【事件激情】ウルトラNW : 第9便【911アメリカ同時多発テロ】
*第8便









【事件激情】ウルトラNW : 第9便【911アメリカ同時多発テロ】
「石油会社のロビー活動の方が、CIAより重要なのです。
ご存知のようにワシントンは階層社会で、CIAはずっと下です。
CIAから順に、国務省、ロビイスト、コンサルタント、
石油会社、ホワイトハウス、議会と格が上がっていきます」
──────────────ロバート・ベア@元CIA局員

登場する事件テロ紛争戦争、その捜査は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子とニイタカ・ヤヨイ-カトリーヌらこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりは、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。


late-October, 2000
2000年10月下旬
الجمهورية اليمنية صنعاء
Sana’a, Republic of Yemen
イエメン首都サヌア
ジャンビア。それはイエメン男子の証しにして誉れ。

老いも若きも幼きもイエメン男子は皆、凝った飾り鞘をこれまた凝った飾りベルトにぶっ差して男伊達を競いながら町をたむろ闊歩する。


いちおう刃も抜けるし切れるがこれ武器に決闘、はしない。
あくまで証しにして誉れであり、

おもに輪になってジャンビアダンス踊る用である。
イエメン男子、リス的なぷっくらほっぺ率高し。病気とかこぶではなく、

ほっぺの中身はイエメン男子のたしなみ、アラビアチャノキの葉っぱ「カート」。
多幸感と高揚感のある成分要するに麻薬だがこの国ではリーガル品である。

昼下がりからろくに働かずカートくちゃくちゃ噛みながらそこらでダベったり、

気が向いたら輪になってジャンビアダンス、
それがイエメン流の男気。
っていうとお気楽な国っぽいが、
決してそんなことはなく。
Embassy of United States in Yemen
駐イエメン米国大使館
むー
John P. O’Neill
ジョン・オニール
@FBIニューヨーク支局国家安全保障担当主任捜査官
@駆逐艦「コール」爆破テロ捜査班チーフ
「くそっ、分からず屋のクソババアめ!」









【事件激情】ウルトラNW : 第9便【911アメリカ同時多発テロ】
「石油会社のロビー活動の方が、CIAより重要なのです。
ご存知のようにワシントンは階層社会で、CIAはずっと下です。
CIAから順に、国務省、ロビイスト、コンサルタント、
石油会社、ホワイトハウス、議会と格が上がっていきます」
──────────────ロバート・ベア@元CIA局員

登場する事件テロ紛争戦争、その捜査は公表された情報に基づく。
黒字の人物・赤字の人物・紫字の人物および各国の機関団体部局は実在する。
白鳥百合子とニイタカ・ヤヨイ-カトリーヌらこの文字色は架空の人物であり、
実在する人物との関わりは、根拠は創造にしてソースは妄想だが、ある意図がある。




late-October, 2000
2000年10月下旬

الجمهورية اليمنية صنعاء
Sana’a, Republic of Yemen
イエメン首都サヌア

ジャンビア。それはイエメン男子の証しにして誉れ。


老いも若きも幼きもイエメン男子は皆、凝った飾り鞘をこれまた凝った飾りベルトにぶっ差して男伊達を競いながら町を



いちおう刃も抜けるし切れるがこれ武器に決闘、はしない。
あくまで証しにして誉れであり、


おもに輪になってジャンビアダンス踊る用である。

イエメン男子、リス的なぷっくらほっぺ率高し。病気とかこぶではなく、


ほっぺの中身はイエメン男子のたしなみ、アラビアチャノキの葉っぱ「カート」。
多幸感と高揚感のある成分要するに麻薬だがこの国ではリーガル品である。


昼下がりからろくに働かずカートくちゃくちゃ噛みながらそこらでダベったり、


気が向いたら輪になってジャンビアダンス、
それがイエメン流の男気。
っていうとお気楽な国っぽいが、


決してそんなことはなく。

Embassy of United States in Yemen
駐イエメン米国大使館

John P. O’Neill
ジョン・オニール
@FBIニューヨーク支局国家安全保障担当主任捜査官
@駆逐艦「コール」爆破テロ捜査班チーフ

「くそっ、分からず屋のクソババアめ!」

ひさびさ登場のオニール、イエメンまで来てなに荒ぶってるかというと、↓
アメリカでは商売っ気が安全保障より優先することがよくある。
アルカイダ潰しがちっとも進まないのも、アルカイダがイスラム世界と深いとこでぎっちぎちに入り組んで結びついてるからで。そしてそのイスラム世界の権力つまりカネが米系資本とこれまたぎっちぎちに結びついてるからで。
たとえば、ほぼ同時進行的な同じ時期↓こんなケースがあった。

FBIシカゴ支局の金融犯罪担当捜査官と連邦地方検事が、
シカゴ在住のサウジ人実業家ヤシン・アルカディの捜査にとりくんだ。
テロ資金のマネーロンダリングと米国大使館爆破テロの資金関与の疑いで。
ところが、
本部と上司から露骨な妨害と脅しを受けて、捜査は強制終了。
FBI捜査官ロバート・ライトJr.さんとジョン・ビンセントさん


「911はFBIの国際テロ部門が無能だったせいでおきた」
「文句言ったら降格された」
「批判本出そうとしたら逮捕すると脅された」
連邦検事だったマーク・フレスナーさん


「司法省やFBI内部に“大きな力”が働いて、立件できなかった」
サウジアラビアの資本家に、アメリカの上の方が気を遣ったわけである。
アメリカとサウジは深く深くカネとコネでがっちり結びついていた。

911後、ヤシン・アルカディはテロのタニマチとしてアメリカと国連のブラックリスト入り>資産凍結くらったんで、彼らの捜査着手は間違ってなかったわけだが。
ちなみにアルカディ出資のIT企業は米連邦政府のシステム業務を多く請け負っていて、FAA@連邦航空局の緊急対応計画の弱点を検証するシステム管理業務も受注。


まさに911当日のFAA管制官の対応にも影響したんである。
そしてもうひとつ、↓こんなことも、


DIA@国防情報局の美人すぎる軍事分析官ジュリー・シルズさん
1998年、自らアフガニスタンに乗り込み、


例のブルカをまとい、現地の女たちにまぎれて、
まさに決死の隠密旅行に挑戦。

ひそかに北部同盟マスード将軍や部族勢力と接触、貴重な情報を得る。

ユノカル@石油準メジャーが、タリバーンのカブール攻略に資金援助していたこと、
その目的は、タリバーンに恩売ることで、


ユノカルがガスパイプライン敷設利権をゲットすること。
カスピ海沿いのトルクメニスタン>アフガン>パキスタンを経てインド洋までつなげる中央アジア横断計画で、それにアメリカ政府も乗っかって便宜はかってたこと。
という空気を読んで国務省とCIAも、タリバーンでもなんでもいいから手っ取り早いアフガン統一推せってことで、北部同盟支援をあえてしなかったこと。
そのへん裏付ける証拠もマスード将軍から示されたこと。
さらにさらに反タリバーン部族に囚われてるアルカイダ捕虜にも面会、
オサマ・ビンラディンがサウジの富裕層リッチサウジと狩りに行くダチ関係なこと、
アフガン国営アリアナ航空が、タリバーンの武器や麻薬の密輸に利用されてること、

などなどの宝の山をゲットしたジュリー・シルズが意気揚々と帰国すると、
誉められると思いきや、
いきなり覚えのないスパイ容疑をかけられ、情報アクセス権も取り上げられ、

逆に絶体絶命のピンチ状態にされてる自分に呆然。
有能かつ勇気あるゆえ彼女は踏んじゃいけない地雷を踏んじまったのである。
徹底的な干され枠に追いやられて、>けっきょく無念の辞職。

シルズさん「調査結果報告の当日にわたしは干され枠にされましたから(憤。我が国の情報機関はアフガンの実態を聞きたくなかったんじゃないですかねえ(絶許」
ところで、怒りのアフガンがらみで「シルズがマスード将軍暗殺計画を察知して知らせたのに、ブッシュ政権が無視スルーした」という話がまことしやかに出回ってるが、それ陰謀論者十八番の“事実の部分的改変”によるデマだから。
ジュリー・シルズのアフガン隠密行と干され退職は1998-1999年におきたことで、ブッシュ政権でなく思いっくそクリントン政権の時代。ブッシュとか以前にアメリカの安全保障そのものが根っこから腐り切ってた構造の問題なんで。
そうやって事実にしれっと嘘を混ぜ込むのは陰謀論の常套手段なんでご用心。
というかんじで、
駆逐艦コール爆破テロでもこのやーらしい優先順位問題が、
ご多分に漏れずオニールたち現場の前に立ちふさがる。

どてっ腹に大穴あいた駆逐艦コール、第二次世界大戦以来初の米艦撃沈の屈辱こそまぬがれたものの、もはや航行不能。浮いとくのがやっと。つかほっとけば沈みそう。
しかたなくノルウェーの重量物運搬船でアメリカ本国の工廠まで運ばれることに。

17人死亡、39名重傷。
甲板にいた水兵と、昼飯で艦内食堂に並んでいた水兵が巻き込まれた。


FBIニューヨーク支局長バリー・モーンは、

Winner


「これはオニールじゃないと解決できん」
と、フリー長官に直談判、速攻で捜査権をゲット。
Loser


オニールは150人のチームを引き連れ、イエメンに乗り込む。

──────Loser


「だからいちいちルーザー付けるのやめろ!」

FBIで数少ないアラビア語ができる捜査官アリ・スーハンも通訳兼副官として同行。

例によって中東らしくなんでものらりくらりちーとも捜査協力が進まないんだけども、

オニールは得意の人たらし力(とアリ・スーハンの語学力)を結集して粘り腰で交渉、イエメン当局の将軍たちと“ご同業”ならではの友情までゲット。
腹割って話す仲になり、「ブラザー・ジョン」と呼ばれるくらい打ち解ける。
これでやっと捜査協力も徐々に進み始め
たんだが、
じつは捜査でいちばんの厄介は、
Barbara Bodine,
US Ambassador to Yemen


駐イエメン米大使バーバラ・ボーディン
だった。

「FBIが300人も押しかけてくるなんてこの国を刺激するざます!」

「この国は民主主義国ざます! 配慮するざます!」

「だから捜査官は外を出歩いちゃダメざます!」

「テロリストどもはコールの入港時刻を正確に知ってた。基地関係者のなかに情報を洩らしたやつがいるのは間違いないんです。その協力も要請し──」

「この国の政府関係をテロリスト扱いなんてとんでもないっざますっ」
なんでこんな敵意もろだしダンなのかっつうと、
そもそもボーディン大使はイエメン政府と交渉して
アデン港を米艦の燃料補給に提供するよう仲介した立役者なんで、


波風立てまくるような捜査で、デンジャラスなアデン港に米海軍を誘致した自分の責任が浮き彫りにされそうな展開はバーバラ的に困るざますなのだった。
さらに、国務省的な立場も、
Madeleine Albright : US Secretary of State
マデレーン・オルブライト国務長官


「投資家の安全を守り、引き続きこの国に投資が継続されること最優先に」
なので、大使閣下はそれはそれは熱心に捜査を邪魔するのだった。

だけでなく本国の国務省およびFBI本部にしきりとオニールは

「敵の味方か味方の敵かあのクソババアめっ!」

「チーフ、大使と正面切って喧嘩したら滞在許可取り消されますからほどほどに」
「ふん、それくらい分かってら。にしてもだ、」

「国務省はお花畑の集団か!」


「こんなリスクだらけの国を軍艦の寄港地にするとはキチガイ沙汰だぞ!」

イエメンは旧オスマントコ領の北部と旧イギリス領の南部と長らく内戦続きで10年前やっとこさ南北統一したばかり。
とうぜん国内はいまだ不安定でイスラム過激派ジハード団の残党やアラブアフガンズ@アフガン義勇兵崩れもうようよ、はっきりいって治安条件は最悪かつ民意は反米。国会議員が議会で「アメリカへのジハード」を堂々と煽ってたりする。
(ちなみに2015年現在、ふたたび内戦状態のイエメンである)

タタタッタタタンッ

「くそっ、いつまで経っても慣れねえな、あの紛らわしい銃声」
「ここの連中、気晴らしに始終ライフルぶっぱなしてますからね」


「人口1800万人の国内に、マシンガンが5000万丁」


「その人口の半分が、アメリカ人死ねと思ってやがる!」

「おっと」

「ソーリー、ミスター、ソーリー」

「あ、いやこちらこそ、美しいお嬢さん」

「あきれた。相手がイスラム女子でも平気でナンパモードになるんだね、」
「は?」

「男に声かけられただけで女が顔を灼かれる国もあるんだよ、やる太郎」
「なっ」

「げっ、シラトリかよ!」

「てか、さっきまでどう見てもアラブ人だったろ!」
「うん、メガネ外してたから」

「やっぱりイスラム的な格好って窮屈で好きになれないな。
マイストロングポイントの美脚も美くびれも見せびらかせないしさ」
「こら、めくって見せんでいい」

「あの、ミスシラトリ、お噂はかねがね」
「初めまして、あなたがアリ・スーさんね」
「いえその、スーハンです」

「へ? はん部分も名前? てっきり舞妓はーんとかと同じはんと思ってた」
「なんでそこだけ日本語で理解してるんだよ」

「とにかくよろしくねスーハンはん」
「なぜあくまではんを使う」

「にしてもシラトリ、あいかわらず神出鬼没だな、いつからイエメンにいる」
「テロの半日後、かな。あ、ちゃんと大使館の清掃部の派遣請負業者に短期パートタイマーとして正当に雇用されてますからね」
「相変わらずナゾの潜り込みかたしやがって」

「掃除のおばちゃんって不思議な存在でね。
なぜかそこに人がいるって思われないんだよ」

「しかもアラブ人とみられるとなおさら英語知らないと勝手に思ってくれるみたいで。だからついつい大事なこともぽろっと喋っちゃうんだよね」

「分からず屋のクソババアとか国務省のお花畑とか」

「う……このやろ」


「……ほかには何を聞いた」

「ファハド・アルクソ。ここの治安当局が一昨日、逮捕したみたい。
得意のコミュ力でカミシュ将軍に食い下がってみたら?

クソババア閣下は、あなたの滞在許可を更新しないだろうし時間ないよ」
「ちっ、気に入らねえが、もし結果がそのとおりなら恩に着てやるぜ」

で、オニールはまたまた粘り強くイエメン当局に食い下がり、
ようやくアルクソの供述書を手に入れ
る寸前、

白鳥の予告どおり、ボーディン大使はオニールの滞在延長を認めず、
あえなくオニール帰国するハメに。


「あーちくしょうめ、不完全燃焼だぜ」

افغانستان
Afghanistan
アフガニスタン


一方のイスラム世界では、アメリカの軍艦殉教攻撃=アルカイダなんて
とうぜんながら「みんな知ってた」んである。

「ほーっほっほっほっ」
しばらく鳴かず飛ばずでちょっと世間から忘れられかけてたアルカイダの名はふたたびトレンドランキング上位に返り咲き。軍事訓練キャンプはジハード戦士志望の申込み急増殺到で満員御礼、世界から寄付金もわんさと集まり、金欠問題は大幅に改善。

タリバーンにもたっぷり分け前をはずんだんで、
ビンラディンを匿ってることに文句言う声も静かになった。
が、一方で、

「なぜアメリカはいっこうに攻めてこぬのだ」
タリバーンには教えてないビンラディンの秘密のむふふ聖戦予定表>
軍艦をやられて面子潰された米軍が、アフガニスタンに大挙攻めてきて、
そう、かつて大英帝国やソ連がうっかり手を出してはまった泥沼ゲリラ戦に持ち込み、

この地に全世界のイスラム聖戦士が結集、キリスト十字軍との決戦の場にす
るはずが、なんの反応もないではないきゃ。ぬーむ。
今回アメリカがミサイル攻撃すらやらなかったのは、
じつはソックスの飼い主政権の目先の都合上なんだが。

任期も終わりに近づき、いまいちだった外交で手柄を立てるため、パレスチナとイスラエルの和平交渉仲介に四苦八苦していて、そんな微妙なタイミングで不必要にイスラム世界を刺激するアルカイダ爆撃をしたくなかったから、なんだけども。

が、そんな猫の飼い主の事情なんてオサマ・ビンラディンは知らないんで。

「もっとアメリカ人が逆上するほどの大惨事を起こさなければならぬ」
で、気が急いたのか、

「飛行機計画は前倒しである。今年のうちに決行せよ」
「操縦が難しい? ならば墜落させるだけでもよい」
これには準備中の渡米組隊長モハメド・アタが猛反発。


「飛行機の墜落なんてしょぼい戦果のために殉教の覚悟を決めたんじゃない!」
「いくらアミールの指示でもそんなの従えないぞ!」
「聖戦は洞窟で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」

しかたないから製作総指揮ハリドシェイク・モハメドが、
ビンラディンと現地組の間に入って双方なだめてひいこらするわけだが。


「すまんなスーハン、来週の大統領選はイエメンで不在者投票になりそうだな」

「で、現地の状況はどうだ?」

“どうやらアルクソは当日、テロの一部始終を撮影するビデオ係だったようですね”

なのに、テロ決行の朝、間抜けにも寝坊。とうぜん遅刻、撮影間に合わず。

そしてボケボケしてるうちにファハド・アルクソあえなく逮捕。

はっきりいってバカにもほどがあるが、アルカイダは半分アマチュア集団なんで、
こういうアホすぎるドジも多々おきるんである。

「取り調べで拷問とかされてないだろうな。アメリカの法廷で証言不採用になるぞ」
“カミシュ将軍はしていないと請け合ってますが、しょうじき分かりません”
「くそっ」
“ブラザー・ジョン”オニールが追い返されてからというもの、明らかにイエメン側の協力が鈍っていた。おまけにアルクソはイエメン国籍なんで、はたしてイエメン当局がアメリカに身柄を引き渡してくれるかどうかもちっと微妙なところで。

“それがですね、チーフ。アルクソの供述でとくに気になることが。今年の1月に──”

New York
ニューヨーク

「今年の1月に、ファハド・アルクソはバンコクで、“義足のハラド”と会った」


「“義足のハラド”は『ビンラディンの伝令』と呼ばれる古参幹部の一人だ。
アフリカの大使館爆破テロにも関わってた疑いが強い」*【ウルトラ NW之章 : 次発便】

「アルクソによると“義足のハラド”の命令でバンコクに出向いてハラドと落ち合い、テロ資金の一部を渡したそうだ。イエメン側には5000ドルと言ってたが、


スーハンが面会すると、じつは渡したカネは3万6千ドルだったとゲロした」

「ふえー3万6000ドルとは、けっこうな大金ですね」
「“義足のハラド”は新しい義足を買う代金に使うと説明したらしいがな」

「そりゃとうぜん嘘でしょうな」「もちろん嘘でしょうな」

「しかし変な話ですね、大がかりなテロやろうって準備してる前線チームからわざわざ貴重な軍資金ごっそり引っこ抜くなんて」

「他によっぽど重要な使い道があった、とか?」
「ご明察だ、アンティツェフの左の方」
「マイクです、チーフ」

「裏取りのため、当時の通話記録をチェックすると、今年1月上旬、タイのバンコク市内でアルクソの泊まっていたワシントンホテルと、マレーシアのクアラルンプール郊外の公衆電話の間で、複数回の通話があったとわかった」

「チーフ、まさかその公衆電話のある場所って……」
「そういうことだ、アンティツェフの右の方」
「ジョンです、チーフ」

「アルカイダの秘密会議があったゴルフリゾートのコンドミニアムから、」


「歩いてわずか3分の場所に、その公衆電話がある」*【ウルトラ NW之章 : 次発便】

「…………」

「つまり、“義足のハラド”も、例のハリド・アルミダルと一緒に、
クアラルンプールの秘密会議に同席していた?」
「そう、“義足のハラド”がアルクソから受けとった3万6千ドルは、我々の追ってるハリド・アルミダルの手に渡った可能性が高い。ビンラディンが米艦攻撃よりも重要だと位置づけて資金を回した活動のためだ。


そのカネを手にアルミダルとアルハズミはアメリカに渡った」
「むー最悪の展開になってきてますね」
「ちなみにCIAに“義足のハラド”とアルクソについて問い合わせたが、
当然ながらゼロ回答だ」

「くそっ、こそこそ隠し立てしやがって」
「こっちが隠しごとを知ってるぞって突っ込めないのがよけい腹立ちますね」

「…………」

「正直いって隠密捜査は大苦戦中ですよ。ロサンゼルス近郊を中心にアルミダルとアルハズミにふれない線でやってますが、いっこうに引っかかりがないんです」

「せめてアルミダルの名で旅券のデータベースを洗えるといいんですがね」
「ダメだ。そんなことしたらすぐITOS@国際テロ対策セクションのアホどもに嗅ぎつけられて捜査強制終了に追い込まれるぞ」
「CIAどころか同じFBIにまで背中を撃たれる心配しないといけないとはねえ」
「いまシラトリが追跡に使えそうなネタを漁ってる。あいつ頼みってのがむかつくが、まあなんだかんだいって結果は出す女だからな。もう少し我慢しろ」

「…………」

「ところで、なんでゴードンはさっきからひと言も喋らないんだ?」

「ミスシラトリが来てないんで不機嫌なんすよ」


「……ふん」
Σ(゚д゚|||)(ひ、否定しねえ!)
(;゜ё゜)(しかも、ど、どぎまぎしてる!)
念のためこのオニール一派による極秘捜査は現実には行われていない。
どうしてなかった捜査を“再現”してるかは一応意図がある。
「それで、そのミスシラトリはどうしたんですか?」

「日本で野暮用があるんだとよ。ときどき忘れそうになるが
あいつの本業は日本のおまわりだからな」
11月8日 水曜日
大阪府高槻市

「奥平やな、大阪府警や。同行してもらうで」

重信房子こと本名奥平房子@日本赤軍最高指導者、旅券法違反容疑で、
警視庁公安部と大阪府警公安3課に逮捕される。

重信房子は3年前から日本に密入国。大阪市西成区で中古マンション暮らし。
国内のシンパたちが“女帝”の潜伏をうやうやしくサポートしていた。
シンパが拠点にしてたのは、高槻市内の精神病院「光愛病院」。ここの創設者は元赤軍派で。重信と一緒に逮捕されたお付きの者吉田守もこの病院の事務職員だった。
重信は新たに中国共産党の支援をとりつけて活動しようと動いていたらしく。
別人名義の偽パスポート2通をつかって、中国、マカオ、ベトナムなど計16回行き来。さらに北朝鮮の元赤軍派よど号グループとも接触していた。
偽パスポートの名義は、1通が吉田の妻の名前を、もう1通は光愛病院の精神病棟にいる入院患者の名前を借用していた。

さすがに日本赤軍の女帝だっただけあって、
ただ隠れてるだけでなく、なかなか巧妙な組織再編を計画。
隠れ蓑として市民団体「希望の21世紀」をこしらえ、社民党に接近させたんである。
社会党改め社民党は見る影もなく衰える一方で、党首土井たか子は、党勢回復のため市民参加に重きを置き、市民団体とも積極的に交流する方針をとっていた。
その流れを利用して「希望の21世紀」は、もともと極左志向と親和性のある社民党に食い込む。ゆくゆくは社民党を牛耳って、国政に影響力を持つ計画である。
しかも、その浸透作戦、けっこう着々と進んでたんである。

重信逮捕につづいて、警視庁は保坂展人@社民党衆院議員の元秘書@希望の21世紀メンや地方自治体議員関係など全国20カ所をつぎつぎ家宅捜索。
のち横浜の中古車輸入業中川孝志、国内サポとして重信を匿った犯人隠匿容疑で逮捕。その内縁の妻井上礼子@NGO「アジア太平洋資料センター」代表は、社民党公認でつぎの参院選に立候補する予定になっていた。
重信の“付き人”吉田守も大阪10区の衆院議員辻元清美の後援会幹部でもあった。

「タバコのキセル吸いの癖でやっと重信本人と見込めたわけだが、」

「これだけ顔が変わっていると、たしかに判断つかんよなあ」

「やっぱり部長も彼女の隠れファンだったクチですか?」
「バカを言うな」

「お、アメリカの大統領、決まったようだな」

「あららら」

“ミスタープレジデント──”

“ジョージ・ウォーカー・ブッシュ!”

“まれに見る接戦となった今回の大統領選挙は、
一般投票で現職副大統領の民主党アル・ゴア候補が総得票数で上回りながら、

選挙人獲得数で共和党のジョージ・ブッシュ候補に
勝利の女神が微笑むという異例の展開となりました”
“アル・ゴア候補は、開票ミスがあったとして、
僅差だったフロリダ州などで再集計を求めています”

11月17日 金曜日
もうひとつのちょっと見は無関係にみえる出来事。

ペルー大統領アルベルト・フジモリ、
ブルネイで開かれるAPEC首脳会議出席のついでに来日、
と思いきや大統領辞任のファクスをペルー本国へぴらっと送って、
そのまま日本で暮らすと宣言、事実上の亡命。

そう、覚えてますか在ペルー日本大使公邸人質事件のフジモリである。
*【ウルトラ : 10機目】*【ウルトラ : 11機目】

じつはダーティワーク担当の側近ウラジミロ・モンテシノスが議員に賄賂の札束を渡してる選挙汚職の隠し撮り映像を大々的に公表されて、政治スキャンダルに進展。

上司のフジモリへの風当たりも強くなるなか、まさかの日本逃亡だった。
日本政府はフジモリが日本国籍も持つと判断して滞在を受け入れる。
この無関係そうなニュースの余波が、


もうすぐ白鳥を直撃するんだけども。
それをまだ彼女は知らない。

重信房子の逮捕で、ひとつの時代がダメ押し的に終わった。
だが、極左ゲリラと入れ替わる形で、
新たな皮をまとった悪意の塊がうごめき始めている。

12月12日 火曜日 東京都 九段会館


このイベントを仕掛けたのは、日本および各国の“人権派”たち。
尹貞玉@韓国挺身隊問題対策協議会、松井やより@戦争と女性への暴力 日本ネットワーク、ラディカ・クマラスワミ、アレクシス・ダデン、池田恵理子、本田雅和、
そしてNHK、そしてもちろん“従軍慰安婦”の火付け役朝日新聞──
いまからみれば、まーいかにも香ばしい名前がずらりと。


いい大人が集まってぼくらの裁判ごっこみたいだけども、


これが、のちグローバル規模でくり広げられる、


延々と続く情報戦争の開戦の喇叭だった。

28 December, 2000 Thursday
12月28日 木曜日
Florida, United States
アメリカ フロリダ州

モハメド・アタとマルワン・アルシェヒ、
ホフマン航空学校を修了、FAA商業パイロット免許を取得。

つづいて大型ジェット機シミュレーター訓練用ビデオセットを購入する。

12月30日 土曜日

東京都世田谷区

カタンッ
12月31日 日曜日

"世田谷区上祖師谷3丁目23の26、宮沢方で事件発生──"
"上祖師谷付近を巡回中の第3機捜は、現場に急行してください──"


「すみません、警視正。所轄で今朝おきた事件ですが、」

「もしかすると我々の事象になるかもしれないので、わたしも捜査本部に加わります」
“あーコマちゃん、成城署の警備課長心得だもんね”
「はい、申し訳ありませんが、今夜の年越しには伺えそうもありません」

「そっか、うん、こっちは気にしないで、」

「コマちゃん気をつけてね」
そして、2001年が幕を開ける。

Princeton, New Jersey
ニャージャージー州プリンストン

「プロフェッサーケナン、お初にお目にかかります」

「FBIのジョン・オニールです」

「…………」
「こそこそ嗅ぎ回るより、いっそ堂々と正面玄関から伺おうと思いましてね」

「聞かせてもらえませんか。プロフェッサーとユリコシラトリ、
ヤヨイ-カトリーヌ・ニイタカとの関係について。
そしてシラトリがいまアメリカで何をやろうとしているのかを」

【第10便 愚者と裸者 ─911アメリカ同時多発テロ】へとつづく








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