してるか、手許で握りつぶしてるファクスをよっく読んでみて」

“あなたならそれが何を意味するか分かるはず。モニターで見えるでしょ?”


「ジェン、こ、これは──」
“フランシス、さっきあなたに言われた言葉をそっくり返したげるよ”

カメラ寄りっ
“あんたさー、さっきから一体なにやってんの?
そんなことやりたくてCIAにいるの?”

“アメリカと国民を守るためにここにいるんじゃないの?
上をめざすのは、あくまでその力を手に入れるため。
わたしはそうだよ。先輩のあなたも同じだと思ってた。
夜中まで青臭く語り合ったこともあったよね?
だからずっと尊敬してたんだよ。でも本心は違ったんだ?”


「フランシス!」

“早く遮断を解けッ!”
「………マイケル・アン」
「はい」
「遮断を解除」
「え、でも」
「いいからすぐに解除しなさいッ」
「回線が復旧したぞ!」
「ファクスも来たっ」
「くそっくそっ。航空会社と購入日と金額しかわからん!内訳はないのか?」
“金融捜査部、キャリック”
「ニューヨークのコールマン。いまファクスが届いた」
“あれえ? ずいぶん時間かかったんだなー。糞詰まりだったか?
電話もつながらなかったし、なんだったの?”
「すまないがもっと詳しい内訳はないのかい? 便名や発着地、日時は?」
“うちで手続きなしに情報管理業者のサーバをのぞき見できるのは残念ながらそのへんまでだ。所詮裏ワザみたいなもんだし。それ以上の情報を手に入れるにはやっぱり正式な令状が必要だよ。それとも航空会社に直接訊くかだね”
「みんな嘆いてる時間はないぞ!」
「アメリカンエアラインを買ってるのがモハメド・アタ! ユナイテッドエアラインを買ってるのがマルワン・アルシェヒ! ジアド・ジャラ!」
「手分けして当たれ! あらゆる窓口から同時進行で攻めろ!」

「近くてごめんね! チップちょびっと足しといたから!」

「はれえ? 降りるとこ間違えた! しまった遠回りじゃん!」
「ぎゃあああーっ遅刻しそうなのに!」
プルル…… プルル……
「しかも電話までかかってくるし!」
「はいどちらさま」
“アンティツェフだ”
「あ、マイク、おつかれー」
“ジョンだ”
「モハメド・アタとマルワン・アルシェヒ、あともう一人ジアド・ジャラという名がヒットした。それぞれアメリカンエアラインとユナイテッドエアラインの航空券を購入している。便名や日時をいま2社に問い合わせてるところだ」
「ハニ・ハンジュルやハリド・アルミダルは?」
“おそらくそいつらのカードを使ってないんじゃないか。だとすればヒットしない”
“いま、ジョンがアメリカンエアラインに確認とっている”
「(え゛、いつのまにマイクと入れ替わったの?)」
「何か分かったら至急連絡ちょうだい。こっちも次の動き考えるから」

(ちょうどやる太郎に会うし、まずいがらせし隊をボストンに突っ込んでもらってと。
あーっ自分で動けないのが痛いなー)
(ふう、滑り込みセーフ?)
≫ 続きを読む


ゴォォォォ──




「هجوم!」


ダッ


「うおおおおおおおおおおおおおっ」

「えっ」



──────────

ファーストクラス担当のカレン・マーティンとバーバラ・アレステギをプラスティックナイフとカッターナイフで刺傷、操縦室の鍵を奪うと、操縦室に押し入り、機長ジョン・オゴノフスキーと副操縦士トマス・マクギネスを速攻で殺害する。

このときサタム・アルスカミの前の席9Bに居合わせた乗客、
元イスラエル軍特殊部隊にしてネット起業家ダニエル・ルーウィン。
「エンテベの奇跡」*にも参戦した経験がある猛者。*エンテベ空港ハイジャック救出作戦

「おい、貴様ら、やめろ!」

「あ、あれ?」
あっけなく喉をかっ切られて死亡。
戦いのプロの自分がオモチャみたいな刃物で殺されるとは思わなかっただろう。

ハイジャッカーの一人(おそらくアルオマリ)が腹に巻いた爆弾を見せて乗員乗客を近寄らせないようにした。おそらく爆弾は見せかけのハッタリだったと思われ。

さらに防犯催涙スプレーをまき散らしたため、

カーテン1枚隔てただけのビジネスクラスの乗客もたまらず何が起きたかよく分からないまま後部エコノミー席へと逃げ出し、
ファーストクラスとビジネスクラスは無人となった。
am8:14
午前8時14分──
Boston Logan International Airport
ボストン・ローガン国際空港

United Airlines Flight 175
“2機目”ユナイテッド175便、14分の遅延で離陸。
乗員9名、乗客51名
と、マルワン・アルシェヒと筋肉メン@フェイズ・バニアハマド@アーメド・アルガムディ@ハムザ・アルガムディ@モハンド・アルシェフリの5人を乗せて。


「よし! ハゲネズミとピーガルくん宛のメール送信完了! これだけ資料やデータ盛りだくさんにしとけばわたしが抜けても当面は仕事進められるっしょ!」
ハゲネズミ→

ピーガルくん→


「ほんとはわたしが自分で進めたかったけどなあ……」

「あーっ、いかんっ! ってしんみりする暇もなく時間やばいざんっ!」

「わっわっ、遅刻だ遅刻」

「わっせわっせ、急げや急げ」

「やる太郎の前でディックと警視に電話かける罰ゲームだけは避けたい!」

「うわー化粧めっちゃてきとー。ま、いっかやる太郎だし。
鼻クソとか顔についてなきゃいいっしょ」
プルル…… プルル……
「えーっ、なんだよこの急いでるときに!」

「ん? 誰だこの番号、ってあっ、売店のあの子の携帯!
ってことはアンティツェフのどっちか!」

「はい、ジョン」
“マイクだ。金融捜査部からの照会結果のファクスを遮断された”
「はぁ? またあ?」
“今度はITOSじゃない。もう一段上だ。どうやらピカードと司法省も噛んでる”

「ピカードって、やる太郎の天敵のチョビヒゲ? 何なのみんな公私混同ばっかして腹立つ! 税金で喰わせてもらってるんだから国民守る仕事しろよ仕事を!」
“いまワトソン副長官補が抗議に向かってるが、少し時間がかかりそうだ。そちらにも面倒な妨害が行くかも知れん、気をつけろ”

「まったく、そんな必死にわたしを目の敵にしなくても、
昼には病院送りになって途中退場しますよ」

「でもなんかむかついてきたから、立つ鳥跡を濁させてもらうけどね」
am8:20
午前8時20分──
Washington Dulles International Airport
ワシントン・ダレス国際空港

American Airlines Flight 77
“3機目”アメリカン77便 乗員6名、乗客53名と、

Hani Hanjour
ハニ・ハンジュル

Khalid al-Mihdhar
ハリド・アルミダル

Nawaf al-Hazmi
ナワフ・アルハズミ

Salem al-Hazmi
サレム・アルハズミ

Majed Moqed
マジド・モケド

、っつう5人のアルカイダメンを乗せて。

「おいっ、77便はどうなった!」

「まさかそのまま離陸させてねえだろうな!」
「ああ、あれならさっき離陸したぞ」

「なに! アルカイダを乗せたままか!」
「そんな情報は来てない。ありもしないことを言うな」

「くそっくそっ、おまえらの頭はオートミールでも詰まってんのかッ」
「おいおい、言葉遣いに気をつけろ。ペナルティが増えるぞ」
26 minutes before ‘Nine Eleven’
──アメリカ同時多発テロまで残り26分

ゴオオオオオオオオオオ────


ゴオオオオオオオオオオ────

「彼らはメースか何かを撒いて操縦室に籠もっています」
Betty Ann Ong
Flight Attendant : American 11
ベティ・オング
@アメリカン11便フライトアテンダント


「操縦室と連絡がとれません、ドアも開きません」

‘We’re getting hijacked.’
「これハイジャックじゃないかと思います」
am8:24
午前8時24分──
“We have some planes”
「我々は何機かを手にしている」

“We are returning to Airport.”
「空港に戻っているところだ」

“Nobody move. Everything will be okay.”
「誰も動かなければ、何もしない」
“If you try to make any moves,You’ll endanger
yourself and the airplane. Just stay quiet.”
「もし少しでも変な動きをすれば、お前たちも飛行機も
無事ではいられない。静かにしていろ」
モハメド・アタは乗員乗客を脅すためクールに機内放送したつもりが、
間違えて機内じゃなく外へ向けて大々的に無線発信していた。

オゴノフスキー機長が殺される直前、「トークバックボタン」をわざとか偶然か押したことでこうなったといわれている。
アタはこの10分後にも、

“Nobody move, please. We are going back to the airport.
Don't try to make any stupid moves.”
「誰も動くな、空港に戻っている、バカな動きをしようとするな」
と、“機内放送”。もちろんこれも機内にはまったく流れず機外へ全開発信。
残るアテンダントたちもパニックをおそれて乗客に知らせなかったため、アメリカン11便の乗客たちは最後の瞬間まで実際なにが起きているのか分からないままだった。

「あっ、ユリコー、珍しく早いじゃん」
「おはよ、チュリポーン。あなたは道場?」

「また金持ちのボンボンから小金毟り取る仕事だよ」

「いろいろありがとね、チュリポーン」

「ユリコーはわたしの可愛い妹だもの。勉強とおカネ貸す以外なら何でも言って」
「う、うん」

(わたしが非常に若く見えるのは分かってるけど、さすがに妹って……)

「ふう、なんとか間に合いそう」

「なんか落ち込む隙もないくらいバタバタしてるな今朝は。
シャバにいられる最後の日かもしれんのに、こんなんでいいんかしらん」

「まー、わたしらしいっちゃ、らしいか、こういうのも」

「ワールドトレードセンターまでお願い」



「んー、つながらん。どうしたのかな、スティービー」

「とりあえずまた携帯交替させとくか」
ウ~~ウ~~ウ~~~

ウ~~~ウ~~~ウ~~~
バッバッバッバーーーッ


ヒャウヒャウヒャウ
ウ~~ウ~~ウ~~~ウ~~~
ババババババーーーッ

「うへーいいねーアメリカさんの消防車の豪快な突破力、毎回惚れるなー」

今朝の第1ハシゴ車隊/第7ポンプ車隊こと第1大隊、「ガス臭い」通報で出動である。
消防局は通報があればとにかく空振り覚悟でなんでも出動しなければならないんで。
ドキュメンタリー撮影中ノーデ兄弟*【第13便-続】の兄ジュールは、火事撮影の練習代わりのつもりで、調査に向かうジョゼフ・ファイファー大隊長に頼み込んで同行。

新人消防士トニー、今日は居残りで電話番。
弟ギデオンも消防署に残ってトニーの撮影。

“場所はチャーチとリスペナードの交差点角”
このくらいの通報は日常茶飯事なんで、ジョゼフ・ファイファー大隊長以下ファイヤーメンも慣れた感じで緊張感もなさげである。


ゴオオオオオオオオオオオオ──




ギィィィィィィ─────

────────────ン
am8:30
午前8時30分──
16 minutes before ‘Nine Eleven’
──アメリカ同時多発テロまで残り16分
首都ワシントンとポトマック川を挟んだ対岸、

Arlington, Virginia
‘Pentagon’@United States Department of Defense
バージニア州
アーリントン
国防総省@ペンタゴン

ペンタゴン西側のヘリポートではブッシュ大統領の乗る「マリーンワン」を迎える準備中。「エアフォースワン」と呼ぶのは空軍機だからで、大統領専用ヘリは海兵隊機なんで「マリーンワン」である。
マリーンワンがペンタゴンに降りるのは異例のことで、

いつもなら「マリーンワン」はホワイトハウスのガーデンに着陸するんだが、今日はそこで恒例の議会向け1200名招待のガーデンパーティの準備が進められている。
さすがにそこに着陸していろいろ吹っ飛ばすわけにもいかないため、まずマリーンワンをペンタゴンに着陸させ、大統領専用車でホワイトハウスに向かう予定だった。

このヘリポートには近所のフォートマイヤー消防署から毎日派遣される消防車が横付けされている。ジェット燃料火災にも対応できる化学泡搭載の特別仕様だった。
そしてペンタゴンの奥の院では──、
ラムズフェルド国防長官が、国防計画見直しについて国防族の連邦議員と朝食会。
Donald Rumsfeld
US Secretary of Defense
ドナルド・ラムズフェルド国防長官


「近い将来、世界中で衝撃的な出来事が発生するだろう」
でもラムちゃん的にはその前に2.3兆ドルの使途不明金問題*【第32便】がひじょーに頭痛い。ヘタすると国防長官も無傷ではいられないし。
──というなんだかおだやかじゃない空気のペンタゴンから12kmほど西の、

Maclean, Virginia
Headquarters of Central intelligence Agency
バージニア州マクリーン
CIA本部

Charles E. Allen
Assistant Director of Central intelligence for Collection
チャールズ・アレンCIA次官情報総本部担当、カーク・リポールド海軍中佐と朝食中。
やらかしてばかりの工作総本部に対して、情報総本部は情報収集と解析を中心に行う分析官集団で「比較的ましな方のCIA」 CIAでは伝統的に軽んじられてきた部門。

リポールド中佐はUSSコールの艦長である。
そう、アデン港の自爆テロ*【第5便-続】*【第9便】で大破した駆逐艦。
中佐はCIA対テロセンターでその実体験を語るべく招かれたのである。
自分の艦を“病院送り”にされて、陸に上がったカメ状態の中佐はイラつき中。
Commander Kirk Lippold
カーク・リポールド海軍中佐


「世論の反応が鈍い。アメリカ国民はテロの脅威をわかってないですよ」
湾岸危機のときイラクのクウェート侵攻をただ一人予測して無視スルーされた苦い経験のあるベテラン分析官アレン的には「おれぁ寅さんの気持ちぁわかる」

「まあなあ、常識が吹っ飛ぶ事態にならないと目覚めないんじゃないかな」
チャリ坊またフラグが立つようなことを……。

「中佐にはその調子で対テロセンターの連中にも喝を入れてもらいたいんだよ。
あそこの連中はどうもその深刻さをピンときてないみたいなんでね」

と、現状に憤る2人が向かった対テロセンターの最奥部では、

“赤毛のフランシス”がオペレーション中。
対テロの戦いではぜんぜんなく、CIAの対テロ権益をめぐる戦い。架空の戦いだけど。
まさにアレンの危惧するとおり、「いま、そこにある危機」に目を向けず、明後日の方向ばかり向いてますの図。架空の戦いだけど。

「シラトリ、やっと先回りして特定した。これがあなたがつぎに使う携帯電話の番号」

(結局ニューヨーク観光もろくにしてないよなー)

“端末の所在を特定した。通話の開始とともに傍受録音を実行する”

「ずいぶんと手こずらせてくれたけど、これでチェックメイト。
その携帯電話で協力者と捜査について話した瞬間、あなたはおしまい」

(あ、アンティツェフのどっちかから電話だ)

“対象端末に着信。コール中”
「さよなら、ユリコシラトリ」


「CIAを敵に回したことを法廷で後悔しなさい」

“フランシス!”

“やめなさい!”

“フランシス、わたしの声、聴こえてるんでしょ?”

“今すぐそのバカげた遊びをやめて、FBIの回線遮断を解除しなさい”

「……ジェン?」

「はい、どちらさま」

“アンティツェフだ。今朝、ゴードンとは連絡とったか?”
「え、うん。ちょっと前から取れてないけど。なに?」

“今朝早く、早番の若いのがゴードン宛にかかってきた電話をとったらしいんだ。相手は中年女性で旅行代理店からだったそうだ。心当たりあるかね?”

「それ、トトワのアドバンス・トラベルサービスのマチルドという人じゃなかった?」
“一方的にまくしたてられて聞き取れなかったようだが”
「ありがと、ジョン。ちょっと切るね」
“マイクだ”

「えっと、アドバンス・トラベルサービスの電話番号は……」

「留守電だ……店のほうはそりゃそうだよね」

「ハロー、アドバンストラベルサービスですか? FBIゴードン特別捜査官のパートナー白鳥です。ミスマチルド、これをお聞きになりましたら急ぎ電話をください」

“フランシス、今すぐ遮断を解除してニューヨークのFBIに情報を渡しなさい”

「ジェン、あなた、“視てた”の? どうやって?」

“わたしを舐めてもらったら困るなあ。
日本の携帯ゲーム機ってスグレモノよねえ、”

“通信機能も持たせられるし、デスクの下で操作してても見えなかったでしょう?”

「ジェニファー、自分がいまどれほど愚かなことしてるか分かってる? シラトリに加担していたと白状したも同然だよ。積み上げたキャリアを投げ捨てたってことよ?」

「糞食らえ」
「なんですって?」

「そんなの糞食らえだよ、フランシス。わたしのことより、あなたがいま何を遮断してるか、手許で握りつぶしてるファクスをよっく読んでみて」

“あなたならそれが何を意味するか分かるはず。モニターで見えるでしょ?”



「ジェン、こ、これは──」
“フランシス、さっきあなたに言われた言葉をそっくり返したげるよ”


“あんたさー、さっきから一体なにやってんの?
そんなことやりたくてCIAにいるの?”

“アメリカと国民を守るためにここにいるんじゃないの?
上をめざすのは、あくまでその力を手に入れるため。
わたしはそうだよ。先輩のあなたも同じだと思ってた。
夜中まで青臭く語り合ったこともあったよね?
だからずっと尊敬してたんだよ。でも本心は違ったんだ?”


「フランシス!」

“早く遮断を解けッ!”

「………マイケル・アン」
「はい」
「遮断を解除」
「え、でも」
「いいからすぐに解除しなさいッ」

「回線が復旧したぞ!」
「ファクスも来たっ」

「くそっくそっ。航空会社と購入日と金額しかわからん!内訳はないのか?」

“金融捜査部、キャリック”
「ニューヨークのコールマン。いまファクスが届いた」
“あれえ? ずいぶん時間かかったんだなー。糞詰まりだったか?
電話もつながらなかったし、なんだったの?”

「すまないがもっと詳しい内訳はないのかい? 便名や発着地、日時は?」
“うちで手続きなしに情報管理業者のサーバをのぞき見できるのは残念ながらそのへんまでだ。所詮裏ワザみたいなもんだし。それ以上の情報を手に入れるにはやっぱり正式な令状が必要だよ。それとも航空会社に直接訊くかだね”

「みんな嘆いてる時間はないぞ!」

「アメリカンエアラインを買ってるのがモハメド・アタ! ユナイテッドエアラインを買ってるのがマルワン・アルシェヒ! ジアド・ジャラ!」


「手分けして当たれ! あらゆる窓口から同時進行で攻めろ!」


「近くてごめんね! チップちょびっと足しといたから!」


「はれえ? 降りるとこ間違えた! しまった遠回りじゃん!」

「ぎゃあああーっ遅刻しそうなのに!」
プルル…… プルル……
「しかも電話までかかってくるし!」

「はいどちらさま」
“アンティツェフだ”
「あ、マイク、おつかれー」
“ジョンだ”

「モハメド・アタとマルワン・アルシェヒ、あともう一人ジアド・ジャラという名がヒットした。それぞれアメリカンエアラインとユナイテッドエアラインの航空券を購入している。便名や日時をいま2社に問い合わせてるところだ」


「ハニ・ハンジュルやハリド・アルミダルは?」
“おそらくそいつらのカードを使ってないんじゃないか。だとすればヒットしない”

“いま、ジョンがアメリカンエアラインに確認とっている”
「(え゛、いつのまにマイクと入れ替わったの?)」

「何か分かったら至急連絡ちょうだい。こっちも次の動き考えるから」


(ちょうどやる太郎に会うし、まずいがらせし隊をボストンに突っ込んでもらってと。
あーっ自分で動けないのが痛いなー)

(ふう、滑り込みセーフ?)
≫ 続きを読む
- 関連記事
-
- 【事件激情】ウルトラNW : 第35便【9.11 ON THE DAY】
- 【事件激情】ウルトラNW : 第34便-結【9.11 ON THE DAY】
- 【事件激情】ウルトラNW : 第34便-続々【9.11 ON THE DAY】
- 【事件激情】ウルトラNW : 第34便-続【9.11 ON THE DAY】
- 【事件激情】ウルトラNW : 第34便【9.11 ON THE DAY】
スポンサーサイト
| 事件激情 | 20:42 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑