【事件激情】ウルトラNW 第12便-続@再掲【パリ同時多発テロ】
*第11便









【事件激情】ウルトラNW 第12便-続@再掲【パリ同時多発テロ】
≪ *クリック【第12便】前半へと戻る
9.11から14年と2か月後、
2001年のアメリカと同じ不幸の連鎖が、
華の都巴里で、まるでなぞったように繰り返される。
いまや欧州でのイスラム系テロは日常茶飯事になってしまった感だが、
その皮切りとなった惨劇である。
7 janvier 2015
Paris
2015年1月7日 パリ




誹謗中傷風刺週刊紙「シャルリーエブド」銃撃事件を機に、
対テロ無策だったフランス当局も権限強化され、やっとテロ対策に本腰、
と言いたいとこだが、やるぜと言って急に情報通になれるわけじゃなく。
先進国ではあってもアメリカじゃないフランス的に先立つものに限りが。
シグナルはたしかにいくつもあった。









【事件激情】ウルトラNW 第12便-続@再掲【パリ同時多発テロ】

9.11から14年と2か月後、
2001年のアメリカと同じ不幸の連鎖が、
華の都巴里で、まるでなぞったように繰り返される。
いまや欧州でのイスラム系テロは日常茶飯事になってしまった感だが、
その皮切りとなった惨劇である。
7 janvier 2015
Paris
2015年1月7日 パリ





対テロ無策だったフランス当局も権限強化され、やっとテロ対策に本腰、
と言いたいとこだが、やるぜと言って急に情報通になれるわけじゃなく。
先進国ではあってもアメリカじゃないフランス的に先立つものに限りが。
シグナルはたしかにいくつもあった。
17 janvier
Belgique
1月17日 ベルギー

>警察署襲撃テロ計画、決行直前で発覚、
>ISIL@いわゆるイスラム国一味らしいグループ逮捕。
mai
Avertissement des Etats-Unis
5月 アメリカからの警告、>

>米国土安全保障省情報分析局@OIA(Office of Intelligence and Analysis)と
FBIの合同レポート。
「ISILには海外で大規模テロを行う組織力がある」
「ベルギーでテロを阻止された首謀者アブデルハミド・アブアウド@モロッコ系ベルギー人が、ふたたび欧州で大規模テロに再挑戦しそうなので気をつけてね」
ドンドゥルマ のびるトルコアイス
Juin. Avertissement de la Turquie
6月 トルコからの警告>

「アルジェリア系フランス人イスマイル・モステフアイが、2013年にトルコをとおってシリアに向かった形跡があり、テロをやる可能性がある」
トルコ警察は前年12月にも親切に同じ警告をフランス当局に送っていた。
なのに二度ともフランスから返事なしスルー。フランス人失礼め。
じつはこのモステフアイ含む何人かの実行犯は、とっくの昔の2010年ころからフランス治安当局のブラックリスト「le fichier S@Sファイル」の監視対象人物だった、
、はずだった。が、
自慢の「ル・フィシエ・S」に登録されたテロリスト予備軍は1万人(!)もいた。登録すりゃいいってもんじゃないだろフランス語だとなんか急に洋菓子みたいだし。
1万人漏れなく見張るなんて無理だし、こいつら危急度低いだろと後回しになった、
つまりそのまま放置ほったらかしヤマ外れたら赤点パターン。
EU加盟国は「国境間の自由移動」協定もあって国境検問もゆっるゆるで、ブラックリストの人物がフランスからこそっと出国、>ギリシャ>トルコ経由で>ISILの勢力圏シリアに入り、>またこそっとフランスに戻ってもまったく気づかなかった。
そうだ難民しよう!
さらに今年になって80万人超えの“シリア難民”(偽難民含む)が欧州に流入。
あまりの数に当局は難民の素性チェックもやりようがなくこれまた放置ほったらかし。
テロリストが難民になりすましてフランスに潜伏しても気づきようもなく。
11月末にはパリでCOP21@国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議が開幕し、世界の首脳陣がパリに集まる。テロリスト側にとってはパリは宣伝効果抜群の攻撃目標で、とうぜん当局の警戒態勢もひときわ厳しかった、はずなんだが。
5 novembre
Allemagne Bayern
11月5日 ドイツ バイエルン、>

>モンテネグロ人@51歳運転の車からAK47自動小銃8丁と拳銃2丁と手榴弾2ケとTNT爆薬0.2kg発見。カーナビのデータからしてパリを目指してたぽい。
ローソン MATI cafe ベルギーワッフル135円
さらにテロの支度はもっぱら隣国ベルギーで行われてて、ある程度ベルギー当局もその動きを察知していたけども、ベルギーとフランスの情報連携はぜんぜんできてなくて。(なので事件後、仏白当局が醜く責任なすりつけI中)
ちなみにベルギーとの形ばかりの国境からパリまで、車でわずか2時間半である。
そういう“つなぎ合わせれば全貌が見える”はず、
、だった数々の予兆は、ことごとくスルー。
フランス治安当局の複数ある組織間の風通しも悪く、人手もチャネルもカネも経験も足りず、情報に対応が追っつかず。なにもかも間に合わず。
まるで2001年のアメリカのように。
貴重な手がかりはそこにあるのに拾われないまま、時だけが無情に過ぎていき、

2015年11月13日、夜。
パリは血に染まる。

─続き
登場する事件テロ紛争戦争、その捜査は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子、駒込ら、この文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりは、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。
June 2001
2001年6月
「今朝、彼女が総務課長に提出してきたそうだ」
「………」
「いちおう部長預かりとして留め置いてあるから」
「申し訳ありません」
「いや、私も、警部があのような形で巻き込まれるのは想定外だった」
「しめ……いえ、ご配慮に感謝します」
「(・ω・` )今“しめた”と言いかけたか?」
「(;・∀・)か、勘ぐりすぎですよ、部長」
安藤隆春@警視庁公安部長
「ただ、君と関係の深い警部が証言者になり、監察まで巻き込んだことでレートが上がったのか、より信憑性があったのか、大きな収穫があった」
「ほんとなら当事者も含めて誰にも気づかれず、作業担当者ですら結局なにが起きたかもわからないってお馴染みの流れで終わるはずでしたよね」
「君にはあっさり仕掛けがバレたがな」
「いえいえわたしの場合、アンチも多いんでちょっとだけ神経質なんです。油断こいてるとマジで嵌められる心配がありますから」
「まあ、今回は私の主導した作業が原因だ。できる限り彼女のフォローもするから」
「さっすが未来の警察庁長官候補筆頭イケメソすぎです。じゃ全面的に部長が悪いってことで、つボイ様のサインなるはやでお願いします」
「………」
「白鳥、今さら君に言うことではないかもしれんが──」

「上司と部下の信頼が厚いのは悪いことではない。君の立場ならなおさらそうした部下が不可欠なのもわかる。だがそれも度が過ぎれば逆にリスクとなるからな。
この部局ではとくに。君には理解できると思うが」
「……はい、今度ばかりは憎まれ口もたたけません」
「他のときもわざわざたたかなくていいんだぞ。さて、帰国はいつになるかな」
「うーん、夏の間に一度戻るつもりですが、そのあと早くとも秋までは向こうですかねえ、ちょっと長めの旅になりそうです」
「アルカイダのテロ計画の件か」
「ええ。今から秋までがなーんとなくやばそげなんで。それだけ猶予があれば、つボイ様のサインゲットくらいちょろいですよね」
「………」
「白鳥、今回なりゆきとはいえ君を囮にしたのは非常に効果的だった」

「というよりも、君の名前に対して獲物たちの食いつきがよすぎた、」

「いささか懸念を抱くほどにだ」

「杞憂かもしれんが。くれぐれも身の安全に気をつけたまえ」
警察庁警備局警備企画課 総合分析室@通称“I・S”
「ノンキャリ上がりの松尾は外務省の汚れ仕事を一手に引き受けていた。捜2が松尾を完落ちさせたら大スキャンダルだが、無理だろうな」
「上から下まで裏金に関わってる外交官が多すぎる。捜2も怖くてやり切らんだろう」
「じゃ、延焼しないうちに店じまいだね。毎度のごとく」
「新大臣は徹底的に省の膿を出すまでやると張り切ってるようだが」
「あの人、威勢はいいけどさー、父親に似てるの態度だけだから。
すでに官僚との戦いかた間違えてるし。
皆さんもハシゴ外されないように気をつけてね」
「あんたが言うならやっぱそうなんだろうな」
「それで次の懸案が、このグループってことなんだ?」
「すまんがその資料、持ち出し禁止なんで、ここで読んで返してくれ」
「ええー、一応わたしここの立ち上げメンバーで室長補佐だよ?」
「悪いが室長も例外じゃないから」
「ちぇっ暗記苦手ん」
「外交の族議員って珍しいね」
「独壇場らしい。外国に人脈ないと族れないからな。去年、外1がロシア大使館のスミルノフを強行追尾したら、その先生から直で備局長に圧力きて中止になった」
「あれ、このドワーフみたいな人、どっかで見たな、誰だっけ?」
「あだ名は“ラスプーチン”」
「いわば、外務省における白鳥だよ。ノンキャリであり得ないほどのし上がってきた。ほら、ソ連クーデターのときゴルバチョフの安否をCIAより早く突き止めた」
「あー思い出した、アントニオ猪木と友だちって人だ」
「そこ覚えなきゃいけないとこか?」
「ふうん……」
「ちょっと考えさせて。出国してからになっちゃうけどなるはやでメールするから」
「すまんな」
(ラスプーチンか……)
「大事な話ってなに?」
「これ受けとれ、コマ」
字汚すぎだよ
「始末書? 大久保、なにかやらかしたの?」
「どうせだから先に書いといた、」
「今から上司を一発、


ぶん殴るからなッ」
ぱしっ
────────────────「おりょっ?」
ドスッ
─────────────────「痛でッ」
バキッ
────────「あがっ」
どてっ
「へうっ」
ドカッ
「うげぶっ」
トドメまで
「あ、ごめん、つい反射的にコンボで」
鼻血だらー
「まあ今日はこのくらいにしといたるわ」
「 ; なにしたかったの?」
「それはさておき、しこたま仕入れてきたぜ、飲めや」
「バカあんたは勤務中でしょ」
「鼻血により早退した」
「なに遡って言い訳にしてんの」
「いいから飲もうぜ」
「悪いけどお酒飲むような気分じゃないから」
「なに言ってんだ、むしょうに飲みたいぜ」
「それあんたでしょ! 一人でそのへんで飲んでりゃいいじゃん」
「飲みたくなーる飲みたくなーる」
「あーうるさいっ!」

「ぜったい飲まないからぜったい!」

「ちっくしょーっ」

ごきゅっごきゅっ
ぷはーっ

「みんなわたしが悪いんだーっ」
「な、なあ、コマ、ちょっと飲みすぎじゃね?」
「うっさいッ、あんたが飲めって言ったんじゃん!」
「だいたいねえお酒だけ買ってくるかふつー?
柿ピーひとつないし! ひたすら酒飲むしかないし!」
「とんだ怒り上戸だぜ」
「うう、もうダメだ、“班長”に顔向けできない」
ひっくひっく
「わたし、あの人を裏切っちゃった」
こんどは泣き上戸かよ
「コマ、おまえ了見違いだぞそれは。同僚もだます作業なんざウチじゃ珍しかねえだろ。おまえが姐さんを庇って偽証したら、それこそ姐さんに顔向けできなかったぞ。私情を挟むのは禁物、公安デカ失格だ」
「そんなの分かってるよ、だから監察立ち会いで証言もした、“班長”にも知らせなかった。“班長”もそうすべきだったと言ってくれた。わたしもそのとおりだと思った」
「じゃ、いいじゃねえか」
「よくない!そう思った自分にショック受けた!
ってショック受けたのも班長に悟られちゃった!」

がーーっ
「そんなわたしをわたしが許せないんだー!」
「めんどくせーやつだなあ、おめーはよ、泣き虫だし」
「泣き虫言うなっ」
「わたしだってねえっ」
「あ、おい、大丈夫か?」
「おええっ、げほっげほっ」
「ったく言わんこっちゃない。別人のように壊れすぎだろおまえ」
「うー、なにが悲しくて便所なんかで大久保なんかに介抱されて吐いてんの?」
「大久保なんかで悪かったな、てかおれ便所と並列かよ」
夫もいて2児の母でありながら
「うう、わたし、レズなんだろうか。“班長”のこと思うたびに胸がきゅって痛くなる」
「わかるぜ。おれも姐さん押し倒さないよう踏みとどまるのに理性必死だぜ」
「大久保の下劣な欲望と一緒にしないで!」
「ひっでえ言いぐさだな」
「ふう、吐いたらすっとした」
「っておい、また飲むのかよ!」
「ま、思えば姐さんとコマって、どっちが警部補か新米の巡査か、わからんかったもんなー、つか逆に見えるっつうか。すでにあのころから」
「“あのころから”って言うな。そしていちいちわたしをしげしげ見るんじゃない」
「ま、でもたしかにそうだよ。“班長”のすっぴん、大久保見たことないよね?」
「え、じつはしわしわとか?」
「逆だよ、あの人、よく若い子に擬装するでしょ。あれって、マジでメガネ外してるだけだから。そのときが素顔に近い。ふだんわざと年上に見せるメイクしてるの」
「じっさい素を見たら、もうね、ほんと可愛さに驚くよ。最初のころからずっとぜんぜん年取ってない。ちょっと前、温泉行ったときあったじゃん、そのときも前とほぼ変わってなくてさ。最近さすがに本人も普通じゃないって思い始めたようだけど」
プチ妬み
「あの人あんなカップヌードルばっかり食べて、歩く生活習慣病みたいな生活してて、努力してる様子もないのに肌もピチピチで卑怯じゃんって思うくらい」
「あーあ、おれはコマになりたいよ、姐さんと一緒に温泉入れるわけだろ」
「このバカ変態」
「前から思ってたけどそれほどとは。姐さんってもはや美熟女とか美魔女の域すら超えてるよな、おかしいだろ、ほんとに年食わないなんて」
「あの人は、違うんだよ、わたしたちとはいろいろと」
「姐さんだとそのひと言でなんとなく納得しちまえるな」
「ね、大久保。わたしをぶん殴ったこと覚えてる?」
「おいおい殴れてねえって。瞬殺で返り討ちだったじゃねえか」
「さっきじゃなくてずっと前。わたしが“永田町”班に入ってすぐのころだよ」
「わたし、あのとき“魔女”班に入れられたのがほんといやでさ。ほら噂あったでしょ。『恩ある先輩を死なせて出世した』って話、あれ鵜呑みにしててさ。
で、あんたにそれ言ったら、
、いきなりグーパン」
姐さんはいろいろ無茶くちゃだし常識ヘンだし、悪く思うのもしかたねえ。
だがな、
あのことを突っつくのだけはおれが絶対死んでも許さん。

あれで出世? とんでもねえ。
姐さんはあの件で危うくクビになるとこだったんだぞ。
あの朝、おれは“先生”を確保しに行った捕捉班の1人だった。現場指揮は姐さんだ。
“よく見抜いたな白鳥。
突き止めるなら君だろうと思っていたが、本当にしてやられるとは”
“あのふて腐れていた落第生くんが、立派な公安デカになったな”
“しまった!”

“おい、救急車呼べ!”
姐さんがわざと配置を緩くしておいたって噂は、ウソでたらめだ。
だってあれは、おれのドジだったんだ。
“班長、面目ねえ、おれのミスです”

そんとき見た姐さんの顔、

おれはその瞬間、決めたんだ。
この人に死ぬまでくっついてく、ってな。
守ってやるなんておこがましいことはとても言えねえが、
下僕でもパシリでも奴隷でも家畜でもいいからよ。
査問のときもその後も、姐さんはおれのドジを一切告げなかった。
そのせいで懲戒食らいそうになっても、さんざクソな陰口を叩かれても。
だからあんなクソみてえなうわさ信じてあの人を憎まねえでくれ。たのむ。
こっぱずかしいぜ
「……そんなこと言ったっけか」
「言いたかったのは、あのとき殴ってくれてありがとう、ってこと」
1週間くらいアザだったんですけど
「でもさ、ふつうグーで女を殴るかな」
「すんまそん」
「わたし、考えたら、今回、あのときの班長と似た立場にいたんだね。もちろん今回の疑いは本物じゃなかったし、事象の重さも比べものにならないけど、
ほんの少しだけあの人の気持ちが分かった」
「班長はあのとき、どんなにつらかったんだろう、って」
「あの人はそういうの見せないからなあ」
「なあコマよう、これでおまえ辞めちまったら、姐さんほんと悲しむぜ」
「………うん」

「あ、警部どの、デカ長どの。お疲れ様です、酒盛りですか?
はれ? デカ長なんで鼻血出してるんですか」
「渋谷、おまえも外2のはしくれなら知ってるだろ、ここんとこの一件を」
「え? うちの課でなにかあったんですか?」
「……こういうやつがじつはいちばん公安デカに向いてるかもな」

「ほれ」
「予報じゃ今夜は意外と冷えるらしい、半袖じゃ風邪ひくぞ」
「あ、ども」
「芋ジャーもいよいよ市民権を得たようですね」
「そもそもジャージしかないだろうが」
「駒込にはおれからも話そう。おれは公1で駒込は公総だから手控えしてたが」
「わたし、ある意味ほっとしてるんですよ」
「もし、コマちゃんが逆の態度をとって、わたしを庇って聴取拒否したり偽証したら、それこそどうしようもなく彼女は公安デカとして失格と判断されるとこでした。
そうなってしまうのがわたしは一番怖かった」
「でもコマちゃんはすごく悩んだだろうけど、正しい選択をしてくれました」
「あとは駒込が自分の中で折り合いを付けるかどうかだ」
「彼女なら乗り越えてくれると信じてます」
「………あのう、警視」
「ん?」
「滅多に頼み事をしない謙虚の塊のようなわたしが珍しくお願いしてよいですか」
「警視正どのの場合、毎度頼まないで人にやらせるがな、なんだ」
「明日、ご一緒してほしいところがあるんです」
「ってどんな重要なことかと思ったら、はとバスかよ!」
「いやー、気づけばわたし、ずうっと東京に住んでて、
一度も都内観光したことなかったんですよね」

「わたしたち一緒に暮らすようになってからデートひとつしてないじゃないですか」
「一緒に暮らすとかデートとか実態とちがうことよく臆面もなく言うな」

「じゃ、お父さんにもきびだんご一本おまけね」
「おーうれしいっ、ありがとうございますっ」
キャバ嬢とパパじゃなくてよかった
「お父さんだって、おっほほほ」
むー
「あのなあ」
「まずおまえ誰だよ」
「メガネ外した白鳥です」
意味不明の美髪ポーズ
「せっかくだから擬装と若作りの限界に挑んでみたりしました」
「化けすぎだろ、どんな魔法のメイクなんだ」
「(´-`).。oO(むしろメイクを減らしたからこの顔なんだけどね)」
「ま、いつものメガネだってそう悪くないがな」
「って人がせっかく気合い入れて臨んでるのに、警視はなんなんですかそれ。休みに着るものを思いつかなくてしかたないからゴルフ用のポロシャツとスラックス着とけって投げやりなおっさんそのものじゃないですか。だからお父さんとか言われるんですよ」
「ほんとにおっさんだからしゃーないだろ!」
やっぱあげまんじゅう買わなきゃ
「あ、ところで、いまメガネかけてた方が好きだって言いましたよね」
「そう悪くないがな、と言っただけだぞ」
あげまんじゅう超うめー
「悪くない、はまあまあ好きという意味ですよね、ね、メガネとジャージも」
「なんで毎回この流れなんだ! しかもしれっとジャージ混ぜるな!」
「……あれ? おっかしいなあ」
「なんだどうした」
「ビリケンさんがいないんですけど」
「は? ビリケンが東京タワーにあるわけないだろ、あれは通天閣だぞ」
「ええーーっ! 生まれて初めて知った衝撃の真実」
「情報分析官がそれでいいのか? まあビリケンの場所は安全保障に関係ないか」
「狙うは、アンパンマン一択っ」
「よおおおしゃーーー、来た来た来たアアアア!」

「おりゃあアアアアッ行けエエエエ!」
ころん
「は、はれ?」
「どうするんだよ、カレーパンマンばっかこんな取りやがって」
「いやー、ど、どうしましょうね?」

「ほらほら警視、もうちょっと嬉しそうな顔しないと」
「このざまをどう嬉しがれと言うんだ」
「もー固いなー、ド昭和の男は」
「言っとくが、そっちもド昭和の女だからな」
「あはは、警視色黒すぎですって! 露出わたし白くとんでる」
「そっちが白いからだろ!」
「はい警視の分も、どぞ」
「こんなもん大のおとながもらってどうするんだよ」
「なに言ってるんですか、ケータイとかに貼るんですよ」
「貼るかッこんな小っ恥ずかしいもん。あッ、おい、白鳥もだぞ、」
ペタ
「白鳥も絶対貼るなよだから貼るなっつうのに!」

「今日はお付き合いいただきありがとうございました」
「まあ意外と、なんだ、退屈しなかったな」
「少しはいい思い出になりました?」
本郷はそのなにげないひと言に引っかって。
「おれも行こうか?」
「へ? アメリカにですか? どうしたんです急に? 明日仕事では?」
「あ、いや、まあそりゃそうだ、無理だな」
「……でも、ありがとうございます」
「こんどゆっくり案内しますよ、アメリカ合衆国」

2001年4月下旬から6月末にかけて──

「飛行機計画」“聖戦士”の第2陣が、続々とアメリカ入りする。
その数、13名。
April 23, 2001
Monday
4月23日 月曜日

Orlando International Airport, F.L.,
フロリダ州
オーランド国際空港
Satam al-Suqami Waleed al-Shehri
サタム・アルスカミ、ワリド・アルシェフリ
May 2
Wednesday
5月2日 水曜日

Washington Dulles International Airport, V.A.,
バージニア州
ワシントン・ダレス国際空港
Majed Moqed Ahmed al-Ghamdi
マジド・モケド、アフメド・アルガムディ
先入りして飛行機操縦を習得中の主要メン6人と違って、後入りの13人のほとんどが初アメリカ、英語もまったくしゃべれない。
ずばり「筋肉マッスル」と身もフタもなく呼ばれる13人は、身もフタもない呼ばれようのとおり、ハイジャックの腕力担当だった。頭数いればいいってことである。
May 28
Monday
5月28日 月曜日

Miami International Airport, F.L.,
フロリダ州
マイアミ国際空港

Hamza al-Ghamdi Mohand al-Shehri Ahmed al-Nami
ハムザ・アルガムディ、モハメド・アルシェフリ、アフメド・アルナミ
June 8
Friday
つづいて8日 金曜日

同じくマイアミ国際空港

Wail al-Shehri Ahmed al-Haznawi
ワイル・アルシェフリ、アーメド・アルハズナウィ
彼らは偽名じゃなく本名を使って、堂々とビザ@観光/ビジネスを申請して発行され、正面玄関から堂々と本物のパスポートでアメリカに入った。
このとき“筋肉メン”のビザは多かれ少なかれ抜けや不備があって、なかには一発退場つまり強制送還になっても不思議じゃない不良なメンもいたけども、
なによりサウジアラビア国籍の神通力は強く、
全員なんだかんだいって入管をクリア、アメリカ入国に成功した。
June 27
Wednesday
6月27日 水曜日

Orlando International Airport, F.L.,
フロリダ州
オーランド国際空港ふたたび
Fayez Banihammad Saeed al-Ghamdi
フェイズ・バニアハマド、サイード・アルガムディ
13人の“筋肉”は到着すると早々に、
先入りしてるモハメド・アタら主要メン6人と合流していく。
June 29
Friday
6月29日 金曜日

John F. Kennedy International Airport, N.Y.,
ニューヨーク州
ジョン・F・ケネディ国際空港
「マッスル」最後の2人がアメリカにやってきた。
「訪米の目的は?」
「さいと、しぃんぐ」
Salem al-Hazmi
サレム・アルハズミ
主要メンナワフ・アルハズミの弟くん@20歳である。
「飛行機計画」聖戦士中で最年少。
そして、もう1人、

「アブダライズ、アル…オーメリー?」
「オマリ、アブドルアジズ・アルオマリ、イエース」
Abdulaziz al-Omari
アブドルアジズ・アルオマリ@22歳@妻子持ち
この男、911陰謀論のひとつ「ハイジャッカー生存説@だからアメリカ政府の自作自(以下略」でもよく登場するメンである。
ま、その真相はやがてのち明らかにされるであろう白戸三平風。
(疲れた……カップヌードル食べたいな、)
(ちゃんと醤油味のやつ)



「なんだろ、いま寒気が」
「風邪ひきかけ? やっべ、早くカップヌードル食べなきゃ」
──9.11まで、あと74日。
【第13便 フォーリング スワン】へとつづく







Belgique
1月17日 ベルギー


>警察署襲撃テロ計画、決行直前で発覚、
>ISIL@いわゆるイスラム国一味らしいグループ逮捕。
mai
Avertissement des Etats-Unis
5月 アメリカからの警告、>


>米国土安全保障省情報分析局@OIA(Office of Intelligence and Analysis)と
FBIの合同レポート。
「ISILには海外で大規模テロを行う組織力がある」
「ベルギーでテロを阻止された首謀者アブデルハミド・アブアウド@モロッコ系ベルギー人が、ふたたび欧州で大規模テロに再挑戦しそうなので気をつけてね」

Juin. Avertissement de la Turquie
6月 トルコからの警告>

「アルジェリア系フランス人イスマイル・モステフアイが、2013年にトルコをとおってシリアに向かった形跡があり、テロをやる可能性がある」
トルコ警察は前年12月にも親切に同じ警告をフランス当局に送っていた。
なのに二度ともフランスから返事なしスルー。フランス人失礼め。

じつはこのモステフアイ含む何人かの実行犯は、とっくの昔の2010年ころからフランス治安当局のブラックリスト「le fichier S@Sファイル」の監視対象人物だった、
、はずだった。が、
自慢の「ル・フィシエ・S」に登録されたテロリスト予備軍は1万人(!)もいた。登録すりゃいいってもんじゃないだろフランス語だとなんか急に洋菓子みたいだし。
1万人漏れなく見張るなんて無理だし、こいつら危急度低いだろと後回しになった、
つまりそのまま放置ほったらかしヤマ外れたら赤点パターン。
EU加盟国は「国境間の自由移動」協定もあって国境検問もゆっるゆるで、ブラックリストの人物がフランスからこそっと出国、>ギリシャ>トルコ経由で>ISILの勢力圏シリアに入り、>またこそっとフランスに戻ってもまったく気づかなかった。

さらに今年になって80万人超えの“シリア難民”(偽難民含む)が欧州に流入。
あまりの数に当局は難民の素性チェックもやりようがなくこれまた放置ほったらかし。

テロリストが難民になりすましてフランスに潜伏しても気づきようもなく。
11月末にはパリでCOP21@国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議が開幕し、世界の首脳陣がパリに集まる。テロリスト側にとってはパリは宣伝効果抜群の攻撃目標で、とうぜん当局の警戒態勢もひときわ厳しかった、はずなんだが。
5 novembre
Allemagne Bayern
11月5日 ドイツ バイエルン、>


>モンテネグロ人@51歳運転の車からAK47自動小銃8丁と拳銃2丁と手榴弾2ケとTNT爆薬0.2kg発見。カーナビのデータからしてパリを目指してたぽい。

さらにテロの支度はもっぱら隣国ベルギーで行われてて、ある程度ベルギー当局もその動きを察知していたけども、ベルギーとフランスの情報連携はぜんぜんできてなくて。(なので事件後、仏白当局が醜く責任なすりつけI中)
ちなみにベルギーとの形ばかりの国境からパリまで、車でわずか2時間半である。
そういう“つなぎ合わせれば全貌が見える”はず、
、だった数々の予兆は、ことごとくスルー。

フランス治安当局の複数ある組織間の風通しも悪く、人手もチャネルもカネも経験も足りず、情報に対応が追っつかず。なにもかも間に合わず。
まるで2001年のアメリカのように。
貴重な手がかりはそこにあるのに拾われないまま、時だけが無情に過ぎていき、

2015年11月13日、夜。
パリは血に染まる。




登場する事件テロ紛争戦争、その捜査は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子、駒込ら、この文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりは、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。
June 2001
2001年6月

「今朝、彼女が総務課長に提出してきたそうだ」

「………」
「いちおう部長預かりとして留め置いてあるから」

「申し訳ありません」
「いや、私も、警部があのような形で巻き込まれるのは想定外だった」
「しめ……いえ、ご配慮に感謝します」
「(・ω・` )今“しめた”と言いかけたか?」
「(;・∀・)か、勘ぐりすぎですよ、部長」

「ただ、君と関係の深い警部が証言者になり、監察まで巻き込んだことでレートが上がったのか、より信憑性があったのか、大きな収穫があった」
「ほんとなら当事者も含めて誰にも気づかれず、作業担当者ですら結局なにが起きたかもわからないってお馴染みの流れで終わるはずでしたよね」
「君にはあっさり仕掛けがバレたがな」

「いえいえわたしの場合、アンチも多いんでちょっとだけ神経質なんです。油断こいてるとマジで嵌められる心配がありますから」
「まあ、今回は私の主導した作業が原因だ。できる限り彼女のフォローもするから」
「さっすが未来の警察庁長官候補筆頭イケメソすぎです。じゃ全面的に部長が悪いってことで、つボイ様のサインなるはやでお願いします」
「………」
「白鳥、今さら君に言うことではないかもしれんが──」


「上司と部下の信頼が厚いのは悪いことではない。君の立場ならなおさらそうした部下が不可欠なのもわかる。だがそれも度が過ぎれば逆にリスクとなるからな。
この部局ではとくに。君には理解できると思うが」

「……はい、今度ばかりは憎まれ口もたたけません」
「他のときもわざわざたたかなくていいんだぞ。さて、帰国はいつになるかな」
「うーん、夏の間に一度戻るつもりですが、そのあと早くとも秋までは向こうですかねえ、ちょっと長めの旅になりそうです」
「アルカイダのテロ計画の件か」
「ええ。今から秋までがなーんとなくやばそげなんで。それだけ猶予があれば、つボイ様のサインゲットくらいちょろいですよね」
「………」

「白鳥、今回なりゆきとはいえ君を囮にしたのは非常に効果的だった」

「というよりも、君の名前に対して獲物たちの食いつきがよすぎた、」


「いささか懸念を抱くほどにだ」

「杞憂かもしれんが。くれぐれも身の安全に気をつけたまえ」

警察庁警備局警備企画課 総合分析室@通称“I・S”
「ノンキャリ上がりの松尾は外務省の汚れ仕事を一手に引き受けていた。捜2が松尾を完落ちさせたら大スキャンダルだが、無理だろうな」

「上から下まで裏金に関わってる外交官が多すぎる。捜2も怖くてやり切らんだろう」

「じゃ、延焼しないうちに店じまいだね。毎度のごとく」
「新大臣は徹底的に省の膿を出すまでやると張り切ってるようだが」

「あの人、威勢はいいけどさー、父親に似てるの態度だけだから。
すでに官僚との戦いかた間違えてるし。
皆さんもハシゴ外されないように気をつけてね」
「あんたが言うならやっぱそうなんだろうな」

「それで次の懸案が、このグループってことなんだ?」
「すまんがその資料、持ち出し禁止なんで、ここで読んで返してくれ」
「ええー、一応わたしここの立ち上げメンバーで室長補佐だよ?」
「悪いが室長も例外じゃないから」
「ちぇっ暗記苦手ん」

「外交の族議員って珍しいね」
「独壇場らしい。外国に人脈ないと族れないからな。去年、外1がロシア大使館のスミルノフを強行追尾したら、その先生から直で備局長に圧力きて中止になった」

「あれ、このドワーフみたいな人、どっかで見たな、誰だっけ?」
「あだ名は“ラスプーチン”」

「いわば、外務省における白鳥だよ。ノンキャリであり得ないほどのし上がってきた。ほら、ソ連クーデターのときゴルバチョフの安否をCIAより早く突き止めた」
「あー思い出した、アントニオ猪木と友だちって人だ」
「そこ覚えなきゃいけないとこか?」

「ふうん……」

「ちょっと考えさせて。出国してからになっちゃうけどなるはやでメールするから」
「すまんな」

(ラスプーチンか……)

「大事な話ってなに?」

「これ受けとれ、コマ」

「始末書? 大久保、なにかやらかしたの?」
「どうせだから先に書いといた、」

「今から上司を一発、


ぶん殴るからなッ」


────────────────「おりょっ?」

─────────────────「痛でッ」

────────「あがっ」

「へうっ」

「うげぶっ」

「あ、ごめん、つい反射的にコンボで」

「まあ今日はこのくらいにしといたるわ」
「 ; なにしたかったの?」

「それはさておき、しこたま仕入れてきたぜ、飲めや」
「バカあんたは勤務中でしょ」
「鼻血により早退した」
「なに遡って言い訳にしてんの」
「いいから飲もうぜ」
「悪いけどお酒飲むような気分じゃないから」

「なに言ってんだ、むしょうに飲みたいぜ」
「それあんたでしょ! 一人でそのへんで飲んでりゃいいじゃん」
「飲みたくなーる飲みたくなーる」
「あーうるさいっ!」


「ぜったい飲まないからぜったい!」

「ちっくしょーっ」

ごきゅっごきゅっ


「みんなわたしが悪いんだーっ」

「な、なあ、コマ、ちょっと飲みすぎじゃね?」
「うっさいッ、あんたが飲めって言ったんじゃん!」

「だいたいねえお酒だけ買ってくるかふつー?
柿ピーひとつないし! ひたすら酒飲むしかないし!」
「とんだ怒り上戸だぜ」

「うう、もうダメだ、“班長”に顔向けできない」

「わたし、あの人を裏切っちゃった」

「コマ、おまえ了見違いだぞそれは。同僚もだます作業なんざウチじゃ珍しかねえだろ。おまえが姐さんを庇って偽証したら、それこそ姐さんに顔向けできなかったぞ。私情を挟むのは禁物、公安デカ失格だ」

「そんなの分かってるよ、だから監察立ち会いで証言もした、“班長”にも知らせなかった。“班長”もそうすべきだったと言ってくれた。わたしもそのとおりだと思った」
「じゃ、いいじゃねえか」
「よくない!そう思った自分にショック受けた!
ってショック受けたのも班長に悟られちゃった!」


「そんなわたしをわたしが許せないんだー!」
「めんどくせーやつだなあ、おめーはよ、泣き虫だし」
「泣き虫言うなっ」

「わたしだってねえっ」

「あ、おい、大丈夫か?」

「おええっ、げほっげほっ」
「ったく言わんこっちゃない。別人のように壊れすぎだろおまえ」

「うー、なにが悲しくて便所なんかで大久保なんかに介抱されて吐いてんの?」
「大久保なんかで悪かったな、てかおれ便所と並列かよ」

「うう、わたし、レズなんだろうか。“班長”のこと思うたびに胸がきゅって痛くなる」
「わかるぜ。おれも姐さん押し倒さないよう踏みとどまるのに理性必死だぜ」
「大久保の下劣な欲望と一緒にしないで!」
「ひっでえ言いぐさだな」

「ふう、吐いたらすっとした」
「っておい、また飲むのかよ!」

「ま、思えば姐さんとコマって、どっちが警部補か新米の巡査か、わからんかったもんなー、つか逆に見えるっつうか。すでにあのころから」
「“あのころから”って言うな。そしていちいちわたしをしげしげ見るんじゃない」

「ま、でもたしかにそうだよ。“班長”のすっぴん、大久保見たことないよね?」

「え、じつはしわしわとか?」
「逆だよ、あの人、よく若い子に擬装するでしょ。あれって、マジでメガネ外してるだけだから。そのときが素顔に近い。ふだんわざと年上に見せるメイクしてるの」

「じっさい素を見たら、もうね、ほんと可愛さに驚くよ。最初のころからずっとぜんぜん年取ってない。ちょっと前、温泉行ったときあったじゃん、そのときも前とほぼ変わってなくてさ。最近さすがに本人も普通じゃないって思い始めたようだけど」

「あの人あんなカップヌードルばっかり食べて、歩く生活習慣病みたいな生活してて、努力してる様子もないのに肌もピチピチで卑怯じゃんって思うくらい」
「あーあ、おれはコマになりたいよ、姐さんと一緒に温泉入れるわけだろ」
「このバカ変態」

「前から思ってたけどそれほどとは。姐さんってもはや美熟女とか美魔女の域すら超えてるよな、おかしいだろ、ほんとに年食わないなんて」
「あの人は、違うんだよ、わたしたちとはいろいろと」
「姐さんだとそのひと言でなんとなく納得しちまえるな」

「ね、大久保。わたしをぶん殴ったこと覚えてる?」
「おいおい殴れてねえって。瞬殺で返り討ちだったじゃねえか」
「さっきじゃなくてずっと前。わたしが“永田町”班に入ってすぐのころだよ」

「わたし、あのとき“魔女”班に入れられたのがほんといやでさ。ほら噂あったでしょ。『恩ある先輩を死なせて出世した』って話、あれ鵜呑みにしててさ。
で、あんたにそれ言ったら、
、いきなりグーパン」


姐さんはいろいろ無茶くちゃだし常識ヘンだし、悪く思うのもしかたねえ。
だがな、

あのことを突っつくのだけはおれが絶対死んでも許さん。

あれで出世? とんでもねえ。

姐さんはあの件で危うくクビになるとこだったんだぞ。
あの朝、おれは“先生”を確保しに行った捕捉班の1人だった。現場指揮は姐さんだ。

“よく見抜いたな白鳥。
突き止めるなら君だろうと思っていたが、本当にしてやられるとは”

“あのふて腐れていた落第生くんが、立派な公安デカになったな”



“しまった!”

“おい、救急車呼べ!”

姐さんがわざと配置を緩くしておいたって噂は、ウソでたらめだ。
だってあれは、おれのドジだったんだ。

“班長、面目ねえ、おれのミスです”

そんとき見た姐さんの顔、

おれはその瞬間、決めたんだ。

この人に死ぬまでくっついてく、ってな。
守ってやるなんておこがましいことはとても言えねえが、
下僕でもパシリでも奴隷でも家畜でもいいからよ。
査問のときもその後も、姐さんはおれのドジを一切告げなかった。
そのせいで懲戒食らいそうになっても、さんざクソな陰口を叩かれても。

だからあんなクソみてえなうわさ信じてあの人を憎まねえでくれ。たのむ。

「……そんなこと言ったっけか」
「言いたかったのは、あのとき殴ってくれてありがとう、ってこと」

「でもさ、ふつうグーで女を殴るかな」
「すんまそん」

「わたし、考えたら、今回、あのときの班長と似た立場にいたんだね。もちろん今回の疑いは本物じゃなかったし、事象の重さも比べものにならないけど、
ほんの少しだけあの人の気持ちが分かった」

「班長はあのとき、どんなにつらかったんだろう、って」
「あの人はそういうの見せないからなあ」

「なあコマよう、これでおまえ辞めちまったら、姐さんほんと悲しむぜ」

「………うん」

「あ、警部どの、デカ長どの。お疲れ様です、酒盛りですか?
はれ? デカ長なんで鼻血出してるんですか」
「渋谷、おまえも外2のはしくれなら知ってるだろ、ここんとこの一件を」
「え? うちの課でなにかあったんですか?」
「……こういうやつがじつはいちばん公安デカに向いてるかもな」





「ほれ」

「予報じゃ今夜は意外と冷えるらしい、半袖じゃ風邪ひくぞ」
「あ、ども」

「芋ジャーもいよいよ市民権を得たようですね」
「そもそもジャージしかないだろうが」

「駒込にはおれからも話そう。おれは公1で駒込は公総だから手控えしてたが」
「わたし、ある意味ほっとしてるんですよ」

「もし、コマちゃんが逆の態度をとって、わたしを庇って聴取拒否したり偽証したら、それこそどうしようもなく彼女は公安デカとして失格と判断されるとこでした。
そうなってしまうのがわたしは一番怖かった」

「でもコマちゃんはすごく悩んだだろうけど、正しい選択をしてくれました」
「あとは駒込が自分の中で折り合いを付けるかどうかだ」
「彼女なら乗り越えてくれると信じてます」

「………あのう、警視」
「ん?」

「滅多に頼み事をしない謙虚の塊のようなわたしが珍しくお願いしてよいですか」
「警視正どのの場合、毎度頼まないで人にやらせるがな、なんだ」

「明日、ご一緒してほしいところがあるんです」



「ってどんな重要なことかと思ったら、はとバスかよ!」
「いやー、気づけばわたし、ずうっと東京に住んでて、
一度も都内観光したことなかったんですよね」

「わたしたち一緒に暮らすようになってからデートひとつしてないじゃないですか」

「一緒に暮らすとかデートとか実態とちがうことよく臆面もなく言うな」








「じゃ、お父さんにもきびだんご一本おまけね」
「おーうれしいっ、ありがとうございますっ」

「お父さんだって、おっほほほ」

「あのなあ」

「まずおまえ誰だよ」
「メガネ外した白鳥です」

「せっかくだから擬装と若作りの限界に挑んでみたりしました」

「化けすぎだろ、どんな魔法のメイクなんだ」

「(´-`).。oO(むしろメイクを減らしたからこの顔なんだけどね)」
「ま、いつものメガネだってそう悪くないがな」

「って人がせっかく気合い入れて臨んでるのに、警視はなんなんですかそれ。休みに着るものを思いつかなくてしかたないからゴルフ用のポロシャツとスラックス着とけって投げやりなおっさんそのものじゃないですか。だからお父さんとか言われるんですよ」

「ほんとにおっさんだからしゃーないだろ!」

「あ、ところで、いまメガネかけてた方が好きだって言いましたよね」
「そう悪くないがな、と言っただけだぞ」

「悪くない、はまあまあ好きという意味ですよね、ね、メガネとジャージも」

「なんで毎回この流れなんだ! しかもしれっとジャージ混ぜるな!」

「……あれ? おっかしいなあ」
「なんだどうした」

「ビリケンさんがいないんですけど」
「は? ビリケンが東京タワーにあるわけないだろ、あれは通天閣だぞ」

「ええーーっ! 生まれて初めて知った衝撃の真実」
「情報分析官がそれでいいのか? まあビリケンの場所は安全保障に関係ないか」







「狙うは、アンパンマン一択っ」


「よおおおしゃーーー、来た来た来たアアアア!」


「おりゃあアアアアッ行けエエエエ!」

「は、はれ?」

「どうするんだよ、カレーパンマンばっかこんな取りやがって」
「いやー、ど、どうしましょうね?」



「ほらほら警視、もうちょっと嬉しそうな顔しないと」

「このざまをどう嬉しがれと言うんだ」
「もー固いなー、ド昭和の男は」
「言っとくが、そっちもド昭和の女だからな」

「あはは、警視色黒すぎですって! 露出わたし白くとんでる」
「そっちが白いからだろ!」

「はい警視の分も、どぞ」
「こんなもん大のおとながもらってどうするんだよ」
「なに言ってるんですか、ケータイとかに貼るんですよ」
「貼るかッこんな小っ恥ずかしいもん。あッ、おい、白鳥もだぞ、」

「白鳥も絶対貼るなよだから貼るなっつうのに!」



「今日はお付き合いいただきありがとうございました」
「まあ意外と、なんだ、退屈しなかったな」

「少しはいい思い出になりました?」
本郷はそのなにげないひと言に引っかって。

「おれも行こうか?」
「へ? アメリカにですか? どうしたんです急に? 明日仕事では?」
「あ、いや、まあそりゃそうだ、無理だな」


「……でも、ありがとうございます」

「こんどゆっくり案内しますよ、アメリカ合衆国」

2001年4月下旬から6月末にかけて──

「飛行機計画」“聖戦士”の第2陣が、続々とアメリカ入りする。
その数、13名。
April 23, 2001
Monday
4月23日 月曜日


Orlando International Airport, F.L.,
フロリダ州
オーランド国際空港

Satam al-Suqami Waleed al-Shehri
サタム・アルスカミ、ワリド・アルシェフリ
May 2
Wednesday
5月2日 水曜日


Washington Dulles International Airport, V.A.,
バージニア州
ワシントン・ダレス国際空港

Majed Moqed Ahmed al-Ghamdi
マジド・モケド、アフメド・アルガムディ
先入りして飛行機操縦を習得中の主要メン6人と違って、後入りの13人のほとんどが初アメリカ、英語もまったくしゃべれない。
ずばり「筋肉マッスル」と身もフタもなく呼ばれる13人は、身もフタもない呼ばれようのとおり、ハイジャックの腕力担当だった。頭数いればいいってことである。
May 28
Monday
5月28日 月曜日


Miami International Airport, F.L.,
フロリダ州
マイアミ国際空港




Hamza al-Ghamdi Mohand al-Shehri Ahmed al-Nami
ハムザ・アルガムディ、モハメド・アルシェフリ、アフメド・アルナミ
June 8
Friday
つづいて8日 金曜日

同じくマイアミ国際空港



Wail al-Shehri Ahmed al-Haznawi
ワイル・アルシェフリ、アーメド・アルハズナウィ
彼らは偽名じゃなく本名を使って、堂々とビザ@観光/ビジネスを申請して発行され、正面玄関から堂々と本物のパスポートでアメリカに入った。
このとき“筋肉メン”のビザは多かれ少なかれ抜けや不備があって、なかには一発退場つまり強制送還になっても不思議じゃない不良なメンもいたけども、
なによりサウジアラビア国籍の神通力は強く、
全員なんだかんだいって入管をクリア、アメリカ入国に成功した。
June 27
Wednesday
6月27日 水曜日


Orlando International Airport, F.L.,
フロリダ州
オーランド国際空港ふたたび

Fayez Banihammad Saeed al-Ghamdi
フェイズ・バニアハマド、サイード・アルガムディ
13人の“筋肉”は到着すると早々に、
先入りしてるモハメド・アタら主要メン6人と合流していく。

June 29
Friday
6月29日 金曜日


John F. Kennedy International Airport, N.Y.,
ニューヨーク州
ジョン・F・ケネディ国際空港
「マッスル」最後の2人がアメリカにやってきた。

「訪米の目的は?」
「さいと、しぃんぐ」

Salem al-Hazmi
サレム・アルハズミ
主要メンナワフ・アルハズミの弟くん@20歳である。
「飛行機計画」聖戦士中で最年少。
そして、もう1人、

「アブダライズ、アル…オーメリー?」

「オマリ、アブドルアジズ・アルオマリ、イエース」

Abdulaziz al-Omari
アブドルアジズ・アルオマリ@22歳@妻子持ち
この男、911陰謀論のひとつ「ハイジャッカー生存説@だからアメリカ政府の自作自(以下略」でもよく登場するメンである。

ま、その真相はやがてのち明らかにされるであろう白戸三平風。

(疲れた……カップヌードル食べたいな、)

(ちゃんと醤油味のやつ)









「なんだろ、いま寒気が」

「風邪ひきかけ? やっべ、早くカップヌードル食べなきゃ」
──9.11まで、あと74日。









- 関連記事
-
- 【事件激情】ウルトラNW : 第13便-続@再掲【9.11】
- 【事件激情】ウルトラNW: 第13便@再掲【9.11】
- 【事件激情】ウルトラNW 第12便-続@再掲【パリ同時多発テロ】
- 【事件激情】ウルトラNW : 第12便@再掲【パリ同時多発テロ】
- 【事件激情】ウルトラNW : 第11便-続@再掲【9.11】
スポンサーサイト
| 再掲激情@911/下山事件 | 18:41 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑