【事件激情】ウルトラNW : 第10便@再掲【アメリカ同時多発テロ】
*第9便









【事件激情】ウルトラNW : 第10便@再掲【アメリカ同時多発テロ】
汝らは、聞くには聞くが、決して理解せず、
見るには見るが、決して認めない
───────マタイによる福音書 第13章
January 20, 2001
2001年1月20日
Noon, Saturday
土曜日 正午
Washington D.C.
ワシントンDC
「私、ジョージ・ウォーカー・ブッシュはここに誓う」
「私、ジョージ・ウォーカー・ブッシュはここに誓う」
「合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、」
「合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、」
「全力を尽くして、合衆国憲法を維持し、」
「全力を尽くして、合衆国憲法を維持し、」
「保護し、擁護することを」
「保護し、擁護することを」
So help you God
「神のご加護を」
So help me God
「神のご加護を」
ジョージ・W・ブッシュ、合衆国憲法第2条第1節8項の規定どおり、連邦最高裁首席判事ウィリアム・レンキストの前で宣誓、第43代合衆国大統領に就任する。
父ブッシュこと41代ジョージ・H・W・ブッシュから1代おいて親子で大統領に。
前副大統領アル・ゴアとの選挙戦再集計騒動の泥沼が尾を引いて、パレードの大統領専用車を民主党支持者が妨害したり、前代未聞に不人気な大統領の任期スタートだった。
(……大変なのはこれからだな)









【事件激情】ウルトラNW : 第10便@再掲【アメリカ同時多発テロ】
汝らは、聞くには聞くが、決して理解せず、
見るには見るが、決して認めない
───────マタイによる福音書 第13章
January 20, 2001
2001年1月20日
Noon, Saturday
土曜日 正午

Washington D.C.
ワシントンDC
「私、ジョージ・ウォーカー・ブッシュはここに誓う」

「私、ジョージ・ウォーカー・ブッシュはここに誓う」

「合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、」

「合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、」

「全力を尽くして、合衆国憲法を維持し、」

「全力を尽くして、合衆国憲法を維持し、」
「保護し、擁護することを」

「保護し、擁護することを」

So help you God
「神のご加護を」

So help me God
「神のご加護を」
ジョージ・W・ブッシュ、合衆国憲法第2条第1節8項の規定どおり、連邦最高裁首席判事ウィリアム・レンキストの前で宣誓、第43代合衆国大統領に就任する。

父ブッシュこと41代ジョージ・H・W・ブッシュから1代おいて親子で大統領に。

前副大統領アル・ゴアとの選挙戦再集計騒動の泥沼が尾を引いて、パレードの大統領専用車を民主党支持者が妨害したり、前代未聞に不人気な大統領の任期スタートだった。

(……大変なのはこれからだな)

「我々は弱さにつけ込まれないよう、圧倒的な国防の力を構築する。
新世紀を恐怖の世紀におとしめないよう、大量破壊兵器に対処する」

「自由の敵、我が国の敵は知るべきである。
アメリカは歴史や自らの選択にもとづいて世界に関わり続ける、
そして、」

「自由を促進する、安定した世界をつくりあげるのだと」

登場する事件テロ紛争戦争、その捜査は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子はじめこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりは、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。





館の主が代わって、安全保障にも大きな影響が。

「……以上が、アルカイダの現状の活動報告です」

「……………」
Richard A. Clark
@National Coordinator for Security, Infrastructure Protection,
and Counter-terrorism for NSC
リチャード・クラーク@NSC対テロ調整官


「えーアルカイダというのはオサマ・ビンラディンのグループだけでなく、アメリカ含む50か国以上に下部組織を擁するテロリスト・ネットワークです」

「NSCの仕事はわたしがいたときとずいぶん様変わりしているようだけど。なぜ外交が仕事のNSCが国内の治安まで気にするようになってるの?」
「は?」

Condoleezza Rice@National Security Advisor
コンドリーザ・ライス
@国家安全保障問題担当大統領補佐官
スタンフォード大学教授
専門分野は国際政治学とくにソ連東欧。つまりオワコンな。
ライスがNSC@国家安全保障会議のスタッフだったのは、父ブッシュ政権のときだから10年も前。まだソ連崩壊前で、アメリカの安全保障といえば=ソ連の核ミサイル。
あとは象牙の塔にいたんで、そこで思考が停止している。
彼らは直近の国際テロの確変っぷりをまったく知らず。
そして知らないということを知らず、知ろうともせず。
というか知らないから無い、と思っており。
外野から前任者クリントンのテロ対策を「やりすぎ」と思ってみていた。

「今のNSCは冷戦後の脅威を扱っています。いまや国内と国外の安全保障の境目は曖昧になっています。いまの脅威はロシアから打ち上げられる核ミサイルではありません。テロリストが国内に持ち込む爆弾なのです」

「……でも国内外を両方担当するのは効率的ではないわねキリッ」
「ですからテロリストは国外だけ見張ればいいわけではなくなっているのです。国外のテロリストが国境を越えて入ってくれば国内の案件となり……」
「でも両方を同じ部署ではかえって混乱が……」

(………ダメだこりゃ)
ライスのIQは180とか200とかいわれてるけども(175以上は300万人に1人の天才である)、その後のライスの行動を見ますれば、高IQ=有能、とは限らないわけで。
ちなみにのちオバマ政権の安全保障担当大統領補佐官スーザン・ライスは、名字は同じでともに

さらにライスは長官級会議の効率向上のため、と称して、
・対テロ調整官は、今後長官級会議ではなく次官級会議に出席すること
・NSC出向の各省代表は今後は省庁の長官ではなく、副長官・次官に報告すること
・長官級会議は副長官・次官のまとめた案件のみ扱う
事実上のNSCと対テロ調整官クラークの地位格下げである。

(……………)
クラークは帰属も権限もあいまいな「対テロ調整官」として、縦割り官僚組織を横断的に動きやすい立ち位置をキープしてたんだが、それが政権交代で裏目に出たのだった。
息子ブッシュ政権の安全保障の優先事項↓


ロシアとのABM@弾道弾迎撃ミサイル制限条約のこととかそこらへん。

(冷戦時代かよ!)
この政権の問題はライスだけではなく、

のち9.11でも主要キャラとなる、
息子ブッシュの取り巻きたちも。

Richard “Dick” Cheney@Vice President of the United States
ディック・チェイニー副大統領


父ブッシュ政権では国防長官
資源開発大手ハリバートン社元CEO
政界のベテラン、人呼んで“史上最強の副大統領”



Donald H. Rumsfeld@US Secretary of Defense
ドナルド・ラムズフェルド国防長官


レーガン政権時には国防・外交など各諮問委員
フォード政権時に、首席補佐官>国防長官、


父ブッシュの政敵だったからして、父ブッシュ政権ではカラッカラに干されてたが、


なぜか息子ブッシュにうまいこと取り入って気に入られ、
父ブッシュや周囲の猛反対を振り切って息子ブッシュが任命した。



Paul Wolfowitz@US Deputy Secretary of Defense
ポール・ウォルフォイッツ国防副長官
レーガン政権時に国務次官補、父ブッシュ政権時に国防次官
いわゆる“ネオコン”の筆頭選手


Colin L. Powell@US Secretary of State
コリン・パウエル国務長官
退役陸軍大将 父ブッシュ政権時に統合参謀本部議長
息子ブッシュ大統領選で外交アドバイザー、



Richard L. Armitage@US Deputy Secretary of State
リチャード・アーミテージ国務副長官
元海軍、元軍情報部員 レーガン政権では国防次官補。


Andrew H. Card, Jr.@White House Chief of Staff
アンドルー・カード大統領首席補佐官
レーガン政権で大統領首席補佐官代理
父ブッシュ政権では大統領補佐官>運輸長官
大統領予備選で資金調達を担当、その功績で側近トップに抜擢。


そして8か月先の未来の、あの有名なささやく男である。


太った寿老人@七福神
ではなく、
Karl C. Rove@Deputy Chief of Staff
カール・ローブ大統領次席補佐官
政治
別名「カール国王」「影の大統領」
という具合に、
9.11でおなじみの顔ぶれがこうしてほぼ出そろい、終盤感が出てきたの巻。

前任者ソックスの飼い主がコミューンっぽい上も下もごった煮のアバウトさでホワイトハウスを運営してたのとは逆に、

新大統領ブッシュは序列を重んじて、限られた最側近としか会わず、耳も傾けず。
じゃあその最側近たちっつうのが有能かというと、
どうも“おれら有能と思ってる”のだけがたしかで。
当然の結果ながら、アメリカの安全保障対策はあらぬ方へと迷走し始める。

いまそこにある危機、を放置ほったらかしのまま。


9.11のハイジャッカーたちはあの日とつぜん湧いて出たわけじゃなく、

ずっとアメリカに潜伏し、飛行機計画を着々と進めていたんである。

Nawaf al-Hazmi Khalid al-Mihdhar
ナワフ・アルハズミとハリド・アルミダルの英語力絶望コンビ。
とうぜんパイロット免許の取得なんて夢のまた夢で、
計画の頓挫すらある危機的状況だった彼らに、
待望のパイロットが合流していた。

「歓迎するぜ、よろしくな」

ハニ・ハンジュル
サウジアラビアのメッカ近郊タイフの裕福な地主一族の子として生まれ育つ。
例によって小金持ちのぼん出身。
90年代にアメリカ留学、FAAパイロット免許を取得済み。
しかもサウジ国籍。
アルカイダにとっては渡りに船、即決でパイロット担当聖戦士に抜擢、アメリカに送り込まれる。サウジ国籍だからすんなりビザもとれて、>すんなりアメリカ入り。

ハンジュルはサウジ国営航空のパイロットに憧れて、アメリカに渡ってFAA商業パイロット免許を取得。サウジ航空は採用にFAA免許を条件にしてたんで。
何度もアメリカに留学してフライトスクールの入学金もポンと払ったりしてるんで、ハンジュルの実家はかなり裕福だった模様。
が、意気揚々と帰国したものの、サウジ航空にはあえなく不採用。
ふてくされたハニ・ハンジュル青年、ニート化してぷらぷらしてたが、
ある日、「アラブ首長国連邦で就活してくるから」と家を出たまま、
その足はUAEじゃなくアフガニスタンへ。
ニートから聖戦士へ。

ワシントンDC郊外 アーリントンの西隣 バージニア州フォールズチャーチ
ハズミダルハンジュル3人組は、首都ワシントン郊外に一時出没。


ワシントン大イスラムセンターこと“ダルアルヒジュラ”
在米イスラム教徒が多く住む“ムスリム村”にあり、毎週金曜礼拝には3000人のムスリムが集まる、全米最大級のモスク。

導師イマームはアンワル・アルアウラキ
例のハズミダルのメンター。*【ウルトラNW 第4便】
古巣サンディエゴからフォールズチャーチに引っ越してここに就任。

相変わらずここでもウルトラジカルな説法で
イスラムの敵アメリカをぶっ殺せ的ジハードをあおり立てていた。
モスクの土地代と運営費はサウジ系イスラム支援団体という定番コース。
ちなみにダルアルヒジュラモスクにある子供用遊具は、ナイキの福祉事業による寄付。
お人好しなもんである。そのモスクのなかでアメリカ死ねとかシャウトしてるのに。

ハズミダルハンジュル3人組は、
ここでアウラキの殺人説法をありがたく拝聴、熱狂、モチベ向上させていた。
ちなみに白鳥とFBIニューヨーク支局の白鳥シンパによる秘匿捜査班の突破口が、このアンワル・アルアウラキになる。架空の話だが。

まもなく3人組は、アリゾナ州に移る。

州都フェニックスの隣町メサ市内にある、


Indian Springs Village Apartments
インディアン・スプリングス・ビレッジ・アパートメントに入居。
けっこうお高い賃貸住宅である。
https://goo.gl/maps/aziqZ492Qun
飛行機計画メンは、カネに糸目を付けず、きほん高級めの一軒家を隠れ家にしていた。
計画にかこつけてぜいたく暮らしを満喫したいわけじゃなく、こういう場所の方が隣近所の干渉や怪しまれたりのリスクも低く、人の出入りも分かりにくいからで。
なんでわざわざ砂漠ばっかの辺境州に移ったかというと、


Pan Am International Flight Academy, Phoenix, Arizona(現在閉校)
隣町フェニックスにパンナム運営の大型機フライトシミュレーターがあるからで。


ハニ・ハンジュルは、フェニックスのパンナムフライトスクールに入校、
ボーイング737のシミュレーター訓練を受講し
たんだが、

“テイクオフ”
「………?」
“テイクオフ……ミスター?”
「プ、プリーズ、モア、スローリ-」
“テ、イ、ク、オ、フ”
「……ジ、ジス、イズ、ペン?」

操縦技術以前に英語力ダメすぎて、いかがなものかで。

(こいつこんなんでホントにFAAパイロット免許取ってんのか?)

と疑われ、学校側がFAA@連邦航空局に5回も問い合わせたほどダメダメで。
が、ハンジュルは免許更新してなくてこのときすでに失効、失効した免許を調べるのはFAAにも難しいというかめんどいらしく。なんか結局うやむやになった。
都合4年にわたって何度も米国留学してしかも英語力必須の環境にいたにもかかわらずこの体たらく。よほどアホだったんじゃないかと思われるハニ・ハンジュルである。
というわけで、ミダルハズミ組の前途多難状態は、正直あまり変化なし。
しかし、なんの波風も立たなかったわけじゃなく。
アリゾナ州の航空関係者のあいだで「英語の話せないアラブ人が大型機の操縦を習おうとスクールに通っている」という口コミ話がプチ広がっていた。
それが噂となって、>回り回って、

FBIフェニックス支局のケネス・ウィリアムズ特別捜査官の耳に入ることになる。


「…………」
一方、もうひとつの飛行機計画
“ハンブルグセル”部隊↓


モハメド・アタ
アタは2001年の年明け早々、アメリカをいったん出てスペインへ飛び、そこで連絡担当聖戦士のラムジ・ビナルシブと落ち合った。

ラムジ・ビナルシブ
ハンブルグセル5人衆の一人。本人も殉教攻撃に参加する意欲は大ありだった、
が、

遺憾ながらイエメン人。イエメン国籍イコールアメリカ入国不可である。

何度申請してもアメリカ行きのビザは下りず。
サウジ>>>>エジプト>>UAE>>レバノン>>| 超えられない壁 |>>>>イエメン
ラムジ・ビナルシブ(T^T)泣く泣く殉教をあきらめ、
総合Pハリドシェイク・モハメドの補佐として後方支援に回ったんである。

さて、最も頼りになるとみなされて前線主将を任されたアタですら、
初歩の初歩だろ的なドジを何度も踏む。

スペインからアメリカに戻るときも、

Hartsfield-Jackson Atlanta International Airport, Georgia
2001年1月10日

「ミスターアタ、あなたのビザは期限が切れてますね」

「いま留学生ビザを申請中です。
まだ許可は下りてませんが、申請書類はこれこのとおり」

入国審査官はそれで納得して入国OK。
さらに、

アタはフロリダ州発行の運転免許をとって
ポンティアックグランプリ89年型を買って乗り回してたが、

駐車違反で反則切符を切られていた。

だが、スペイン行きのドタバタで、反則金30ドルの支払いが遅れたんである。
もし不払いで警察のブラックリストに載せられた日にゃ、
芋づる式に潜伏仲間が身バレするおそれもあった。
たった30ドルぽっちの延滞で計画全滅は痛すぎる。

アタは大急ぎで30ドルを払いこんで事なきを得た。
本人たち気をつけてるつもりかもしれんけども、むしろ素人くささの連続で。
たとえば、アタと相棒マルワン・アルシェヒは
フロリダ入りして最初に借りた下宿をたった1週間で追い出されてる。
理由は“unpleasant and messy guests(クソ腹立つ厄介な下宿人)”
それもホフマン航空学校のスタッフが好意で下宿させたのを追い出されてるんで、
どんだけひどいんだよである。


ほれハンブルグでもやらかして下宿追ん出されたのと同じく、昼夜大声でコーラン朗々と朗読とか女は肌を見せるなとかイスラムの戒律を最優先するのが当然的な態度とかそういうの。アタがそもそもハンブルグでボッチになったのもそういうとこなんで。
さらにハズミダルの方も、最初の下宿を出るときの払い戻し金の件で
大家と激しく言い争いになっている。


とくにミダルの尋常じゃないキレっぷりが大家の記憶に残るくらいに。
おまえら潜伏してる気あんのかよ。
彼らは訓練されたテロリストとして巧みに潜伏してたのではぜんぜんなく、むしろ自覚あんのかって呆れるほどの平常運転で。いくら戒律に原理主義でも、非イスラム国でそれじゃ確実に悪目立ちするにもかかわらず。
「カネはなぜか持ってる不良外国人」
という見るからに怪しげな存在感を光り輝かせていた。
じじつ捜査の手がアタまで届いたかもしれないニアミスはさらに何度もあった。
Pembroke Pines, Florida, near Miami
フロリダ州マイアミ近郊ペンブロークパインズ

イムラン・マンドハイ。
FBIマイアミ支局はこの上下逆さまでも顔になる男を、アルカイダ系列、少なくとも準メンバーではないか、とマークして盗聴と人的追尾の合わせ技で調べていた。

のちマンドハイとワル友たちは、マイアミのイスラエル領事館や発電所、州兵武器庫、ラシュモア山米軍施設の爆破テロをたくらんでいたのが分かる。
が、言うだけは自由だけどちゃんと計画して実行するには実力も組織力も知能も足りなかったのか、まあ結局なんにもおきなかったのを未来人であるワシらは知っている。
アルカイダのセル群がみんながみんな精鋭ぞろいのテロリスト軍団かっつうとぜんぜんそんなことはなく。
この手の地元チーのDQNも混じってのゆるーい連帯なんで、かなりピンからキリまで玉石混淆。そのテロ計画の99.9%が口だけ大将か企画倒れに終わっていた。
ともかくこの監視作業でFBIは、マンドハイ一味が、
アドナン・スクリジュマ↓という男とモスクで接触したのを察知。


アドナン・スクリジュマ。サウジ生まれのアメリカ育ち。
あとで分かることだが、このスクリジュマはハンブルグセル組のアメリカ潜伏をサポートするインフラセルの一人だった。

Masjid Al-Hijrah in Miramar, Florida
フロリダ州ミラマー
マジド・アルヒジュラモスク

この男、FBIの潜入捜査協力者。
モスクに入り込み、マンドハイ─スクリジュマの線からつながる人脈を探り中。
そのうち聞いたことない不詳な名前が引っかかる。
モハメド・アタ?

ふーむ。
さいきんアメリカに来た新参者。スクリジュマと何度か会ってる。
なにか匂う。これもっと突っ込めるんじゃないか?
ところが、

「え? 中止? し、しかし──」
傍受機器もすべて取り外せ。監視班もぜんぶ撤収せよ。

「くそっ」
じつは通信傍受の令状が出にくくなりそうな雲行きがあって、FBI的にひとまず重要度の低い案件を20件くらい間引いて見た目の数を減らさなきゃなんなくなった。
その“ま、いっか”な案件のひとつがこのマンドハイ関連だったんである。
本格的に着手される寸前でマンドハイ─スクリジュマ一派の捜査は中断。
モハメド・アタの名もファイリングケースにしまいこまれて、忘れ去られた。
そして、もうひとつの情報官庁でも↓


「エイブルデンジャー」こと「エイブル危険」作戦
国防総省のDIA@国防情報局+SOCOM@特殊作戦コマンド合同チームは、

とっくの昔にモハメド・アタ=アルカイダメンと認識していた。*【ウルトラNW : 第5便】


さらにエイブル危険のシギント解析による追尾は、
モハメド・アタの具体的な潜伏先まで探り当てていた。

ニューヨークから24km、ニュージャージー州ウェイン。

2000年前半、この町のモーテル「ウェイン・イン」にしばし滞在してたんである。
そこに少なくとも3人のアルカイダメンらしきアラブ系が出入りしていることも判明。


それがアタの相棒マルワン・アルシェヒ、ハリド・アルミダルとナワフ・アルハズミ。
電子情報だけでアタ含むリーダー級4人まで割り出していた。
が、
「将軍っ、」

「“エイブルデンジャー”の記録一切が廃棄されたのをご存じでありますか。
しかも責任者の私への通知もなしにです!」
「中佐、」


「その理由は明らかだ。つまり君に通知する必要が無かったから無かったのだ」
Lt. Col. Anthony Shaffer
アンドルー・シェーファー中佐
@「エイブル危険」作戦遂行責任者


「記録がないなら非公式な口頭でも構いません、
FBIへの情報提供を今一度ご検討願います」

「答えは前と同じだ、グリーンカードを持つ者は米国市民と同様の法的保護を受けるため、この案件でFBIとの情報共有は不可。これが法務部の判断だ」

「エイブル危険」の解析は、きほんNSA@国家安全保障局による電話やメールの
米軍内部だけならともかく、FBIの捜査や逮捕立件、ましてや裁判なんてことになったら、証拠に不採用どころか違法行為とみなされて大炎上するだろう。
とうぜんソース元NSAさらに国防総省にまで火の粉がかかりかねず、違法を承知でやってる通信傍受がいらん注目を浴びることになるんで。

「それではテロリストを国内で野放しにすることに。エイブルデンジャーは……」
「中佐、」


「エイブルデンジャーなる作戦など存在しないし、
過去にも存在しなかったのだ。下がってよし」

「………イエッサー」
「エイブル危険」作戦は、けっきょく2001年に入るころに任務終了>解散となる。
米軍の管轄外のアメリカ国内に監視対象が入ってきちまったのが最大の理由とされる。
とうぜんこの顛末一切はFBIにも、ましてや現場の捜査官にも知らされないまま。
干されて予備役にされたシェーファー中佐が2005年に内部告発するまで、
エイブル危険の存在も中身も隠され続けたんである。
さらにこれまたゴシップ誌のしかも噂話にすぎんから話3割だけども、


CIAもまた、“フロリダセル”に“ダブル”つまりスパイを送り込もうと、
地元イスラム原理主義者コネクションに探りを入れてたって話もある。
ただアルカイダセルの性格上、誰がヘッドで誰がメンバーで誰が無意識の協力者で誰が善意の第三者なのかつかみにくく、選択と集中がうまくいかなった模様。

どっちにしても連邦政府の複数の情報機関が、何度も9.11ハイジャッカーとニアミス、そのたびに内輪のくだらない事情でテロ阻止の機会を逸したんである。
これを偶然の連鎖による不幸とみるか?
周到に仕組まれた「わざと見逃す陰謀」の成果とみるか?

February, 2001
2001年2月
Tokyo
東京

「姐さんがこんなに長く日本にいるのって、久しぶりじゃないですか」

「うん、重信の件が思いのほか引っ張っちゃってね。
ようやくメドついたし、来週には出国したいかな」

「そういえば、世田谷の事件、どお? なんか厄介っぽいね」

「ええ、捜1は早期解決のつもりで楽勝ムードだったらしいですが、なぜか長期化しちまって、じき6週目ってのになんも進んでませんや。手がかりもうなるほどあるってのに、変な話っすよ」

「コマちゃんもまだ捜査本部に張りつきみたいだね」
「ええ、そうなんすよ」
「コマちゃんの家庭円満が心配だなー」


「仕事人間すぎて奥さんに出て行かれたバツイチ警視を反面ひょうひひひへひほっ」
「だから口いっぱい入れたまましゃべるな。
バツイチはおれだけじゃなくて白鳥も同類だろ」

「で、大久保、」

「忙しい駒込の部下のおまえは、なんでここでのうのうと酒飲んでるんだよ」

「え、自分は、あれです、連絡担当ですよ。白鳥軍団のことも把握しとかないと」
「へ? いつのまに軍団になったの?」

「西部警察みたいでかっこいいですね、ぼくも軍団員なりますっ」
「渋谷、おまえ一番若いくせにいちいち例えが古いのな」

「おれは遠慮しとくぞ」
「えー警視が入らないなら、わたしもやめとこ」
「げ、それじゃ、おれと渋谷しかいないじゃないですか、やめだやめだ!」

「えー、やめちゃうんですか? せっかく軍団員になったのに」
「渋谷、やりたきゃおまえ一人で軍団やってろ!」
「わーんひどいー」

「そいじゃ、姐さん。おれはここらで失礼します」
「捜査本部に戻るならお酒の匂いしまくってるよ」
「そこらのサウナに寄ってアルコール飛ばしときますわ」
「うん、気をつけてね。まず目の前の階段転げ落ちないように」
「姐さんも寒いですから中へどうぞ、風邪引きますぜ」

「大久保くん、聞いていい?」

「コマちゃんは、どうして今も捜査本部に張りついてるのかな」

「公安部が世田谷に噛んだのは、教会が関係してる疑いがあったからだよね。だから公総と所轄警備兼任のコマちゃんが捜査本部に加わった。でも、」


「教会の線は、先月末で消えた、よね」

「かなわねえなあ、姐さん、よくご存じで」

「あれの裏取り、わたしがやったからね」
「そういやカルトといや姐さんでしたっけ。うっかり忘れてました」
「大久保くん、わたしに聞かせたいことがあるから今夜来たんでしょ。話して」

「………おれは、」


「コマが心配なんです」

「あいつ、世田谷事件でやばいことになってる」
【第11便 ダムネーションゲーム】へとつづく








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